宇野利泰のレビュー一覧
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本の所持が禁止された世界を舞台に、見つかった本を焼き払う”焚書官”の仕事をするモンターグの姿を描いたディストピアSF。
以前NHKの「クローズアップ現代」で読書について取り上げられているのを見ました。その番組の中の実験で普段読書をする学生としない学生でレポート課題に取り組む際どのような違いが見られるか、ということが実験されていたのですが、それがこの本の内容とシンクロしているような気がします。
モンターグはふとしたきっかけから衝動的に一冊の本を持ち帰り、その本を読み自分の仕事に疑問を持ち始め元大学教授のフェイバーに話を聞きにいきます。
フェイバーが語る書籍のない社会に欠けているもの。一つはものの本質をつかむ力。二つ目はその本質を消化する閑暇。そして三つ目が先の二つから学び取ったものを基礎において行動する力だそうです。
本が禁止された世界は、この小説の中ではこんな風に書かれています。
まず重要な役割を演じているのはテレビです。テレビは映像や音響の力で人間の想像力を縛ります。
また徹底したカットや編集、あらすじや概要だけを伝える省略化によって、視聴者にその番組の細かいところを想像させないようにし、また次の番組に移るという情報の意味を考えさせない工夫がされています。
また余暇はスポーツを徹底させて組織論を身体に覚えこませ、また身体を動かすことでふと物思いにふける時間を取らせないようにしています。
こんな世界だからこそ、人々は何も考えず与えられた情報をただ消費するだけになってしまい結果的に支配しやすくなるというわけです。
そして自分がNHKの番組とシンクロしていると感じたのはフェイバーが語る3つ目の理由。学び取ったものを基礎において行動する力です。
NHKの読書をする学生としない学生のレポート課題の取り組み方を調べる実験によって明らかになった違い。前者はネットで調べた後、本からさらに課題について知識を得、独自の観点を見つけそこから自分の意見を展開していったことに対し、
後者はネットで調べた多様なテーマをコピー貼り付けし、最終的にその多様なテーマを意見や考察に結びつけることなく簡単に数行で終わらせてしまう結果に終わったそうです。
こうしたところに学び取ったものを基礎において行動する力の限界が見えたように思いました。
ネットやSNSで簡略化された情報が次々と現れては消えていくようになった現代において、60年以上前に書かれたこの小説は今もなお警鐘を鳴らし続けているように思います。
警句的な意味でも名作ですが、ところどころに見られるブラッドベリらしい詩的なイメージや文章もさすが、と思いました。
そして徐々に本の重要性を知っていき、本を守るために命を懸けるモンターグの姿は本好きとして応援せずにいられなくなりました。そういう意味でとても共感しやすかったと思います。 -
Posted by ブクログ
書籍を持つことが禁じられた世界。書籍の一切を焼き払う「焚書官」という仕事に就くモンバーグは、近所に越してきた不思議な少女クラリスと出会い、また書籍とともに命を落とす老婆の存在を目の当たりにし、本を忌むこの世界に疑問を持ち始める。
思考すること・物事に疑問を持つことの重要性、思考の時間を奪われることの恐怖と弊害、さらには人間らしさとは何かを問う作品だと思う。
耳にはめた超小型ラジオや大画面テレビから、引っ切り無しに流れてくる情報の海。書籍から知識や思想を学び感じ取ることを禁じられ、物思いにふける時間すら悪とされる。
徹底的に思考を管理された世界は、確かに人と衝突することなく一見平和かもしれない。けれど刹那的で自身の意志を持たない「生」は、はたして「生きている」と言えるのか。
モンバーグの声に耳を貸そうとせずこの世界の規則に則ろうとする妻ミルドレッド、本に精通し知識にも長けながら本を真っ向から全否定する上司ビーティ、裏で本を肯定し冷静にモンバーグの想いに添う元大学教授フェイバーなど、モンバーグはそれぞれの意見に耳を傾け、自身の考えと立場に悩んでいく。
ある禁忌を犯してしまったモンバーグに降りかかる災難は、先が読めず一気読み必須です。
