茂木健のレビュー一覧

  • 落下世界 下

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    ネタバレ

    物語が現在と過去の両輪で軽快に進むのでスラスラと読み進むことが出来た。
    物語終盤まではスリリングな展開で不満はないがエピローグの部分はハッピーエンドながらちょっとご都合主義・・というよりも帳尻あわせが面倒になったのか?という感じがした。

    最後の場面でペニーが元気そうにしているのだが、フォーラー達と同じ島にいたのではないのか(なぜ記憶を保持しているのか、記憶を失っていたところを回収されただけなのか)や無数にある浮島からフォーラーが最初にいた島を速やかに見つけられたのか(燃料は多くないだろうからしらみつぶしにはできないハズ)はちょっと釈然としない感じもする。

    主人公らの複製が多数いることや、すべての人の記憶が無くなっていることもトリックとして良かったと思ったが、地面が無数の浮島となったことに関しては種明かしでガッカリした。
    上巻の終盤にシンギュラリティが現れる場面はSF的に良かったので期待していたのだが、下巻での暴走や浮島に関する部分はファンタジー(SFではなく)として読んでも腑に落ちない点が多く、著者が扱い切れていない感じがした。

    世界があの有様になった詳しい描写は描かれなかったし、世界の上下方向の広さについては著者の感覚がおかしい。浮遊する島のオチが無かったことで、このことが違和感として強く残ってしまった。
    自由落下は永遠に落ちることができる場合でも落下速度と空気抵抗が釣り合い一定の速度に落ち着くが、それでも時速200km前後の速度は出る。島から飛び降りるたびに書かれる"何日も落ちている"がフォーラーらの錯覚だったとしても、1時間も落ちると大気圏を余裕で抜けていくほどの高さを落ちたことになる。物語最終盤で垂直離着陸機で移動している描写があるが、落下に関する物理が元のままなら鉛直方向への移動はかなりきついはずだ。島は1Gだが、島から離れると重力が極端に弱くなる(けれど落ちているので気付かない)+ 空気抵抗を上げる服装というような設定でもないとつじつまが合わない。
    物語中で最上部にあたる最初の世界でも空気が薄い描写も紫外線が強い描写もないので、世界が縦長になり三次元的にも閉じているドーナツのような世界なのかと思っていたが、地面は存在しているようなので、地殻(というよりごく表層の土壌)だけが浮いているとなるならその下の地面はどうなっているのかや、地球や太陽系の姿はどうなっているのかという疑問も生じた。
    「シンギュラリティは新しい世界をつくることもできる(だから何でもあり)」だけでは物足りないので、そのあたりの違和感を気持ちよく丸めてくれると良かったなぁと思った。

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    2024年06月11日
  • 落下世界 上

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    ネタバレ

    主人公の"彼"が目覚める場面から物語が始まる。名前がすぐに出てこないのは記憶が曖昧だからで、読者と同じ、何もわからない状態からこの物語の世界の理解が始まる。
    周りも自分も記憶を失っているだけでも異常な状況だが、狭い範囲の土地しか残っておらず、それが空に浮いているという突拍子もない世界設定。

    物語は、節の番号が英数字で振られている現在の話のクルー/フォーラー編と、漢数字で振られている前日譚のピーター編が入れ子になって進んでいく形式を取っている。
    読み進めるごと現在と過去の双方で異常事態の理由が明かされていくような感覚で面白いのと、どちらかの編がキリが良くてももう片方は中途半端となるように作られており、次へ次へと先が読みたくなり途中で中断するのが難しい作品だった。

    表紙の絵や裏表紙の概要からも、落下しながら浮島を渡っていくファンタジー寄りの冒険譚かと思っていたのだが、予想に反して物語は終始ハードボイルド。
    序盤から凄惨な様子が描かれる。記憶を失い、物資に限りがある状況で非常に野蛮な行いが横行する。
    過去の物語も、最初こそ平和な日常だったが、中盤くらいからは様相が変わり、苛烈な現代/近未来的戦争の世界へと変貌していく。

    ピーターの話では善意が取りかえしのつかない失敗へとつながり、それを挽回しようとしてさらに悪い方へと追い込まれていくのだが、その際の心理描写も上手く「悪い予感がするのに(物語を進めるためにも)ページをめくらなければいけない」ような、胃が痛くなるような共感を何度も呼び起こした。
    これは単純に著者の腕か、心理学の心得があるからだろうか。

