柳沢由実子のレビュー一覧

  • 苦悩する男 下

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    『ファイアーウォール』以来、約10年振りのヴァランダー。10年と言う時を経て定年間近の60歳になった彼は、健康面の不安や、人間関係の悔恨に苦悩する男になっている。

    意味深なプロローグから始まるストーリーはひたすらゆっくり進む。シリーズ最終章という先入観のせいか、刑事ヴァランダーの人となりをなぞるように展開してる気がして、序盤から退屈してしまった。休職中を利用しての個人的な事件追跡というスタイルは、警察ミステリというよりは、私立探偵モノの色合いが濃い。その割に、事件の核心はスウェーデンの国防問題と繋がると言う展開にバランスの悪さも感じてしまって、困惑する読書となった。

    元妻が出てきて元恋人が

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    2020年10月17日
  • 緑衣の女

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    なぜ憎い夫と赤ん坊を同じ穴に埋めたのか。そこだけ違和感。
    まあ母親はろくに動けなかっただろうし子供達で穴を二つ掘るのは無理だっただけかも。

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    2020年07月19日
  • 殺人者の顔

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    意外な展開を期待してたのでちょっと物足りない。。
    携帯がない時代の刑事は大変だな。
    何故残虐な殺され方をしたのかがスッキリしない。
    怨恨の線を匂わせてたけど結局お金のありかを拷問して吐かせたってことなのか。
    次作も読むかは迷う。

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    2020年06月26日
  • 湖の男

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    シリーズ邦訳四作目。アイスランドの湖底で発見された白骨死体と冷戦下の東ドイツへ留学した学生の追想が交錯する作品構成は「緑衣の女」とほぼ同じだが、ここに外交問題と政治思想、シュタージ傘下の監視社会が絡み合い過去作以上に複雑な様相を呈する。無駄のない物語の運びに哀愁漂う人間ドラマ、そしてラストシーンの情景が醸し出す余韻といい、今作もシリーズの持ち味が存分に発揮されている。恐らく過去パートはこれでもまだ描き足りないのではなかろうか。ロマンス的な展開は非常に苦手なのだが、今作の心情描写は何とも優美で穏やかだった。

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    2020年05月11日
  • 湖の男

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    アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』創元推理文庫。

    レイキャヴィク警察シリーズ。主人公のエーレンデュルが地道な捜査により過去に起きた殺人事件の真犯人を特定するというストーリー。読むのに苦労した割りには得る物が少なかったというのが正直な感想。

    干上がった湖の底で発見された白骨死体は頭蓋骨に穴があき、体にはソ連製の盗聴器がくくり付けられていた。エーレンデュルの捜査の結果、過去に農機具のセールスマンが婚約者を残して失踪していた事実が浮かび上がる。

    事実を1つずつ丹念に紐ほどき、少しずつ真実に迫る過程は面白いが、誰もが見逃していた過去の国家の歴史が絡む事件の真相にまで辿り着き、真犯人を特定し

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    2020年05月07日
  • 殺人者の顔

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    刑事ヴァランダーシリーズ第一作目。北欧発の作品だけあって、移民政策に排斥運動といったデリケートな社会問題に鋭く切り込んでいるが、テーマが先行し過ぎて警察小説としては些か盛り上がりに欠け、作中での問題提起も突発的で散乱しており、まだどうにもこなれていない印象が強く残る。展開そのものはスピーディーで読み易いが、単巻でこの情報量だと上下巻のシリーズ後作は一体いかほどの密度だろうか。直情的なのに内省的なクルトのキャラクターは面白いし、イースタ署のチームワークも見所だが、このシリーズを追うべきか否か未だ目下思案中。

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    2020年04月11日
  • 声

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    作中の『アイスランドは小さな国なのにみんなと同じでなければ許されない』という台詞は社会生活を営む人間が直面する問題に国境はないと教えてくれる。これまでのシリーズ作品中最も地味な展開ながら、そのドラマ性が高く突出しているのは【家族の在り方】というテーマが万国共通だからだろうか。改めてこのシリーズは海外版社会派ミステリーなのだと実感する。前二作に比べ開けた作風で、クスッと笑える場面にすら出会すが、その分些か通俗的になった印象は否めず。但し、優美なラストシーンを含め、作品の完成度自体はシリーズNo.1だと思う。

