茂木健のレビュー一覧

  • わたしの本当の子どもたち

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    パラレルワールドもの。最初の章で認知症の老婦人の日常が語られて此処が並列世界の終点であることを匂わせる。
    そこから過去に遡り同一人物の二つの人生が平行して語られていく。どちらかが劇的な人生と言うわけでもないのだが、明らかに世界観は異なる。
    パットが生きる世界では限定的に核戦争が有り各地で死の灰が降る。それがパットの人生に大きく影響する。
    一方トリッシュの生きる世界では横暴な夫のもと、不幸せな結婚生活を送り5人を死産し4人を育て上げる。その代わり世界は比較的平和である。
    主人公であるパトリシア(パット、またはトリッシュ)の認知症が進み施設に入ったその時、二つの人生は混濁した意識の中で融合し始める

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    2017年10月31日
  • わたしの本当の子どもたち

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    これが、遅れてきた、2017の私的ベスト1だと思う。
    人生には選択があり、どちらも命をかけて守りたい愛しい人と、吐くような痛みをともなうのだ。時は過ぎていく。

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    2017年10月14日
  • パンドラの少女 下

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    下巻も3分の1くらいまではダルダルだったけど、その後からラストにいたるまでの絶望感とカタルシスは素晴らしい。
    壁の描写に、映画版タイトルの「ディストピア」はこれかーと思ったけど、ラストシーンでこっちだった!と納得。
    メラニーはヤンデレかわいいと思います!

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    2017年07月07日
  • 完璧な夏の日 下

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    上巻に引き続き、第二次世界大戦におけるユーバーメンシュたちの戦いの様、そして、東西冷戦時代を経て現代にいたるまでの彼らのその後が描かれます。

    上巻の冒頭で、オブリヴィオンがフォッグと会ったのは、彼らの上司オールドマンの元に呼び寄せ、フォッグの戦時中の報告書で語られていなかった事柄について、真相を聞き出すためでした。

    オールドマンの事務室と過去がテンポよく切り替わりながら物語は進みます。
    そして思いがけないエンディング。

    フォッグ、オブリヴィオン、オールドマンのそれぞれが抱える様々な苦悩や願望が絡み合い、ややほろ苦くもありつつ、爽やかな幕切れに大きく息をつきました。

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    2015年03月29日
  • 完璧な夏の日 上

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    現代のロンドンで、フォッグ(霧)とオブリヴィオン(忘却)という二人の男が再会する場面から始まる物語は、1926年〜44年のパリ、ワルシャワ、トランシルヴァニアなど時間と場所が転々と行きつ戻りつしつつ進んでいきます。

    ある出来事により特殊な能力を身に付けた、ユーバーメンシュと呼ばれる超人たちが、第二次世界大戦の中で敵味方となって戦う様が描かれます。
    ちょっとX-MENを連想させられますね。

    フォッグは能力に目覚め困惑している時に、イギリス情報機関にスカウトされ、仲間たちと出会います。
    そして機関の任務中に出会った一人の娘に、心を奪われていきます。

    細かく場面が切り替わるテンポの良さ、謎めい

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    2015年03月28日
  • 完璧な夏の日 上

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    たまたま書店の本棚の上に上下巻が無造作に置かれてあり、なんとなく手に取った本だったが、個人的には大当たり。好みにぴったり当てはまる本だった。

    ”戦争×SF”がテーマである。

    第二次世界大戦の折に活躍、暗躍した異能力者「ユーバーメンシュ」達について。淡々とした描写からはまるで映画を見ているような印象をうけた。

    霧を自在に操れるフォッグと触れたものを消し去ることができるオブリヴィオンの暑苦しくなく、お互いを思いやる穏やかな友情がアツい。

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    2015年03月27日
  • シスターズ・ブラザーズ

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    ネタバレ

    時は19世紀の米国西部。
    兄弟の殺し屋が一人の山師の殺害を命じられてカリフォルニアに旅立つ。

    その道中 兄弟の力関係、頭の良し悪し、残忍さや温かさが明らかになる。

    例え殺し屋でも人間だれであれ
    何かにすがって 何かを手掛かりに生きている。

    それは自分の腕であったり、将来の希望であったり、人間関係であったり
    異性への愛情であったりお金であったりする。

    結構 内省的な 主人公(弟の方)の視線で語られる本書は
    そういった 人生を変えてくれそうな何かに振り回される生きざまを描いている。

    先の読めない展開なのに、次が読みたくなるプロット。

    構成力も表現力もなかなかである。
    日本の小説だと主人

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    2013年12月02日
  • シスターズ・ブラザーズ

