石井光太のレビュー一覧
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貧困を主なテーマにデビューしてはや14年。物乞う仏陀を読んだ最初の衝撃は今でも思い出せます。
自分から現地の人々に立ち交って、泥と汗にまみれて取材するスタイルの出来たいきさつや、子供の頃から今に至るまでのコンプレックスるや苦しみ、とことんまで自分を追い込んで、精神的に崩壊しそうになりながら取材したあらゆる苦しみの形。そんな貧困の中から生まれる優しい光を誰かに伝えたいという使命感が胸を打ちます。打たれ過ぎてあばらが折れるのではないかと思うほどでした。
印象的だったのは、どんな境遇にあっても、誰の胸の中にもある「小さな神様」「小さな物語」の存在でした。本当に神に祈るわけではなく、どんなに困窮してい -
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遺体とそれから、について。
3月11日、私は遠く九州にいて何気なくテレビをつけた。最初、映像が事実だと思えず、何か映画のワンシーンなのかと思った。
事実とわかった後ショックで暫く動けなかった。
その後、日本赤十字を通じて寄付をしたり、某大手薬局で買い占めた生理用品を被災者へ無事届くよう祈りつつ送ったりした。
全国からの支援金や自衛隊の方々、ボランティアの方々が現地へ行かれたと思う。
しかし、私個人の支援はあくまで生き残った被災者がたの取り敢えずの生活の為で、御遺体については浅はかにも考えていなかった。ただ、新聞に掲載される御遺体、行方不明者の人数が日々増えていくのを痛ましい思いで見ていただけである。人が亡くなれば、御遺体 -
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家や故郷を追われたハンセン病の人たちが行く当てもなく四国遍路を延々と続ける過去があったことは知っていた。しかしそれは一般の遍路道ではない。カッタイと呼ばれ蔑まれながら人目につかないように移動したり、死体の処理など人々が嫌がる裏方仕事をすることでしのいでいかなければならなかったとは。信仰や発願成就の意味合い以上に、どこにも行けず堂々巡りをしていた人たちが、ほんの最近ともいえる昭和30年代くらいまで存在していた。
物語はハンセン病の人たちが受けた苦しみ、不条理を色濃く描き出す。現代の失踪・殺人事件に過去が絡んでくるミステリー小説の体だが、ミステリーの色よりハンセン病の人たちが苦しむ姿にうまく焦点が -
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著者が東南アジアから南アジアにかけての国々でホームレスのような障害者と出会ってのルポ。先天的な身体障害者、知的障害者もいれば、稼ぐために手足を切断されたような子どもたちも出てくる。子どもたちの手足をほんのいっとき稼がせるために奪い、使い捨てのように扱うようなことがこの世の中で起こっている不条理。「物乞う仏陀」という美しいタイトルとしっかり練られた文章と構成にぐんぐん読んでいけるのだが、それだけにちょっとあざといような感触も。
何かというと売春したりスケベ話をすることで男どうし渡りをつけていくのって、それが真実なんだろうけど嫌悪感。実際そうなんだからしょうがないじゃん的にしっかり利用している感じ -
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山奥の集落で起きた老人たちの失踪事件。養父の殺人未遂で服役経験のある父が関わっているのか、60年前の悲劇との関係は。
ハンセン病患者が隔離され、差別されていた時代の患者たちの苦しみや悲しみが重い。伝染力の強い病気だと思われていたことや患者の症状が外見に出やすいこと、国の政策であったことから、本当にどれだけ大変だっただろうと思うと辛い気持ちになる。話自体はフィクションとはいえ、同じ過ちは繰り返さないようにしないとと思う。
ミステリとしては、殺人のくだりがちょっと安易すぎる気もするが、最後のサプライズは何だか府に落ちて、よかった。ミステリ好きだけでなく、ハンセン病について知りたい人にも読んでもらい -
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石井光太『絶望の底で夢を見る』徳間文庫。
『東京千夜』の改題文庫化。
東日本大震災以来、いつも死や災害がすぐ隣に居るような感覚をうっすら抱いている。その感覚は何年経とうが消えることはないだろう。世の中は欺瞞に満ち溢れ、何が起きてもおかしくない時代。まさかこんな時代が来ると誰が予想しただろう…
災害だけでなく、様々な事情や不幸により現代社会は常に孤独や死と隣り合わせであるのではないかという考えが頭の中に浮かんでくるような恐ろしい短編ドキュメンタリーであった。過酷な運命を背負い、自ら死を望む人びと、様々な不幸による肉親の死を悼む人びと。そんな人びとの物語が綴られる。 -
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解説にもある通り、やるせなさを感じた。ハンセン病は教科書で表面上だけ習ったのみで詳しいことはあまり知らなかった。だが本書を通じて、未だに苦しみが続いていることを知った。ネットで気になり検索してみたが本書ほど詳しい情報は載っていなかった。今自分にできることは何かあるのかということを考えるきっかけになった。著者のノンフィクションの作品を数々読んできて、初めてフィクションを読んだ。帯にはノンフィクションを超えたフィクションと書かれていたが、ノンフィクションを超えたという表現が少し引っかかる。ノンフィクションもフィクションと同じ、ノンフィクションというジャンルの物語だという風な感じがあり、ノンフィクシ
