叙述トリックの名手、折原一の長編ミステリー。「━者」シリーズの中の一冊。
このシリーズ、以前に「冤罪者」を読んでいて、なかなか良かったので今回も期待して読み始めた。
一家四人の惨殺事件に始まり、その後、発見される別の老夫婦の他殺体。一方、池袋で万引きで逮捕された男が、自分の名前も明かさないまま裁判
...続きを読むが進められる。この沈黙者は何者なのか。二つの殺人事件と沈黙者の関係は・・・?
読み始めてからグングン引き込まれた。謎の提示、様々な視点で語られる文章など、退屈させない進行でどんどんページが進んだ。「私」とは誰なのか?「沈黙者」はなぜ名前も住所も明かさないのか・・・?こんな謎を提示されたら、そりゃ睡眠時間を削ってでも読むのがミステリー好きの性だよな。
読み進めて半分を超えた辺りかな、ふと思ったんだが、もしかして殺人事件と沈黙者の時間軸はズレて描写されてるんじゃないか?結果的にこの予想は当たってたんだけど、細々した理由なんかは解るわけもなく、最後まで一気呵成に読破。
よく出来てる小説だと思う。
ただ、自分的にマイナス点も・・・。
・沈黙者が名前を明かさなかった理由が少し弱いように思う。
・2件の殺人事件の動機にしても、微妙・・・。
・犯人逮捕が、いささか唐突なきがする。
まぁ、ミステリーの分類でいくと本格でも社会派でもないし、この辺りは許容範囲になると思う。叙述トリックとしては上々の出来栄えの小説であることに間違いはないな。
背表紙~
埼玉県久喜市で新年早々、元校長の老夫婦とその長男夫妻の四人が惨殺された。十日後、再び同市内で老夫婦の変死体が発見される。そして一方、池袋で万引きと障害で逮捕された男が、自分の名前を一切明かさぬままに裁判が進められる、という奇妙な事件が語られていく、この男は何者か?巧緻を極める折原ミステリーの最高峰。
う~ん、最高峰ってのは褒めすぎじゃないかな。他にも面白い小説をたくさん書いてるし・・・。
「あとがき」にも書かれてるんだけど、作者は、いわゆるB級と呼ばれる事件が好きで、それをヒントに小説を書くことがあるそうだ。「冤罪者」と同じく本書にもモデルとなった事件があるそうだ。
☆4個
「━者」シリーズ、全作品を読破しようかな・・・。