円城塔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
うーん、これは何と言ったらいいのか、タイムトラベルもののSF小説であり、同時に、家族(特に父子)小説でもある。前者としては非常に面白く読んだのだけど、私はどういうわけか後者はきわめて苦手で、サーッと気持ちが引いちゃうんだよね。クールなSF部分に比して、家族部分はかなりベタに語られるのがつらい。そこがいいという人も多いだろうけど。
出だしはまるきり円城塔。チャールズ・ユウって、円城氏の英語でのペンネームでは?という疑惑が頭をかすめるほど。シャープで、でもどこかとぼけていて、好きなタッチだ。いったいこれってどこまでが原文の味わいなんだろう。合わせ鏡の中にいるような自己言及の連続や、物語のメタ構造がとても刺激的だ。
時間って本当に不思議だ。「未来」を私たちは知らない。「現在」はつかもうとしたときには既に過去になっている。じゃあ「過去」は確かか? そうじゃないのは、次の独白の通り。
「時間は装置だ。痛みを経験に変換し、生データはコンパイルされてより理解しやすい言葉に翻訳されていく。あなたの人生における個人的な出来事は記憶と呼ばれる別の物質に変換され、その変換過程では何かが失われることになり、あなたは決して、それを復元することができなくなる。あなたは決して、オリジナルの瞬間をそれがまだカテゴライズされていない未処理の状態として取り戻すことはできないだろう。その過程はあなたに先へ進むことだけを強制することになり、この件についての選択権があなたに与えられることはないだろう」
本筋ではないが(いや待て。もしかして重要な要素かも)、始まってすぐに主人公の容姿(と言うより体型)が明らかになるところで、「は?」と目が点に。表紙の朝倉めぐみさんの手になる繊細そうな青年とは全然違うじゃん!あの絵をイメージするから、現実の時間の流れから切り離された電話ボックス大の空間で、非実在の犬とコンピュータプログラム相手に何年も過ごし、父を探す青年の姿が切なく感じられるんだけど。本文通りに思い描いてみると…、うーん、また別の切なさがあるかなあ。 -
Posted by ブクログ
まぁ円城塔である。二回読んだけどわかったとはよう言わん。わからんのと、わかった気くらいになるのと。いや、別にわかりたくて読んでるわけでもないので、わかった気になっておもしろかったりわからんけどおもしろかったりでいいのだ。
ということで、わかった気になっておもしろかったのがまず表題作。うん、頭使わずにぼんやり読んでもおもしろい。
「祖母の記憶」ノリ的にちょっとバリー・ユアグローっぽい。悪趣味さと乾いた感触。ユアグローに比べると長いだけおもしろいのとダレるのと。アイディア一発ではないのだな。
「捧ぐ緑」何だよゾウリムシ。といいながらこういうなんちゃって生物学みたいなの好き。石黒達昌とか。 -
Posted by ブクログ
“おめでとう、おめでとう。
何世代か前に、超光速航法を編み出した祖先たちが入植した土地に、僕はようやく辿り着いたというわけだ。骨董品の長い旅を労おうと、僕を迎えるためのびっくりパーティーを用意しておいてくれたのだ。まあその前に電波の様子で僕の方にも知れるだろうが。
あなたは別に何かをみつけたわけでもないですし、我々の知識に何かをつけ加えたわけでもないですが、とにかくこうして裸一貫、大海原を越えてやってきてくれたことが偉大です。おめでとう。おめでとう。とか言われるのだ。”[P.32_バナナ剝きには最適の日々]
「パラダイス行」
「バナナ剝きには最適の日々」
「祖母の記録」
「AUTOMATICA」
「equal」
「捧ぐ緑」
「Jail Over」
「墓石に、と彼女は言う」
「エデン逆行」
「コルタサル・パス」
単行本に「コルタサル・パス」を加えての文庫化。
この文章がたまらなく好き、とかこの表現がとても気持ちいい、みたいなのがちょくちょくあってそこが楽しい。
“透明な形でできた三角形。そこには腕が四本あって、足が七本あるのであって、四は七より小さくて、七は三より小さいのです。
おかしいなと思ったとして、ここにはまだ四も七も三もいないのでした。出て来る必要がありませんから。そんなものがなかったとして、困ることもないわけなのです。
全然この世にいないとしても、三角形のことが大好きだよ。
もしかして、既にこの世にいるものや、既にこの世にいなくなってしまったものと比べてさえも。この世の中に原理的に存在できないもののことが大好きだよ。
こうした言葉の並びみたいな。
