隈研吾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本は、隈建築の中から、おそらく建築家としての転機となった、印象深い(苦労した)建物の話を中心に、20世紀の建築、主にモダニズム建築への批評とそれに替わる建築を追求していく、隈氏の思想・思考的な話を絡めながら、各章が展開していきます。
語られる氏の建築に対する思想・思考や仕事の流儀を読むと、場所や施主、そして人々との協調性を重視する姿勢が、今の時代にマッチし、それが多くの仕事の依頼につながっているのではないかとの思いに至ります。
最初の出版は2013年で、少し古い本です。当時、隈氏が手がけた「アオーレ長岡」や「歌舞伎座」が完成した時期とほぼ同じで、それらのプロジェクトについても語られています。 -
Posted by ブクログ
建築家・隈研吾氏が、建築家に興味を持つ10代へのメッセージとして綴った本です。小学時代の生い立ちから、中学、高校、大学での経験を特に詳しく語った、自伝的な内容となっています。
タイトルから子供向けかと思い、読むのをためらっていましたが、大人でもまったく違和感なく、興味を持って読める本でした。
表現がやさしいせいか、隈氏の著作で時々遭遇する難解な箇所はなく、とてもわかりやすくて著者への好感度が上がります。
隈氏の生い立ちとそのエピソードを知るにつれ、氏の建築がなぜそのようなものなのか、ということが腑に落ちてくる場面が多くありました。
小学生の頃、父親と自宅の増改築を行うために、安価で格好のいい材料探しに夢中になっていたことや、高校時代のキリスト教的価値観の教育経験、アメリカ留学で、外国人との対話を通して気付いた日本文化の魅力など、さまざまな出来事が、隈氏の建築家としての活動に大きな影響を与えていることがわかる本です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオオバコシステムによる近代化 閉じ込めて効率化
ITで閉じ込めなくても効率的に自由に
建設産業の江戸時代におけるサムライ化
一定の評価を得た芸術家はコラボして違う地平に飛ぶ
世界の中心都市 ジャック・アタリ
=クリエイター階級が新しい発見への情熱を燃やす場所
バブル期の東京はなれなかった
過去の利得の維持保護 1億総サラリーマン化
川沿いのライトインダストリーエリア
スターバックス リザーブ ロースタリー東京
巨大焙煎機のため工業地帯に
建築の流動性 コンピュテーショナルデザイン
長持ちしない建築 流動しながら有限の時間を生きる -
Posted by ブクログ
いちばん印象に残ったのは、岡山の限界集落の話。「NHKの番組で岡山の高齢者だけの限界集落を取り上げていたのね。75歳以上の人だけが住んでいる集落が、岡山には720ほどあるそうなんです。…それで俺が思うには、限界集落が720もあるということは、そこがいかに住みやすいよい場所か、ということですね。…限界集落とか言って問題視する前に、どうしてそういう生き方こそ奨励しないのかね、と思って。」
東日本大震災後、1年以内に書かれた日経ビジネス連載のまとめなので、端々に生き方や暮らし方の再考が提言されている。コロナ禍の現状に置き換えても違和感がないので、本質的な議論がなされていたのだと感じる。暮らしを歴史的・政治的・経済的・機能的・国際的・精神的に捉えた秀逸な対談本。 -
Posted by ブクログ
ネタバレグローバルからワールドワイド、効率と拡大から自由と小さなものの多様性にこそ魅了がある。小さいからこそ、外を上手く取り込もうと目が向かう。
東京の街の多くが魅了を失ったのは既存のシステムにもたれ掛かり、変わろうとしなかったから、また既得権益を守るために変えさせなかったことが大きい。
ローンによる土地・家屋の私有は足かせになる。ローンを組んだサラリーマンはそんな自分たちを肯定するためにサラリーマンの価値観を正義として世の中全体に押し付けてきた。その気持ち悪さとそれがまだ続いているのを感じる。住宅ローン減税は既存のシステムの延命にすぎない。
住宅、特にマンションの一階のつくられ方がまちの魅了を壊してきた。歩けること、歩きたくなることがまちづくりには大事。
安っぽいはずの素材で、いかに美しく結晶させるか、それが建築家としての力量。
元気のある街には、学校があって、学生が、若者がいっぱいいる。彼らが街で遊んでいることがすごく重要。
住宅を私有の資産としてだけ捉えるのではなく、暮らしのクオリティを上げる装置、一種の都市インフラとしてデザインしていくことが大切。私有は危険であり、賃貸を上手く住みこなしていく方が今のグローバル経済の中では賢い。
一方で自分の場所を持っていることは企業も個人も大事。
楽しいと思える方向に自分でアクションを起こす。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ20世紀、ヴォリュームの拡大を至上主義
コンクリート空間の中に閉じ込める
木造、線の建築
カディンスキーとジェームズ・ギブソン
石の基本は点だが
積み上げると重たいボリュームになってしまう
自然素材が表面の薄い石や木の化粧や記号に堕ちてしまった20世紀
石の美術館
石に隙間
ビアンコ・カラーラ
大理石を6mmにして嵌め、光を通す
ビエトラ・セレナ
apple storeの床
点の積み上げでは経験が基準
19世紀後半に
コンクリートや鉄のフレームの線になって計算可能に
コンクリート
