宇野利泰のレビュー一覧

  • ラヴクラフト全集7
     完結巻だからなのか、既刊からこぼれたものを拾い集めて編集した感はある。しかし、決して駄作凡作ばかりというわけではない。
     小説の原型となった、夢の内容を書き起こした手紙を収録した『夢書簡』は、夢の描写が緻密でなかなか面白かった。物書きの練習に夢日記をつけるのも良いのかもしれない。
     最後に収録され...続きを読む
  • ラヴクラフト全集6
     6巻は、後に「ドリーム・サイクル」と呼ばれる世界観に統合されるものを舞台やネタにした作品を収録。
     そして、クトゥルフ神話とドリーム・サイクルの世界観を統合した、前期ラヴクラフト神話の集大成とも言うべきファンタジー大作『未知なるカダスを夢に求めて』。夢の世界で苦しみながらも自由に大冒険を繰り広げる...続きを読む
  • ラヴクラフト全集4
    ①宇宙からの色
     荒地を見張る老人が語った、かつてそこに住んでいた家族に起きた悲劇とは――
     非知的生命体による侵略物。映画で例えると『遊星からの物体X』とか『ブロブ』とか。こういう恐怖は時代を問わず通じる。

    ②眠りの壁の彼方
     精神病院に強制入院させられた、殺人を犯した男。二重人格を思わせる発作...続きを読む
  • ラヴクラフト全集3
    ①ダゴン
     船乗りのわたしは運悪くドイツ軍に拿捕された後、すきを見て逃げ出す。漂流の後に小島に漂着したわたしは、丘の頂上を目指すことにしたのだが――。
    ●「窓に!窓に!」で有名な、クトゥルフ神話の原型とも指摘されている短編。

    ②家の中の絵
     道中で雨宿りのために家屋に入ったわたしは、そこでテーブル...続きを読む
  • 寒い国から帰ってきたスパイ
    30年ぶりくらいに再読。
    ほぼ覚えていなかった。
    ただ、後味の悪い作品だった記憶があったが、読み返してやっぱり読後最悪。
    しかし、これがスパイ小説の神髄なんだろうな。
    善悪の区別もない、因果応報もない。
    何ともやるせない。

    三分の二程度、法廷への場面までは、やや冗長。
    しかし、ラスト三分の一でのス...続きを読む
  • 思考機械の事件簿1
    代表作「十三号独房の問題」を含まない短編集
    書かれた時代を思えば仕方ないかもしれないが
    標準作であるもののそれ以上ではなく
    これ以上が前記ひとつでは埋もれてしまうのもいたしかたなしか
  • ドルリイ・レーン最後の事件
     X・Y・Zの悲劇に続く最後の悲劇はドルリー・レーンの死で終わる。名探偵役ドルリー・レーンが最後の真犯人だった。
     全てはラストページ、ベンチに座り首をもたげ冷たくなっているドルリー・レーンのワンシーンのためにあった――と解説にあるが、これは納得だ。確かにそのシーンはきれいである。でもあまりにそのシ...続きを読む
  • 寒い国から帰ってきたスパイ
    スパイ小説の古典的名作。
    WW2後の東西冷戦時のベルリン、ロンドンを舞台にイギリス諜報部のスパイを描いている。

    時代のせいか、ちょっとわかりにくい箇所が多いと感じたが、後半の疾走感や緊迫感はさすがと感じた。ジョン・ル・カレ氏の作品は初めて読んだが、他も読んでみたいと思う。
  • ラヴクラフト全集1
    それぞれ初めて読んだということはないけれど、全集としてとりあえず一通り読もうって企画。
    改めて読むと、なんか描写というか文章が下手な人だったのねという印象。(^^;
    もしかすると、翻訳のせいかもしれないけれど、たまになにを言っているのかわかりづらい地の文があるんだよね。
    読み直して思ったのは、旧神や...続きを読む
  • 華氏451度
    解説によれば、華氏451度は摂氏233度にあたり、紙が自然発火する温度だそう。ある意味、主人公ガイ・モンターグの中で何かが自然発火することの暗喩のようにも読めたりしそうです。主人公モンターグは焚書官であり、本を焼く仕事をしているのですが、ひょんなきっかけでそれまで見えていた世界がぐらつくんですね。そ...続きを読む
  • ラヴクラフト全集6
    白い帆船★3
     楽園を目指した灯台守。この結末は、今いる世界こそが楽園であるという示唆なのか。

