宇野利泰のレビュー一覧
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若い頃、もう30年前くらいになると思うが、ミステリー、スパイ小説、冒険小説と呼ばれる本ばかり読んでいた時期があり、ジョン・ル・カレはお気に入りの作家だったし、この「寒い国から帰ってきたスパイ」も夢中で読んだ記憶がある。
およそ30年ぶりの再読であるが、ストーリーを全く忘れていた。それは悪いことではなく、30年ぶりの再読も夢中になって読むことが出来た。
スパイの闘いは、頭脳戦である。
英国情報部は東ドイツの情報部の幹部の失脚を図るために、情報部員のリーマスにある工作を命じる。そこから二転三転、派手なアクションはほとんどないが、英国情報部、リーマス、失脚を画策されたターゲットの頭脳戦が展開される。
この話は、冷戦時代の西側と東側の対立が前提となった話であり、そういう意味では、東西冷戦を背景としたインテリジェンス戦というのは、当時ほどのリアリティを持てないが、今でも、中国やロシア、中東の国々ではこのようなインテリジェンス戦が繰り広げられているはずで、場面は変わっているが、それでも、相変わらずリアリティを持った物語なのだろうと思う。 -
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『探偵小説の黄金時代』のマーティン・エドワーズが選んだ、本にまつわる英国ミステリ・アンソロジー。
各作品の前にある作家紹介や解説も良かった。作家の背景や当時のことを知ってから読むと味わい深くなる。
古典英国ミステリ好きにはたまらない一冊だった。
特に印象に残った作品(面白かった順)
■ロイ・ヴィカーズ『ある男とその姑』
断トツの1位。倒叙が好きでこれまで読んできたけど、ここまで見事な作品にはなかなか出会えない。
コロンボの〈あの作品〉を彷彿とさせる、誰にも文句の付けようのない綺麗な鋭いオチ。
単にトリックを見せるための物語ではなく、「焦るがゆえに余計なことをしてしまうよね」という人間心理の描写が見事。
犯人の人物設計から仕掛けまでがすべてが計算されていて巧みな展開に感動した。
2回読んだうえに、ノートに書き出して自分なりに整理したくらい最高だった。
■クリスチアナ・ブランド『拝啓、編集者様』
名前はよく聞いてたけど、初クリスチアナ・ブランド。ブラックな捻りが最高。
■E・C・ベントリー『救いの天使』
★10だった名探偵トレントにまたここで会えるとは。
■フィリップ・マクドナルド『殺意の家』
怪しげな伏線にすっかり乗せられて夢中になった。
■ヴィクター・カニング『性格キャラクターの問題』
サスペンスとして面白い。何でもすぐにできちゃう人っているよね。
■S・C・ロバーツ『メガテリウム・クラブの奇妙な盗難事件』
ホームズ研究家によるホームズのパスティーシュ。
■A・A・ミルン『荒っぽいゲーム』
くまのプーさん作者からは想像もつかない上質なミステリ。
■ニコラス・ブレイク『暗殺者クラブ』
ディテクションクラブがモデルになっているらしく、『探偵小説の黄金時代』を読んでいたのであれこれ想像できて楽しい。
解説にもあるように、前菜からメイン、スパイスの効いたものまで揃ったフルコースを堪能した気分。
ロイ・ヴィカーズとクリスチアナ・ブランドをもっと読んでみたい。
それから作品を精選したマーティン・エドワーズの作品も。
本屋さんで見て急に読みたくなった。
本屋さんはやっぱり良いな。 -
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新訳も買ってたのに、間違えて古い方で読んでしまいました。が、それはさておき非常に良かった。
複雑なことを考えさせないために、不要な情報の負荷を与え続けることで市井の人を無害化させるというのは、SNSなどで情報の洪水が押し寄せる現代を予見していたようで、読んでいてヒヤッとしました。
まぁ、ただ「辛い状態を麻痺させるため」だと言われると絶対に悪だとも言い切れず、是非の判断は個人にゆだねられるべきだとは思いますけどね。
また、好みのコンパニオン(家族)が画面から派手な映像と共に話しかけてきたり、ストーリーを流したりするのは、AIコンパニオンに依存する人や、今後AIで個人に最適化されたコンテンツが量産される近未来を予見しているようで、こちらもゾクっとしました。
あとは、機械シェパードが怖い。足が多くて蜘蛛のように動く機械が、においを追ってシャカシャカ近づいてきたうえに薬物を打ち込んでくるとか、悪夢以外の何物でもないですよね。
『ゴールデンスランバー』では「お前、オズワルドにされるぞ」と体制のせいで犯罪者に仕立て上げられる人が主人公でしたが、その逆(オズワルド側)からみた、罪の押し付けというのも結構怖いものだなと思いました。
これだけ市井の人の思考力を奪っておきながら、あの機械シェパードが作れたり、終末戦争に至ったりするプロセスは正直よくわからないな、とは思いました。そういった点や、他国が存在する中で、国力を著しく下げる体制を取るという点には大きめの疑問が残りますが、それ以外の未来予想やSF的なディテールで十分に楽しめたので良しとします。
にしても、著者は本好きですよね。本というよりは思索の積み重ねとしてのメディアの大切さと、それを消化し次につなげることの重要性がわかっているのかもしれないですね。 -
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ネタバレ良作。
探偵:レオ・カリングが披露するラストの公開推理パートが他のミステリーではあまり見ない、「犯人に嫌がらせをして、自白させる」とかいう容赦ない方法をとるのが、個人的に新鮮で面白かった。
物語の形式で犯人が察せてしまう部分はあるが、犯人の頭の良さ、異常性、途中の行動が錯綜する場面等は読んでいて、かなり楽しめるものだった。
少し残念なところは「とても読みにくい」こと。
言葉のリズム等は気にならなかいが、シンプルに平仮名が多く、読んでいて疲れる。
『アルジャーノンに花束を』のように、意味のある平仮名かと最初は思ったが、そんなことも無いため、個人的にその点だけ低評価という感じ。 -
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十五代デンヴァー公爵の次男坊であるピーター・ウィムジイは、ワインとコーヒーそして一流の謎が好きな貴族探偵。そんなウィムジイの魅力がたっぷり詰まった短編集。7篇収録。
「盗まれた胃袋」が一番好き!
