岡本綺堂のレビュー一覧
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岡本綺堂『旅情夢譚』光文社文庫。
岡本綺堂の小説は大昔に『半七捕物帳』を読んだくらいしかない。
本作は13編収録の短編集である。さもない事件から、怖さを感じる事件まで、宿地を舞台にした様々な事件が描かれる。昭和よりも前の大正時代の作品。
『山椒の魚』。実際に起きる事件というのは偶然も重なり、実に呆気ない真相であったりもする。まだ中央線が開通していない時分の木曽路の旅籠で起きた二人の女学生の毒殺事件。タイトルの『山椒の魚』は事件とは一切関わりが無い。
『剣魚』。事実は小説よりも奇なり。女心はさらに奇なり。房総の海水浴旅館に泊まった男性が芸妓と二人で海にボートで漕ぎ出し、芸妓だけがボート -
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岡本綺堂は初めて読んだ。1925(大正14)年から連載され、後に追補されて1932(昭和7)年に単行本として刊行されたもの。百物語形式で、12名の語り手が順に怪談・奇談を語っていく。
この中公文庫版、「雰囲気を伝えるべく」あえて歴史的仮名遣いを採用しているので「さういふわけで」のような表記になっている。旧漢字は使っていないので、岩波文庫の復刻ものよりもずっと読みやすく、問題なかった。若い人はちょっと「引く」かもしれないが。
よどみなく流れてゆくような文体が良く出来ている。適度に描写し、物語を進めてゆくので、引き込まれて読まされる。なかなか見事な芸ではないかと思う。
話の中身は、ホラー( -
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岡本綺堂の文庫初収録作品、全7編。
時代小説文庫なので、すべて時代劇かと思っていたが、
そうではなかった。
『青蛙堂鬼談』の愛読者ゆえ、
ゾッとする怪異譚を期待していたけれども、
意外に薄味、アッサリしていた。
■うす雪(1918年)
雑誌編集長・須郷匡三の妹・貞子は女学校の教諭で、
自宅に数人の生徒を寄宿させていたが、そのうちの一人、
栗田男爵令嬢・雪子が姿を消したという。
捜索に力を貸そうとした匡三は意外な事実に行き当たった――。
携帯端末どころか固定電話すら普及率の低かった時代、
探偵ごっこも大変だったのだ(笑)。
■最後の舞台(1920年)
語り手「私」は六、七年前に -
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表題作は、岡本綺堂、大正6年発表の長編伝奇小説。中公文庫版はこれに加え、付録として短編「狐武者」を収録。
玉藻前(たまものまえ)伝説というものがある。
玉藻は鳥羽上皇の寵姫であったとされる。妖艶な美しさに加え、和歌などの才にも長け、女官から徐々に出世していく。だがそれにつれて上皇は病に伏せるようになり、医師らも治すことはできなかった。原因を突き止めたのが陰陽師の安倍泰親(安倍清明の数代後の子孫)である。上皇の不調は玉藻の前の仕業であり、さらにはその正体は、金の毛、九つの尾を持つ妖怪狐であると見抜く。泰親の祈祷により、狐は姿を現して那須へと逃げる。討伐隊が差し向けられ、狐はついにうち滅ぼされる -
購入済み
岡本綺堂原作の捕物帳
映画・テレビ等では見たように記憶しているが、原作は初めて読ませてもらい、この分野では第一人者の作品だけに興味を持って読了した。この作品はシリーズで他に何作もあるので機会をみてそれ等も読んでみたいと思っている。