篠田真由美のレビュー一覧
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龍緋比古(あきひこ)シリーズの1作目です。
柚ノ木透子という女性の視点で進みますが、
要は吸血鬼として2000年生きている龍の話です。
でもこの人(?)吸血鬼とは言いながら、血を飲みません。
飢える事がなく人を襲わないし、日中だって外出できます。
何処が吸血鬼?と普通はなりますが、
ここからが他の吸血鬼物とは違います。
もともとは体を持たない生き血を求める魑魅魍魎のたぐいでしたが、
2000年前神の子イエス・キリストの黄金の血を与えられて、
飢え知らずの生身の体と永遠の命を手に入れたという設定になってます。
以来黄金の血を得ようとするあらゆるものから狙われますが、
ものすごく強くてほぼ無敵です。
そんなパーフェクトな存在に唯一影を落とすのが、
神の子イエスにもう一度会いたいという想いです。
イエスは神の子としての使命を全うして天に帰ってしまいましたが、
残された龍は追いかけることも叶わず、
恩人とも生みの親とも言えるイエスを、
一種片思いのような切なさで恋しがっています。
そこが結果として吸血鬼物のイメージ通り、
退廃的、耽美的、そして厭世的な雰囲気を出しています。
吸血鬼のルーツとしては斬新なアイデアだと感じました。 -
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~10月2日
4年前、父親の反対を押し切ってヴェトナムに嫁いだ四条彰子が、京介と深春に助けを求めてきた。一家の長老、レ老人との軋轢がその理由だ。なぜか日本人を嫌うレ老人。その原因は90年前の事件にあるらしい。当時、レ家に寄宿していた日本人青年が謎の死を遂げ、直後に令嬢が出奔。令嬢の弟で8歳だった少年は、愛する二人を同時に失い、心に深い傷を負ったのだ。歴史の波に翻弄されながら、レ家は命脈を保ってきたが、レ老人の心から悲劇の記憶が離れることはなかった。京介らはハノイに飛び、90年前の事件を解き明かそうとするが、その目前で再び事件が起きた。 建築探偵桜井京介の事件簿、第3部開幕! -
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建築探偵桜井京介シリーズ(長編の)7作目です。
舞台となった建築はルネッサンス期のヴィラ、
ラグーナに浮かぶ小島の1つに建つ15世紀の建築です。
今回京介と神代教授はヴェネツィアにやって来ます。
ヴェネツィアの小島を購入したい企業からの依頼ですが、
鑑定の為所有者に会ってみればまったく知らないと言われます。
すわトラブルだという矢先、
蒼や深春や神代教授の隠し子(笑)まで乱入してきます。
さらにトラブルを持ち込む輩まで出てきて、
どんどんややこしくなっていく内にとうとう殺人事件まで。
最初から怪しい人がいたので、
トリックはともかく犯人については意外性は無かったです。
それよりも関係者の心情や動機に関してちょっと強引に感じてしまい、
感情移入し辛かったです。
ただヴェネツィアの街の雰囲気がとてもよく伝わってきて、
臨場感があって入り込んで読むことができました。
私も長めに滞在してあちこち歩き回ってみたくなりました。
ふところ事情が許すなら老舗ホテルにも泊まってみたい・・・。
これまで京介は巻き込まれた事件の謎を渋々解いてきましたが、
「人の身で人の罪を暴くことに意味はあるのか。」
終わりの方の独白でその態度にも納得です。
その京介が今回は事件に積極的に係わろうとします。
最後深春に促されてなにやら打ち明けようとするところで終わりますが、
依然謎のままの京介の過去がそろそろ出てきそうな予感がします。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの6作目、第二部開始です。
今回舞台となった建築は伊豆のオテル・エルミタージュ。
東京都庭園美術館を模したアール・デコスタイルの邸宅建築です。
もしくは隣接するオーナーの私邸である純和風建築になるのかな。
隠れ家的な会員制高級ホテルなんて泊まってみたいです。
もちろん事件は無しでですが。
ミステリーの部分では半分位分かったと思いますが、
残り半分は予想外という感じでした。
最初に3通の手紙が出てくるんですが、
途中まで思い違いをしていてミスリーディングされてしまいました。