ウィムジイがいいキャラなんだよねー。飄々としていて雰囲気イケメン(容姿は普通)カッコつけすぎず、でもスマートで、ザ・英国紳士。夫婦喧嘩したら黙って皿洗い始めちゃうあたりでもうダメ、めちゃくちゃ好き。
周りも良キャラ揃いで読んでいて楽しい。
謎自体はバカミス味もあるし、本格派には
ウケなさそうな気はするけど(クリスティの方が日本で売れているのがおそらくそれ)バカミス&キャラ小説好きな私にはたまらんぐらいハマりました。これからシリーズ読むの楽しみ!(東京創元社さんの名著復刊で常連だから安心感ある)
「盗まれた胃袋」で胃袋のこと「大叔父」って呼び合っているのがたまらなく好き。 -
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ネタバレホームズのライバルとして描かれたアメリカ発のミステリ。とても読みやすい短編集で、思考機械と呼ばれる男と新聞記者がバディとなって難事件を解決していく。ホームズにおけるバディのワトソンは聞き役に徹しているイメージだが、こちらのハッチンソンくんは教授の指示通りに動き、時には教授以上の働きを見せるときもある。ていうかめちゃくちゃなオーダーすらこなしていくので、割とハッチンソンの役割が大きい。そこがホームズたちとは違うかもしれない。古きミステリながらとても読みやすく面白かった。ただただタイタニック号の事故によって亡くなってしまったのが残念でならない。
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ネタバレ一巻を読んでからずいぶんと時間が経ってしまった。
心持ちとしては、カルピスは好きでも原液ではよう飲めん。味噌汁は好きでも味噌のままではそうそう食えん。そんな感じ。続けて読んだら胸焼けする。
すべてがここにある。そう思えるほどに濃い。
若き日に愛した菊地秀行や栗本薫の、原点の一つであろうことは間違いあるまい。この二人の作家の文体に同一の祖型を感じることがある。それはハワード、正確にはその翻訳で間違いないと思える。
『鋼鉄の悪魔』
廃墟から復活した城邑は、ドラゴンランスの暗黒の女王の神殿を思い出させる。べレムが復活させちゃったやつ。
この城邑は暗緑色だという。このイメージはWoWのフェル色を思い出させる。緑は魔や地獄を象徴する色ってことなんかね? ベレムの胸に埋め込まれた宝石も緑柱石だし。
どことなく『ダイナソア』を思い出させる雰囲気もある。
『黒い予言者』
ヤスミナという名も含めて多方面に影響を与えたのではないかと思わせる。
1980〜90年代、水晶を攻撃させるゲームが目白押しだった印象がある。水晶を全部破壊するとボスに攻撃可能になるとか、先へ行けるようになるとか。元ネタはこの作品なのかもしれない。
p.182 魔術理論のようなものが短く記されている。原点にして、というやつか?
p.228 怒りの表現で、視界が赤く染まる、目に赤い霧がかかるという。ドラゴンランスで幾度か目にした表現だったが、そういう経験はないし、日本の作品になじみのある表現でもない(海外ファンタジーに影響を受けた作品に稀に見受けられたが)し、毛唐は血圧高いんだなとか思ってた。なにか格言めいた言い回しでもあるのか。
『忍びよる影』
p.294 かつてなく血なまぐさい戦闘描写。コナンシリーズの戦闘時の描写は意外にも簡潔でブラッディというよりは活劇のような印象が強いが、本作はベルセルクの原点かと思わせるほどに濃い。
p.299 コナンは胸毛が濃い。シュワルツェネッガーの印象で体毛は皆無と思っていた。
資料編の草稿作品を読んでいたら、不意に山田章博の『ロードス島戦記』が脳裏をよぎった。アマルリックの印象に、なぜだかベルドが重なった。
『闇の種族』
p.429 「黒い碑」の名が。
コナンという名が初出の作品であるという。剣と魔法というよりは冒険小説といった風合い。
頭を打って前世を見る展開。それ系の原点? 解説によればウェルズによる原始人もの、輪廻転生ものがハワードに先行して流行したようだ。また、ポール・アンダースンに影響されたという。
『野蛮と文明――ハワードのラヴクラフト宛書翰より』
p.468 (現在――1933年――の日本人の満州流入)の動きに関しては、日本国の存続に必要であるから、完全に容認するとあなた(HPL)ご自身が明言されています。
当時のアメリカ人でもこういう認識を持つ人がいたんだな、と。