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    凄腕の殺し屋シスターズ兄弟は、雇い主の“提督”に命じられある山師を消しにサンフランシスコへと旅立つ……。
    凶暴な兄とキレたらヤバイ弟、愛すべき二人の珍道中。暴力的で残酷なシーンの連続なのに、とぼけた語り口がそれを不快と感じさせない。積み重ねられたエピソードのひとつひとつも魅力的。

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    2013年06月02日
  • 六つの航跡 下

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    宇宙船で目覚めた6人のクローンたちが見つけたのは、自分たち自身の死体。

    自分の死体を自分で調べるなんてミステリーでは絶対にあり得ないけど、SFミステリーならクローンが存在することで普通に成り立ってしまうところが面白い。

    ミステリー感はそんなに強くないので、『そして誰もいなくなった』のような疑心暗鬼の緊張感やドキドキはあまりない。

    それよりもSF特有の自由な設定と、マンガみたいにキャラが立った登場人物たちが楽しい。日本人も主要メンバーで登場する。

    クローンとは何なのか、自分ならどう考えるだろうとふと考えたり、最後まで飽きずに面白かった。

    陰湿さがなくて、悩んでいても前向きに突っ走る、ア

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    2025年11月23日
  • 六つの航跡 上

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    クローズドサークルとクローン。
    自分の大好きな要素が詰まったSFミステリー。

    宇宙船で目覚めた6人のクローンたちが見つけたのは、自分たち自身の死体。記憶はすべて消され、頼りになるはずのAIも故障中。

    物語は2282年に制定された「クローンの国際法」から始まる。
    「クローンが有するDNAは改変してはならない」などの法律が書かれていて、クローンが普通に存在する未来のリアルさが感じられてワクワクが止まらない。

    こちらも『書評七福神が選ぶ翻訳ミステリベスト』で紹介されていた作品。

    下巻に続く…

    約1ヶ月ぶりの読書になってしまった。
    子どもの大学受験や自分の体調不良や仕事など、いろんなことがや

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    2025年11月23日
  • パラドクス・ホテル

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    時間犯罪取締局の元調査官で、今は時空港併設のホテルで警備主任をしている主人公。しかも時間離脱症を患っているという世界観は理解できるかな?と読み始める前には少し身構えたものの、読んでみたらただただのめり込んでイッキ読みでした。
    犯人は?誰と誰が繋がってる??等、ミステリとしても楽しめました。

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    2025年09月29日
  • 人類の知らない言葉

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    テレパシーで会話する異星種族ロジ人。思念通訳士のリディは自分が担当するロジ人外交官の殺害事件に巻き込まれる…。不可解な状況、不審と懐疑。謎が謎を呼ぶ予想できない展開と近未来の社会描写が秀逸。異星文化を絡めて事件を追う良質のSFミステリー。
    「人類の知らない言葉」(2022)エディ·ロブソン

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    2025年06月13日
  • パラドクス・ホテル

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    時間が止まった死体が見つかる… タイムトラベルが実現した世界で何が起こったか #パラドクス・ホテル

    ■あらすじ
    時間旅行ができる施設と併設されたパラドクス・ホテル、そのホテルでジャンは女性警備員として働いていた。

    彼女はこれまで時間犯罪取締局で働いていたせいで、タイムトラベラー特有の病気にかかっていた。未来や過去を幻視してしまうという病気であったが、その症状がきっかけで、時間が止まった死体や自分自身が銃殺される場面を目撃してしまう。

    事件を解決するために調査を開始するジャンだったが、ホテル内では恐竜の子どもが逃げ出したり、時計の針がおかしくなるなど、様々な異常事態が発生してしまい…

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    2025年04月11日
  • ロボットの夢の都市