    ウルタールの猫★3
     HPLは猫好きだったのかしらん。ウルタールという地名は、この後の話でも出て来る。

    蕃神★3
     思い上がった賢人バルザイ。神の怒りに触れる展開は素直すぎるほど。

    セレファイス★2...続きを読む
  • 華氏451度
    1953年作品。本の中に50年前のV2ロケットの映画・・・という文章があるところを見ると、舞台はほぼ今の時代ということになる。
    著者が想像した現在の姿は、海の貝と呼ばれるイヤホン型ラジオを常時耳にさし(ウォークマン?)、低俗なテレビに一日中見入り、若者は面白くないことがあるとスピードに酔いしれ(暴...続きを読む
  • ラヴクラフト全集6
    全集⑤巻まで続けて読んでおきながら、
    その後スルーした⑥巻を今頃。
    ジーン・ウルフ『書架の探偵』読後、猛烈に気になり始めたので。
    理由は↑これ↑をお読みの方には何となくおわかりいただけるかと。
    春日武彦先生の書評エッセイ集『無意味なものと不気味なもの』で
    「ランドルフ・カーターの陳述」ネタばれレビュ...続きを読む
  • ラヴクラフト全集3
    ダゴン
     短い!「窓に!窓に!」の終わり方が印象的だけど、本文にダゴンの言葉が出てこないのはなんだかなあ。『インスマウスの影』のダゴン教団の聖地だったのだろうか。

    家のなかの絵
     これまた短い!そして起承転結でいえば、起承で終わるという中途半端さ!爺さんが食人鬼だったんでしょ。

    無名都市
     超古...続きを読む
  • ポケットにライ麦を
    アガサ・クリスティーの作品は初めて手に取った。非常に読みやすい印象。訳が素晴らしいからなのかな…。

    ストーリーや犯罪動機、トリックは特段目を見張るものではないが、読んでいるだけでなんだか優雅な気持ちにさせてくれる心地のよい作品。
  • Yの悲劇
    Xの悲劇の次に読んだ。Xの悲劇はとても面白い作品だったがYの悲劇は事前評価の圧倒的な高さのわりに、読み終わると不満点が多々あった。
    最も大きい不満点は犯人である13歳の少年が小説の筋書き通りに犯行をすすめるため、ヴァニラの匂いのする軟膏を自分の手首に塗る、という場面。13歳の知能ならこれがヨーク・ハ...続きを読む
  • 寒い国から帰ってきたスパイ
    スパイ小説の古典的代表作。

    イギリスのベテラン諜報員、アレックリーマスは敵対国の凄腕諜報員の手により、敵国内のスパイを皆殺しにされてしまい、失脚した。
    リーマスは個人的に復讐を誓い、非公式に敵対する諜報員を破滅させる作戦を上司と計画し、実行に移した。
    それは自らのキャリアを捨て、人生を代償にした作...続きを読む
  • Xの悲劇
    ミステリ。ドルリイ・レーン。
    非常に濃密な本格ミステリ。
    探偵が犯人を知っても言わないのは、少しイライラ。しっかりとした理由があるのは凄いのですが。
    第二幕最後の法廷と、最後の謎解きはやはり圧巻。
    やはりインパクトは『Yの悲劇』のほうが大きいな。
    森博嗣『χの悲劇』他、多くの作家に影響を与えたのは納...続きを読む
  • ラヴクラフト全集1
    ・インスマウスの影
    インスマウス面という描写が印象的。町から逃げ出すところが一番ハラハラした。この本中で一番面白かった。
    ・壁のなかの鼠
    不思議な寺院の話。厄介な人格が出てきたのか、何かに憑依されたのか。
    ・死体安置所にて
    足を切って棺桶に入れてた葬儀屋が死者に足を食われる話。あんまり不思議さはない...続きを読む
  • ラヴクラフト全集1
    文体がとっつきづらく読みづらい。呪われた家系って設定が好きなのかな。元ネタとしてもう少し読んでみる予定。