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    2024年05月30日
  • ロボットの夢の都市

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    ネタバレ

    花を買い、砂漠から伝説の機体を持ち帰る旧式ロボットというあらすじを聞いた時点でわくわくして読んだ。待っていたのは巻末に用語集を置くような、広大な世界の一角。物語開始時点で破滅は去ったか既に起きたかしており、主要な登場人物が不幸にならないのはよかったと思えた。
    それにしても未来が暗い。現在と何も変わらない感じがするくらいには明るくもあるのだが、未来ならではの明るさは見えない。SF要素は表面に貼りついているだけにも思えてしまい、ありていに言えば、あらすじほどにはわくわくできなかった。

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    2024年04月19日
  • 人類の知らない言葉

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    創元文庫さんのSNSを見て、面白そうだなと手に取りました。
    地球外生命体が地球に対して交渉というか対話を始めていて、その大使がいるという設定が面白いし、その通訳が語るミステリというなかなか捻ったお話。個人的には意思の疎通がはかれたのであれば機械的なインターフェースの方が実用的なのかな、なんて昨今のAIとか通訳アプリとかを見ると思いますがそれはそれ。

    ヒロインの違法ドライブテクニックの話もここで生きるのか!と思いますし、最初はぎくしゃくしていた方と最終的にバディ関係になるのも後半盛り上がるポイントですね。女優さんが結構なんか後から出番あるのかと思ってたらそれは無かったけど(笑)面白かったです。

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    2023年06月27日
  • みんなバーに帰る

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    ひたすら登場人物全員が酔って薬をキメて落ちていくお話

    多分人間どんなに落ちてもだいたい生きていける、と思わされる

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    2022年09月19日
  • 疫神記 上

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    ネタバレ

    SFとしてのアイディアは良い、ただ、いかんせん、長い。いや、長くても無駄が無けりゃいいんだが、せっかくの長さを活かせてないというか…この小説書くためにリサーチしたことを全部詰め込んだ的な、冗長に感じる部分も無きにしもあらず。なので、ページターナーとまではいかなかった。

    SFとしては、アイディアを中心に、細部の木ではなく、森を俯瞰的に描くような短編でも良かったんでは、と感じましたわ。

    それと、群像劇でもあるのだが、今ひとつ共感できるキャラクターがいなかったのも残念。

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    2022年09月04日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    類書ではお約束のタイムパラドックスなどをあまり気にすることなく(自身がいる場に過去未来の何人もの自分が同席するのがごく当たり前⁈)殺人事件の謎解きを縦軸にしつつ、むしろタイムトラベラーたちが陥いる(であろう)精神的危機の考察を主眼としたSFらしい実験小説。登場人物たちがあちらこちらの時代と舞台に入れ替わり立ち替わりするので正直読むのが疲れるけれど。

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    2021年12月28日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    タイムマシン・ワープは出現する場所に異物があったらと心配だがコンクレーブのやり方は安心
    タイムトラベラーが真っ当な感覚を失っていく様は不気味
    時間物らしい異質なミステリーだが神明裁判が意味不明

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    2021年08月12日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    ネタバレ

    タイムトラベルが可能な世界で起きた殺人事件を追うミステリ。解説に「主人公3人はタイムトラベラーではない」とあるのを読んでなるほどと思った。タイムトラベルがなくても事件は解決してたのかもと考えると興味深い(事件自体は時間の移動が可能という設定が必要。やっぱり証拠集めにはタイムトラベル必要かな)。主要な登場人物はほとんど女性。その人生や人間関係が時間的にザッピングされて、視点の定まらない不思議な感覚を持ちながら読みました。

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    2021年02月26日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    読み始めてから読み終えるまで大分時間がかかりましたが、面白かったです。ただ、ちょこちょこ読んでは止めていたので、この人誰だったっけ?という疑問はしばしば出てきましたが…

    タイムトラベルを続けることによる心理的精神的変化ってのは面白いなぁ。死に対する価値観の変化、か。喪失感は薄れるっていうのはあるのかもしれない。とはいえ、複数の自分が存在したり、同じ場所に何度も訪れるタイムパラドックスはどうなってるんだろう。
    過去は変えられないし未来も変えられない、というよりは、結局どうあってもそういう過程を踏む時間になるのだ、というような考え方は面白かったです。

    内輪の仲間意識を強化するために軽犯罪に手を染める…みたいな子供っぽいところとか、一般市民に死を宣告するとか、正直今の時代だったら企業コンプライアンスがどうなってるんだ?とか叩かれそう。SNSとかが発達してない時代に的を絞って悪ふざけしてたのかなぁ?