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    クラスメイトが読んでいて、タイトルと装幀に惹かれたという息子の言葉で、じゃあ読んでみよう!となりました。
    眺めているだけでストーリーが気になる表紙ですね。視点を変えながら進んでいく物語に、静かに興奮しました。
    宗教関連の言葉が多いので、名付けた人(ロボット)がどんな意図で付けたのかなどに思いを馳せます。
    巻末用語集は、開かずに読みました。なんとなく伝われば読みすすめられるので、個人的にはなくても大丈夫です。没入感の方が大事なタイプは、気にせずどんどんいきましょう!(笑)
    ジャッカルのアナビスとサレハのコンビも好きだけど、イライアスがその後どうしているのかも気になります。二人の絶妙な空気感という

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    2025年01月05日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    初ケイト。皆一度は未来や過去に行ってみたいと思ったことがあるはず。タイムトラベルをしたことにより、心の問題があるとは思いもしませんでした…。特に死生観の欠如など、目から鱗でした。確かに、亡くなった祖父母に会ったらきっと泣いてしまうでしょう——。その他、私たちの倫理観を大きく変えてしまう可能性のある作品です。訳も読みやすく、どんな人にもオススメできます!星四つ半。

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    2024年05月12日
  • みんなバーに帰る

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    おいおいどうしようもないな、という酔っ払いの話。
    日本でも酔っ払いはいるけど、半分はスナックとかそういう感じが多そうで、でもアメリカはガチで酒だよね。そんなに酒が好きかーってな。
    とは言えこういう店にやってくる変な人々を描写するのは古今東西あるあるなわけで、リリー・フランキーとか書いてそうじゃん、ていうかこの動物園とか奇人変人を見て楽しむみたいな趣味の悪い人にはもってこいではないか。
    最終的には主人公がダメ人間っていうか一線を越えた感がナイス。

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    2024年04月20日
  • 人類の知らない言葉

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    テレパシーで会話する異星人ロジアと
    友好的な交流をしている地球が舞台という前提。
    文化交流を担当するロジ人フィッツの
    通訳として働くリディアが主人公。

    イギリスからアメリカに来て働く彼女は
    仕事に誇りを持っているけど
    故郷の家族のことや自分の人生に悩んでもいる。
    まずは彼女とフィッツの日常を
    単純に未来SFとして楽しみました。
    思念を通訳するので「酔う」設定もユニーク。

    で、酔って寝込んでいる間に
    なんとフィッツが殺されてしまう!
    容疑者扱いされたリディアの「頭」に
    死んだはずのフィッツの声が聞こえて
    ふたりは真犯人を追いかけるのですが。

    変則バディものとしておもしろかったし
    複数の容疑

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    2024年02月13日
  • 落下世界 下

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    SF。冒険小説。
    主人公が落下しながら世界の謎を解く冒険パートと、世界中の戦争に直面した科学者のパートが同時進行。
    なぜこんな世界になったか、という謎の回答は、SF的には強引で説明不足感は強い。
    二つのパートの関係性は、上巻の時点でほぼ分かり、基本的には冒険小説として読んでいた感じ。
    冒険小説としては、舞台設定が独特なため、先の展開が読めずスリリング。
    解説によると、著者はヤングアダルト作品を何冊か書いているようで、文章も簡潔で、ストーリー展開も早く読みやすい。
    著作リストのあらすじが、どの作品もとても面白そう。翻訳希望。
    上下巻通して、エンタメ作品として十分に楽しめた。

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    2023年11月17日
  • 落下世界 上

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    SF。冒険小説。
    人々が記憶をなくした世界で、落下しながら世界の謎を解く冒険小説。
    途中に物理学者が主人公のパートが挟まれる。
    読みやすく、世界観も独特で、素直に面白かった。
    この世界観にどう説明をつけるのか?楽しみ。
    総評は下巻で。

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    2023年11月04日
  • 人類の知らない言葉

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    正直言って、途中までは物語に入り込めず、なかなか読むペースが上がらなかったのだが、ある人物と共闘関係になってから俄然面白くなり、そこからは一気読み。
    同じ地球人相手でも心の底では何を考えてるかわからない一方で、例え異星人相手であっても、腹を割って話し、言葉を尽くせばわかりあえるかもしれない。いつの時代もコミュニケーションスキルは大事だと思った。

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    2023年07月15日