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    2020年03月22日
  • 緑衣の女

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    新興住宅地で発見された人骨、エーレンデュルに降りかかる家族問題、そしてとある一家の記憶。序盤から前作「湿地」を凌ぐ仄暗さが漂う今作もアイスランドが歩んだ歴史に端を発する哀しい因果の物語。前作の警察小説然とした犯人捜しと打って変わり、埋もれた白骨遺体の身元捜索という地道な展開だが、現在と過去、そこにエーレンデュルのアイデンティティをも絡めた人間ドラマの構築がお見事。勿論、ミステリーの妙もしっかりあるし、ラストシーンが醸す余韻も味わい深い。ローカルで陰鬱な世界観だが、漆黒の暗闇に射す一縷の光は読者の心を打つ。

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    2020年03月22日
  • 裏切り

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    俳優の不倫報道でTVが沸騰している時にたまたまこの本を読む。つい重ねてしまった。
    ヘンリックは最初から好きな人ができたといえばよかったのに。人格を否定されるのと、浮気を知らされるのとどちらが辛いだろう。
    妄想ストーカーの割り込みさえなかったら、エーヴァが暴走しなかったら、いずれ元サヤもあり得たかも。人生はもしもだらけ。

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    2020年01月27日
  • 霜の降りる前に 上

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    起こる事件も面白く、話しを追わせる展開もいいのだが、親子してなぜそこで癇癪を?会議、会議で何を話している?親父の仕事ぶりの良さは?など突っ込みたくなることもあるな。

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    2019年02月22日
  • 声

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    孤独な生活を送っていたドアマンがホテルの地下室で惨殺される。
    かつて男は、美しい歌声で人々を魅了したことがあった。だが、避けて通ることのできない変声のため、スポットライトを浴びた初舞台で、一瞬にして「ただの少年」へと変わったのだった。厳しく指導し息子に期待を懸けていた父親。失望と嘲笑、果ての転落。以降の人生はもはや「余生」に過ぎなかった。人々との関係を絶ち、人畜無害となっていた男を殺害した動機とは何か。レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、私生活でのトラブルを抱えつつも、濁りきった事件の底に沈殿する鍵を求めて、再び水中深くへと潜り込んでいく。

    インドリダソン翻訳第三弾。「家族」を主題と

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    2018年08月23日
  • 北京から来た男 下

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    ネタバレ

    (上巻より)

    そこまで苦労(?)してたどりついた「まとめ」が、
    中国の闇の世界にいる人物が実行部隊を一人しかもっていないとか、
    しょうがないので自ら実行しに行くとか、
    それを甥が殺すとか、ちょっとありえないまとめ方だったのが残念。
    殺人現場で見つかった赤いリボンの謎はわからないままだし。

    劇中劇である、中国の農村から逃げ出した三兄弟の話の部分が面白かったかな。
    アメリカに連れていかれ、大陸横断鉄道の建設を生き抜き、
    中国に戻り、宣教師に仕え、裏切られ、裏切った男。
    彼がこの作品の主人公だった気がする。

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    2018年07月22日
  • 北京から来た男 上

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    ネタバレ

    ヴァランダー警部シリーズの作者だったので。

    うーん、政治的な事にも、国際関係にも興味がないので、
    読み進めるのがつらかった。

    スウェーデンの村とも呼べないような小さな集落で、
    ある冬の日に起こった残酷な大量殺人。
    その動機がアメリカの大陸横断鉄道の苦力の子孫の復讐だということがうっすらとわかってきたあたり、
    つまりは上巻の途中から、とくにつらかった。
    (そうそう、死体を発見し心臓発作を起こして亡くなってしまったカメラマンはかわいそうだった)

