茂木健のレビュー一覧
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パラレルワールドもの。最初の章で認知症の老婦人の日常が語られて此処が並列世界の終点であることを匂わせる。
そこから過去に遡り同一人物の二つの人生が平行して語られていく。どちらかが劇的な人生と言うわけでもないのだが、明らかに世界観は異なる。
パットが生きる世界では限定的に核戦争が有り各地で死の灰が降る。それがパットの人生に大きく影響する。
一方トリッシュの生きる世界では横暴な夫のもと、不幸せな結婚生活を送り5人を死産し4人を育て上げる。その代わり世界は比較的平和である。
主人公であるパトリシア(パット、またはトリッシュ)の認知症が進み施設に入ったその時、二つの人生は混濁した意識の中で融合し始める -
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上巻に引き続き、第二次世界大戦におけるユーバーメンシュたちの戦いの様、そして、東西冷戦時代を経て現代にいたるまでの彼らのその後が描かれます。
上巻の冒頭で、オブリヴィオンがフォッグと会ったのは、彼らの上司オールドマンの元に呼び寄せ、フォッグの戦時中の報告書で語られていなかった事柄について、真相を聞き出すためでした。
オールドマンの事務室と過去がテンポよく切り替わりながら物語は進みます。
そして思いがけないエンディング。
フォッグ、オブリヴィオン、オールドマンのそれぞれが抱える様々な苦悩や願望が絡み合い、ややほろ苦くもありつつ、爽やかな幕切れに大きく息をつきました。 -
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現代のロンドンで、フォッグ(霧)とオブリヴィオン(忘却)という二人の男が再会する場面から始まる物語は、1926年〜44年のパリ、ワルシャワ、トランシルヴァニアなど時間と場所が転々と行きつ戻りつしつつ進んでいきます。
ある出来事により特殊な能力を身に付けた、ユーバーメンシュと呼ばれる超人たちが、第二次世界大戦の中で敵味方となって戦う様が描かれます。
ちょっとX-MENを連想させられますね。
フォッグは能力に目覚め困惑している時に、イギリス情報機関にスカウトされ、仲間たちと出会います。
そして機関の任務中に出会った一人の娘に、心を奪われていきます。
細かく場面が切り替わるテンポの良さ、謎めい -
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ネタバレ時は19世紀の米国西部。
兄弟の殺し屋が一人の山師の殺害を命じられてカリフォルニアに旅立つ。
その道中 兄弟の力関係、頭の良し悪し、残忍さや温かさが明らかになる。
例え殺し屋でも人間だれであれ
何かにすがって 何かを手掛かりに生きている。
それは自分の腕であったり、将来の希望であったり、人間関係であったり
異性への愛情であったりお金であったりする。
結構 内省的な 主人公(弟の方)の視線で語られる本書は
そういった 人生を変えてくれそうな何かに振り回される生きざまを描いている。
先の読めない展開なのに、次が読みたくなるプロット。
構成力も表現力もなかなかである。
日本の小説だと主人 -
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宇宙船で目覚めた6人のクローンたちが見つけたのは、自分たち自身の死体。
自分の死体を自分で調べるなんてミステリーでは絶対にあり得ないけど、SFミステリーならクローンが存在することで普通に成り立ってしまうところが面白い。
ミステリー感はそんなに強くないので、『そして誰もいなくなった』のような疑心暗鬼の緊張感やドキドキはあまりない。
それよりもSF特有の自由な設定と、マンガみたいにキャラが立った登場人物たちが楽しい。日本人も主要メンバーで登場する。
クローンとは何なのか、自分ならどう考えるだろうとふと考えたり、最後まで飽きずに面白かった。
陰湿さがなくて、悩んでいても前向きに突っ走る、ア -
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クローズドサークルとクローン。
自分の大好きな要素が詰まったSFミステリー。
宇宙船で目覚めた6人のクローンたちが見つけたのは、自分たち自身の死体。記憶はすべて消され、頼りになるはずのAIも故障中。
物語は2282年に制定された「クローンの国際法」から始まる。
「クローンが有するDNAは改変してはならない」などの法律が書かれていて、クローンが普通に存在する未来のリアルさが感じられてワクワクが止まらない。
こちらも『書評七福神が選ぶ翻訳ミステリベスト』で紹介されていた作品。
下巻に続く…
約1ヶ月ぶりの読書になってしまった。
子どもの大学受験や自分の体調不良や仕事など、いろんなことがや -
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時間が止まった死体が見つかる… タイムトラベルが実現した世界で何が起こったか #パラドクス・ホテル
■あらすじ
時間旅行ができる施設と併設されたパラドクス・ホテル、そのホテルでジャンは女性警備員として働いていた。
彼女はこれまで時間犯罪取締局で働いていたせいで、タイムトラベラー特有の病気にかかっていた。未来や過去を幻視してしまうという病気であったが、その症状がきっかけで、時間が止まった死体や自分自身が銃殺される場面を目撃してしまう。
事件を解決するために調査を開始するジャンだったが、ホテル内では恐竜の子どもが逃げ出したり、時計の針がおかしくなるなど、様々な異常事態が発生してしまい…
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クラスメイトが読んでいて、タイトルと装幀に惹かれたという息子の言葉で、じゃあ読んでみよう!となりました。
眺めているだけでストーリーが気になる表紙ですね。視点を変えながら進んでいく物語に、静かに興奮しました。
宗教関連の言葉が多いので、名付けた人(ロボット)がどんな意図で付けたのかなどに思いを馳せます。
巻末用語集は、開かずに読みました。なんとなく伝われば読みすすめられるので、個人的にはなくても大丈夫です。没入感の方が大事なタイプは、気にせずどんどんいきましょう!(笑)
ジャッカルのアナビスとサレハのコンビも好きだけど、イライアスがその後どうしているのかも気になります。二人の絶妙な空気感という -
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テレパシーで会話する異星人ロジアと
友好的な交流をしている地球が舞台という前提。
文化交流を担当するロジ人フィッツの
通訳として働くリディアが主人公。
イギリスからアメリカに来て働く彼女は
仕事に誇りを持っているけど
故郷の家族のことや自分の人生に悩んでもいる。
まずは彼女とフィッツの日常を
単純に未来SFとして楽しみました。
思念を通訳するので「酔う」設定もユニーク。
で、酔って寝込んでいる間に
なんとフィッツが殺されてしまう!
容疑者扱いされたリディアの「頭」に
死んだはずのフィッツの声が聞こえて
ふたりは真犯人を追いかけるのですが。
変則バディものとしておもしろかったし
複数の容疑 -
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SF。冒険小説。
主人公が落下しながら世界の謎を解く冒険パートと、世界中の戦争に直面した科学者のパートが同時進行。
なぜこんな世界になったか、という謎の回答は、SF的には強引で説明不足感は強い。
二つのパートの関係性は、上巻の時点でほぼ分かり、基本的には冒険小説として読んでいた感じ。
冒険小説としては、舞台設定が独特なため、先の展開が読めずスリリング。
解説によると、著者はヤングアダルト作品を何冊か書いているようで、文章も簡潔で、ストーリー展開も早く読みやすい。
著作リストのあらすじが、どの作品もとても面白そう。翻訳希望。
上下巻通して、エンタメ作品として十分に楽しめた。