わかりやすい。話を単純化することが課題解決には重要、と改めて思う。単純化しすぎていて「本当に?」と思うところもあるが・・・経済に明るくない人にもオススメの一冊。
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【読書メモ】
●デフレも円高も、政府と日銀が協調すればたちどころに終わらせることができます。要するにモノに対してお金の量が不足しているわけですから、お金を刷って効率的に分配すればいいのです。ところが、マスコミはこのことをきちんと伝えていません。
●「今日の特売で買わないと明日は値段が上がる」という物価上昇期待が存在しなければ、いくら値下げしてもモノは全然売れません。「デフレは良くない」というと、「おまえは特売やタイムセールスに反対なのか?庶民感覚が分かってない!」と批判する人がいます。これは本当に的外れな批判だということが分かっていただけたでしょうか?
●思わず手がでてしまうというのは、心の中に将来値段が上がるという期待があるからです。この期待をインフレ期待といいます。特売とかバーゲンで働いている心理は「明日になったら値段が上がる」という「物価上昇期待=インフレ期待」です。
●デフレの最大の問題は、借金返済の負担が契約上の利率よりもずっと重くなるということです。
●円高が進めば、海外通貨で計ったときの価格は上がってしまうので、製造業の海外での売上が減少する。輸入農産物は値段が下がるため、国産の農産物は厳しい価格競争にさらされる。また日本では労賃が高いので、日本企業ですら日本で生産することをやめて海外に出ていくことで、国内の失業がますます深刻化する。
●中国からの輸入急増や規制緩和、構造改革の効果を含めても、物価引き下げの圧力は過去10年で0.4%程度。デフレは中国が原因ではない。
●物価というのは特定品目の価格(相対価格)ではなくて、世の中に存在するモノの値段(一般価格)を指しているのです。したがって、いくらガン治療薬や紙より薄いノートパソコンなどを作っても、他の支出を削ってそちらに振り向ける限り、結果は同じになってしまいます。…私たちは知らず知らずのうちに、相対価格の上昇とインフレを混同しています。しかし、自分が普段買っているモノの値段が上がっても、物価が上がっているとは限らないのです。
●CPIというスピードメーターは、スタート地点から離れれば離れるほどくるってくる、ということを理解する必要があります。
●海外でコアCPIといわれているものは、日本ではコアコアCPIに相当する数値(酒類を除く食料およびエネルギーを除く総合指数)
●(デフレは)お金不足が原因ですから、お金を刷って供給すれば、かならずいつかデフレから脱却することができます。…もし、いくらお金を刷ってもデフレから脱却できないとしたら、いくらお金を刷ってもインフレが起こらないということから、安心して通貨を大量発行することができます。政府は、毎年の支出に相当する金額を、紙幣を刷って調達することが可能になります。しかし、実際にはこんな虫のいい話はありません。絶対どこかのタイミングでインフレが起こります。…巷ではこれをバーナンキの背理法と呼んでいます。
●失業率3.5%というのは、いわゆる自然失業率といわれるもので、どんなに給料をもらっても絶対に働きたくない人の割合を示しています。つまり、失業率3.5%を下回ると、企業は人手不足状態に陥るのです。
●戦争や間違った政策による生産設備の破壊や機能停止と、極端な生産量の低下がないとハイパーインフレは発生しない。
●デフレが終わらないということは、モノの値段が将来にわたって下がり続けるという期待が日本中に蔓延しているということです。今買うより先送りにしたほうが安くなるので、当然人々は消費を手控え、モノは売れません。
●デフレ下では増税よりむしろ減税こそ検討するべき。
●現在、私たちが抱えている国の純債務387兆円のうち93%については、国民が政府に貸している。最後の日本人が最終的に右と左のポケットを相殺すれば何の問題もない。要するにこの部分は返す必要のない借金。
●そもそも財政危機とは何だったのでしょうか?「日本の財政赤字は危機的な状況で、消費税を増税しないと破綻してしまう!」と言われていましたが、財政赤字のほとんどは返さなくていいお金でした。また、財政再建を果たすためには消費税の増税は全く効果がなく、むしろ名目GDPを伸ばすべきであり、そのためにはデフレを脱却することが重要だという結論になりました。
●国際貿易のトリレンマ…どれか2つを達成すると、残りの1つは絶対に達成できなくなる・固定相場制(金本位制)
・資本移動の自由(外国への投資、また外国から自国への投資の自由)
・金融政策の自由(自由に通貨を発行したり、吸収したりすること)
●日本人の一つの欠点は、余りに根本問題のみに執着する癖だと思う。この根本病患者には二つの弊害が伴う。第一には根本を改革しない以上は、何をやっても駄目だと考え勝ちなことだ。目前になすべきことが山積して居るにもかかわらず、その眼は常に一つの根本問題にのみ囚われている。第二には根本問題にのみ重点を置くが故に、改革を考えうる場合にはその機構の打倒乃至は変回のみに意を用うることになる。
●そもそも目標として設定できない「構造問題」を目標とすることは問題。まして、「構造問題」を解決するだけで経済的停滞から脱却できると考えるのは間違った考え方です。
●政府と日銀が「デフレが終わるまで世の中にお金を大量に供給する」という政策目標を共有し、その目標を達成するために「あらゆる政策」を実行する。
●具体的なアコード(政策合意)の例
1.来年度以降のGDPデフレーターの上昇率1~3%の範囲に収める(インフレーションターゲット型)
2.GDPデフレーターの上昇率と失業率の双方について目標範囲と優先順位を定める(テイラールール型)
3.1ドル=110円~130円の購買力平均並みになることを目標に金融政策と為替介入を行う(為替ターゲット型)
4.来年度以降名目経済成長率を2~4%に収めるために財政政策と金融政策を協調的に実施する(成長率ターゲット型)
5.1ドル=120円の時限的固定相場制の導入を目指し、各政策、各政府部門および日銀等の特殊法人のシステムを改編する(固定相場制型)