ローレンス・ブロックのレビュー一覧
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ネタバレここまで型を崩さない連作短編も稀。
一分の隙もない着こなし、詩を嗜み、依頼人の無罪を例外なく信じる弁護士エイレングラフ。
報酬は極めて高額、ただしその支払いは依頼人が無罪を手にしたときのみで良い成功報酬型。
ただし、ひとたび合意した後は一見何も貢献していないように見え、結果的に自由を手にした場合でもその支払い義務を負う。
凄腕弁護士なのかと思いきや、法廷に出ることは皆無。
むしろ法廷に出る必要すらないようにことを運ぶ(秘密裏にかつ強引に)当世きってのどす黒悪徳弁護士。
依頼後に訪れる窮地の雲散霧消ぶりに、しばしば依頼人達はあなたが何をやったの?と支払いを拒むが、そんな輩達にはおしおきとばかりの展開が。
ちょっとずつ足し引きはあるものの、もう嘘だろと思うくらいワンパターンの繰り返し。
でも何故か楽しめてしまう不思議。
半分を過ぎて思った、これは水戸黄門やドラえもんの類だと。
やってることはだいぶノワールなのだが、崩れない物腰、直接的な記述の排除、反復の妙により、エイレングラフ像が徐々に確実に補強され、いつしかどこかお茶目さすら感じてくる。
解説、松恋さん。
クレイグ・ライス、コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の絶筆をローレンス・ブロックがゴーストライトしたなんて逸話も披露されていて驚き。
全然文体違うのに。
このミス2025年度版海外編6位。 -
Posted by ブクログ
マット・スカダ―の自伝だ。
えっ・・・あのシリーズものの主人公のマット・スカダ―?
小説の主人公が自伝?
御年84歳になったスカダ―がローレンス・ブロックに促されて書いたんだそうだ。
めちゃくちゃ面白そう、楽しみ
自伝なので幼少期の父親のこと母親のこと、幼くして死んでしまった弟が原因で、家族が少しづつ変わっていったこと。
父の死のこと
少年時代のアルバイトのこと、ニューヨークでの警官時代のこと、実はこの時代のことが多く語られていて、
題名なんかは思い出せないけど、あの話に出てきたことかなとぼんやり思い当たるシーンなど出てくる。
そのあとの結婚、離婚、エレインとの出会い、TJなども出てきて、本当にこんな人がいてこんな人生を歩んできたんだ、なんて思えてくる。
あとスカダーにとってアルコール依存症は結構深刻な問題として、毎回話に出てきた気がするけど、自身はその件についてはあまり詳しく触れていない。
長きにわたり続いてきた、マット・スカダ―シリーズ、これをもって一応終了であるらしい。
時間があればもう一度読み返してみたい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
マーティン・H・エレイングラフ弁護士の弁護人は必ず無罪である。
そんな信念をもったエイレングラフが解決する12個の依頼。
・感想
こんな弁護士やだ!!でも嫌いじゃない…。
約30年にわたって綴られた短編集で、形式はほぼ一緒なので気軽に1日1遍のペースで読み進めた。
前半は好きじゃなかったエイレングラフだけど、後半になるほど彼の意外な一面や人間性も垣間見えて段々彼を面白く感じてる自分がいた。
特に好きだったのはエイレングラフの義務とエイレングラフの肯定。
義務では詩を愛するエイレングラフが、詩人である依頼人のために「諦めないで下さい、何度でも上訴すればいいのです」なんて茶番を演じてるの笑ったw
肯定はちょっとだけエイレングラフの人間味を感じられて良かった。
「私がやったんです」「いえあなたは無実です、なぜならこのエイレングラフの依頼人だから」 -
Posted by ブクログ
どんな事件も無実にしちゃう弁護士、まさに犯罪のブラックジャック! #エイレングラフ弁護士の事件簿
■きっと読みたくなるレビュー
弱い者のために正義感たっぷりの弁護士のお話… では、ありません。
むしろ、どう見てもやってるだろという事件を、様々な手段で無実にしちゃうという… その手段は法廷での卓越なる弁護ではなく、裁判にすらならなくなるとい荒業なんです。しかもその報酬は失敗したら一切お金をとらず、成功した場合は莫大な金額というもの。
なんかブラックジャックみたいなトンデモ設定なんですが、これが読んでると面白いんです。
まずこの怪しい弁護士、エイレングラフのキャラ設定がクールなんですよ。ビシっとスーツを決めたベジタリアンで、いつも詩集を読んでいる。重要な仕事の時はお気に入りのネクタイを締めて挑む。報酬は成功した場合のみ受け取り、どんなことがあっても成功に導くという… まるでやり手のビジネスマンみたい。
「実は本当にやってるんです…」 「そうですか、無実ですから安心してください」
「彼に会ったことはあるんですか?」 「ありませんが無実です。なぜなら私の依頼人だからです」
はぁ?! 怖いわ! この発想が怖い!