インターネットやスマートフォンが急速に普及し、溢れんばかりの膨大な情報が簡単に手に入る昨今。流れるように頭を駆け抜けていく情報にひとつひとつ向き合い、深く掘り下げる人はそう多くないはず。電車や歩道でスマートフォンに釘付けになっている人々の姿は、大画面テレビに没頭する妻ミルドレッドと重なる。
SFは苦手と読むのを後回しにしていたが、さすが巨匠ブラッド・ベリ、その中身は普遍的です。この作品のぞっとする怖さは現代に通じます。
~memo~
第一に大切なのは、われわれの知識がものの本質をつかむこと。
第二には、それを消化するだけの閑暇をもつこと。
第三には、最初の両者の相互作用から学び取ったものに基礎をおいて、正しい行動に出ることである。 -
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ネタバレ「クトゥルフの呼び声」始まり、短編「エーリッヒ・ツァンの音楽」をはさみ、長編「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」で終わるこの第2巻はこれぞラヴクラフトという感じがした。
ちなみに、今のところラヴクラフト全集1~4巻までしか読んでいなく全部読んだわけではない。各話の軽い感想を書いていく。
「クトゥルフの呼び声」はまさにクトゥルー神話の原典ともいうべき話でクトゥルフを始めとする地球上に潜む人間をはるかに凌駕する者達の存在や、それを示唆する魔導書の存在、海底に沈む古代都市など、クトゥルー神話にとって重要な物々が一つにまとまった話である。地球に潜む秘密のあまりの大きさにSFでありながら、頭がクラクラする様な思いがした。
「エーリッヒ・ツァンの音楽」は怪談話の様な怖さがある話しである。主人公がかつて暮らしていた下宿で経験した奇っ怪な体験。命からがら逃げたし生き延びたものの、住んでいたはずの街は存在自体がなくなってしまっていた。あれは何だったのか、詳細が書かれずに読者は想像するしか無い。初めてラヴクラフトの作品を読んだ時に感じた感覚に似ている。都市伝説のような感じがする話しである。
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」は長編である。本書の3分の2がこの話である。最初に結末から話し始めるという始まり方といい、魔術を利用した常識はずれの長寿を扱っているところといい「戸口に現れしもの」に似ている。まず本編は過去に生きた魔術師の暮らしぶりが、残された文献から得られた情報という形で現れる。更に、その魔術師を研究している青年、これがチャールズ・ウォードであるのだが、の人生についても本人からの証言や、記録などによって語られる。本編は一連の出来事に遭遇し、それに対応したある老医師の語りという形で語られるのである。
初めは、志半ば似て倒された邪悪な魔導師の一生が語られ、次にその魔術師の研究に没頭し、最終的に悲劇的な最後を迎える青年。その青年を救おうと、駆けずり回るも、自身も不可思議な出来事に巻き込まれ、全てを理解する老医師。それぞれの一生が事細かに、かつそれぞれの場面場面が自然と移っていく文章は素晴らしとしか言いようが無い。
最後現代に蘇った魔術師と、老医師の短いながらも緊張する対決シーンといい、ラヴクラフト不朽の名作と謳われるだけあって、見所満載の素晴らしい話しである。 -
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ネタバレ『氷神の娘』
雪原での戦い。戦いで傷ついたコナンが出会った少女と雪の巨人達の謎。
『象の塔』
ザモラ王国の都市シャディザールに立つ巨象の塔。巨象の塔に棲む魔術師ヤルの持つ宝を狙って侵入するコナン。塔の中で出会った盗賊タウラス。巨大な蜘蛛との戦い。塔の中に監禁されている生命体の秘密。
『石棺のなかの神』
聖堂の警備兵アルスが見つけた死体。町の金持ちプブリコの遺体。付近で発見されたコナン。警備隊の尋問。殺人の容疑をかけられるコナン。何者かに依頼され聖堂に侵入したコナン。殺害直前のプブリコの行動の秘密。石棺に隠された謎。
『館のうちの凶漢たち』
王国の権力を握る〈紅の司祭〉ナポニドゥスに目をつけられた貴族ムリロ。アムの寺院を襲撃し捕えられたコナンを脱走させることを条件にナボトゥスの暗殺を依頼する。脱走計画の失敗から自ら暗殺を企てるムリロ。何者かに殺害されたナボニドゥスの従者。ナボニドゥスの服を着た類人猿タク。地下の迷宮に閉じ込めらたムリロとナボニドゥス、コナン。
