山中朝晶のレビュー一覧
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全3巻の1巻目を読んだだけで感想を書きたくはなかったが、書かずにはいられない。
「これだけは保証しておこう。本書の出来は、あなたの予想を超えている」。というミステリマガジンの絶賛レビューに期待して読み始め、少し疑いを持ち始めたところで、片足を引きずったニューヨーク市警の黒人警部補ベン・ブラッドリーが主人公の「わたし」を探し当ててパリを訪れる。ブラッドリーは「わたし」に米同時テロのある悲痛なエピソードを話してこう言う。
「彼らの命を奪ったのは降り注ぐ瓦礫や火災ではない。彼らは他人の命を救おうなどと考えたから死んだ。そのことにわたしは怒っているんだ。いったい、この話のどこに正義がある?」
彼は気持ちを落ち着かせようと、ひと呼吸置いて言った。「わたしはこんな世界で暮らしたいとは思っていなかった」
ブラッドリーは罪のない人々がテロによって不当に殺される世界に異議をとなえ、それを何とかしたいと思って「わたし」を探し当てたのだ。だからこれは正義や理想を「青臭い」と片付けてしまう人には無縁の小説である。そうじゃない人、冒険小説を好きな人は読み逃してはいけないだろう。
全体的なプロットはトマス・ハリスの傑作「ブラック・サンデー」を想起させる。テロリストが用意した兵器の威力を試すために日本人を殺す場面も共通する。違うのは登場人物たちが9.11の大きな影響を受けていることだ。「9.11を経た『ブラック・サンデー』、しかもそれを大きく超えている」というのが1巻を読み終わってのとりあえず感想になる。 -
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テムズ川で身元不明の女性の溺死体が発見された。当初は不運な事故だと思われていたがボーシャン警部の捜査によって、30年前の企業年金を横領して姿を消したCEOの事件と死んだ女性の関連が浮かび上がる。英国政府の影の権力者ハンプトン下院議員に事件の調査を依頼されるボーシャンだったが、15年前に発生した少女失踪事件の調査も行うことに。一見すると無関係なふたつの事件。だが思わぬ形でこれらが結びついたとき、イギリス上流階級の暗い闇に呑まれた叫び声が響きだす...。
シリーズ第2作ということだが、前作は未訳。次作も含めて紹介されたら、多少印象が変わるかもしれない。 -
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ネタバレ2026年の4冊目は、シャーロット・ヴァッセルの「果てしない残響」です。ロンドン警視庁カイウス・ボーシャン警部を主人公としたシリーズの2作目になります。エドガー賞受賞作という事で先に翻訳されたのでしょうが、1作目が未訳の為、前作からの繋がりが分からず、少し残念に思いました。
そして、今作がエドガー賞受賞に値するのかと言われれば、個人的には少し疑問を感じます。
クライマックスに向けて、その片鱗は感じられますが、そこまでではないように思います。カイウスを中心とした捜査チームの3人は、それなりに魅力的ですし、寄宿学校から消えた女子生徒の事件は、それなりにアット驚く結末です。ミステリーとして水準以上の出来なのは間違いないとは思いますが。イギリスの階級社会の有り様が取り上げられている事がプラスに働いたのでしょうか。出来れば1作目から読みたかった所です。
☆4.5 -
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3 遠くの敵
「思想」「歴史」「宗教」の隔たりが“遠さ”として表現されている、ということで良いのかな。
ピルグリムは、主人公“わたし”に与えられたコードネーム。…でいいはず。
夏に『夏のピルグリム』という女子中学生冒険家出小説を読みましたが、旅の桁が違いました。
頭脳明晰な復讐を糧にテロリストとなったサラセンのテロ計画阻止に アメリカ、サウジアラビア、アフガニスタンからヨーロッパ各地への追跡劇です。
ですが、私は 彼らが今どこにいるのか読み取れないので、そんな感じで読みました。
各項のラストは、いつも思わせぶりなカッコ良い一行です。そこもですね、カッコ良いんだろうとわかるんですが、何が?ってところもあって翻訳小説未熟者には、まだ修行が必要です。
良い読書経験でした。
ご紹介ありがとうございました。
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ふたつ事件をロンドン警視庁の刑事たちが追う… 英国の階級社会を風刺したミステリー #果てしない残響