しかも本当に無実になってしまう(というかしてしまう)ところが恐ろしい。
全部で12編もあるんですが、依頼人や事件関係者が様々で興味深いんですよ。解決へのアプローチも色々あって、たしかにどんな場合でも無実にしてしまうという。よくもまあこんなにも皮肉めいたストーリーやプロットを考えたよ。
しかも本作はエイレングラフ弁護士と依頼人の会話のみで進行していくんです。会話だけっていうところがニクイんすよね、背後でどんなことが行われたかっていう描写はほとんどありません。どんなことをやって無実に導いたかは会話から想像するしかないんですが、このゾワゾワ感がたまんないすよ。
なお長期にわたって書かれたおまとめ短編集とのことで、ストーリーが進むにつれて徐々にエイレングラフの人間性に厚みが出てくる。「エイレングラフの肯定」「エイレングラフの決着」などでは、若干の優しさがしみ出していてエモさもあり完成度が高いですね。
一気に読まなくてもいいので、時間があるときに少しずつ読むのもおすすめです。おもしろかった~
■ぜっさん推しポイント
依頼人にとっては終身刑をも背負った死活問題にも関わらず、エイレングラフのカラリとした発言が面白過ぎんのよ。自信たっぷりなんだけど、何故か憎めないですよね。
また成功後に依頼人が報酬金額をゴネるんですが、それを華麗にいなすやりとりもニヤニヤしちゃう。気品あふれるブラックユーモアたっぷりでした。 -
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アル中文学&ハードボイルドの名品。毎日新聞書評欄で橘玲さんが紹介していた。中島らも「今夜、すべてのバーで」とともに必読だ。
アル中の心理を描く圧巻の描写!
「一日二杯」が適量といっていたのに、さらに飲む「理屈」を考え出す。いつのまにか、抑制しなくていいということになっていく…。そして、「覚えているのはそこまでだった」(p108)
無意味に人が死んでいく。くそったれの街。そして暴言を吐く警官。しかし主人公は思う。「彼はどんな相手にも同じことばを吐きかけただろう。相手がいなければ夜そのものにでも」(p189)
襲ってきた暴漢を倒したが、震えがとまらない。止める方法は、もちろん酒だ。
「通りの向こうから赤いネオンが私にウィンクを送っていた。バー、とそれには書かれていた」(p279)
体に突き刺さる、身体的な文章だ。主人公が見せる「弱者に対する弱者の思いやり」(訳者あとがき)にもしびれる。くそったれの世界で、最低限のモラルを持って生きるかっこよさ。なかなかのハードボイルド体験だ。ラストが本当にいい。 -
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ハードボイルド系だと思って敬遠していた作品。これが中々おもしろかった!
主人公はアル中の探偵スカダー。しかし、酒を飲んで立ち回るような豪快な探偵ではない。
アルコール断ちの集会に真面目に参加し、酒を飲みたいという葛藤と常に戦い続けている。
淡々とした渇いた文章、盛り上がりの少ない展開、孤独な私立探偵が主人公…ハードボイルド三拍子が揃っているが、
ハードボイルドの定義が、【暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する】作品であり、【感情に動かされないクールな生き方】を指すものなのだとすれば、本作はハードボイルドではないのだろう。
スカダーはまだ、暴力と無意味な死が溢れかえる非情な現実を受け入れられずにいるからだ。彼は繊細な探偵だ。だからこそ、この世の不条理ばかりが目につく。
彼がなぜ、知り合ったばかりの娼婦のために、身を危険に晒してまで犯人探しをするのか。これは必ずしも彼女のためだけではないだろう。新聞で眺めることしかできなかった世の中の不条理に対し、抗えるチャンスをようやく掴んだからではないだろうか。
自分を襲ってきた辻強盗を、世の中のために殺してしまうか葛藤する場面がある。一見スカダーは、正義感が強い人間のように感じる。辻強盗の件からも分かる通り、悪に対し非常に敏感だからだ。しかし、正義感という言葉はどこか違うような気がしていた。訳者あとがきに、スカダーは罪と罰の条理性を求める人間だと書かれており、この表現が1番しっくりきた。 -
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ネタバレ泥棒バーニーの2作目。
また殺人事件に巻き込まれる。
前作の事件で新聞に載ってしまい、
行きつけの歯医者に泥棒であることを知られ、盗みを頼まれる。
それは仕方がなかったとはいえ、
長居しすぎるというドジを踏み、殺人現場に居合わせるとは。
相変わらず、女にベラベラとしゃべって大丈夫なのか?と思ったけど、
自分の部屋で死体が発見されるもなんとか切り抜ける。
といっても、金で問題を片づけてくれる警官のレイのおかげだけれど。
最後に行きつけの歯医者を失ったことに対する絶望感を吐露していたが、
現在、歯医者ジプシーの自分としては、
気持ちがよくわかった。