宇野利泰のレビュー一覧
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ネタバレ「ご存知かな?書物はすべて、ナツメグのように、異国から招来される香料のにおいがします。わしは子供のとき、書籍のにおいを嗅ぐのが大好きだった....」(p.165) ※この一文、自分がナツメグ好きなこともあって、ドンピシャに刺さった。
ディストピア小説で名高いだけあって、文句なしに面白かった!唯々諾々と受動的に生きてきた主人公が、ある少女との何気ない出会いで認識が一変し、自分の正気を保つために行動し...という話。自分が正気=世界が正気ではない、世界が正気=自分は狂気、という0か100かというとんでもない緊張を突きつけられ、人と出会い、一歩を踏み出していく、希望はあるエンディングだった。自分は -
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元となった「ラヴクラフト傑作集2」は、
ボロボロになるまで読み込んでいました。
なのでこの本は再読の再読。
・クトゥルフの呼び声
大伯父の残したものを調べることで、
知ってしまった宇宙からきた恐怖の神々の存在。
未知なる名状しがたきものから追われる恐怖!
・エーリッヒ・ツァンの音楽
禁断の曲を奏でたことの悲劇か?
それとも、その演奏を未知なるものに愛でられたのか?
・チャールズ・ウォードの奇怪な事件
不可思議なる先祖を調べることにより、
後戻りできない運命となる青年と、救おうとする医師。
クライマックスの対決は息をのむ!
作者の創造力が毒々しく花開く作品集です。
風景や人物の描写の素晴らしさ -
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本の所持が禁止された世界を舞台に、見つかった本を焼き払う”焚書官”の仕事をするモンターグの姿を描いたディストピアSF。
以前NHKの「クローズアップ現代」で読書について取り上げられているのを見ました。その番組の中の実験で普段読書をする学生としない学生でレポート課題に取り組む際どのような違いが見られるか、ということが実験されていたのですが、それがこの本の内容とシンクロしているような気がします。
モンターグはふとしたきっかけから衝動的に一冊の本を持ち帰り、その本を読み自分の仕事に疑問を持ち始め元大学教授のフェイバーに話を聞きにいきます。
フェイバーが語る書籍のない社会に欠けているも -
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書籍を持つことが禁じられた世界。書籍の一切を焼き払う「焚書官」という仕事に就くモンバーグは、近所に越してきた不思議な少女クラリスと出会い、また書籍とともに命を落とす老婆の存在を目の当たりにし、本を忌むこの世界に疑問を持ち始める。
思考すること・物事に疑問を持つことの重要性、思考の時間を奪われることの恐怖と弊害、さらには人間らしさとは何かを問う作品だと思う。
耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビから、引っ切り無しに流れてくる情報の海。書籍から知識や思想を学び感じ取ることを禁じられ、物思いにふける時間すら悪とされる。
徹底的に思考を管理された世界は、確かに人と衝突することなく一見平和かもしれない -
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ネタバレ「クトゥルフの呼び声」始まり、短編「エーリッヒ・ツァンの音楽」をはさみ、長編「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」で終わるこの第2巻はこれぞラヴクラフトという感じがした。
ちなみに、今のところラヴクラフト全集1~4巻までしか読んでいなく全部読んだわけではない。各話の軽い感想を書いていく。
「クトゥルフの呼び声」はまさにクトゥルー神話の原典ともいうべき話でクトゥルフを始めとする地球上に潜む人間をはるかに凌駕する者達の存在や、それを示唆する魔導書の存在、海底に沈む古代都市など、クトゥルー神話にとって重要な物々が一つにまとまった話である。地球に潜む秘密のあまりの大きさにSFでありながら、頭がクラク