【感想・ネタバレ】石を放つときのレビュー

あらすじ

探偵マット・スカダー・シリーズ
待望の新作+傑作短篇集

エレインの知り合いが名前も知らぬ男から脅迫を受けていた。
老スカダーは単独で調査を始める……


堂場瞬一・解説
凝った構成も、あっと驚くどんでん返しもない。
しかし本作品は、何とも言えない味わいを残す。


【 本書収録作品 】
夜と音楽と
窓から外へ
バッグ・レディの死
夜明けの光の中に
バットマンを救え
慈悲深い死の天使
夜と音楽と
ダヴィデを探して
レッツ・ゲット・ロスト
おかしな考えを抱くとき
ミック・バルー、何も映っていない画面を見る
グローガンの店、最後の夜
石を放つとき

原題:
A Time to Scatter Stones
The Night and The Music
A Matthew Scudder Novella

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Posted by ブクログ

「夜と音楽と」と「石を放つとき」
短編集と新作中編、時間軸もまったく違うふたつの章からなる一冊。
「まえがき」のおかげで
自分がなぜマット・スカダー・シリーズに惹かれ、今も忘れられないのかしみじみ思い出し一気読み。
ミックやTJに会えたのも嬉しいし、老いて尚、衰えぬマットとエレインふたりの関係には完敗…。
相変わらずハードボイルドで最高でした。

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2021年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マット・スカダーの最新作。

短編集と新作が入った一冊。
良かった。

最初のこの作品群を読んで育ったという読者の話も良かったし、
何度も夜を過ごしたミックの店の最後の日の話も良かったし、
昔のマットの話も良かった。

新作はストーカーに追われる女性を
警察とのつながりも、昔の仲間も、体力もない中で救うお話。
ウーバーや携帯の地図アプリ、マップクエストを使いこなすマット・スカダーと、
隔世の感がある中でも、
マット・スカダーはマット・スカダーだった。

そして、TJ!
とても印象的だった登場人物のその後が、
ほんのさわりだけでも知れて良かった。
しかも、正規に入学したわけでもなければ
学費も払っていないにもかかわらず、
その熱心さゆえに教授たちが受講を許す話はちょっと感動した。

また、似顔絵描きのレイが、
思い出の家族たちを描き出した話にも
心を打たれた。

長年紡がれた物語の黄昏時とあっては、
非常なる期待感をもって読み始める訳だが、
その期待を裏切らない、珠玉の作品だった。

夜の闇の中に、
昼間の日常や繁忙やざわめきが溶け出すような、
快さを感じる。
時が漂ってはいるが、澱んではいない
とある夜。

これが最後なのだろうか。

(蛇足ながら知らない方のために。
エレインが作った料理の
<ポール・ニューマン>のマリナラソースは、
俳優のポール・ニューマンが創設し、
その利益を寄付した食品会社のトマトソース。
びんにポールニューマンの顔が描かれていている。

また、<デイヴス・インサニティー>のホットソースは、
デイヴス・グルメというメーカーのホットソースのひとつ
こちらのびんに描かれているのは、
浜辺らしき場所でサングラスをかけて、
日光浴をしている赤唐辛子。

いずれも現在のアメリカらしい小道具だ。)

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2021年01月29日

Posted by ブクログ

 マット・スカダーはその後どうしているんだろう、と思ったことは一度や二度ではない。本書はそうした古いハードボイルド・シリーズのファンに応える今のマットと今に至るニューヨークを描いた、アフター・ザ・ハードボイルドといった趣の洒落た作品集である。

 最初の数作は、ブロックの短編集などでお目にかかった再録作品であるが、この際想い出すためにもすべてを読み返した。『窓から外へ』『夜明けの光の中に』『バックレディの死』今更ながら秀逸だ。美味なカクテルのようにパンチのきいた短編である。マットとともにニューヨークという都会をしっかり描いている気がする。

 新たに邦訳された短編群では、探偵になる前の警官時代、最初の家族との生活の時代、などシリーズ以前を舞台にした作品、そしてシリーズ後、新たに書き下ろしたその後のマットを主体にした作品など、マット・スカダー・ファンにはたまらない掘り出し物が多い。

 ニューヨークとジャズと夜と犯罪と。マットを取り巻く環境は今も変わらないのかもしれないが、マットとエレインの夫妻はこの作品集のページとともに歳をとってゆく。ハードボイルド・ヒーローであったかつてのマットは、作者や読者と同じように歳月を重ね、今に至る生を育んでいる。まずはそれほど作者が魂を吹き込んでいることに驚きである。書物の中のもう一つの作者の現実ででもあるかのように。

 作者は、おそらく自分の生きた時代と年齢とを、意図してマットとエレインに投影している。造形した人間たちへの作者愛と、彼やその関係者という架空のキャラクターたちに命を吹き込んでいる。世界と時代とを生きる彼らへのオマージュを改めて贈りたかったのだろう。