■あらすじ
ロンドン警視庁の刑事カイウスが劇場に訪れたとき、観客が倒れて亡くなってしまう。彼はかつて女学園で起こった失踪事件を調べていたらしく、カイウスは事件の再捜査を考えていた。
一方、テムズ川で女性の死体が発見される。当初は事故死と思われたが、過去の横領事件との関連性が浮かび上がる。さらにイギリスの下院議員で権力者であるハンプトンから、事件を詳細に調査せよと指示される。関連のなさそうなこの二つの事件、どんな背景があるのか…
■きっと読みたくなるレビュー
濃厚濃密なイギリスのミステリー、いやーお腹いっぱい、大満足ですね。いわゆる英国の階級社会、アッパークラスを風刺した内容になっていて、事件や犯行動機などに関係してきます。
日本人だとイギリスの階級社会ってのに馴染みがないですよね。なんとなく上級国民やお金持ちとそれ以外みたいな曖昧な感じはあるけどさ。
イギリスの場合は労働者、中間層、富裕層、上流階級といった明確な区別がある。なんつっても個々アイデンティティを持っていて、そういうもんだって納得してますよね。お国柄って面白い。
さて本作は、そんな階級社会のあるイギリスが舞台。ふたつの事件を現場ロンドン警視庁の刑事たちが追っていく。
ひとつは女学園でとある少女が失踪してしまった事件、もうひとつは年金横領事件に関係しそうな殺人事件。どちらも過去に起こった事件で捜査は難航。事故として処理されそうなところ、突然カイウスが権力者に呼び出され、捜査に拍車がかかっていく… という筋立て。
事件はもちろん、なぜ権力者の下院議員に捜査を依頼(というか命令)させられるのかってのも謎なんよ。権力者の出現あたりから、ミステリーとしての厚みがぐぐっと増してくるんすよね。
主人公はカイウス刑事ですが、お仲間の刑事マット、エイミーも魅力的。何より彼らの会話が機知に富んでだり、友達みたいなやり取りでほっこりするんすよ。もちろん意識が高いプロの刑事であり、事件解決に向けて大活躍してくれます。
そして本作、実は2割くらいはラブロマンスなんです。カイウスと帽子屋キャリーとの関係性が鬼アツです。出会いからデートして仲良くなって… みたいな感じで徐々に発展していくんだけど、もう羨ましいくって。私もまぜて欲しい! ただお話が進むと、更なる変化がおこるんですが… それは読んでのお楽しみ。
もうひとり鍵を握る人物、ルパート・ビーチャムですよね~。彼がいることで人間関係にエグみが爆増。ちなみに本作はシリーズ2作目で、彼は1作目にも出てくるようです。読み終わった後で解説を読んでいただくと、理解度もあがって楽しめますよ。
さて肝心の事件、謎解きについてですが、これも想像の二倍くらい練り込まれてましたね。事件自体はそうだよねって感じなんですが(とはいえかなりハード)、さらに物語全体とおして様々な人物がいり乱れるんすよ。えええぇっ? となるところも多くて力が入ったなー。終盤の着地なんて、全く想像できませんでした。
次回作は本国では既に発売されているようでして、もはや前作も次回作も読みたい。というのもやっぱり人が書けていて、彼らを見ていたくなるんですよね。しみじみと読ませてくれる良い作品でした。
2025年のエドガー賞、最優秀長編賞ってことで期待してましたが、やっぱり迫力ありましたね。パワフルなミステリーを堪能させていただきました。
■ぜっさん推しポイント
貴族、生まれながらのお金持ち、上流階級、ロイヤルファミリー。なーんて聞くと、なんか憧れちゃいますよね。
しかし生まれた瞬間に運命や、果たさなければならないことが決まっている人生ってのも、なかなかしんどそう。それが世のため人のためと信じられるならいいけど、そうでもなかったら良心と重責に潰されそうでさ。
自由に気楽に生きれる立場ってのが、やっぱり幸せなのかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
スパイものの一作として、かのひまわり師匠にご紹介いただいた本作。まさか、3巻まであろうとは。
タイトルの名前のない男たちの通り、未だこの巻では誰がどのような役割を果たしていくのかは、予測することのみ。
それぞれの立場とそこに至る経緯を、諜報する側とされる側で描いていく。
一部は14節、二部は34節と、短章に分けられている。元は何かに連載でもされてたのか?
翻訳物では主語が見失いがちという苦手意識がありますが、本作は節ごとに主体が切り替わるため、多少読みやすいかな。
また本作はスパイ・スリラーとも呼ばれているようですが、実際には、社会的な恐怖が成立してしいく状況を描く物語なのかな、と思うのですが
全く読めている感覚がありません。
さて 2巻へ