そうして、大好きなものは大嫌いだよ。
大好きなものなんてこの世にずっとないままでいい。この世が大好きで一杯ならば、この世は大嫌いで一杯で、そんなのは、ほんとうにもう大嫌いでちょっとだけ好き。”[P.101_equal] -
Posted by ブクログ
円城塔の短篇集。
「ゾウリムシは信仰を持つか調べています」と、バナナ星人の対立のくだりは最高に面白いw
個人的には上記の『捧ぐ緑』、『バナナ剥きには最適な日々』と、『パラダイス行き』、『コルタサル・パス』あたりが好きです。
円城塔のナンセンスとまでは行かないけど、よくわからない絶妙な感じが好きですね。
言葉選びのセンスと設定の作り方が上手い。
まともな文章も書けることは『屍者の帝国』でも証明済みなので、たまにはこれらの巧みな設定を活かした普通の文章の普通の作品を書いて欲しいと切実に願っています。
でもそうすると円城塔の味が薄れて、没個性・大量消費型の作品になってしまうんでしょうね・・・。
それはそれで考えものかもしれない。 -
Posted by ブクログ
小説でこんなに難しいと感じた本は
今まで読んだことがない
伊藤計劃好きなら気になる円城塔の短編集
「難しいだろうな」と思っていた予想をはるかに上回る難解さでした
全編通して「本」や「言葉」や「文章」について・・・
なのかなとオモウ
短編集なんだけど、全編に通じる何かがある・・・
とオモウ
数学と言語の絡み合いとでもいうのか
とにかく算数の時代から苦手な自分には
創作なのか本当にあるものなのかわからないことがたくさんあって
休憩がてらググッてみたりして
初めて「あ・・・創作なのか・・・」と気づいたり
感想として述べたいことは山のようにあるけど
「違うのも読んでみよう」と思えたし
発想力とか視点をスゴイと思ったので
星3つ
本当に難しかった
アタマいー人ならすらすら読めるのかも -
Posted by ブクログ
ネタバレほぼ一年に一度、空から人が降ってくる町、ファウルズ。
単調で退屈な、この小さな町に流れ着き、ユニフォームとバットを身につけレスキュー・チームの一員となった男の物語。
奇想天外にして自由自在、文學界新人賞受賞の表題作に、知の迷宮をさまようメタフィクション小説「つぎの著者につづく」を併録。
円城塔氏のデビュー作と言われているオブ・ザ・ベースボール。
年に一度不定期に人が降ってくる。
結成されたレスキューチームは支給されたユニフォームとバットを持ち落下者を打ち返す。
設定が面白い。打ち返すのかい!的な。
走り込みと素振りを欠かさず行い、子供や老人に愛される。
退屈な街ファウルズのヒーロー的な要素も持つ。
パラドックスな要素もあってなかなか面白かった。
間間に学者が現れてはこの現象についての研究の成果を語る。
どんな学問でも解明できない年に一度の人の落下。
未だに打ち返した人は居なかったけれど、レスキューチームの一員であり語り手でもある人物が打ち返す時が来る。そんなお話でした。
併録されているつぎの著者につづくはやはり円城塔氏ならではの難解な小説でした。
語り手の小説家が批判家に小説家R氏の作品と酷似しているという話から始まる話。
R氏は生前は作品を一切出しておらず。死後草稿が発見されて発表されているらしい。加えて生前の情報が無い人だそうな。
通して読んでみて、正直難解さと回りくどさを感じました。
解説を読んでそういう解釈なのかと理解をしたりしなかったり。
僕にとってそんな作品でした。 -
Posted by ブクログ
一年に一度という頻度で空から人が降ってくる街ファウルズ。
そこでレスキューとして働く主人公。
今まで誰一人として落下者の救出に成功したものはいない。
それでも彼らは打席に立ち、落下者を救出しようと頑張っている。
守備位置につくのではなくて、打席に立つ。なぜなら、彼らが持っているのはバットだからだ!
表題作の『オブ・ザ・ベースボール』と『つぎの著者につづく』のに作品が収録されています。
両方ともまさに円城塔といったテイストを存分に発揮していますね。
両方とも意味不明だけど、それがいい!
言葉選びのセンスがすごいなーって思います。
個人的にはこの『オブ・ザ・ベースボール』や『後藤さんのこと』の作風が大好きで、なんだかよくわからないけど中毒性がございますw
『つぎの著者につづく』は読んでて円城塔の頭の中は一体どうなってるのか?という疑問を抱かずにはいられませんw
円城作品は文学におけるモダンアート的なものですかね。
理解するんじゃなくて、感性で感じ取るものだと思います。
難解だけどなぜだかスカッとする!そんな感じです。