ローレンス・ブロックのレビュー一覧

  • エイレングラフ弁護士の事件簿

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    『私の依頼人はいつでも無実なんですよ』法外な弁護料をとるが、常に裁判になる前に留置所から釈放される殺人事件の犯人たち。エイレングラフの実は…な種明かしがノアールを通り越してヤバすぎる。12話の短編だが、釈放に至る様々な手段で飽きさせない。

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    2024年10月12日
  • エイレングラフ弁護士の事件簿

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    弁護士のエイレングラフは依頼人が有罪になれば弁護料を受け取らず、無罪になれば法外な成功報酬を受け取る。そして裁判になる前に依頼人の疑いを晴らす。依頼人が来たら「あなたは無罪です」と言い本当にその通りになる。その裏に何があるのか。一編30ページにも満たないし全編同じ型をしているけれど、中身のバリエーションが豊富で飽きさせない。何よりエイレングラフの悪徳さが読んでいて心地いいほど。冒頭の一編を読めばすぐに心を掴まれてしまう傑作集。

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    2024年09月30日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    恥ずかしながら私自身は本書を読むまで作品と名前が一致していなかったのだけれど、米国では誰もが知る巨匠エドワード・ホッパー。
    様々な作家の作品からなる『短編回廊』とは違って、一冊丸ごとエドワード・ホッパーの絵画から紡がれた物語はどこか懐かしく、登場人物とはこれまでもドラマや映画、小説などで出会っていたような不思議な既視感と絵そのものから漂う危うい気配にゾクゾクした。おもしろかった!

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    2023年05月10日
  • 短編回廊 アートから生まれた17の物語

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    順番としてはアートが先に存在していて、物語はそれにヒントやインスピレーションを得て、更にこのアンソロジーのために創られたはずなのに。まるで作品の解説だったり、小説が先で挿し絵として描かれたかのような錯覚に陥るほど。
    名画にはそれを見る人の想像力を掻き立てる何かがあるんでしょう。そしてそれを受け止めるアートと小説家の組合せとはなんと相性の良いことか!装丁も印刷も手ざわりも良く、丸ごと一冊どの作品も妖しく美しい。
    編者ローレンス・ブロックの著書はチェックしていたのに不覚にも(!)見落としていたエドワード・ホッパーをテーマとしたアンソロジーの第一弾を読むのが益々楽しみに。

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    2023年04月17日
  • 八百万の死にざま

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    「エメラルドシティには八百万の物語がある。そして八百万の死にざまがある」子どもを誤射して撃ち殺してしまった過去がある元警官でアル中の探偵マットスカダー。読むのは学生の頃に読んだ「聖なる酒場の挽歌」以来だ。足抜けをした翌日にナタで殺されたコールガールのキム。彼女の依頼でマットは前日にヒモのチャンスという男に彼女の足抜けについて話し、心良くOKをもらっていた。そしてキムにもチャンスにも好意を抱いていた。なのに、なぜ?誰が?田舎から出てきたキムの人生。チャンスの人生、他のコールガールたちの人生。マットが通う禁酒集会所の人たちの人生。登場人物一人ひとりの人生が、まさに八百万の生きざまとして語られていく

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    2022年08月08日
  • 短編回廊 アートから生まれた17の物語

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    ある絵(あるいは、一部、彫刻のような美術作品)をモチーフにした短編小説を17人の作家に書いてもらい、それを1冊の本にまとめあげるというコンセプトに基づいて編まれた短編集の2冊目。編者は2冊とも同じくローレンス・ブロック。
    1冊目の書名は「短編画廊」といい、エドワード・ホッパーというアメリカの画家の描いた絵を題材にしたもの。
    本書、2冊目は「短編回廊」という書名で、誰のどのような作品を選択するかは、それぞれの作家に任されている。マイクル・コナリー、ジェフリー・ディーバー、ジョイス・キャロル・オーツなどの有名作家が1冊目に引き続き、この2冊目にも作品を寄せている。もちろん、編者のローレンス・ブロッ

