佐藤雅美のレビュー一覧

  • 覚悟の人 小栗上野介忠順伝

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    小栗上野介忠順の伝記。日記等の資料を引き精緻に描いているためにすらすらとは読めないが、小栗の有能な幕臣の仕事振りが伝わってくる。幕末維新の動きを、幕臣の眼で追うことができて面白かった。特に横浜開港時の墨銀と一分銀の交換比率の歪みの仕組みは、本書の説明でやっと理解できた。ハリスや徳川慶喜について辛口な評価で描いているが、なるほどと思った。

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    2023年03月31日
  • 物書同心居眠り紋蔵(一)

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    「例繰方」なる役職の妙。

    昔からず~っと読んでいます。著者は、これ以外では人物伝など結構硬派な作品が多いですが、この作品は日溜まりの縁側の様なぽかぽかとした、尚且つ人の世の厳しさや難しさをサラリと描く、素晴らしい時代小説です。

    最近は、「エラく腕の立つ剣客」や「○○屋に身を窶しながらも、世の悪を暴く」と言った類よりも、多少の緊張感は持たせつつも、のほほんとした温かい人情系や「日常の謎」を解き明かす様な穏やかな時代小説が主流に成ってきましたが、その源流に当たるのが本作なのではと常々思っています。

    「ナルコレプシー」と云う現代でも厄介な病の上、とても「実入りの良い八丁堀」とは言えない、有る意味気の毒さも感じる主

    #ドキドキハラハラ #切ない #ほのぼの

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    2022年12月15日
  • 覚悟の人 小栗上野介忠順伝

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    漫画「天涯の武士」の主人公。開国から始まった米英との交渉について。小栗、大隈、高橋と続く。
    アメリカとの不平等な為替の改善交渉やロシアの対馬租借危機の交渉の実績から、小栗はアメリカとアメリカ人をまるで信用していなかった。口では偉そうなことをいうが正体は追剥同然の破落戸。小栗はイギリスをそんな国だと確信した。オランダは一時期は隆盛だったがいまはただの一小国。ロシアは狐狼の国。
    今も昔も本質は変わらない。海洋国と大陸国の地政学的関係は変わらず、米英とは上手くやっていかざるを得ない日本の立ち位置は変わらない。

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    2022年11月27日
  • 隼小僧異聞 物書同心居眠り紋蔵(二)

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     積善の家 「思えば、役所に勤めはじめてからの三十年。一つとして碌なことがなかった。捨吉はつきというが、なに積善の家の余慶が、まとめて訪れてきただけなのだ。」

     積善の家 (易経の言葉
     善行を積み重ねた家には、その報いとして、必ず幸せが訪れる。)

     この言葉がとても心に響く。 

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    2019年11月27日
  • へこたれない人 物書同心居眠り紋蔵(十二)

    匿名

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     音羽者の知恵
     稲の旦那様である鉄三郎が亡くなる。これは紋蔵一家の全編を通して綴られる通奏低音のようなストーリーの大きな動きである。紋蔵一家の物語である。それと別に各物語は紋蔵一家の話と絡まって綴られる。音羽の岡場所が取り潰されることに対して、大竹金吾の機転で矛先を避けることができた。

     へこたれない人
     紋蔵の南の同僚の山本庄蔵の物語、山本庄蔵はこの巻では何回か重要な場面で出てくる。新しいキャラクターの登場人物を丹念に描いている。

     夢見る夢乃助
     文吉(剣持忠三郎)と夢乃助の出会いの巻。夢乃助と夢乃助に関する出来事に紋蔵が関わる。出来過ぎの話であるが、痛快である。捨吉が

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    2019年11月27日
  • ちよの負けん気、実の父親 物書同心居眠り紋蔵(十一)

    匿名

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     佐藤雅美の作品には多くの魅力的な人物が描き出されているが、「みわ」もその中の一人である。その出生、母親との関わり方、まわりを取り囲む人々、そして何よりその三味線の腕前が魅力的なのである。話の展開が出来過ぎているところもあるが、私的にはツボにはまってハラハラし、泣けて、最終的にはハッピーエンドに心を洗われる思いがする。
     話の中では「孰か微生高を直なりと謂うや」がとても面白かった。孔子の言葉を元に、紋蔵が金吾に講釈を述べるくだりが興味深い。孔子の言葉もこのように具体的な話を付け加えて説明されると納得がいく。みわの実の母親「かよ」も上品に描かれていてその親子が最後はうまくよりを戻すことができて

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    2019年11月27日
  • 魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵(十)

    匿名

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    「十四の俠客岩吉の本音」
    岩吉は定次との決闘がなくなったことにほっとしたようだ。
    「独断と偏見と冷汗三斗」
    紋蔵の情よりも、今回は上役の方が一枚上手であった。そして安覚さんの方が筋が通っており、情にも通じていた。正論の方が強いこともある。
    「親殺し自訴、灰色の決着」
    物事は、真実は解明されなくても、誰もが死罪にならない方法をとるのが一番であろう。
    「御三家付家老五家の悲願」
    犬山の成瀬家が江戸時代に家老扱いであったとは始めて知った。とても興味深い内容であった。
    「魔物が棲む町」
    お寺の住職が門前町の町人から女をあてがわれて、地代に関する訴えを取り下げるところは生々しかった。魔

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    2019年11月27日
  • わけあり師匠事の顛末 物書同心居眠り紋蔵(十三)

    匿名

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    密通女の思う壺
     きよの事件に青野又五郎が少し出てきて、それがこの巻の大きな話の伏線になっている。

