宇野利泰のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本が禁じられた近未来の世界の話。
その世界では、本は焚書官によって焼かれるのです。
「焚書」なんて言葉は、
中国・秦の時代に行われた焚書坑儒を習ったとき以来に
目にしました。
解説によれば、
華氏451度は摂氏233度にあたり、
紙が自然発火する温度だそう。
ある意味、主人公ガイ・モンターグの中で
何かが自然発火することの暗喩のようにも読めたりしそうです。
主人公モンターグは焚書官であり、
本を焼く仕事をしているのですが、
ひょんなきっかけでそれまで見えていた世界がぐらつくんですね。
そして痛みを伴いながら、
個人のあたまのパラダイムがシフトしていく。
そして、あるとき、本を手にしたことで人生が変わっていきます。
本を禁じられた世界で生きている普通の人びとは、
スピード狂で、テレビ狂で、空虚な日常を送っています。
それまるで、この小説が書かれた50年以上前の時代から、
現代を風刺しているかのようでもあります。
本が無いという極端な設定にしたことで、
本があることのメリットがわかるようになっています。
また、本のメリットが意味すること、
たとえば、暇ってものが大事だよ、という問いかけがありました。
ここでの、「暇」は「退屈」とくっつかない「暇」のことです。
考える時間、感じる時間、
いやいや、ぼーっとする時間でもいいでしょう、
それはそれで創造性につながりますから。
そういった「暇」を、
現代の騒がしさやスピードが隅に追いやろうとしている。
そんな時代の相のスケッチのように読めました。
文章は、きっと地の文章が英語的すぎて
翻訳しにくい箇所があるのだと思いました。
ごつごつしていて、読みにくさもありますが、
勢いと、強いイメージに基づいて書かれていますから、
ぐいぐい引っ張っていく、言葉にする以前のパワーがあります。
聖書が引用されていたり、
いろいろな著述を残した偉人達の名前や引用があったりしました。
そういうところ、情報小説としての要素を満たしてもいるんですよね。
僕は書き方を学ぼうとしても読んでいますから、
そういうところ、なるほどなあ、力入れてるなあと感じました。 -
Posted by ブクログ
1953年作品。本の中に50年前のV2ロケットの映画・・・という文章があるところを見ると、舞台はほぼ今の時代ということになる。
著者が想像した現在の姿は、海の貝と呼ばれるイヤホン型ラジオを常時耳にさし(ウォークマン?)、低俗なテレビに一日中見入り、若者は面白くないことがあるとスピードに酔いしれ(暴走族?)、無意味な殺人を行う。見事なほどの現在のカリカチュアである。
その世界を舞台に進められる話は、最初は面白い。しかし、後半になるにつれやや冗長で、時代の古さを感じさせる。また、SF詩人ブラッドベリ特有の文章が鼻についてくる。長篇ではなく、中篇レベルにすればもっと迫力が出るのにとおもえた
-
Posted by ブクログ
ネタバレXの悲劇の次に読んだ。Xの悲劇はとても面白い作品だったがYの悲劇は事前評価の圧倒的な高さのわりに、読み終わると不満点が多々あった。
最も大きい不満点は犯人である13歳の少年が小説の筋書き通りに犯行をすすめるため、ヴァニラの匂いのする軟膏を自分の手首に塗る、という場面。13歳の知能ならこれがヨーク・ハッターを示す手がかりであり、塗ることの無意味さを自覚できるものだろう。でないとしたら、ジャッキーが並外れてバカなのだろうか?
この行動は「真の犯人は死んだヨーク・ハッターでありジャッキーが傀儡である」という解釈を成り立たせるためなのだろうか。そうすると、作品を入れ子構造に持ち込んだがために13歳の知能を著しく低下・過小評価するということなってしまう。付け加えるならばヨーク・ハッターが小説を書いている=犯罪を扱う小説は探偵小説である、というレーンの推理はもはや決め付けである。発表当時はそうだったのかしれないが…。
こういう所に不満を覚えると作品全体がミステリーのための土台であり作り物めいた感じがする。これは解説にあったとおりで、Yの悲劇全体をとってみても漫画のようにチープで人物に生命感といったものが希薄なのである。
期待はずれてではあったがZの悲劇が読みたくなるくらいには面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスパイ小説の古典的代表作。
イギリスのベテラン諜報員、アレックリーマスは敵対国の凄腕諜報員の手により、敵国内のスパイを皆殺しにされてしまい、失脚した。
リーマスは個人的に復讐を誓い、非公式に敵対する諜報員を破滅させる作戦を上司と計画し、実行に移した。
それは自らのキャリアを捨て、人生を代償にした作戦であった。
スパイ映画なのにアクションはほぼ皆無。主人公もめちゃめちゃ強いわけでもない。
そして、3/4読み終えるまで何が起きてるのかもよく分からない。
ただし最後のネタが判ると、組織同士の恐ろしく複雑な騙し合いが恐ろしくなる。
実際のスパイはこんなかんじなのかな?
それにしても何もかも信じられなくなるという小説でした。 -
Posted by ブクログ
他の作品の評価見るに、ジョンルカレの作品では一番面白いんじゃなかろうか。「我らが背きしもの」とか割りと早い段階で挫折したし。
そこまで場面の切り替えや登場人物の視点入れ替えは激しくない。ほとんどリーマス一人の視点に寄ってるから話が分かりやすい。のかもしれない。
カーラは登場せず。変なリアリティあって何か凄い。TTSSよりこっちを映画にするべきでは?
最後のネタバラシは外事警察を思い出させる。
ラストは「人狼」みたいな感じ。まあ、そうなるよな……あの女が脱出出来た時点でそもそも存在している事がサーカスにとってのリスクだし。
「はかがいかない」ってどこの方言なんですかね… -
Posted by ブクログ
7編収録の短編集。
前半の4編は軍人のテナント少佐が活躍する
短編。架空の国が舞台で将軍の圧政や革命など
ところどころ不穏なその国の空気が描かれている
のが上手いです。
またテナント少佐の軍隊の権力や派閥に縛られず、
自分の正義と思考に愚直に行動する姿がとても男前
です。
テナント少佐ものがこの短編だけなのが残念…
この国の政治をもっと掘り下げた長編があったら
間違いなく名作になりそうな予感がします。
他3編は歴史ミステリにブラックユーモア、奇妙
な雰囲気のものとバリエーションが豊か。特に自分
が好きだったのは、
被告の無罪を勝ち取った弁護士がその友人の
大学教授に被告の男の過去を語る「もし君が陪審員
だったら」
結末の何とも言えない感じをぜひ味わってほしい
です。 -
Posted by ブクログ
中盤まで主役を務めるマープルの登場はないが、故に警察官の活躍が際立つ。
ここ最近放送されていた、深夜のミステリチャンネルでのTV版では二時間で解決されるという仕様だったので、所々不明が残ったものだが、こうして文字を追ってみると、犯人が判明した際に、成る程。と思うところが多々あった。
要するに、TV版よりも文字の方が、時系列がはっきりと覚えていられる。
覚え書き。
投資信託会社を経営する男が、自社の社長室で毒殺される。その男の上着のポケットには、ライ麦が一杯に詰められていた。
その後、男の若い後妻、屋敷に勤めていたメイドが連続で殺害され、このメイドの行儀見習い先の主であったミス・マープルが新聞による事件を知り、屋敷を訪れる。
マザーグースの歌になぞらえて起こる殺人。