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    2021年09月30日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    1882年に生まれ、1967年に亡くなった、エドワード・ホッパーというアメリカの画家の17の作品を題材にして、17人の作家が、それぞれの絵に対しての短編物語をつくるというコンセプトの本。要するに、エドワード・ホッパーの17の作品に対して、17編の短編が書かれ、本書はそれを収めた短編集だ。
    アイデアを思いつき、物語をつくることに参加を呼びかけたのは、ローレンス・ブロックである。ローレンス・ブロックは私の最も好きな作家の一人なので、読んでみることにしたのだが、ローレンス・ブロックが書いた短編だけではなく、面白い短編が多かった。ローレンス・ブロック以外にも、マイクル・コナリー、ジェフリー・ディーバー

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    2021年09月24日
  • 短編回廊 アートから生まれた17の物語

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    『バラエティ豊かな言葉の美術館へようこそ!』

    マイクル・コナリーなど17人の作家たちの、アート作品をモチーフにした短編集。原田マハさんのアート小説を読んだあとに読むと、既知のエピソードも含め、マハさんとはまた少し違ったテイストが楽しめる。

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    2021年08月21日
  • 短編回廊 アートから生まれた17の物語

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    ローレンス・ブロックの編纂による美術品にまつわるアンソロジーの第二弾。書き手は、ブロックと交流のある著名な作家や著述家達で、基本はこのアンソロジーの為に書き下ろされた何れも宝珠の短編ばかり。
    前作は、エドワード・ホッパーの絵画に触発されて書かれた作品集『短編画廊』。堪能できた一冊だった。
    そして本作。前作のヒットに続く第二弾の企画段階から完成にいたる経緯と熱い思いが詰まったブロックの序文から始まる。少々言い訳じみた文章なのにこの作品のコンセプトに魅せられた作者たちの内容にすぐにでも触れたくなる気にさせられる。心が踊る。
    今回は、一人の画家の縛ることなく、豪華で広範囲な美術品にインスパイアされた

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    2021年06月25日
  • 石を放つとき

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    「夜と音楽と」と「石を放つとき」
    短編集と新作中編、時間軸もまったく違うふたつの章からなる一冊。
    「まえがき」のおかげで
    自分がなぜマット・スカダー・シリーズに惹かれ、今も忘れられないのかしみじみ思い出し一気読み。
    ミックやTJに会えたのも嬉しいし、老いて尚、衰えぬマットとエレインふたりの関係には完敗…。
    相変わらずハードボイルドで最高でした。

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    2021年06月15日
  • 短編回廊 アートから生まれた17の物語

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    『短編画廊』が面白かったので、第2弾を出してくれないかなーと思っていた。こちらは、作家によって選んだ画家はそれぞれ。そしてそれぞれ面白かった。
    特にジェフリー・ディーヴァー、デイヴィッド・マレル、ジョナサン・サントロファー、サラ・ワインマンが◎だったが、特にジョイス・キャロル・オーツがさすが。

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    2021年05月31日
  • 八百万の死にざま

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    アルコール中毒の元刑事、マット・スカダー。 今では伝手を頼ってやってくる依頼人からの仕事を受けながらのホテル暮らし。 別れた妻子への送金も滞りがちで、酒を断とういう苦闘を続けていた。

    売春婦キム・ダッキネンからの依頼は、ヒモのチャンスと手を切りたいということだった。 マットが交渉するとチャンスはあっさりと承諾したが、その二日後、キムは惨殺死体で発見された。 警察はチャンスを有力な容疑者として疑うが、チャンスはマットに真犯人を探し出してほしいと依頼した。 許可証もない探偵として、マットは調査を始める。

    変容してゆくアメリカ社会の中で、犯罪はどのように変わってゆくのか。 警官時代に、心ならずも

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    2021年04月11日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    20世紀を代表するアメリカ人画家の一人であるエドワード・ホッパーの作品は、写実的だが郷愁を感じさせるタッチ。現代的な孤独感。描かれる人物の物憂げな表情。ありふれた構図なのだが何故か惹かれるものがある。
    そんな魅力に惹かれる作家も多く、この本の編者であり著者の一人が、これまたアメリカ探偵小説の雄ローレンス・ブロック。ホッパーの作品から発想された短篇小説を創り出すというアンソロジーの企画に賛同したのは、彼と交友関係のある多彩なアメリカ人文筆家達。
    18枚のホッパーの作品に、ブロックを含め、17人の作家が描く17編の短編は、ミステリー、サスペンス、ハードボイルド、スパイモノ、ホラー、ヒューマンドラマ

