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Posted by ブクログ
貧困を主なテーマにデビューしてはや14年。物乞う仏陀を読んだ最初の衝撃は今でも思い出せます。
自分から現地の人々に立ち交って、泥と汗にまみれて取材するスタイルの出来たいきさつや、子供の頃から今に至るまでのコンプレックスるや苦しみ、とことんまで自分を追い込んで、精神的に崩壊しそうになりながら取材したあらゆる苦しみの形。そんな貧困の中から生まれる優しい光を誰かに伝えたいという使命感が胸を打ちます。打たれ過ぎてあばらが折れるのではないかと思うほどでした。
印象的だったのは、どんな境遇にあっても、誰の胸の中にもある「小さな神様」「小さな物語」の存在でした。本当に神に祈るわけではなく、どんなに困窮していても、心の底にある良心や希望の事を指しています。
昔から、何故こんなに苦しい事ばかり取材するのだろうか。やはりてっとり早く話題になりたいからなのか?と思った事もありました。でもこの本を読んで、心の隅に巣食っていたそんな疑問は雲散霧消です。彼の視線を信じる事が出来、世の中のどんな絶望的な状態からも光を見つけ出すための指針となる素晴らしい本でした。
Posted by ブクログ
スラム貧困街や被災地など、文明も社会保障もない本能むき出しの人間が生きる場所を取材し、住人たちの声を書き続けるライターの自伝。
著者の作品を読んだことがある人なら、おそらく持つであろう疑問。なぜ、そんな危険を犯してまで書くのかという点に答えている。
その答えはズバリ、タイトルにある。貧しく悲惨な場所でも人は生きようとする。未来には絶望しかなく、死んだ方がマシという状況でも、人は妄想で都合の良い「小さな神」を生み出し、それにすがる。そこから生み出される生命力を著者は何よりも美しいと感じる。そして、自分の心を突き動かされたことを人に伝えたいと思う。それが、著者の揺るがない作家精神だ。
Posted by ブクログ
本書を読むまでは、石井光太氏はジャーナリストだと思っていた。そのため、世界の国々の惨状を伝えるべくカメラを向け、言葉を紡いでいるのだと勘違いしていた。しかし、その惨状の中でも希望を見いだし生きていく人たちの力強さと美しさを伝えたい。その気持ちを胸に執筆していたことを本書を通して初めて知った。
繰り返しでてくる一人一人にとっての「小さな神様」
想像もできないほどの絶望や状況の中で、人は何を胸に抱いて生きていくのか。そんな著者の真摯な眼差しに心うたれた。
ー私は他者を見つめるさいに大切なのは、相手がどんな小さな神様を抱いているのかを知ることだと思います。(中略)
小さな神様を見つけるためにはどうしたらよいのでしょうか。(中略)「自分の文脈で勝手な価値観を押し付けるのではなく、相手の文脈で大切にしているものを探す」
何が不幸で幸福なのか。それはその場所その場所で懸命に生きている人たちの「小さな神様」に集約されている。それを知らずに、正義という大義名分を振りかざし、こちらの価値観で物事を解釈したり論ずる事はただの思い上がりでしかない。黒か白か、正義か悪か。それのみで判断できる程自体は単純でもなければ人間は強くもない。グレーであるかもしれない部分にすら寄りかからなければ生きていく事すら難しい極限状況の中で、人は皆それぞれの「小さな神様」を懸命に抱きながら生きている。それでも人は生きていこうとする。その生命力に、力強さに胸を打たれる。
ーつまり、絶対悪も絶対的犠牲者もいない混沌が世の中の現実なのだという結論を提示したのです。
物事をより多面的にごまかしなく捉えようとするその真摯な姿勢を感じる。人はわかりやすい物語を求めがちで。でも現実はあまりに複雑で重い。そうした現実を真っ正面から見つめている著者の真摯な姿勢に深い感銘を受ける。
ー私が伝える意味は何なのでしょうか。(中略)第三者が認める事で初めて、「小さな神様」や「小さな物語」は、それを必要とする人々の胸の中で生き続けるものである。
2013年 ポプラ社
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