    さらにどう関係あるのか全く分からない中国とアフリカの話になった時には、
    完全に興味を失ってしまった。
    いったい、話をどこへもっていってまとめるつもり

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    2018年07月22日
  • 声

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    ネタバレ

    シリーズものの3作目だということを知らずに買ってみた。
    そのせいなのかどうなのか、主要な登場人物のキャラクターが序盤の会話や描写からイマイチつかみにくい。
    根底にある文化の違いという側面を置いといたとしても、訳文にはもう少しローカライズ的な発想があってもいいのでは、と思った。
    家族とは、と読者に問いを投げ掛けつつ展開されていくプロットは練り上げられており、読み応えがあった。

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    2018年07月20日
  • ピラミッド

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    ヴァランダーの20代から、第一作『殺人者の顔』前日譚までを集めた中短編集。

    刑事を目指していた巡査時代から、イースタ警察署の刑事捜査を担うベテラン刑事までの長期間の年代を追っている。私生活でも、夫婦関係や父親との微妙な確執など、その変化が順を追って垣間見える構成はまさにヴァランダー・ファンのための一冊と言えるだろう。

    話によって頁数が大きく異なるので、ストーリーの厚みに多少の差はあるが、短編であってもシリーズらしさは出ていると思う。社会的背景を色濃く出したやるせなさも印象に残るが、やはり警察ミステリとしてのプロセスが秀逸。特に巡査時代である前半が面白く、優秀だが風変わりな刑事の元で、戒めら

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    2018年06月23日
  • ピラミッド

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    ネタバレ

    シリーズ開始までの出来事の短編集。
    久しぶりに初期のメンバー集合で懐かしかった。
    ドタバタぶりもいつも通り。
    シリーズ1作目を読んだときは何とドタバタすることかと思ったが、今はこれが心地いい。
    あと2作未訳があるとのこと。
    作者が亡くなってそれ以上望めないのが残念であるが、早く読みたい。

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    2018年06月18日
  • 殺人者の顔

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    うーん、あんまりおもしろくなかったな。
    シリーズものだけど、他のは読まないかな。

    主人公に魅力を感じられなかった。

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    2018年05月30日
  • ピラミッド

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    「ピラミッド」
    北欧ミステリの帝王ヘニング・マンケルが生んだ刑事、クルト・ヴァランダー。ガラスの鍵賞受賞の第一長編『殺人者の顔』以前の、若き日のヴァランダーを描いた短編集。


    クルト・ヴァランダーが初めて登場したのは「殺人者の顔」で本作は9作目。前作「ファイアーウォール」で打ち留めになる所を「殺人者の顔で描かれた1990年より前のヴァランダー刑事(のち警部)を見たい」との読者の声に答えた形で発表されたのが本作「ピラミッド」である。本作では、新米巡査時代からシリーズが始まる直前42歳までのヴァランダーの活躍を描いた5編の短編(とはいっても表題は原書で237ページもあるらしく、それは短編じゃない

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    2018年05月29日
  • 声

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    うーむ。読み始めから、雰囲気が暗いなあ、と。この作家さんの作品は全てそんな感じですが。誰も救われないまま、事件が解決して終わったという感じ。明るい要素が無さすぎるのも、読み進めるのがつらくて、ああ終わってほっとした。

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    2018年05月26日
  • リガの犬たち

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    キナ臭い世界(社会)情勢をテーマにしているもののそうした問題性を映した物語としては凡庸というか残念な作の印象。ルポ(報道)が伝えるところの圧政(暴政)の現状など易く知ることが出来るワケで、そこ(ラトヴィア)に招かれてほとんど旅行客然の主人公の暢気さに対しては、いくらなんでも・・の認識(思慮)の不足がうかがえるように思われた(言い過ぎか?)。しかしそれでも惚れっぽい主人公ヴァランダーの人間臭さの魅力はよくとらえられ、また物語展開の緊張感あるその最中にも巧くユーモアを織りこんだ筆致はよかった。終盤は緊迫感ある展開で惹きこまれはしたのだけれどやはりもう少し物語に厚みが欲しかった。

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    2018年04月17日