茂木健のレビュー一覧

  • シスターズ・ブラザーズ
    馬と銃と殺し合いに満ちた西部劇の世界だけれど、出てくる奴らはどいつもこいつもクールなキャラからは程遠い。優しくもなければ賢くもない、人生だって全く思うように進まない。
    皆がゴールドに魅せられて画策するなか、ちょっとマヌケで善良なイーライだけが、「生き方」や「幸せ」なんていう役に立たない事に想いを巡ら...続きを読む
  • ロボットの夢の都市
    久々5つ星。SFとして秀逸且つ、宇宙時代の聖書として読んでもおもしろい。描かれている人間、ロボット、サイボーグ、バーチャル生物などなど、さまざまな由来の存在達が共存する未来社会(第四次世界大戦後だ)のあまりのリアルさに、すんなり納得してしまった(説明したらぶっ飛んでるけど、読んだら納得できるでしょう...続きを読む
  • 人類の知らない言葉
    『人類の知らない言葉』という題名と表紙の絵に衝撃をうけ読むことにしました。ロジ人というテレパシーでコミュニケーションをとる異星人がでてくるので当然SF小説といえるが、ロジ人が殺されて犯人探しをする推理小説要素も大きく、はでなカーチェイスがあったり題名の賢そうなイメージとはだいぶ違ったお得な小説といえ...続きを読む
  • シスターズ・ブラザーズ
    『みんなバーに帰る』でファンになったので、こちらも読む。硬派な文体がどんどん次を読ませる。男くさい物語ながら、どんどん引き込まれるのは何故だろう。時代の空気感や自然、乾いた土埃がありありと眼前に広がるから不思議。
  • わたしの本当の子どもたち
    結婚するかしないか、人生の選択で変わりうる人生を、並行して描く。
    結婚しなければ自分の道を進めて幸せだったかもしれないけれど、その結婚でうまれた子供達には出会えない。
    自分でも、ついつい何度も考える事なので、読んでいてせつない。
    そして、どの道筋を選んでも、人は生きて死んでいく。
    自分に置き換えて、...続きを読む
  • 時間旅行者のキャンディボックス
      #日本SF読者クラブ 原題を訳すと「時間旅行の心理学」となる。1967年の英国で、4人の女性科学者によってタイムマシンが発明された。そしてタイムトラベルを管理するため、国家からも独立した組織「コンクレーヴ」が設立された。そして、ある殺人事件が起こるというSFミステリー。

     この架空の歴史が背景...続きを読む
  • 時間旅行者のキャンディボックス
    おもしろい!
    一見視点と時間が入り混じり読みづらく思えるが、出来事の流れを追っていけばわかりやすい。
    人間ドラマとしても時間SFとしても楽しく読めて満足度が高い。
  • 時間旅行者のキャンディボックス
    1967年、イギリスでバーバラ、マーガレット、ルシール、グレースの4人の科学者がタイムマシンの実用化に成功した。その後、マーガレットを代表として3人はタイムトラベル推進協議会(通称「コンクレーヴ」)を設立したが、バーバラは短期間に時間移動を繰り返したせいで精神に異常をきたしたため、プロジェクトから外...続きを読む
  • 贋作
    美術を愛する人にもってこいの儚いお話でした。時代を往復しながらひとつの贋作巡って、関わる人間たちの後悔や愛情が紐解かれる、そのような物語でした。このような話をエモいというのでは無いでしょうか。
  • 六つの航跡 下
    6人の乗員とAIのイアンの過去が明らかになっていく。自分たちの全世代のクローンを殺害した犯人捜しをするのだが、恒星間宇宙船の中の出来事なので、完全なクローズドサークルかと思う。ただそこはSFの自由度というか想像されたテクノロジーのおかげで厳密なクローズドサークルにはしてもらえない。事件の真相が徐々に...続きを読む
  • 六つの航跡 下
    何故自分たちは殺されたのか。それを探索する乗組員たち。そして誰かが犯人なのだ。読んでいて誰が犯人かという緊張と、クローンと人間の間の葛藤が感じられる。六人の乗務員全員が訳ありの過去を持っている。クローンだったので百年以上の人生を生きてきたので、さまざまな経験とスキルを持っている。船内では各自の過去を...続きを読む
  • 六つの航跡 上
    恒星間移民船のドルミーレ号のクローン室で目覚めた乗組員達は、自分たちの死体が漂っている空間に驚いた。そしてAIにも過去のログが一切消去されていたのだ。自分たちの記憶は、ドルミーレ号出航前のレセプションの時までで、それ以降の記憶はない。マインドマップのバックアップも消去されている。いったどうしたことだ...続きを読む
  • 贋作
    1957年、ニューヨーク。親から相続した絵「森のはずれにて」が贋作にすり替えられてしまった弁護士はマーティ。探偵に調べさせると贋作を描いたらしき女性の住居が分かった。コロンビア大の院生のエリー。オーストラリアから英国で絵画の修復をしていたが女性には肝心な仕事が任せてもらえず、美術史へ専攻を変えて、ア...続きを読む
  • 六つの航跡 下
    地味に見えて、
    ダイナミックな展開が待っている傑作

    宇宙船の中でクローンとして目覚め、他のクローンも殺された状態で目覚めた六人。記憶がなく、宇宙船のAIや機器も制御不能、クローン再生も不可能なSF要素全開の中で本格ミステリーが展開する。

    海外ドラマの「LOST」で登場人物が過去を思い出す場面の様...続きを読む
  • 完璧な夏の日 上
     第二次世界大戦を戦った趙能力者たちのお話。現在と過去が交錯する。「霧」と「忘却」が、ともにいい味を出している。
  • 時間のないホテル
    「時間のないホテル」(ウィル・ワイルズ : 茂木健 訳)を読んだ。『永遠にホテルに取り込まれて生き続ける』という何とも魅惑的な申し出に(妻も息子もいなかったら)飛びついてしまうかもしれない。悪魔との剣呑な取引だとわかっていてもである。そのくらい私はホテルが好きだな。あー面白かった。
  • わたしの本当の子どもたち
    イギリスで1926年に生まれた女性の2015年までの記録なのだが、途中で「もし、あの時、xxしていたら」という分岐点があり、二つの人生が語られる。彼女の人生を通して、近代史、女性問題、環境問題などが見えてくる。読む人によって、色々なことに考えが及ぶ小説だと思う。星雲賞の候補作になっているけれど、星雲...続きを読む
  • わたしの本当の子どもたち
    男のプロポーズに対する返事が波動関数を収束させ、運命が分岐した女の人生を描いた物語。認知症により波動関数が再び発散するところや、描かれる世界史が史実通りではなく、偽史が含まれるのが面白い。また、セクシュアリティが生来固定のものではなく、人生の途中で変わっていくという描写も良かったと思う。
    それにして...続きを読む
  • わたしの本当の子どもたち
    パトリシアがマークとの不幸な結婚をした世界は平和な世界。マークと結婚しなかった世界は最愛のパートナー、ビイと出会えたが世界は混沌。核兵器が何度か使われてしまう。
    この二つの世界、最後は同じ老人ホームにパトリシアが入居するのだが、トイレの位置が変わっている。
  • みんなバーに帰る
    舞台はLAの場末のバー。
    ぶっきらぼうな文体。
    主人公の“君”。
    ウイスキー。

    面白くて一気読みした。
    乾いたLAの場末が思い浮かぶし、登場する人たちもリアル。
    肯定も否定もしないところがいい。
    ラストもいい。

    原作はもとより、訳した方もうまいと感じる。