あらすじ
太陽系を巻き込んだ大戦争から数百年。宇宙への脱出を夢見て時間膨張爆弾の殻の買い手を探しているジャンク掘りの少年、それ自体がひとつの街のような移動隊商宿で旅をつづける少年、そして砂漠の巨大都市の片隅で古びた見慣れぬロボットと出会った女性。彼らの運命がひとつにより合わさるとき、かつて一夜にしてひとつの都市を滅ぼしたことのある戦闘ロボットが、長い眠りから目覚めて……。世界幻想文学大賞作家が贈る、どこか懐かしい未来の、ふしぎなSF物語。/解説=渡邊利道
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Posted by ブクログ
〈「わたしの話はここで終わります。わたしは地球に帰ってきました。ふり返ってみれば、わたしの人生に語るべきものなどありません。わたしはなにも生み出さなかったし、なにも残していないのですから。それでもわたしは、まだなにかやれるような気がしました。そこで、花を一輪だけ持ってあの砂漠に戻り、穴を掘りはじめたのです」〉
戦争の後について、ロボットが語り出すシーンが特に好きでした。戦闘用のロボットはそこで何を見たのか。色彩豊かな作り込まれた遠い未来を背景にして綴られる、美しい愛の寓話。遠く、自分のいる場所を求める少年の冒険譚としても楽しむことができました。その世界を私の拙い脳味噌が、しっかりと辿れることができるのか分からないのですが、読み終わった時、愛と想像力をもっと素直に信じてみたくなるような余韻がありました。短い物語ですが、充足感のある物語でした。
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SF仕立てのファンタジー。
イスラエルの作品だけあって、砂漠が舞台であり中東の紛争が垣間見える。さまざまな登場人物(人間だけでなくロボットもいる)たちが終局に向かって収斂していく様に読み応えがある。自爆兵器や大量破壊兵器が登場人物だったりするのに、なぜかホンワリしたストーリーになっていて微笑ましい。
Posted by ブクログ
久々5つ星。SFとして秀逸且つ、宇宙時代の聖書として読んでもおもしろい。描かれている人間、ロボット、サイボーグ、バーチャル生物などなど、さまざまな由来の存在達が共存する未来社会(第四次世界大戦後だ)のあまりのリアルさに、すんなり納得してしまった(説明したらぶっ飛んでるけど、読んだら納得できるでしょう)。意思を持った(持たされた?)「生命体」たるロボットが、存在する未来に起こり得る予言の書とも言えるかもしれない。イスラエルにルーツを持つ作家さんがこれを書いたというのもなんだか震えるものがある。おすすめ。
Posted by ブクログ
クラスメイトが読んでいて、タイトルと装幀に惹かれたという息子の言葉で、じゃあ読んでみよう!となりました。
眺めているだけでストーリーが気になる表紙ですね。視点を変えながら進んでいく物語に、静かに興奮しました。
宗教関連の言葉が多いので、名付けた人(ロボット)がどんな意図で付けたのかなどに思いを馳せます。
巻末用語集は、開かずに読みました。なんとなく伝われば読みすすめられるので、個人的にはなくても大丈夫です。没入感の方が大事なタイプは、気にせずどんどんいきましょう!(笑)
ジャッカルのアナビスとサレハのコンビも好きだけど、イライアスがその後どうしているのかも気になります。二人の絶妙な空気感というか距離感が好きでした。
Posted by ブクログ
すごく好きな世界観、ちょっとくたびれたロボットが古い町を舞台にの物語を紡ぐ。
途中までとても面白く良かったんだが・・・
ラストはあまり好みではなかった。
Posted by ブクログ
本の雑誌2024年上半期のSF・1位に選ばれていた本。
未来のエジプトとサウジを舞台にしていて、野生のドローン、埋め込まれた機器によって火星産の連続ドラマを観るジャッカル(しかも喋る)、詩人ロボットのバショウ、たまごっちまで出てきます。
続編ではないけれどシリーズに属しているので、すでに世界が出来上がっています。巻末の関連用語集を見ながら読みながら新しいSFの世界の設定に入っていくのが面白かったです。
ロボットに心があって愛や宗教観があったり、人間も体を変えながら生きて行けたり、忘れたい記憶を捨てられたり…。現代では考えられないけれど何百年も後にはあり得るのかも知れません。このようなSFって読んだ後も可能か不可能か想像して楽しめるのがいいですね。
Posted by ブクログ
世界観はとてもとても魅力的だったんですが、話の内容が普段それほどSFを読んでない自分からするとちょっととっつきづらかった印象。なんていうか、すでに完成された世界観でのまた別のお話という感じ。と思って解説を読んだら実際にこの世界観での別のお話もあるようで。一つのラヴィ・ティドハー サーガ、みたいな感じ。機会があれば読んでみたいです。