佐藤雅美のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
「例繰方」なる役職の妙。
昔からず~っと読んでいます。著者は、これ以外では人物伝など結構硬派な作品が多いですが、この作品は日溜まりの縁側の様なぽかぽかとした、尚且つ人の世の厳しさや難しさをサラリと描く、素晴らしい時代小説です。
最近は、「エラく腕の立つ剣客」や「○○屋に身を窶しながらも、世の悪を暴く」と言った類よりも、多少の緊張感は持たせつつも、のほほんとした温かい人情系や「日常の謎」を解き明かす様な穏やかな時代小説が主流に成ってきましたが、その源流に当たるのが本作なのではと常々思っています。
「ナルコレプシー」と云う現代でも厄介な病の上、とても「実入りの良い八丁堀」とは言えない、有る意味気の毒さも感じる主 -
匿名
ネタバレ 購入済み音羽者の知恵
稲の旦那様である鉄三郎が亡くなる。これは紋蔵一家の全編を通して綴られる通奏低音のようなストーリーの大きな動きである。紋蔵一家の物語である。それと別に各物語は紋蔵一家の話と絡まって綴られる。音羽の岡場所が取り潰されることに対して、大竹金吾の機転で矛先を避けることができた。
へこたれない人
紋蔵の南の同僚の山本庄蔵の物語、山本庄蔵はこの巻では何回か重要な場面で出てくる。新しいキャラクターの登場人物を丹念に描いている。
夢見る夢乃助
文吉(剣持忠三郎)と夢乃助の出会いの巻。夢乃助と夢乃助に関する出来事に紋蔵が関わる。出来過ぎの話であるが、痛快である。捨吉が -
匿名
ネタバレ 購入済み佐藤雅美の作品には多くの魅力的な人物が描き出されているが、「みわ」もその中の一人である。その出生、母親との関わり方、まわりを取り囲む人々、そして何よりその三味線の腕前が魅力的なのである。話の展開が出来過ぎているところもあるが、私的にはツボにはまってハラハラし、泣けて、最終的にはハッピーエンドに心を洗われる思いがする。
話の中では「孰か微生高を直なりと謂うや」がとても面白かった。孔子の言葉を元に、紋蔵が金吾に講釈を述べるくだりが興味深い。孔子の言葉もこのように具体的な話を付け加えて説明されると納得がいく。みわの実の母親「かよ」も上品に描かれていてその親子が最後はうまくよりを戻すことができて -
匿名
ネタバレ 購入済み「十四の俠客岩吉の本音」
岩吉は定次との決闘がなくなったことにほっとしたようだ。
「独断と偏見と冷汗三斗」
紋蔵の情よりも、今回は上役の方が一枚上手であった。そして安覚さんの方が筋が通っており、情にも通じていた。正論の方が強いこともある。
「親殺し自訴、灰色の決着」
物事は、真実は解明されなくても、誰もが死罪にならない方法をとるのが一番であろう。
「御三家付家老五家の悲願」
犬山の成瀬家が江戸時代に家老扱いであったとは始めて知った。とても興味深い内容であった。
「魔物が棲む町」
お寺の住職が門前町の町人から女をあてがわれて、地代に関する訴えを取り下げるところは生々しかった。魔 -
匿名
ネタバレ 購入済み密通女の思う壺
きよの事件に青野又五郎が少し出てきて、それがこの巻の大きな話の伏線になっている。
家督を捨てる女の決意
真綿でくるんだ芋がくる
正直者の道具屋親子の話。こころがあたたまる。
にっと笑った女の生首
本格的な捕物話
御奉行に発止と女が礫を投げた
牢で生まれ牢で育った七つの娘
作者は毎作ごとに新しい登場人物を作り上げているが今回はこの「はな」という娘がそうである。とても印象的に描かれている。余慶という言葉が良い。
霊験あらたか若狭稲荷効能の絡繰
江戸時代の先物取引の話が出ていて、よく調べられていて、とても面白い。少し、話が出来過ぎのとこ -
購入済み
幕末の官僚制
サブタイトルは正確ではなく、家斉の生涯と言うより、家斉の時代を支えた老中等の官僚たちの実態を描く。
田沼意次、松平定信、水野忠成、水野忠邦が骨格で、彼らにまつわる人々な事件を描いて、
当時の幕府の政治の実態を浮かび上がらせる。
特に賄賂政治の権化のような水野忠成の、全く知らない一面が分かって、とても面白い作品です。 -
Posted by ブクログ
今回もトトーンと読んでしまった。主人公家族の状況が一変しているので一冊くらい飛ばしてしまったかもしれないが、それも関係なく楽しませてくれます。
人の執念というか煩悩が、まったく関係無いと思われる事件を意外な形で結びついて収束します。毎回唸ってしまうのです。
著者の時代の知識と盛り込み方が、実際にこの時代の耳袋的な資料から拾っておるのではないかというリアリティを持たせるのです。しかも著者特有のちょっと突き放したような筆致が、ドロドロになりそうな事件を軽妙に読ませているのですね。
今回、江戸時代の出版事情に興味有る方はより一層面白く読めるかも知れません。