トリックや動機で一部納得しきれない部分が無きにしも非ずですが、
やはりスピード感のある展開に一気に読ませられました。
それにしても鹿鳴館をフルスケールで再現とは豪気です。
実際は時間が足りなくて中途半端な形で終わりましたが、
もし完成してたら絶対観光名所ですよね。
蒼は17歳になって高校に通い始めましたが、
相変わらずかわいいというか健気というか。
蒼自身の独白だから特にそうなるのかもしれませんが、
今時の子はこんなに素直に気持ちを表せるのかなぁと感じました。
それだけまだ精神的に不安定ということでしょうか、
最初に刷り込まれた雛のように京介を追いかけてます。
京介も謎めいた過去がちらほら垣間見えるようになってきました。
読み終わるとすぐ次を読みたくなるシリーズです。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの5作目です。
今回はいろいろ謎だった蒼の話。
桜井京介と蒼が出会った事件です。
建築探偵シリーズということですから、
今度の建築は・・・敢えて言うなら温室でしょうか。
事件の舞台となった薬師寺家は大邸宅のようですが、
モチーフとして「エデンの園」が何度もでてきますし、
もっと言うなら温室を含む薬師寺家の敷地(庭)ですね。
禁断の園、禁忌の園という感じでしょうか。
凄惨な殺人現場にもの言えぬ子供。
この小説がとりわけ珍しいという訳ではありませんが、
蒼の心情が明かされるとき胸にくるものがあります。
このシリーズはこれで第一部が終了だそうですが、
今のところ小説の雰囲気を堪能させてもらっています。
あとがきなんか読んでいると分かりますが、
作者の趣味(?)がよく出ていて楽しい読み物です。
人それぞれでしょうが、
ミステリーを読む姿勢も小説によってまちまちで、
怪しい人物は誰だと割りと冷静に考えながら読むときもあれば、
細部が気になってなかなかすんなり読み進められなくて、
何度も頁を前後させてしまう時もあります。
このシリーズの場合はただただ先が知りたくて、
何も考えずにノンストップで読んでしまいます。
(もちろん現実は中断を余儀なくされるのですが気持ちの上で、です。)
ミステリーとしての要素も重要ですが、
読んだ後に一息つきたくなる程の充実した読後感に星5つです。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの4作目です。
このシリーズでは登場人物たちがちゃんと年を重ねるのですが、
今回は過去にさかのぼって京介と深春が出会ったときの事件です。
舞台は「輝額荘」、1988年当時でも既に古い学生アパートです。
今回の建築に関するうんちくは、
事件の舞台ではなくかの有名な建築家フランク・ロイド・ライトでした。
登場人物たちの事情と重ね合わせるように、
その生涯や作品について書かれています。
事件の舞台となった輝額荘もあるものにちなんで命名されてます。
輝額荘での生活は、風呂なし、トイレ・洗面・台所共用。
その他に茶の間や図書室、宴会用の広間もあって、
外出するときだけ自室の引き戸に南京錠をかける。
皆に慕われていて自身も学生の大家の下、
渡り廊下でつながった良い感じのその共同生活は、
いろいろな問題を抱えた学生達にとって拠り所だったのに、
それが1つの事件を発端に徐々に崩壊していく様は、
読んでいて切なかったです。
1995年の大晦日、深春のアパートでまだ来ない京介を待つ間、
深春が蒼に話して聞かせる、という体裁で始まって終わるので、
最後に京介と深春と蒼のスリーショットになると、
何だかほっとした気分になりました。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの3作目です。
今回の舞台は「碧水閣」。
老舗ホテルの創業者が建てた館で一族の暗い歴史を象徴する存在。
洋風の壁に和風の屋根を載せた帝冠様式の建築です。
それにしても・・・。
創業者の娘を筆頭に生きている人間だけでも4世代、
過去の事件も絡むので創業者も入れれば5世代。
加えて妾腹の血族やら姻族やら「一族」というのに相応しいややこしさ。
巻頭の家系図を確かめてやっと頭に入りました。
一般人には馴染みの薄い旧家ならでは(?)のドロドロは、
ある意味昭和の匂い漂う推理小説という感じでした。
私個人のイメージですけど、こういう設定よくありませんか?
