茂木健のレビュー一覧
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〈「わたしの話はここで終わります。わたしは地球に帰ってきました。ふり返ってみれば、わたしの人生に語るべきものなどありません。わたしはなにも生み出さなかったし、なにも残していないのですから。それでもわたしは、まだなにかやれるような気がしました。そこで、花を一輪だけ持ってあの砂漠に戻り、穴を掘りはじめたのです」〉
戦争の後について、ロボットが語り出すシーンが特に好きでした。戦闘用のロボットはそこで何を見たのか。色彩豊かな作り込まれた遠い未来を背景にして綴られる、美しい愛の寓話。遠く、自分のいる場所を求める少年の冒険譚としても楽しむことができました。その世界を私の拙い脳味噌が、しっかりと辿れるこ -
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『人類の知らない言葉』という題名と表紙の絵に衝撃をうけ読むことにしました。ロジ人というテレパシーでコミュニケーションをとる異星人がでてくるので当然SF小説といえるが、ロジ人が殺されて犯人探しをする推理小説要素も大きく、はでなカーチェイスがあったり題名の賢そうなイメージとはだいぶ違ったお得な小説といえます。
異星人とのファーストコンタクトその後の物語でロジ人と地球人との通訳が主人公です。未来が舞台ですがテクノロジーの進化にくらべて人類はあまり変わっていないように描かれています。ロジ人による経済的な侵略、ロジ人に対する排他的な言動、貧富の差による就学や就業の差、ネット上に拡散されるフェイクニュー -
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#日本SF読者クラブ 原題を訳すと「時間旅行の心理学」となる。1967年の英国で、4人の女性科学者によってタイムマシンが発明された。そしてタイムトラベルを管理するため、国家からも独立した組織「コンクレーヴ」が設立された。そして、ある殺人事件が起こるというSFミステリー。
この架空の歴史が背景となり、過去と現在とが交互に語られる。タイムトラベルにつきものの、タイムパラドックスについては、本書では気にしなくて良い。というか作者もスルー状態。問題になるのは、タイムトラベルが人間に及ぼす心理的、精神的な作用だ。ここに注目したのは、とてもユニークだと思う。
「コンクレーヴ」には、いわゆるタイ -
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ネタバレ1967年、イギリスでバーバラ、マーガレット、ルシール、グレースの4人の科学者がタイムマシンの実用化に成功した。その後、マーガレットを代表として3人はタイムトラベル推進協議会(通称「コンクレーヴ」)を設立したが、バーバラは短期間に時間移動を繰り返したせいで精神に異常をきたしたため、プロジェクトから外されてしまった。時は流れて2017年。タイムトラベルとは無縁の後半生を送ったバーバラとその孫ルビーの元へ、半年後の日付が記された死因審問の通知書が届く。そして2018年初頭、おもちゃ博物館のボイラー室で身元不明の銃殺死体が発見され…。「時間が可逆ならば人の死生観はどう変化するのか」という心理学的な問
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ネタバレ6人の乗員とAIのイアンの過去が明らかになっていく。自分たちの全世代のクローンを殺害した犯人捜しをするのだが、恒星間宇宙船の中の出来事なので、完全なクローズドサークルかと思う。ただそこはSFの自由度というか想像されたテクノロジーのおかげで厳密なクローズドサークルにはしてもらえない。事件の真相が徐々に明らかになっていくストーリーテリングの巧みさがあり、やはりミステリというよりはきっちりとしたSFというジャンルの中でエンタメを感じられる。一時はクローンを作成できない状況に陥ったが、解決方法が想像の斜め上で面白い。上下巻合わせてずっとドキドキしながら読み終えた。続編があっても面白そうだ。
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1957年、ニューヨーク。親から相続した絵「森のはずれにて」が贋作にすり替えられてしまった弁護士はマーティ。探偵に調べさせると贋作を描いたらしき女性の住居が分かった。コロンビア大の院生のエリー。オーストラリアから英国で絵画の修復をしていたが女性には肝心な仕事が任せてもらえず、美術史へ専攻を変えて、アメリカへとやって来て、贋作もしていた・・・1635年、オランダ。ギルドがプロの絵描きを牛耳っていた時代。自分の絵画を自由に売れなかった。サラ・デ・フォスは苦労しながら絵を描いていた・・・盗まれたサラの絵を取り戻そうとする過程で、マーティはエリーに出会い、恋してしまう・・・そして2000年。エリーはシ
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地味に見えて、
ダイナミックな展開が待っている傑作
宇宙船の中でクローンとして目覚め、他のクローンも殺された状態で目覚めた六人。記憶がなく、宇宙船のAIや機器も制御不能、クローン再生も不可能なSF要素全開の中で本格ミステリーが展開する。
海外ドラマの「LOST」で登場人物が過去を思い出す場面の様に、この本も登場人物が過去にどんなことをして今宇宙船にいるのかが描かれながら点と点がつながっていく。
誰が?どうやって?何故?
(全員記憶なし)で引っ張ってくのですが、クローンが普及した世界で起こる犯罪や思想の対立の背景も描かれてなかなか濃い。
毎回クローンやゾンビとか、冒険小説の脇役で適当に殺