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    2021年03月07日
  • 石を放つとき

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    ネタバレ

    マット・スカダーの最新作。

    短編集と新作が入った一冊。
    良かった。

    最初のこの作品群を読んで育ったという読者の話も良かったし、
    何度も夜を過ごしたミックの店の最後の日の話も良かったし、
    昔のマットの話も良かった。

    新作はストーカーに追われる女性を
    警察とのつながりも、昔の仲間も、体力もない中で救うお話。
    ウーバーや携帯の地図アプリ、マップクエストを使いこなすマット・スカダーと、
    隔世の感がある中でも、
    マット・スカダーはマット・スカダーだった。

    そして、TJ!
    とても印象的だった登場人物のその後が、
    ほんのさわりだけでも知れて良かった。
    しかも、正規に入学したわけでもなければ
    学費も払

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    2021年01月29日
  • 石を放つとき

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     マット・スカダーはその後どうしているんだろう、と思ったことは一度や二度ではない。本書はそうした古いハードボイルド・シリーズのファンに応える今のマットと今に至るニューヨークを描いた、アフター・ザ・ハードボイルドといった趣の洒落た作品集である。

     最初の数作は、ブロックの短編集などでお目にかかった再録作品であるが、この際想い出すためにもすべてを読み返した。『窓から外へ』『夜明けの光の中に』『バックレディの死』今更ながら秀逸だ。美味なカクテルのようにパンチのきいた短編である。マットとともにニューヨークという都会をしっかり描いている気がする。

     新たに邦訳された短編群では、探偵になる前の警官時代

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    2021年02月22日
  • 石を放つとき

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    歳を重ねたマットに再び出会えたことに感涙。ぶっ飛びましたが、こちらも大人ですから動じません。ウィンズロウにしろブロックにしろ、老練の作品を読める至福に感謝。

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    2021年01月22日
  • 石を放つとき

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    本当に久々のマット・スタガーもの。もう新作は出ないものだと思い込んでいたので、本屋でこの新作を見つけた時は、すごく嬉しかった。
    前作は「償いの報酬」という本で、調べてみると2012年9月の発行。私は、このブログに2013年の1月に感想を書いていたので、マット・スタガーシリーズを読むのは、7年ぶりのことだ。
    この本は、アメリカで発行された短編集と最新の長編(というほどには長い話ではないが)の2冊を日本で独自に1冊にまとめた合本ということである。11編の短編と、書名になっている「石を放つとき」という長編が収載されている。単行本で500ページの本であるが、あっという間に読み終えてしまった。
    作者のロ

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    2021年01月21日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    楽しめた!
    知ってる作家も知らない作家も、1枚の絵から広げる想像力の半端なさをまざまざと見せつけられた思い。キング御大、ジョイス・キャロル・オーツ、ローレンス・ブロックなどはさすがの出来で、中でもジョー・R・ランズデールがダントツ。ウォーレン・ムーア、クリス・ネルスコットが発見だった。

    しかしそれぞれヴァラエティに富みながらも、全体としてはダーク寄りの傾向なのは、そもそもエドワード・ホッパーの絵の中にある「孤独感」「空虚感」の為せる技だろう。

    読む前、読みながら、読んだ後、何度もホッパーの絵を見返したことよ。

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    2019年06月24日
  • 八百万の死にざま

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    数年ぶりに再読した。
    初めて読んだのはまだ高校生か大学生の頃だった。ずっとこのマット・スカダーシリーズを読んできていたからか、ラストシーンで泣いたのを覚えている。

    その頃、マットのように「いきつけのバー」で「いつもの席でいつものもの」を頼めるような大人になりたいと思っていた。ちょうど、マットとダニー・ボーイの会話のように。

    そして今、マットと同じようにお酒を飲む大人になった。
    お酒を飲んでいない時にはわからなかった、マットが酒に浸る気持ちが少しづつ分かり始めている。


    キムという娼婦が殺された。
    ほんのちょっとすれ違い、ほんのちょっと人生の後押しをしてあげただけの、たったそれだけの関係

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    2015年07月25日
  • 八百万の死にざま

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    久々に魂を打たれた。(あくまで俺の中で)嫌みにならないギリギリのカッコよさの文体。スカダーの独白や、ふとしたセリフが石をうつ水滴のようにゆっくりと心にくる。

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    2015年02月13日