五十嵐 貴久 『TVJ』
(2005年1月・文藝春秋 / 2008年2月・文春文庫)
舞台はあるテレビ局の新社屋。開局40周年を記念して建てられたハイテクビルなんだとか・・・。
ヒロインは経理部に勤める高井由紀子、29歳。
同じ編成部に勤める彼氏に2日前にプロポーズされたばかりであった。
そんなとき、そのハイテクビルが正体不明の武装集団にいとも簡単に制圧されてしまう。
人質になった恋人を助けるため、由紀子はたった一人でテロリストに立ち向かうのだった、というお話。
同じ作家の作品は、発表順に読んだほうが良い、と常々思っている。
(なかなか思うようにはいかないが)
お気に入りの作家の成長のあとが見てとれたりするとなお楽しい。
2005年に出版だから五十嵐さん充実している頃だなぁ、などとほくそ笑みながら読み始めた。
読み終えてもう一度奥付を確認することになろうとは夢にも思わなかったが・・・。
解説によるとこの作品、どうやら五十嵐さんのデビュー作らしい。
正確には、2000年のサントリーミステリー大賞に応募して落選した作品に手を加えて2005年に出版したのだが、五十嵐さんがこの作品にこだわった理由がよくわからない。
読んだ結論から言うと、あくまで秀作の域をでない作品だったからだ。
そりゃ29歳のヒロインにブルース・ウィリスほどの活躍は期待しないが、どうも偶然に頼りすぎである。
警察側の指揮をとる大島警視正も、せっかく変人ぶりをアピールしていたのに…。
舞台のハイテクビルも、無機的すぎて視覚効果なしでは何も喚起されてこない。
それでもこの作品を書いたのは、「ダイ・ハード」になにかしらの特別な思いがあったとしか思えない。
もしかしたら、「賞に応募するなら最低このくらいは書いてほしい」という、作家先輩として示した基準点だったのか?
(だとすればこの文庫版の表紙のどうしようもないセンスも納得だが)
60点(100点満点)。