佐藤雅美のレビュー一覧
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ネタバレ江戸時代、窃盗は重罪で、十両以上の盗みは死罪になった。
しかし人情として、被害者の方も、自分の訴えで人が死罪になるのはあまり気持ちのいいものではないし、仮にそこまでの重罪でなくても奉行所に出向いて時間を拘束されたりするのは面倒なので、被害者の方が「何とか穏便に…」と岡っ引などに金を払って、事なきを得ようとする。
ところが相模屋の雪駄を盗んだ犯人は、その救いを拒むのだ。
なにか割り切れない思いを抱きつつ、通常の手続きで犯人を助五郎親分に任せた半次。
助五郎親分というのがあまり評判の良くない親分で、自分の弟分だった幸太郎が親分にたぶらかされて道を誤っているのではないかと噂が立ったり、幸太郎 -
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目次
・密通女の思う壺
・家督を捨てる女の決意
・真綿でくるんだ芋がくる
・にっと笑った女の生首
・御奉行に発止(はっし)と女が礫(つぶて)を投げた
・牢で生まれ牢で育った七つの娘
・霊験あらたか若狭稲荷効能の絡繰(からくり)
・手習塾市川堂乗っ取りの手口
短編集ではあるが、一冊を通して手習塾市川堂の男座の師匠青野又五郎が秘していた過去が明かされる。
安芸広島浅野家の奥女中・奥林千賀子の死んだはずの許嫁だったというのだ。
なぜ青野又五郎は許嫁の前から姿を消したのか。
なぜ死んだことになったのか。
正体を暴かれ塾を辞めた青野又五郎。
頼りになる男師匠がいなくなった手習塾市川堂に乗っ取りの -
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目次
・音羽者の知恵
・へこたれない人
・夢見る夢之助
・牛込原町名主支配離れ願い一件始末
・へこたれない人(その二)
・帰ってきた都かへり
・青菜に塩の冷汗三斗
・それぞれの思いやり
幼いころから相思相愛だった紋蔵の長女、稲の夫が若くして死んだ。
次男に生まれた彼が、稲と結婚するためにした努力を読んできただけに、これは私にも結構ショックだった。
逆に文吉は、うぬぼれが強くて自分勝手なちよについていけないと別れを切り出す。
…と言ってもまだ二人ともローティーンだけど。
紋蔵の後を継ぐために勉強に励んでいた文吉だったが、稲とまだ赤ん坊の千鶴が路頭に迷わないように、稲の夫・鉄三郎の後を -
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目次
・真冬の海に舞う品川の食売女(めしうりおんな)
・象牙の撥(ばち)と鬼の連れ
・みわと渡し守
・磔(はりつけ)になる孕(はら)んだ女
・取り逃がした大きな獲物
・中秋の名月、不忍池池畔の謎
・孰(たれ)か微生高(びせいこう)を直(ちょく)なりと謂(い)うや
・ちよの負けん気、実の父親
なんかひねりのない長いタイトルが増えましたが、手抜きではないでしょうね。
話も過去の判例や法の解釈よりも、紋蔵の周囲の家族の話が多かった。
それはそれで面白いんだけど、窓際族の報われない紋蔵がびしっと難事件を解決する話も読みたいものです。
「孰か微生高を直なりと謂うや」とは
”微生高という男は善意に満ち -
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目次
・十四の侠客岩吉の本音
・独断と偏見と冷汗三斗
・親殺し自訴、灰色の決着
・御三家付家老五家の悲願
・魔物が棲む町
・この辺り小便無用朱の鳥居
・仁和寺宝物名香木江塵(こうじん)の行方
・師走間近の虎が雨
この巻では僧侶や儒者などの、いわゆる徳の高いと言われる人の裏の顔が暴かれるのが多かった。
表題作「魔物が棲む町」では拝領地にあるお寺の門前町人たちが、本来払わなければならない地代を何年もお寺に払わないですませてきた。
新しく赴任した僧侶がそれを改善しようと町人たち相手に訴訟を起こすのだが、その裏には別の思惑があった。
その生臭い思惑を、奉行所は結局知ることはなかったけれど、町人たち -
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目次
・女心と妙の決心
・江戸相撲八百長崩れ殺し一件
・御奉行御手柄の鼻息
・文吉の初恋
・天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず
・一心斎(いっしんさい)不覚の筆禍
・糞尿ばらまき一件始末
・十四の娘を救ったお化け
二人の息子を養子に出し、娘二人も嫁に行き、残る末娘の行く先を悩む紋蔵。婿を取って跡を継いでもらうか、貧乏同心の跡を継ぐよりそこそこの商家に嫁がせるか。
そこへ、侠客の親分の元へ出て行った、預かり子の文吉と勘太が、親分の死により紋蔵のところへ帰って来る。
ついに観念した文吉は紋蔵の跡を継ぐ決心をし、心を入れ替え学問に打ち込むことにし、妙は心置きなく嫁に行く…ことになるのかな -
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目次
・与話情浮貸横車(よわなさけうきがしのよこぐるま)
・歩行新宿旅籠屋(ほこうしんじゅくたびかごや)
・逃げる文吉
・黒川清右衛門の報復
・韓信の胯(また)くぐり
・どうして九両(くれよう)三分二朱
・旗本向井帯刀(たてわき)の発心(ほっしん)
何の落ち度もないのに、というか逆に仕事ができすぎて、誰も紋蔵のように古文書の事例を扱えないので、せっかくの定廻り同心から物書き同心へ逆戻り。
収入も10分の1に戻る。
そんな時、紋次郎に養子縁組の話が持ち上がる。
長男を養子に出したので、次男まで養子に出してしまうと紋蔵の家の跡取りがいなくなってしまう。