    家督を捨てる女の決意

    真綿でくるんだ芋がくる
    正直者の道具屋親子の話。こころがあたたまる。

    にっと笑った女の生首
    本格的な捕物話

    御奉行に発止と女が礫を投げた

    牢で生まれ牢で育った七つの娘
    作者は毎作ごとに新しい登場人物を作り上げているが今回はこの「はな」という娘がそうである。とても印象的に描かれている。余慶という言葉が良い。

    霊験あらたか若狭稲荷効能の絡繰
    江戸時代の先物取引の話が出ていて、よく調べられていて、とても面白い。少し、話が出来過ぎのとこ

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    2019年11月27日
  • 密約 物書同心居眠り紋蔵(三)

    匿名

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     ひょんなことから父の死の手がかりを掴んだ紋蔵が細い糸を辿って父の死の真相を暴いていく作品である。
     居眠り紋蔵のシリーズでもいちばん油の乗り切った時期の作品であり、書下ろしで父の死の真相をしっかり描いている。

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    2019年11月27日
  • 縮尻鏡三郎 首を斬られにきたの御番所

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    久々にヒットの予感。縮尻鏡三郎と呼ばれる御家人は、、評定所留役としてエリートコースを邁進していた。幕閣内の政争に巻き込まれて失脚も、上役の世話で現在は大番屋の元締め。江戸に暮らす人々の萬相談事が持ち込まれる。
    次から次へと持ち込まれる相談.噂に聞く事件などが絡んでひと騒動。

    当時の実際にあった事件も絡めて、実にリアルな人間像が出来上がっている。

    残念なのがこれがシリーズ一作でないこと。
    第二弾。

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    2019年06月21日
  • 十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯

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    小説としてのエンターテイメントを求めるのであれば少し退屈かも知れませんが、専門書顔負けの情報量をベースとした本格的な歴史小説。
    歴史愛好家であれば絶対に読む価値があると思います。

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    2017年12月03日
  • 十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯

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    幕末の官僚制

    サブタイトルは正確ではなく、家斉の生涯と言うより、家斉の時代を支えた老中等の官僚たちの実態を描く。
    田沼意次、松平定信、水野忠成、水野忠邦が骨格で、彼らにまつわる人々な事件を描いて、
    当時の幕府の政治の実態を浮かび上がらせる。
    特に賄賂政治の権化のような水野忠成の、全く知らない一面が分かって、とても面白い作品です。

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    2017年05月12日
  • 魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵(十)

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    ミステリーの伏線とオチが綺麗に結びつかないことがあったり、「えっ」というような意外な終わり方をすることが多いのが面白い。
    ところでこの「居眠り紋蔵」シリーズ、そろそろドラマ化しないものでしょうか?

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    2015年03月19日
  • 千世と与一郎の関ヶ原

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    本作の与一郎のような、大名家の嫡子ともなれば「何処までも公人」という存在であることを求められたかもしれない。「公人」として「公人」たる妻―他の有力な大名家の娘―を娶った筈だったが…二人は互いに「私人」として、仲睦まじい夫婦となって行ったことで、“波紋”が起こってしまう…色々と「読みどころ」の多い作品で愉しかった…

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    2014年04月19日
  • 魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵(十)

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    毎回期待以上に楽しませて頂いています。今回も脇役が魅力的でした。もちろん、一編一編のエピソード自体も。

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    2013年04月10日
  • 縮尻鏡三郎 老いらくの恋

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    相変わらず外れ無しの面白さ。欲得に左右される様々な人間像の中に情と矜恃がさらりと描写され、輝いて見える。もちろんほおっと毎回唸ってしまう該博な時代描写、エピソードも。

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    2013年01月08日
  • 一心斎不覚の筆禍 物書同心居眠り紋蔵(九)

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    今回もトトーンと読んでしまった。主人公家族の状況が一変しているので一冊くらい飛ばしてしまったかもしれないが、それも関係なく楽しませてくれます。
    人の執念というか煩悩が、まったく関係無いと思われる事件を意外な形で結びついて収束します。毎回唸ってしまうのです。
    著者の時代の知識と盛り込み方が、実際にこの時代の耳袋的な資料から拾っておるのではないかというリアリティを持たせるのです。しかも著者特有のちょっと突き放したような筆致が、ドロドロになりそうな事件を軽妙に読ませているのですね。
    今回、江戸時代の出版事情に興味有る方はより一層面白く読めるかも知れません。

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    2011年09月06日
  • 縮尻鏡三郎 当たるも八卦の墨色占い

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    最所の一編を読んだらもう勢いついて最後迄読んでしまった。今回もイロイロな情報がてんこ盛り。
    その中で人の欲や矜持が語られるのだけど、アッサリとした落とし方なので余計身に染みる。(「解説」にあるとおりです。)
    最後はユーモラスなままで終わるかと思ったが、運命の皮肉なこと。うーん。

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    2011年05月20日
  • 縮尻鏡三郎 捨てる神より拾う鬼

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    相変わらずの面白さ。その面白さについては本書の細谷正充さんの解説で言い尽くされているような気がする。
    主人公は基本的に傍観者であるので、胸のすくような爽快感は期待しては駄目で著者の該博な知識に裏打ちされた物語にうなっていれば良い。実際に庶民の間で起きた出来事を主人公の耳を通して見聞している気分になる。しかも、抑えた文章でありながら登場人物の哀歓が伝わってくる。

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    2010年10月17日
  • 物書同心居眠り紋蔵(一)

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    僕は、このシリーズは、初めて読んだ。て言うか、佐藤雅美さんの作品そのものを、初めて読んだ、と思うけど、拾い物をした、と思う。この作品では、派手な殺陣もなく、スリリングな謎解きもないけれど、何か、心引かれるものがある。この後、まだ、何冊か読めるので、楽しみだ。

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    2025年09月19日