 そんな過去の作品と、キャラクターたちへの愛着が、この一冊全体に感じられてならない。ブロック・ファンなら読み逃せない貴重な作品集なのだ。ミック・バルーとの深夜の語らい。アームストロングの店。AA集会。『八百万の死にざま』『聖なる酒場の挽歌』に夢中になっていた、あの頃のぼく自身。

 『石を放つとき』では、奇妙なリズムを変奏曲のように見せながら、今のマットを描く。そう、老後のマットだ。警察時代も探偵時代も過去、しかし禁酒は今も続けている。かつての10%献金。ローソクを灯し、自分を保つ生き方。あの時代の大揺れだったマットの不安定さ。なけなしの良心が絞り出していた事件への執念。

 この本と向かい合うことは、読者にとって、あたかもかつての自分と向かい合うことのように思う。911を含めニューヨークや世界に起こったこと。ぼくらと共通の時代と向き合うように書いてきたブロックという作家。彼の大切にしてきた宝箱みたいな素敵なこの短編集。彼の作り上げた男と女たち。かつてこの作家の作品を大切に心の中に抱え込んできた愛読者たちへ、現在の作者からの心のこもった謙遜ぎみの挨拶、みたいに見える一冊である。

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2021年02月22日

Posted by ブクログ

歳を重ねたマットに再び出会えたことに感涙。ぶっ飛びましたが、こちらも大人ですから動じません。ウィンズロウにしろブロックにしろ、老練の作品を読める至福に感謝。

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2021年01月22日

Posted by ブクログ

本当に久々のマット・スタガーもの。もう新作は出ないものだと思い込んでいたので、本屋でこの新作を見つけた時は、すごく嬉しかった。
前作は「償いの報酬」という本で、調べてみると2012年9月の発行。私は、このブログに2013年の1月に感想を書いていたので、マット・スタガーシリーズを読むのは、7年ぶりのことだ。
この本は、アメリカで発行された短編集と最新の長編(というほどには長い話ではないが)の2冊を日本で独自に1冊にまとめた合本ということである。11編の短編と、書名になっている「石を放つとき」という長編が収載されている。単行本で500ページの本であるが、あっという間に読み終えてしまった。
作者のローレンス・ブロックは1938年の生まれということなので、80歳を超えている。読み終えて「しまった」という書き方をしたのは、次作を読めるかどうか分からないから。

ハヤカワが読者投票により、海外ミステリーのベスト100を選出、発表したのが1991年のことだ。ちょうどこの頃私は海外ミステリーばかりを読んでいた時期で、このハヤカワのリストに助けられて多くの作家を知ることが出来た。このローレンス・ブロックも、ベスト100の中に入っていた「八百万の死にざま」から読み始め、すぐに発行されているものは全部読んでしまった記憶がある。そのようにして読んだ作家は沢山いる。私のお気に入りだったのは、他には、ロバート・パーカー、レイモンド・チャンドラー、ギャビン・ライアル、コリン・デクスター、マイクル・リューイン、P.D.ジェイムズ、ロス・マクドナルド、トマス・ハリス、ジェイムズ・エルロイ・・・、等、いくらでも出てくる。
久々に、以前好きだったシリーズの本を読むことが出来て、昔のことを思い出してしまった。これらの本の多くは、ハヤカワの文庫で読んだものだ。この間、書店でハヤカワの文庫本のコーナーを、これも本当に久しぶりに覗いてみたが、ここにあげた作家の本は、ほとんど置いていなかった。当たり前だけれども、時代は移っていくのだなと、あらためて思った次第だ。

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2021年01月21日

Posted by ブクログ

スカダーものの短編集と、最新作を1冊にまとめたお得な本。とはいえ、短編の半数はブロックの他の短編集で読んだ記憶がぼんやりとあった。長編はもちろんだが、短編もそれぞれ味わいがあっていい。スカダーとの出会いは30年以上前、『八百万の死にざま』を読んでから。遡ってシリーズ全作を読み、『聖なる酒場の挽歌』からはほぼリアルタイムで読んでいる。何年か前、最新作を読む前に全長編を発表順に読み直したこともある。歳を取るにつれ“エロ爺”化しているスカダーだが、これが最後の作品になるのだろうか。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

「すべては死にゆく」以来の新作。それだけでも嬉しいのに、短編集付き。短編はほとんど読んでいたが、再び楽しむことができた。

そのうちに、シリーズを最初から読み直してみたい。

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2020年12月30日

Posted by ブクログ

なんだかんだとマシュウさんとも付き合いは長いけど、ここまで年をとっていたとは!いやまぁ架空の存在だからサザエさんがいつまでもピチピチギャルのままであってもよいわけでマシュウさんも突然100歳になっても良いけど。
しかしお爺ちゃんとは。
その変化についていけないやら、短編集だとじわじわ盛り上がるの難しいやらで、ちょっとイマイチなのよね。表題作にいたっては、老いてなお盛んですなぁ、みたいな、いやまぁスゴイけどもね、と感想に困る。
歳を取るってこういうことなんやね、と勝手に納得するのだった。

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2022年05月10日

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