なんともバカバカしく,かつ,強引なトリックが,なんともいえない読後感を醸し出す,ザ・バカミスといえる作品。作者がバカミスを作ろうとして作ったバカミスは,寒い仕上がりになってしまうことが多いが,少なくとも寒い仕上がりにはなっていない。まごうことないバカミスとして,読み終わったあとに,なんともいえない気持ちになってしまう作品である。
黄緑館と藍紫館という二つの館に正体された4人の来客と館主,そして使用人達。4人の来客のうち,3人までが殺害され,さらに使用人のうちひとりも殺害される。
殺害方法もバカバカしく,ミステリの大家であるカーの傑作バカミスである「魔女が笑う夜」にヒントを得たというトリックなど,なんともバカバカしいトリックで殺人が繰り広げられる。ひとり目の殺人は,心臓が弱い被害者を,だまし絵を利用して殺害。ふたり目の殺人は,自殺した妻の顔をトイレの蓋に映らせて,驚かせて殺害(ひどい!),三人目は,密室と呼ばれる作品を利用して殺害(そもそも,黄緑館と藍紫館は,美術館の1階と2階で,「密室」や「虚無」というタイトルの作品があり,それらの作品により殺害されるというトリック。
さらに,犯人は,館主の娘の別の人格・・・というオチで,さらにそれを作中作としてしまう。やりたい放題。
おまけに,泡坂妻夫の「しあわせの書」を彷彿させる活字のトリック(ほとんどのページの特定の場所に「空」,「間」,「虚」,「無」を配置し,四隅を「か」,「ら」,「く」,「さ」にするという無意味かつ無駄な労力を掛けている!)。
最後の最後で,からくさを並び替え,「くらさか」にし,テキストを過剰に支配する真の作者としてしまう上に,評し折り返し部分の著者のことばにまで,L字に「館は美術館」という文字を配置するという凝りに凝った作り。
推理小説としては全く楽しめなかったが,本としては結構楽しかった。もう,ここまで来るとミステリではない。ギャグ小説という雰囲気。敬意を評し,★3をあげます。