点を面にジャンプさせる
バラツキ
きらめきとリズムに
市松模様
一枚ずつの小さな絵で済む、半分で済む倹約
接点ずらし
丹下健三、線が面にならず線のままに、屋根の線
線の放棄
コルビュジエ ヴォリューム
磯崎 キューブ、象徴的な記念碑
黒川 円錐でヴォリュームにアイデンティティ
日本の伝統木造 14世紀完成
自由に移動、可動間仕切りシステム、軽量で洗練
広重美術館
広重の「夕立」のような建築
線で構成されたグラデーション
自然と人工の中間
CASA Umbrella 傘の家
フラーのドーム建築
テンセグリティ構造、
ワイヤ(テンション)と棒の統合(インテグリティ) -
Posted by ブクログ
清野由美が隈研吾から聞き取り、書かれた本なので、
話し言葉がメインになっているので、わかりやすい。
隈研吾の本音がよく出ていて、面白い。
確かに、隈研吾は、世界を駆け巡っている。
建築家としての世界的にブランドが確立されている。
日本人の建築家のブランド力はすごいが、常に現場に行き
ナマに話し合うという姿勢を崩していないのは重要だね。
「コンクリートに頼ってできた、重くて、エバった感じの建築が大嫌いだ」
「エラい建築家が作った、エライ建築」ということをはっきり言う。
現在では、隈研吾が エライ建築家になっているのだが。
弱い日本に生まれざるを得なかったがゆえに、悩みや迷いがある。
結局は、建築という制約の中で、格闘せざるを得ないということだ。
中国は、「理不尽な命令に対しても、冷静に応えられる人間だけが生き延びていける」「理想と現実の間、理想と欲望の間をうまくバランスさせようとする」と評価し、その上で「相手の価値の中に、自分の価値をきちんと位置づけて、相手のメリットを約束する」という交渉力ですね。
隈研吾は、そのことを、見抜いている。実に、したたかである。
東日本震災に対する隈研吾の感想と思いは、実に重要だね。
日本の行政のお金に使い方に関して、住民の意見を聞いて、組み立てるようになるには時間がかかるのだと思う。ポストポストモダンの建築の今後のあり方が、どう示されていくのかが楽しみでもある。 -
Posted by ブクログ
東京の都市論。街をどう見るのか?
隈研吾と清野由美が対談し、歩きながら感じたままを話す。
こうやって都市を見るかと、面白い視点が与えられた気がした。もっと、都市には、物語が埋め込まれていると思った。
汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田。
都会に立つ高層ビルは、オフィイスビルが多い。
汐留のダメダメ感は、なんとなくわかるものがある。
統一性やコンセプトがなさすぎると思う。
それは、ある意味では、機能的で、味気ない空間と言える。
とりわけ、東京駅から丸の内の界隈は、息が詰まりそうな空間である。ビジネスの戦場という殺伐感があるかなのか。
街並みに感じる「風情」を削ぎ落としたというか、喪失した空間。
しかし、三菱地所の本社が、実に目立たないところにあるのも、日本の奥ゆかしさなのだろうか。
六本木ヒルズは、森美術館に行くだけで、あまり感じなかったけど芸術家の経営者が、作ったという言い方は、面白いかもしれない。確かに、そのビルのフォルムは、存在感があり、異様な雰囲気がある。
代官山は、槇文彦というサラブレッドが、代々の地主と噛み合って、時間をかけたまちづくりになったというのを見て、一度行ってみたい。
町田も、一度も行ったことがないので、街を見に行こうと思う。
渋谷、青山、品川、秋葉原などについても、二人で歩いてみて、新たな視点があると面白いな。
肩の力を抜いて、建築に興味を持つきっかけにはなる本である。 -
Posted by ブクログ
好きな建築家は?と聞かれたら間違いなくあげる一人。
新国立競技場でさらに有名になった隈研吾さんの建築家人生を振り返りながら、原点を知ることのできる一冊です。
なんであんなに「木」にこだわるのか?という最大の謎も「なるほど!」という確かな納得感を得ることができました。笑
ちなみに環八沿いにある「東京メモリードホール(M2)」については一切触れていなかったなあ。。。(Googleで「隈研吾 環八」と検索したら、隈研吾建築事務所のホームページには実績としては掲載されていました。)
どこかのインタビューか本に、あの物件は自分の実績として抹消したいと言っていたような記憶がしていたので、あえて触れるかなあ?と期待しましたがやっぱりなかった。。。笑 -
Posted by ブクログ
建築に全く疎いのですが、新国立競技場をデザインした人ということで、手にとってみる。
建築家、走る。
この題名が、本文を読むと、競走馬としての建築家、実際の土地と物を見に世界中をタフに泥くさく走り回る著者をうまく表せているなと思った。
バブル崩壊後の日本での建築需要が減り、建築家もなかなか世知辛い話だけど、その中でいかに自分の求めていくものを見つけるか。この人の作った建築物をカラー写真で見て、さらに現地に行きたくなりました。歌舞伎座や石の美術館とか、能楽堂とか。
反ハコモノ、反コンクリート、土着の繋がり、人が、素材が、土地が見えるもの。そこにしかそこでしか生み出せないもの。美しい古び方。限られた中で、面白いことを。
ただ、ある意味建築って哲学的だなと。空間やモチーフのコンセプトを聞かないと表現されるものが分からない。(その場に行けば違うのかもしれないけれど)その点、丹下さん等昔の人のは視覚的にグッとくる良さがないでもない。。。