『黒い海岸の女王』
クシュに向かう船に乗り込んだコナン。黒海を荒らしまわる女海賊ベリ。ベリに襲われた船の上での戦い。生き残ったコナンを見染めたベリ。ベリの愛人として海賊船での地位を築いたコナン。入っていた船が何者かに襲われる密林への冒険。翼をもった怪物との戦い。廃墟での戦い
『消えうせた女たちの谷』
ケシャタの都に向かう途中に弟と共にバユユの王に誘拐されたリヴィア。殺された弟。バユユの王を訪れていたコナン。脱走しコナンに助けを求めるリヴィア。バユユの王が運ぶ荷物の中に隠された怪物との対決。
資料編
『死の広間』
『ネルガルの手』 (断片)
『闇の中の怪』
『闇の中の怪』 (草稿)
『ハイボリア時代』 -
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再読。
ドルリイ・レーンものはなかなか読み応えがあっていい。
ドルリイ・レーンの人となりは、好き嫌いが分かれるところであろうが、四部作の評価については(ひとまとまりで見たときについてでは)一致するだろう。
ただ、個々で見て何が一番かと問えば、「Xの悲劇」か「Yの悲劇」かで分かれる。
私はどちらかと言えば、心情的にどちらも一番だと、言いたくなってしまう(笑)。
というのも、秀でている箇所がそれぞれ違う為、比較し様がないと思うからである。思うにそれぞれの良さがあるから、このような意見割れが起こるのであろう。
「Xの悲劇」の秀でている点は、その「簡潔明瞭な論理展開」だろう。成程、と思わせるそのスッキリ加減は、やはり傑作といわれるゆえんだろう。
「パズル」の真髄を見た。
しかし、ダイイングメッセージのインパクトは、やはり「Yの悲劇」が随一。
Xも悪くは無いのだが、意味を明かされてもピンとこないようなものだからか、それが評価を多少落としている要因ではないかと思わざるを得ない。 -
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ネタバレミス・マープル・シリーズ
自分の会社でコーヒーを飲んでいたレックス・フォテスキュー。突然倒れ死亡したレックス。死因は毒殺。事件当日屋敷を離れていた彼の後妻アディール。息子であるパーシヴァル。パーシヴァルに内緒で感動していた息子ランスを呼び戻そうとしていたレックス。警察が容疑者としてマークしたアディール。青酸性の毒物で殺害されたアディール。事件当夜から姿を消したメイド・グラディス。事件の翌日帰還したランス。何者かに絞殺され鼻に洗濯バサミをつけられたグラディス。事件を知り現場に駆け付けたミス・マープル。グラディスに行儀作法を教え込んだミス・マープルの義憤。グラディスの恋人の正体。かつてレックスと共に鉱脈の株を買い現地で病死したマッケンジー。マッケンジー家の復讐か?行方不明のマッケンジーの娘。 -
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小難しいと言うか、考えて読まなければならないファンタジーが
続いた反動で、何も考えずに心底楽しめる本が読みたくなった。
で、選んだのがコナンである。コナンと言っても名探偵でも未来
少年でもないのでお間違いの無きよう(笑)。ヒロイックファンタジー
orソード&ソーサラーの元祖とでも言える作品であり、シュワル
ツェネッガー主演で映画化もされたので知っている人も多いだろう
ファンタジー作品である。
他者を圧倒する巨躯に野生の獣のような俊敏さ。そして何物にも
屈服しない本能と意志を併せ持つ野蛮人。妖魔の存在を信じている
が、それと同時に倒せない妖魔などいないとも信じている男。
そのコナンが当たるを幸いとばかりに敵をなぎ倒し、あらゆる怪異
をものともせずに生き残り、麗しの美女をその手の内にする。本当
に痛悔無比な物語なのだ。
そして今回は模作や補作の多いコナンシリーズの中でもハワード
自身の筆によるものだけを選んでまとめた新訂版を読んでみた。
全6巻予定でまだ5巻までしか刊行されてないが(当時)、それでも
久しぶりにコナンの暴れっぷりを堪能することができて幸せで
ある。
しかし読めば読むほどシュワちゃんとはイメージが違うな(苦笑)。