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戦争で親を失くした子供たちは多かったと
小さいころ、親からきいていた。
アニメ映画「火垂るの墓」でみすてられた兄妹が力尽きていく姿は印象に深い。
しかし、日本の歴史の教科書は、終戦の後、すぐに復興、高度経済成長へと、輝かしい軌跡だけを描いている。
焼け野原と高層ビルの間には、真実何があったのだろう。
お国のためと、親を戦争にとられ、無差別に降る焼夷弾に家と家族を焼かれ、生き残った子どもたち。復興に最も必要なはずの、次世代をつくる国民を、なぜ国はきちんと庇護しなかったのか。
私利私欲、無計画に戦争をはじめ、兵の犠牲も軽んじ、戦局を見誤り、退き際をも間違え、そして戦後までも無策だったのか。
まる -
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石井光太『浮浪児1945‐ 戦争が生んだ子供たち』新潮文庫。
1945年の終戦直後、焦土と化した東京にあふれ出た浮浪児たちの軌跡を追ったノンフィクション。日本の暗黒史とも言うべき、暗澹たる時代に真っ向から対峙し、当時の浮浪児たちの姿を描き切った取材力と筆力に脱帽。
読みながら歴史は繰り返すという言葉の通り、我々も近い将来、終戦直後の浮浪児たちと同じように、毎日毎日を衣食住の心配をしながらやっと暮らすことになりかねないのではないかと思った。
終戦直後は政府や行政の混乱と敗戦による経済的な影響などから、こうした事態に陥るのはやむを得ないと思う部分もあるが、現在の政府や行政のやり方を見ている限 -
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これが現実
あくまでも感想であり 読む人により思いは違うと思います。自分らは報道の一部分しか知らずにいたことの居たたまれなさを感じました。自分が被災者であったとすれば多分同じ感情や行動をとっただろうと考えさせられました。遺体とはまた違った見方ができてあらためて震災のもたらした脅威を感じざるを得ませんでした。
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フィクションではあるが内容は数多の取材による真実の結晶である。昨今、日本人は素晴らしいというTV番組が多い。誇らしい気持ちもある(過熱気味で気味悪さも感じているが・・・)。そんな日本人も鬼になるし、鬼畜の所業の過去がある。現代を生きる僕らに出来ることは、過去を知り、絶対に鬼にならないという固い決意。ぜひ本書を手に取ってほしいと思う。
あらすじ(背表紙より)
ある者は朝食を用意している最中に、或いは風呂を沸かしたまま、忽然と姿を消した。四国山間部の集落で発生した老人の連続失踪事件。重要参考人となった父に真相を質すべく現地に赴いた医師は、村人が隠蔽する陰惨な事件に辿り着く。奇妙な風習に囚われた村で -
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「人が生きる」とはどういうことだろう
石井光太さんのルポルタージュを読むたびに考えさられる
世界中の貧困、最底辺国の最底辺に暮らす人々に寄り添って綴られたルポルタージュを読むたびに考えさせられる
ー私は「途上国の笑顔」という言葉があまり好きではない
とおっしゃる
ー劣悪な環境の中で、蟻地獄のような生活に突き落とされた彼らが見せる底なしの笑顔の源泉が気になっていた
と続けておっしゃる
今回のテーマは「出産」
それはそれは信じがたい世界の劣悪、悲惨な場所(スラム、売春宿、戦場、難民キャンプ…)での「産声」が今回の取材のキーワードである
いつものように想像を絶する劣悪な環境のルポルター -
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全ての若者が一度は目を通しておくべき本だと感じた。
*海外に一人で行くと、日本にいるとわからない自分の欠点に気づける
*正論や固定観念にとらわれない物の見方ができるようになる。
*何かを取り組むときはそこに取り組む必然性と最短ルートを考える。必然性がないと、ここぞの場面で頑張れない。
*必然性は自分で作る。
*周りとは今の差ではなく、10年後の差で考える。やり続ければ必ず差が付く。
*チャンスはあくまでもアピールできるチャンスをもらっただけ。そこをどれだけ活かせるか。また、数年おきに訪れるビックウェーブには必ず乗ること
*やりきる人間にはエネルギーが集まり、リソースがついてくる。 -
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とにかくショックな一冊だった
目をそむけたくなるような写真が多く
でもこれがまだまだこの世界の現実なのだ
豊かな国はほんの一握り
ゴミ溜めの中で生きる子どもたち
自分の目をつぶされ、腕を切断され物乞いさせられる子どもたち
歩けないので自分の汚物で垂れ流しの台車の上でくらす老婆
売春をする幼い少女達
貧しい世界ではいつも犠牲は子どもたちか
ひ弱な老人たち
でも彼らの目は意外なほど力強い
そんな生活の中でも、しっかりプライドを持って生きている
生きるエネルギーが伝わってきて
豊かな世界にいる自分の方がひ弱な気がしてしまうのはなぜだろうか
作者の石井光太さんは本当にすごい!!