折原一のレビュー一覧
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貴志祐介 先生の『クリムゾンの迷宮』を思い出させるような文調。主要登場人物は少ないわりに、たくさんの要素を詰め込んでいる。緻密に大量に蜘蛛の巣のように伏線を張る。最後の種明かしが特に見どころで、これまで少しだけ引っかかっていたような違和感が全て繋がり、(*゚Д゚)オォォ...と放心させられる。余韻もいいね。
プロット展開も見事だけど、文章自体もリズム感があってよい 。モノローグ、3人称、インタビュー記事など、いろいろな文体で工夫しており、一つ一つが良い区切りとなり、テンポよく読み進めることが出来る。それぞれの表現にも作品全体を意識したものを感じさせる。
細部から全体まで楽しめました。 -
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本を破る、という言葉に後ろめたさとともに、なんだか甘美な響きがあります。もちろん実際にそんなことはしないのですが、その行為が稀に許される本があります。『袋とじ』です。本書は結末部分が袋とじになっており、ピリピリと本を破くわけです。楽しい。
フリーのカメラマンをしている石原綾香は、十年前に同じ中学校を卒業した友人たちを取材するという企画を考えていた。偶然、連絡の途絶えていたクラスメートから電話があり、再会した友人から、一通の謎めいた手紙を届けられたことを告げられる。差出人不明の手紙には、十年前に埋めたタイムカプセルを掘りだすために集まりましょう、という内容が書かれていた。当時、現場に立ち会 -
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ということで本作は、『天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記(1)』の続編にあたります。まずは先にそちらを読むことをおすすめします、というか、作品自体にも『先に読むように』という言葉が添えられています。続編がそれ単体でも楽しめるように作られている作品も存在しますが、すくなくともこれに関しては読んでいたほうが良い気がします。前作を読んでいることを前提の仕掛けもあるので。
一巻、二巻、両方を通して、物語の構造そのものを使った物語が好きなひとや創作者たちの悲しい鍔迫り合いが好きなひとにぜひ読んで欲しい作品で、二転三転して、物語の発端にさえ疑いを投げる必要が生じる展開は、圧巻です。 -
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ミステリー界で名の知られた小宮山泰三が住み、その名を慕って作家志望者が集まり、手塚治虫のトキワ荘のような状況になった二階建てのアパート『幸福荘』。本作はそのアパートに住むことになった作家志望者や評論家、編集者が、ひとりの美貌の少女小説家を巡って、様々な騒動を繰り広げる作品になっています。
まさに奇人、変人のオンパレードみたいな作品で、途中までは、それぞれの作品がワープロのフロッピーに入っていた、という体裁で、連作短編集の形で話が進んでいき、各エピソードも大変楽しいのですが、後半はひとつの長編として、意外な真相が浮かび上がってきます。これは盲点でした……。 -
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ネタバレ今まで読んだ折原一作品の中でいちばん好き。自分で推理できる部分と、予想外!と驚く部分のバランスが絶妙だった。
まず淳の性別がいまいちハッキリしないかと思えば母親がしきりに「女の子だ」と強調しているのでこれは性別の叙述トリックで実は男パターンのやつだなと思いながら読み進め、実際その通りだったわけだけど意外とこれは物語にあまり関係なくあっさりとネタばらしされ。
モノローグは小松原淳以外の人物が自分を小松原淳だと思い込んでる、もしくは作中作かな〜程度に推理。
譲司が外国人で異人の正体、というのは途中から確信があったので島崎とユキの前に現れた異人が譲司ではなく淳だったのは驚いた。しかも淳が親殺しをして -
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総合評価は4としましたが、読みやすさ(読み進めやすさ)は3です。かと言って文章とかミステリ的に難解では決してなく、簡単な文章なのですがスラスラ読めず、集中力が切れがちになります。同じようにちょっと影のある日常がかかれている作品でも、例えば島田荘司氏などは何故かスラスラ読めて止まらなくなります。何が違うのか検証までは出来ていませんが、1つの特徴として、本作は叙述ミステリでもあるのですが、それが最後に明かされるのではなく、終始 “叙述トリック使ってるよ” 感があるのも疲れる大きな原因かもしれません。
それでも★4としたのは、例え挫折しながら間を開けて読んだり、多少飛ばし読みをしたとしても、最終場面 -
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「結婚することになった。彼女と一緒に田舎に帰って母親に報告する」
友人からの連絡の直後、その友人は練炭自殺をした。
不信に思った池尻は、友人の母親からの依頼もあり、“彼女”を探し始める。
その彼女「花音(かのん)」に騙され、自殺を装った殺人ではないか?との疑いが出てくる。
花音の裁判を傍聴する4人の女性が、たまたま初回公判後に集って裁判について語りあうことになってつくった「毒っ子倶楽部」。
裁判の感想を語り合うと同時に、池尻が調べて綴った事件の記録が少しずつ開示されていく。
花音がどうやって自殺を装った殺人を行ったのか?と読み進むが、
「きっと、あなたも翻弄される」
という帯の通り、翻弄さ -
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☆3.8
グランドマンション一番館には様々な人が住んでいる。
そこではトラブルが起こることもままあって……
流石、折原一。
こういうことかなと考えながら読んでも、いつでも予想の上を軽々と行ってくれるので、こちらとしても気持ちよく騙される。
登場人物たちは、ちょっとこの人近所にいたらイヤ〜!となる人もいて、その微妙に遠ざけたくなる気持ちもわかっちゃう。
絶妙な人間関係。
最初の一編「音の正体」を読んで、うん、そういう感じねとウムウム頷く。
そういうの、好きよ。
「善意の第三者」がとても良い衝撃でした。
「リセット」と「エピローグ」が連載を単行本化した際に書き下ろしたというだけあって -
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「折原一」のミステリ連作集『グランドマンション』を読みました。
『漂流者』に続き、「折原一」作品です。
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「グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。
騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣──次々に住人が引き起こすトラブル。
そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは……。
希代の名手が贈る必読の傑作ミステリー連作集。
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隣人問題、騒音問題、虐待、不法侵入、年金不正 -
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世の中には自分に似た人間が二人いる。
彼女は、その日自分にうり二つの女性を見た。
現在と過去と、そっくりさんとそっくりさんが、入り乱れていく。
まぁ、顔がそっくりっていうのは、この混乱をもたらすものなので、つか、タイトルからすでにギミックなわけで。
混乱を楽しむものとして、とても楽しかった。
なんというか、糸が絡みに絡んでるんだよね。で、同じ色の糸に見えていたものが、よく目を凝らすと微妙に色が違う。その違いをたどることによって、糸はほどけていく、そんな感じ。
にしても、黒幕がやばすぎるわ。
人間味が全くない。
って、その無機質さが結局は、恐怖なんだろうと思うのである。