岡本綺堂のレビュー一覧
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(全巻合わせた感想)
ともかく面白かった。ストーリは単純で強引な推理と捕物ではあるが、それよりも何よりも江戸の描写が活き活きと表現され、江戸を生きていた人達と身近に接した時代の人でなければ書けない本だと感嘆する。
江戸時代の情景が浮かんでその世界にどっぷりと浸り酔いしれるという読書は初めてで充分堪能できた。更にこの本は文末にその話に関係する地図(昭和初期の地図に江戸の図割を追加したもの)があり、挿入画も江戸時代の物を書き起こしたものである。
描写例
「卯の花くだしの雨が三日も四日も降りつづいて」
「八百屋にも薄や枝豆がたくさん積んであった」
「あしたが池上のお会式(えしき)という日の朝」
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Posted by ブクログ
本は二部構成になっていて、第一部が「青蛙堂鬼談」全12話。
百物語の会で、参加者が次々に怪談・奇談を語ってゆく、
という趣向。
養父と成長した養女が妻の死後に夫婦同然の関係になるのだが、
その娘が刀に付いた血を舐めたがるという「一本足の女」が
一番ゾゾッと来ました(^_^;)。
第ニ部は独立した短編が並んでいるのだが、
第一部に倣って「●●君は語る」といって始まる話ばかり
集められていて、やっぱり百物語のスタイルを踏襲している。
これは編者のアイディアですね。上手い。
それにしても文体が滑らかで非常に美しい。
上品です。
だからどんなに不気味な話でも後味が悪くない。
読者を強引に怖がらせるよう -
Posted by ブクログ
レビュー:
岡本綺堂、と言っても最近は知らない方が多いだろう。岡っ引の回想録という形での推理小説「半七捕物帳」や歌舞伎の劇作、そして卓越した英語力(父が英国公使)でディケンズやデフォーの怪奇小説の翻訳、とその精力的な創作力にはただただ圧倒。又、明治の文人でありながら江戸情緒に並々ならぬ愛情と造詣が深く世相を織り込んだ随筆も、これまた素晴らしい出来だ。(勿論、筆致はすべて静謐として味わい深いし。)しかし、やはりオイラは先生の「怪談」が好きだ。今はホラーブームで、映画から小説から漫画から…とかく「恐怖」を描きたがる。しかし、この綺堂先生の「怪談」は田舎のほの暗い日本間の隅に何かがいるようなどこか -
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もうちょっと本書の成り立ちを解説かなにかではっきりさせてほしかった。オビに書かれた文句や、巻末の「定本一覧」をみる限り、たぶん一九二〇年刊の『慈悲心鳥』に収録された短編と、そののちに発表された短編とを再編集して、この書名で光文社時代小説文庫から改めて出しました、ということなんだと思う。内容は、刊行当時か、ちょっと昔(幕末から明治にかけて)に起こった殺人事件を、怪奇小説風に書いたものが多い。謎解きといっても、ほぼ物の怪の仕業であることがわかって物語は終わる。書かれた時代が時代なのでしょうがないけれど、様々な種類の差別の詰め合わせのような短編集でもあり、これが好き! という感想を書くのはちょっと
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さて、僕の大好きな作家「岡本綺堂」の作品だ。
綺堂と言えば「半七捕物帳」東洋のシャーロックホームズと呼ばれだが、確かに本格推理も有るが、比較的に謎解きそのものは安易なものが多い。それでも、怪談風味・サスペンス・ミステリーなど作風が色々あり、飽きさせない。
また、すっきりした文章が特徴で読後感も、爽やかで、読んでも読んでも飽きが来ない。
そんな半七の知人である三浦老人の昔話。
面白く無い理由が無い。ちなみに捕物帳とは、また別な話。
中央公論社より岡本綺堂読物集の1巻として出版された読物集が全部で7巻、これからが楽しみだ。
ただ残念なのは、「半七捕物帳」は光文社文庫から全巻出版されているが、当時の -
購入済み
得意の怪談モノ
半七捕物帳で有名な著者であるが、この作品のような怪談ものがより一層得意なような気がする。多くの人が一堂に会して一話づつ話をするという百物語形式をとっているせいで、リアルさが出ている。いずれの話もなかなかのものであるが、私は中国物が好きである。怪談ものと言っても、人の情念 恨みつらみよりは、人外の怪異を描いたものが多いので読後感はスッキリとしている。
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購入済み
本当に怖い話は日常の生活の中に
「本当に怖い話は日常の生活の中にある」と言われるが、その法則が典型的に当てはまりそうな作品である。ごく普通の勉学生活から徐々に高まる違和感、終盤の盛り上がりとオチ。なかなか見事である。回収していない伏線があるのだが、意図的なものかな。ただ題名が江戸川乱歩みたいでおどろおどろしく、作品内容を表していない。
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購入済み
100年近くも前の作品なのに
岡本綺堂のやや怪奇味を帯びた作品が入っている短編集である。明治初期から中期に幕末頃の話を聞きがたりする という体裁を取っているため、幕末と明治初中期の風俗をともに知ることができる。驚いたのは100年近くも前の作品なのに、江戸言葉のテンポの良い語り口で、さして引っかるところもなくスラスラと読めることである。短編集にありがちの、話を無理やり面白くしようと、オチの部分を作り込むこともなく自然体の語り口であるところもよい。
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今年生誕150周年を迎える綺堂のアンソロジー。
今回、初復刻となる「五人の話」は、あの話やこの話の原形だったんだな~、と。この話のこのネタをベースにアレンジを加えてのちの作品としてブラッシュアップされたんだなって気配が感じられて興味深い作品群でしたね。
上記に加えて、戯曲、随筆、年譜と内容充実。
綺堂の随筆は芸談系のネタだとあまり綺堂本人の姿が見えてこないものが多い印象なのですが、本書収録の怪談がらみの話になると、綺堂自身が見えてこれまた楽しく堪能。
詳細な年譜も良かった。しょっちゅう風邪と中耳炎で体調を崩しつつも、ずっと芝居を書き続けてたんだなぁと感嘆。