シンプルに面白かった~!SFを主にしてミステリ要素もあり、ストーリー展開も楽しめた。
舞台はタイムトラベルができる1960年代のイギリス。タイムトラベルという技術を独占し、管理するコンクレーブという巨大組織は悪なのか?正義なのか?コンクレーブ内の給与体系や所得税徴収における節税方法、組織内の法
...続きを読む律など、ディテールも面白い。
主人公は主に三人。殺人事件(2018年1月)をめぐって未来からその発生を知らされたルビー(2017年)と、タイムトラベルという技術を開発した元祖タイムトラベラー(しかしそれにより精神に支障をきたした)バーバラ、殺人事件の死体の第一発見者となりコンクレーブに就職して内部情報を探ろうとするオデット(2018年1月~)の三人の女が奮闘する話。
時間旅行ができるようになることによる副作用が面白い。過去に戻れば死んだ人に何回でも会えるので死生観が狂い、死に対して何とも思わなくなる。自分の記憶もそれが今思い出している自分よりも過去に起こったことなのか未来に起こることなのか、分からなくなるのも当然だろう。また違う時代に愛人を作ったり、過去や未来の自分とセックスをするという特殊プレイまで発生するという性的倒錯も見られる。
ただタイムトラベルによっていちいち精神に支障をきたしていてはコンクレーブでは働けないため、惨たらしい教育が施され人々は感覚が麻痺していく。そうまでしてタイムトラベルしたいか…?と考えると微妙なところだが、コンクレーブに属することの特権意識も相まって辞められない気持ちも理解はできる。
「技術的にはできるけど、やらない」という選択肢を持つことは難しいのだろうか。技術を発展させるのも人間だけど、コントロールするのも人間なんだなぁと思う。