あらすじ
探偵マット・スカダー・シリーズ
待望の新作+傑作短篇集
エレインの知り合いが名前も知らぬ男から脅迫を受けていた。
老スカダーは単独で調査を始める……
堂場瞬一・解説
凝った構成も、あっと驚くどんでん返しもない。
しかし本作品は、何とも言えない味わいを残す。
【 本書収録作品 】
夜と音楽と
窓から外へ
バッグ・レディの死
夜明けの光の中に
バットマンを救え
慈悲深い死の天使
夜と音楽と
ダヴィデを探して
レッツ・ゲット・ロスト
おかしな考えを抱くとき
ミック・バルー、何も映っていない画面を見る
グローガンの店、最後の夜
石を放つとき
原題:
A Time to Scatter Stones
The Night and The Music
A Matthew Scudder Novella
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
マット・スカダーの最新作。
短編集と新作が入った一冊。
良かった。
最初のこの作品群を読んで育ったという読者の話も良かったし、
何度も夜を過ごしたミックの店の最後の日の話も良かったし、
昔のマットの話も良かった。
新作はストーカーに追われる女性を
警察とのつながりも、昔の仲間も、体力もない中で救うお話。
ウーバーや携帯の地図アプリ、マップクエストを使いこなすマット・スカダーと、
隔世の感がある中でも、
マット・スカダーはマット・スカダーだった。
そして、TJ!
とても印象的だった登場人物のその後が、
ほんのさわりだけでも知れて良かった。
しかも、正規に入学したわけでもなければ
学費も払っていないにもかかわらず、
その熱心さゆえに教授たちが受講を許す話はちょっと感動した。
また、似顔絵描きのレイが、
思い出の家族たちを描き出した話にも
心を打たれた。
長年紡がれた物語の黄昏時とあっては、
非常なる期待感をもって読み始める訳だが、
その期待を裏切らない、珠玉の作品だった。
夜の闇の中に、
昼間の日常や繁忙やざわめきが溶け出すような、
快さを感じる。
時が漂ってはいるが、澱んではいない
とある夜。
これが最後なのだろうか。
(蛇足ながら知らない方のために。
エレインが作った料理の
<ポール・ニューマン>のマリナラソースは、
俳優のポール・ニューマンが創設し、
その利益を寄付した食品会社のトマトソース。
びんにポールニューマンの顔が描かれていている。
また、<デイヴス・インサニティー>のホットソースは、
デイヴス・グルメというメーカーのホットソースのひとつ
こちらのびんに描かれているのは、
浜辺らしき場所でサングラスをかけて、
日光浴をしている赤唐辛子。
いずれも現在のアメリカらしい小道具だ。)