佐藤雅美のレビュー一覧
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現代日本社会にとって重要な時代の積み重ねである江戸時代をつまらないものであったというレッテル張りはJHQの仕業であるというのはバレバレであるが(笑)、江戸時代とは面白い時代であった。
士農工商の厳しい身分制社会であったはずなのに、素浪人の子どもが学問の力だけで将軍のアドバイザーになれた。
自分の知や学問を求めて、武士や商人が師を探し、旅を続ける。
江戸時代の社会は、とってもダイナミックな社会であったのだ。
一番最初のGHQの話に戻るが、未だに洗脳されている方々も居られるように感じる場合があるが、「江戸学」なるもののさらなる隆盛を望むものである。
徂徠を中心に、綱吉、吉保、家重、吉宗、仁斎、白石 -
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ネタバレ目次
・油屋の若女将
・お人よしの頓馬
・大野山本遠寺の出入
・伊勢古市からの便り
・情けは人の為ならず
・安五郎の大名行列
・春のそよ風
・神明前のお助け医者
啓順シリーズの最終巻。
のはずなのに、最後の最後まで啓順がどうなるかが見えてこなかった。
の割には、急転直下で納得の大団円。
上手いなあ。
今作は連作短編というよりも、長編のように各話がそのまま続いている。
啓順も医者というよりは、流れ者のごろつきの親分のような役割を求められている。
今までの作品とは少し毛色が変わった感じ。
だけど相変わらず厄介ごとに巻き込まれ、断ることが出来ずに流されていく。
それが啓順の命を救うこともあり、 -
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ネタバレ目次
・立場茶屋の女
・牢番の正体
・頼朝街道
・下田の旅芸人
・波浮の湊
・伊三郎の声
・江戸の一日
・消えた証拠人
凶状持ちとして、人目を忍ぶ旅を続ける啓順。
覚えのない殺人の下手人にされてしまったのには、わけがある。
しかし、なぜ。
無宿の渡世人と言えば木枯らし紋次郎。
「あっしには関わりのないことでござんす」←古い?
啓順もできれば誰にも関わらず、ひっそりと身を隠していたいのだが、なぜか啓順のいくところ、病人やけが人が出てしまうのである。
啓順はかつて、江戸で有名な町医者の内弟子だった。
素人離れした薬の調合からいつも居場所が追っ手にばれてしまい、間一髪で切り抜ける。
そんな短編 -
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紋蔵は所構わずわずかな時間が空くと居眠りをしてしまうと言う奇病を持った中年男。その為、内勤の例繰り方(書記?)に配属され30年。この手のいわば窓際族を主人公にする作品は時々見ますが、紋蔵のキャラクターは一味違います。普通、ちょっと斜めに構えていたり、内・外で違う顔を見せる事が多いのですが、紋蔵はそういった境涯にもかかわらず正面を向いて、堂々としています。剣もそこそこ使え、抜刀シーンはありませんが、迫力で相手を追い切ったりします。なかなか良いキャラクターです。
回りの人物も良く描けています。佐藤雅美さんは3冊目。これまで2編は長編で、どちらかと言うとやや重苦しい印象が強かったのですが、この作品 -
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以前から古本屋で見つけて居たのですが「捕物控」という名前が気になって(ミステリーは読まないようにしているので)。ついに佐藤雅美の名前に負けて購入しました。
やっぱり良いですね。確かに捕り物帳なのですがしっかりした出来です。特に「引合を抜く」と呼ばれる制度、これが岡引の主な収入源になっているのですが、そこらがキッチリ書き込まれ、又それが事件の発端になっているところなど、安出来な捕り物帳とは一線を画します。
結末も佐藤さんらしいというか、なんとも言えない終わり方です(これは異論も多いと思いますが、私は肯定派です)。
そういえば、途中で別シリーズの主人公・桑山十兵衛の名前が出てきたのは面白かっ -
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・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
・歩行新宿 旅籠屋(ほこうしんじゅく たびかごや)
・逃げる文吉
・黒川静右衛門の報復
・韓信の胯くぐり
・どうして九両(くれよう)三分二朱
・旗本向井帯刀の発心
武士の、家で役職を代々受け継いでいくということの厳しさ苦しさというのをここまで深く実感させられたことはない。自分の職場の上司も同僚も後輩もみんな親から引き継いだ仕事なのだ。親の後輩から仕事を教えられ、自分の同僚の子を後輩に持ち、上司の子がまた自分と自分の子の上司になりるのだ。とてもとても恐ろしいほどに狭い世界で生きている。
自分の跡取り息子を与力から養子にと言われれば断れず、子 -
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物書同心居眠り紋蔵の第一巻
お奉行さま
不思議な手紙
出雲の神さま
泣かねえ紋蔵
女敵持ち
浮気の後始末
浜爺の水茶屋
おもかげ
第一巻だというのに、登場人物の説明や生い立ちらしいものがなく、他の紋蔵シリーズ同様に普通の日常からスタートするのに驚いた。こうやってシリーズものが始まるとは、らしいと言ったららしい。
相変わらず、主人公の紋蔵は派手な活躍をしない。むしろ失敗や思い違いをして仲間同心から怒られたりする。サラリーマンらしく上司にも刃向かわない。
1番のお気に入りは「不思議な手紙」
珍しく付け届けを持った客人が訪れ、謝礼を当て込んで仲裁に立ち、首尾よく事が運んだのに客人は謝礼を持っ -
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半次捕物控の第一弾
岡っ引きとは、盗人を捕まえて被害者を調べ上げ、被害者が奉行所に行かないで済むように取り計らう事が主な収入の手段であるときっぱり説明している。現代の私たちの感覚でいえば、被害者からお金を巻き上げている何とも酷い仕事となる。
こういう家業が存在していて、街の人も普段から岡っ引きに袖の下を渡し、それで街の治安が保たれている時代の話であるということを、つまり現代の私たちの正義の感覚とは違う価値観の時代だと読者にきちんと認識させた上で物語を進めているのが、この小説の気に入っているところである。
なので主人公の半次は、もちろん正義の為に働いてはいない。正義の為に働いたら岡っ引家業 -
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ネタバレ面白かったです。
『この作家、この10冊』で紹介されていた(と思う^^;)初読み作家さん、佐藤雅美氏。まずはお薦めのこのシリーズを読んでみました。
所かまわず居眠りするという奇病を持っている藤木紋蔵。彼は物書同心で現代でいう“窓際族”。そんな彼が関わり、解決していく市井の事件は、捕物帳としては地味な事件ばかりですが、それだけに知らなかった江戸の暮らしぶりが書かれていたりして、とても面白かったです。そもそも物書同心自体知らなかったです…。
『お奉行さま』『浜爺の水茶屋』が貧しさ故起きた事件でしんみりとします。
窓際族だからもっと駄目駄目なのかと思ったのですが、紋蔵さんは意外に出来る人とい