山中朝晶のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ翻訳小説は、感性と背景知識と想像力を総動員する読書なのだと思う。背景知識に乏しい私は、決して読みやすい読者ではない。
サブタイトルの「ダーク・ウィンター」も、最初は単純に「暗い冬」「寒い冬」ほどの意味で受け取っていた。ところが調べてみると、これは2001年にアメリカで行われた、生物兵器テロを想定した机上演習(シミュレーション)の名称でもあるらしい。天然痘がテロによって米国内に拡散する―その想定を知ったとき、本作はもしかすると、そのシミュレーションを小説として拡張したものなのではないかと思った。
とはいえ、それは「思うのみ」である。
このシュミレーションの数ヶ月後、⒐11の攻撃を受けている。演出の小説化ではなく ⒐11を経験した小説なのですね。
軍事、情報機関、宗教、そして各国が抱える歴史的トラウマ。そうした要素が前提知識として置かれている物語の中で、私は読書は手探り。背景を知らないがゆえに、物語の全貌や、作者が仕掛けたであろう知的な面白さに、十分たどり着けていない感覚も残る。
それでも、理解できないまま置いていかれる不安や、何かが静かに進行しているという寒々しい感触だけは、確かに伝わってくる。その感覚こそが「ダーク・ウィンター」という言葉の示すものなのかもしれない。
本作は、知識を持つ読者だけでなく、わからなさを抱えた読者をも、その不安の中に立たせる物語なのだと感じた。 -
Posted by ブクログ
ニューヨーク市警の刑事マクニールの妻キャロラインが遺体で発見された。死因は自殺とされたが、妻はホワイトハウス担当の記者で仕事に打ち込んでおり自殺をするとは思えなかった。マクニールは独自に調査を開始するが、ホワイトハウスやFBIに妨害され、窮地に追い詰められていく。やがて、妻の死と数年前に自殺したセレブ女性との関連に気づく。当時、真相が何者かにもみ消されたことを知ったマクニールは、刑事として法に従うか、自ら復讐を果たすか、葛藤するが…。
この内容、ポケミスで定価3,000円越えとは、と読後ため息。かつてなら、NVレーベルで出されたのではないか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ期待して読んだけど、そうでもなかったパターン。
解説の松恋さんは「こんなに悶々とさせられる小説は珍しい」としながらも、「どこか危なっかしいところのある人物を探偵役に据えることで、作者は読者の感情を操っているのである」と、この悶々加減に好評を寄せている。
自分的には終始ジャーナリスト魂を盾に自己弁解的な主人公の振る舞いに全然気持ちが共鳴できず、「何なんだこいつは」という気持ちが先に立ってしまい、楽しみきれなかった。
オーストラリアの田舎町リバーセンドに赴任していた牧師が、とある日曜日の礼拝前に銃を乱射し5人の命を奪った。
事件から1年が経過しようとする中、アフガニスタンでの取材中に心の傷を負った新聞記者マーティンは「あれから1年、町はあの事件とどう向き合っているのか」というテーマで取材してこいとの上司からの命によりこの地に降り立つ。
当の牧師は駆けつけた警官に射殺されている上、小児性愛の疑惑も掛けられている。
ところが町の人々にコメントを求めると、意外にも擁護する声も。
1年経過後の町の様子への取材もそこそこに、あの事件は何だったのかの謎に囚われ始めたマーティン。
その矢先、町の北に広がる灌木地帯で発生した火災、そしてそこから発見された約1年前のものと思われる2体の若い女性の死体。
乱射事件との関連はあるのか。。。
1年前の銃乱射事件、1年後に見つかった死体、加えて、、、という複数事案を主要登場人物達がこれでもかこねくり回す展開。
まるでルービックキューブのようだった。
複数の事件を細切れにしてガチャガチャして、段々と真相に近づいていく。
とある時点でそれっぽく見えた絵姿もどこかピタリとしないところがある。まだ何か足りない。あっちの事件の説明がつかない。
さっき表にあった見え方はいつしか裏面に行っていて、また戻ってくるけど、やっぱり裏に行っちゃった、みたいな。
最終的に出揃った真相にはなるほどーだったけれど、途中がとにかく忙しいし、そういう感じの印象操作はずるいなーっていうのもあって、やっぱりもう一歩というのが正直な感想。 -
Posted by ブクログ
真珠湾とミステリー、どう繋がるのか。
1940年代、ホノルル警察の刑事マグレディが
戦争に巻き込まれながら、国を越え、時を越え殺人事件の真実に迫っていく。
章が進むにつれ、来るぞ来るぞの開戦日、
まさかの事態に。これどうなるの?と絶対絶命の詰み状態。ハラハラドキドキがたまらなく面白かった。
アメリカ側から見た第二次世界大戦は、こうなのかと垣間見る事ができた。
ハワイ、香港、日本など当時の描写が味わい深い。特に日本の描かれ方については、著者の思い入れを感じる。美しく描いていただきありがとうと、同じ日本人女性として勝手に思っている。(似ても似つかぬタイプだが…)
ミステリーと歴史のコラボ。人間ドラマも相まって、読みごたえありの一冊となった。