断ろうとずるずるしているうちに…。
文 -
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目次
・蘭長者簑吉の名誉
・時の物売りと卵の値
・それでも親か
・大坪本流馬術達者のしくじり
・坊主びっくり貂(てん)の皮
・そそっかしい御武家
・落ち着かぬ毎日
・白い息
前巻の最後に、物書同心から定廻り同心への出世がほのめかされた紋蔵。
巻を改めて、またいつもの物書同心の話かと思いきや、ちゃんと定廻り同心に出世していたので驚いた。
サブタイトルに偽りありではないか。
江戸時代の侍の収入は、すべて役職ごとにきっちり決められている。
しかし、直接町人との接点があることで付け届けが入る定廻り同心は、決められた収入しか持たない物書同心の10倍くらい実入りがいい。
身なりや言葉遣いにまだ戸惑いが -
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目次
・男運
・制外の役
・四両二分の女
・銀一枚
・猫ばば男の報復
・腐儒者大東桃昏
・湯島天神一の富
・名誉回復の恩賞
自分の器量に値段がつけられたら、そしてそれがダントツにお安かったら、ショックだよねえ。
紋蔵がしたかったのは、お上が女性を吉原に売って、そのお金を国庫に入れる(御金蔵に納める)ことの是非を、庶民の口を通して突きつけること。
けれど庶民はそんなことどうでもよかった。
高値で買われた女の顔や、安値の女の顔を興味本位で見に行っては騒ぎ立てるだけ。
紋蔵のしたことは、思いがけずに苦い結果を生んでしまった。
「腐儒者大東桃昏」は面白かった。
融通の利かない儒者が、儒者としての自 -
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目次
・まあ聞け、雛太夫
・越後屋呉服物廻し通帳(かよいちょう)
・お乳の女
・乗り逃げ
・お尋者
・三行半(みくだりはん)
・明石橋組合辻番
・左遷の噂
身代をつぶし妻の実家に養ってもらいながら、飲む打つがやめられない夫と離縁するために東慶寺に駆け込んだ女。
男は二人の子どもの世話をしながら、妻の帰りを待つ。
離縁するつもりはないと、逆に訴訟を起こす始末。
泥仕合になるかと思った時、紋蔵が妻の母に授けた知恵とは。
うーん、そうきたか。
まるで大岡裁きのようで見事でありました。
紋蔵の手柄というのは、感やひらめきなどではなく、常日頃庶民の生活をよく見て(というか自身が庶民だし)、決して花形 -
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目次
・落ちた玉いくつウ
・沢瀉文様(おもだかもんよう)べっ甲蒔絵櫛(まきえぐし)
・紋蔵の初手柄
・罪作り
・積善の家
・隼小僧異聞
・島帰り
・女心と秋の空
5人の子供のうち、一人は嫁に行き、一人は婿養子に行ったため、少し寂しくなった紋蔵家。←展開早っ
時と場所を問わず寝てしまう奇病のせいで出世もままならない紋蔵だが、今回はいくつかのお手柄が続き、いよいよ出世コースに乗るかと思われたが。
何も考えずに法律に照らして処置すれば問題はない。
けれどそれは、誰かを幸せにするだろうか?
悪人だけが得をしていないだろうか?
こういうことを考えて、悲しい事件の被害者のような犯人を見逃したりするか -
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徳川幕府と真に心中した覚悟の人、小栗上野介忠順の生涯を描いた作品である。
最近、この言葉が気に入っているが「社稷」。
徳川であろうと、薩長土肥であろと、当時の日本国が置かれた状況を勘案し、西欧列強から如何に日本という国家を守れるのか、その視点がもっとも重要なことである。
水戸がお里の慶喜の思想では、あの困難を打開することは無理だった。
因循姑息、ひたすら向かうしかなかった。
その点、小栗は、当時のアメリカを直に見、また、当時の幕府の財政状況の中で、通貨問題を解消すべく動き、また、開港に向け、整備すべき資金の調達にも動いたのである。
慶喜、勝が生き残り、小栗が非業の死を遂げる。
勝てば官軍思想、 -
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目次
・お奉行さま
・不思議な手紙
・出雲の神さま
・泣かねえ紋蔵
・女敵(めがたき)持ち
・浮気の後始末
・浜爺の水茶屋
・おもかげ
シリーズの途中から読んでしまったので、第一作から読み直し。
最初なので、人間関係がよくわかる。
仲良さげに語らっているけれど大竹金吾は後輩(しかし紋蔵より役職が上)で、捨吉は羽振りのいい顔役だけど幼馴染みで紋蔵を慕っている。
上司の蜂谷鉄五郎は、上の娘の許嫁の父親でもある。
”窓際族”で、貧乏子だくさんとはいえ、紋蔵は周囲の人に恵まれていると思う。
時と所をかまわず居眠りしてしまうという奇病(私もだ!)のせいで、出世コースから外れてしまったというと、不条理 -
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目次
・早とちり
・老博奕打ち
・金吾の口約束
・春間近し
・握られた弱み
・呪われた小袖
・列女お久万
・伝六と鰻切手
ああ、これもまたシリーズの途中作品だ。
しかも時代小説。
時代小説は少年マンガ並みに関数を重ねるものがあるので要注意なのだけど、これは既刊が10冊くらいだからまあいいか。
物書同心って知らなかったけど、要するに役所に必要な文書を書くことと、その整理・保管が仕事のようなのです。
だから前例主義の江戸時代、取り調べをするのにも、刑を申し渡すにも、過去の例を調べたりするのも仕事のうち。
意外にきっちり法整備されている江戸時代に目からうろこでした。
巻を追うごとに時間も流れて