大倉崇裕のレビュー一覧
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ネタバレ東京の中野区を舞台とし,お人よしの大学生「白戸修」が,さまざまな事件に巻き込まれる様子を描いた短編ミステリ。お人よしだが,意外にタフで,妙な正義感がある白戸修というキャラクターが気に入れば,楽しめる。個人的には,白戸修のキャラクターの造形は,おおむね気に入っているのだが「セイフティゾーン」で,芹沢の静止を振り切って,勝手に銀行強盗からの電話に出るなど,ときどきイライラさせる行動をするところがあった。
ミステリの出来としても,案外,よくできている。これは,ミステリとしての驚きがあるという期待がないからだと思う。軽いミステリとして,さくっと読めればいいと思って読んでいるので,意表を突くオチが用意されていることにびっくりすることができた。思わぬ拾い物だったと思う。とはいえ,基本的にはたわいもない話ばかりであり,★4というほどではないかな…★3で。
個々の作品の所感は以下のとおり
○ツール&ストール
全ては山野井という元刑事を罠にはめるための作戦だったというオチは読めなかった。もっと,軽いオチを予想していただけにびっくり。さまざまなスリの手口も知ることができてお得。この作品はレベル高いと思う。
○サインぺインター
ミスディレクションがないので,読んでいると,「ああ,これは警察官が犯人なんだな」と読めてしまったが,それを割り引いてもよくできた作品と言える。ただ,倉田という男が,何を思って白戸を巻き込んだのかが不明。もやっとした部分があるものの,良作といえるかな。
○セイフティゾーン
芹沢の魅力あふれる作品。ハードボイルドっぽい雰囲気まである。白戸修は完全に足手まとい。ただし,オチらしいオチもない。ミステリとしては凡作かな。
○トラブルシューター
ストーカーもの。読後感があまり良くない。これも,ミスディレクションが全くないので,出井が黒幕だと読めてしまう。北条のキャラクターも,芹沢ほどの魅力もない。うーん,凡作。
○ショップリフター
万引きの手口について,いろいろ知ることができたのは興味深い。ただ,話の筋は荒唐無稽。ここで,ツール&ストールでも出てきた,山霧純子を再登場させたところはよいが,白戸修を万引き犯にしたてるために,ここまでやるというのは…。深田重子のキャラクターも,それほど魅力的でない。凡作かな。 -
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「挨拶」に続く第二集。
犯人が最初に示される倒叙形式そのままに、四編が収録されています。
点数は3点だけど、気持ちは3.5かな。「情」を感じる部分が所々に見受けられたので、パズル的な要素は少ないながらも最後まで楽しく読む事が出来ました。
前作同様、犯行を完璧に仕上げる犯人はいません。どこかしらにミスがあり、そこを主人公に掬われてしまうわけですけど、今回は犯人自身のミスが多かったように思います。
収録された四編ともパズル要素が少なく、主人公と一緒に頭を使って読むというものではありません。そういう意味では、「この犯行、主人公はどうやって犯人に迫るのだろう?」という面白みは少ないかな。
それでも、前作より面白いと感じたのは「情」なのかな。
前作では謎めいていた主人公、福家警部補の趣味が今回は色々と書かれていたり、犯人たちの思いというかー確かに今の立場を守るためという自分勝手な理由だけどー単に証拠を集めて言い逃れできないようにするだけではなくて、犯人側の心情が前作以上に描かれているように感じるんですね。
個人的には収録されているお話「相棒」が好きです。
被害者が加害者をゆすったりしているわけではなく、ほんのちょっとしたすれ違いの末に…だから。
そんなわけで、推理小説という枠を外しても面白い作品だと思いますし、それぞれが短編なので活字に慣れていない方にも読みやすいので、是非、お薦めです。
もちろん、この第二集から読んでも問題ありません。その後で第一集を読んでもいいですね。第一集に収録された杜氏の話は第二集に通じているかもしれません。
とはいえ。
これまでは「福家警部補は今日も無敵です!」と本のオビに書かれた通りなので、苦戦するような相手の登場を期待したいところではあります。第三集も楽しみです。 -
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2013年に刊行された「怪獣文藝」の続編として、怪獣と怪獣が跋扈する世界をこよなく愛する映像作家(監督)と小説家による持ち前のセンスを生かして書き上げた怪獣短編小説で構成したアンソロジー集の第二弾。
前作が怪異な世界観をメインテーマに据えて構成したミステリー、ホラー色の強い怪奇小説作品集としての仕上がりは≪怪獣小説≫を期待した読者の評価が二分した結果を踏まえ、今回はより具体的に怪獣の暴れまわる事件に焦点を当てたビジュアル的なストーリー展開の作品で構成されている。映像でストーリーを読ませる映画監督による文章表現と、文章を用いてビジュアルをイメージさせる小説家の双方が「怪獣」をテーマにした競作は≪文藝同人誌≫としての仕上がりとしてもまた楽しい。日本では映像作品が先行している「怪獣話」はミステリー、ホラー、SFの世界に統合されており、小説として一つのジャンルとしては確立していないのが現状であり、その点でも「怪獣小説」の今後の発展に期待したい。 -
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大学に入学早々、廃部の危機に瀕したオチケン(落語研究会)に入部させられた越智健一。「越智健一でオチケンかぁ。よくできてるよねぇ。ウフフ」――落語にはまったく無関心だった越智だが、名前だけを理由に無理やり入部。強烈な個性の先輩二人に振り回され、授業もまともに出られない。あげくはサークル間の部室争奪をめぐる陰謀に巻き込まれることになり……。
本書は落語にちなんだミステリーも多数発表してきた著者が、大学のオチケンを舞台にユーモアと落語のウンチク満載で描く連作中編ミステリー。付録の「落語ってミステリー!?」では、著者独特の解説による「落語への招待」が綴られており、落語初心者でも安心して手に取れる。