別に悪い意味ではなくて私は楽しく読み耽りました。
明治から大正にかけての建築業界の事情も説明がありましたが、
これは分かり易かったです。
蒼には瞬間的に見たものを細部まで記憶する能力がありますが、
眠っている間にその記憶が整理されて、
結果、見る夢は核心に近い一種推理のようなものになります。
京介は探偵役として、
集められた情報を元に更に理路整然とした推理を展開します。
この二段構えがこのシリーズの推理展開のパターンなんだと、
ここに至ってようやく認識しました。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの2作目です。
今回舞台になるのは「恒河館」、明治の別荘建築です。
ただし、オーナーの趣味でインド風味となってます。
事の発端として10年前のインドでの殺人事件があって、
オーナーの招きで当時の関係者が一同に集まって、さて・・・。
という話です。
これだけだとある種ミステリーの王道なんですが、
ミステリアスなオーナー狩野都が、
服装や料理や踊りといい、インド人の養子といい、
ふんだんにインド風味をばらまいてくれるのと、
10年前の事件当時の話の内容とから、
日本人には異質で猥雑なインドの宗教観やら生活やらがブレンドされて、
独特の雰囲気が出てました。
最初は、殺人事件とはいっても当時の遺留品も記録も無く、
当事者たちの曖昧な記憶だけでどんな解決を図るのかと思いましたが、
途中からそんなことも忘れて引き込まれていました。
今回、トリックとして建物も使われましたが、
最も重要なのは人間関係というか、人生観というか、
ともかく「人」ですね。
事件自体はきちんと解決されてますが、
かなり余韻を残す結末で「もやっ」とします。(悪い意味ではないです)
著者自身が巻末のあとがきで、
この作品はシリーズの中では異色と書いているのもうなずけます。 -
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建築探偵桜井京介シリーズの1作目です。
以前からこのシリーズの存在は知っていたのですが、
建築探偵というタイトルから何となく敬遠してました。
でも予想に反して専門用語による長々としたウンチクも無く、
楽しく読むことができました。
タイトルから予想されるとおり、
事件の中心は「黎明荘」といういわく付きの建物です。
そして、みんな何かを抱えていて犯人たり得る。
後ろ暗い雰囲気と徐々に明らかになるそれぞれの事情。
明るいユーモアミステリーよりこちらの方が好みです。
京介の設定はなんだか少女漫画チックですが、
(詳しくは実際に読んで確かめてみてください。)
探偵役には癖があったほうが好みなのでこれはこれで有りなんでしょう。
京介のアシスタントをしている蒼(あお)は京介が後見人を務める15歳。
なのに平日昼間に大学にいたりするので、
そこらへんは今後の伏線でしょうか。
蒼が事件の解説をしたりするので、
探偵役なのかワトソン役なのか分かりづらいところですが、
今後の話でそれも定まってくるのかも。
もちろん京介が建築探偵ですから、
そこはちゃんと蒼が明かした謎についても分かった上で、
更に建築物に込められた人の意思や感情まで解き明かして、
事件は収束します。
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今までは、ほとんどが蒼目線で語られていたので、京介がヤバいのはわかっていたものの
最小限に抑えられていた?
本作はほぼ京介目線だったので、危なっかしい事この上ない。
やはりヤバそうな時は蒼に尻を叩かれて深春が出動するんだけど
さすがに霊感少女と京介の対面には面食らいました。
おりしも皆既月食の時に読んでいたのでリアル感増大。
建築の蘊蓄はほとんどありませんでしたが
家というか昔の家制度から生まれた悲劇というのでしょうか・・・
本作の犯人が一番いけすかない奴だったけど
犯人と京介が似てる発言を京介が認めるところはショックだったわぁ
全然違うけど・・・
この事件の最中、蒼は「センティメンタル・ブルー」の最後の事件で
走り回っているので、最後の方にちょっと顔出しするだけです。