    中々切り口が斬新で面白かったです。

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    2020年11月27日
  • 時間旅行者のキャンディボックス

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    独立組織【コンクレーヴ】によりタイムトラベラーが職業化された世界で起きた不可解な殺人事件。真相を探るべく組織に潜入したオデットはタイムトラベルが引き起こす心的変化を目の当たりにする―。タイムパラドックスSFかと思いきや、実は変わり種の心理ミステリー。設定自体は割と粗々しいが、デビュー作とは思えぬ精緻なプロットが秀逸。登場人物の殆どが女性で同性愛をも絡むので、著者のジェンダー観が前面に出ている作風。巻末にはタイムトラベラー適正テストが約40頁に渡り収録されているが、答え合わせは未掲載。狂気の遊び心である…。

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    2020年09月20日
  • みんなバーに帰る

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    思ったよりお下劣だったわ。読んでて意外に引いてる自分がいた。酩酊してドラッグやってたら、あんまり何とも感じないのかな。この感覚って、自分の赤子のうんこなどは臭いけど、別に汚いとか何とも思わないのはやっぱり愛があるからで。
    酩酊と愛情は似てる雰囲気を持っているが全く違う訳でして。


    バーテンダーはモテると言うより「入れ食い状態」らしい。酒によって緩んだ自制心と、永年培った信頼関係は違うのにねえ。
    やっぱその辺の線引きが日頃からしっかりしてないとな。
    ちょっと変わってるタイプの本だな。

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    2019年02月10日
  • 六つの航跡 上

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    クローンとして目覚めたマリアが見たのは自分を含めた4人の死体。もう一人は自殺、もう一人は瀕死の重傷。何が起こったのか?

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    2019年01月23日
  • パンドラの少女 下

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    可もなく不可もなく。
    ゾンビ物は原因不明で解決しないものが多いけど、これは感染の原因は分かってるし一応ラストで決着もついたから不完全燃焼感はないと思う。
    キャラ設定もはっきりしてて人物像がわかりやすい。
    後半ノーマルゾンビほぼ出てこないしジャンカーズも来るかと思いきや来ないし敵に襲われてピンチ!的な場面は少なめ。

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    2017年10月05日
  • パンドラの少女 上

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    映画化前提で書かれただけあって、掴みがいい。でも中盤〜後半はゾンビから逃げてるだけでどんどんダレてくる。下巻に期待。

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    2017年07月07日
  • 完璧な夏の日 下

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    だんだん物語が見えてきて読みやすくなったが、これどうやっても主人公以外に感情移入してしまう。しかしラスト、一気にSFになったな…

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    2017年05月11日
  • 完璧な夏の日 下

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    下巻は終戦後から現代にかけての話。
    世界大戦が終わって歴史上の舞台から超人が姿を消しても、彼らの人生が終わったわけではなく、彼らは老いることもなく日々がひたすら続いていくというのは辛い。
    オブリヴィオンはフォッグをどのような気持ちで夏の日へと送りだしたのだろうか。
    BLのような視点でも読んでしまった。
    結局、夏の日とはなんだったのだろうか?

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    2017年02月20日
  • 完璧な夏の日 下

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    SF要素がそんなになかったね。。。超人物語じゃないか。。。それにヒロイン全然役に立ってない。。。おまけ叙述手法も飛びすぎて話が見えなくなる。。。

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    2017年02月06日
  • 完璧な夏の日 上

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    第二次世界大戦前後で活躍する特殊能力を持った超人の話。超人たちの回顧録で話は進む。上巻では超人のフォッグがクララ(超人を産み出した博士の娘、恐らく超人)との出会いまでが描かれる。この先、どうなるかは予測がつかないが、面白くなりそうな予感はある。引き続き下巻を読む予定。

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    2016年06月12日
  • 完璧な夏の日 上

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    クララが出てきてから一気に物語が動き出した感。
    邦題が詩的でいい。The violent century のままだったら手にとって無かったと思う。

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    2016年05月26日