無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
もしあのとき、別の選択をしていたら? パトリシアの人生は、若き日の決断を境にふたつに分岐した。並行して語られるふたつの世界で、彼女はまったく異なる道を歩んでゆく。歴史の歩みも違うそれぞれの世界で出逢う、まったく別の喜び、悲しみ、そして彼女の子どもたち。老境に至り人生をふり返る彼女は、ふたとおりの記憶の狭間で、自分に問いかける――はたして、どちらが“真実”なのだろうか? 『図書室の魔法』と《ファージング》三部作の著者が贈る、感動の幻想小説。全米図書館協会RUSA賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞受賞作。/解説=渡邊利道
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
パラレルワールドもの。最初の章で認知症の老婦人の日常が語られて此処が並列世界の終点であることを匂わせる。
そこから過去に遡り同一人物の二つの人生が平行して語られていく。どちらかが劇的な人生と言うわけでもないのだが、明らかに世界観は異なる。
パットが生きる世界では限定的に核戦争が有り各地で死の灰が降る。それがパットの人生に大きく影響する。
一方トリッシュの生きる世界では横暴な夫のもと、不幸せな結婚生活を送り5人を死産し4人を育て上げる。その代わり世界は比較的平和である。
主人公であるパトリシア(パット、またはトリッシュ)の認知症が進み施設に入ったその時、二つの人生は混濁した意識の中で融合し始める。
3人の子供がいたり4人の子供がいたりするパトリシアの記憶を医者達は認知症で片付けようとするが、パトリシアは二つの人生がどちらもリアルに感じられる。
物語は劇的なオチも無しに唐突に終わる。ストーリーにSFらしさは全く無い、ただ物語の切り口がSFなのだ。これだけ読ませるのだから筆力も有る。
こんなSFってあるんだと感心することしきり。オススメです。
Posted by ブクログ
一気読み。ジャンルとしては、歴史改変ものとか幻想ものに入るんだろうけど、そうと意識させないジョー・ウォルトン独特の雰囲気がある。「図書室の魔法」のモリと同様、ここでもパトリシアに肩入れしながら読まずにいられない。
ある決断を境に、パトリシアの人生は二つに分岐する。二つの世界で彼女自身の人生は大きく異なるが、世界のありようもまたかなり違っている。それは私たちの「現実」と重なる所もあり、違うところもあり、そこに見え隠れする痛烈な文明批判も読みどころの一つだろう。
しかし、何と言っても読ませるのが、二人のパトリシアの歩みだ。どちらの世界でも、彼女は必死に生きる。過ちを犯したり、悩んだりしながら、子どもを育て、身近な人の幸福や不運、成長や死を経験し、大きな動き(特に戦争)に翻弄されつつ、ままならない人生を生きていく。それは決して特別なものではないが、彼女自身にとってはのっぴきならない、たった一度の人生だ。その感慨が胸に迫ってくる描き方だ。
二つに分岐していたパトリシアの人生は、ある残酷な形で重なり合うことになる。これは冒頭で暗示されているので、そういうことになるのだろうと思いながら読み進めてはいたものの、実に切なく、つらい。確かにあったはずの人生が、夢まぼろしのようにかすんでいくのを感じるとき、どういう思いが胸に去来するものなのか。想像すると苦しくなる。
解説で、本書は、個人の選択と世界の運命の関係についての物語でもあるという意味のことが書かれていたが、私はそれは深読みに過ぎるような気がした。バタフライ効果についての言及もあるが、それは物語の骨格となるものではないと思う。そういうことも含め、複雑な感慨を抱かせる、優れた一冊だと思う。
Posted by ブクログ
パトリシアという女性の一生を描いた物語。ただし2人分。
パットとトリッシュで分けられた彼女の人生は、世界ごと全く違う道を歩んでいく。
ひとつの名前に愛称が複数ある海外の名前の特徴をうまく使っていておもしろい。やはり名前は人生を決定するほどの力を持つのだ…。
と思っていたが、どちらにしてもパトリシアはパトリシアだった。それは本人もそう言っていたし、最終的に2つの人生が彼女ひとりに収束していったことからもそうなのだろう。薔薇という花はその名前でなくても同じ香りがするのだから。
パトリシアはどちらの人生においても意志が強く、活動的で、聡明な女性である。確かにパットの方が一見幸せに見えるけれど、トリッシュも幸せには違いなかったと思う。どちらの人生が彼女にとって良かったのか、読み終わって未だに答えが出せない。
パットとトリッシュと共に人生を追いかけていくうちに、彼女たちの子ども全員がかわいく思えてきてしまう。どちらかを選んでどちらかに会えなくなってしまうのは悲しい。いずれにしろパトリシアの子どもは音楽の才能を開花させるのが興味深いところ。
そんな風に考えながら読んでいたのだが、解説を読むと全く違った視点での考察があり非常に勉強になった。こういう、自分に足りない視点や知識で物語を読み解けるのも翻訳本の良いところだ。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。