あらすじ
異形の天才芸術家にして父・黒形上との二度の対決を経て、ついに過去、自分の身に起こった忌まわしい事件を思い出してしまった影。さらに、家系にまつわるある血の因縁の存在を知る。そんな中、黒形上が遺した呪いの原型を使い、世界の破滅を企む崇拝者が再び現れて……。父と息子の闘いの行方は!? シリーズ最高潮の第3弾!
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Posted by ブクログ
ラストへ向かってのうねりは非常に素晴らしいが、前半はいささか繰り返しが多い。
たとえば、影の出自について繰り返し同じ言葉で語られることは、全体としてみれば一種の詩のリフレインのようにも思えるが、小説としては少しくどいのではないかと感じられた。
とはいえ、このモチーフは怖い。今までで一番怖い。前作の黒い楕円でも、句点を楕円に変えるという恐怖の着想が凄かったのだが、これはもう、変えなくてもどこにでもあるというのが怖い。
白い矩形。それこそ、どこにでもある。
結局、影の真の出自は語られることなく終わり、おそらく黒形上の悪霊もまだ消滅してはいないのだが、影がその宇宙的恐怖に耐え、生還するというラストは感動的ですらある。
なお、美術調律者・影の最新作は創土社のCMFシリーズからこのたび刊行された。めでたい。