冨山和彦のレビュー一覧
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ネタバレ画一的な経営分析では、経営の舵取りはできないことを示唆した本。
1.隠れた病気を発見し、今後の治療と将来の予防に役立てるのがリアルな経営分析であって、過去を評価するためのものではない。目線は常に未来に向いている
2.リアルな経営分析では企業ごとの実態の違いに目を向けなければいけない。全てを一括りで扱う投資家向けの財務分析の世界とは違い、りんごとみかんを一律指標で分析・比較してはならない。
3.経営分析はナマの事業モデルをつかまえることからスタートする。みかんとオレンジは、よくよく見ないと区別がつかない。
4.細かい業界専門知識を持つことは、必ずしも経営分析力に直結しない。「結局どうなのか」を知るには、売上インパクト、コストインパクトの大きな部分に目を向ける必要がある。
5.同じビジネスでも、業界ポジション、成長ステージやスピード、経営者の資質と組織との関係性などによって、企業を見るための「ものさし」を変えなければいけない。
6.経営分析はまず数字から。数字をもとに背後にある企業実態を想像する。出てきた仮説を現場に足を運んで検証して企業の実像に迫る。その繰り返しで分析の質を高める。
7.PLを突破口に木々用実態を思い描き、BSで確認し、最後はウソのないCSでチェックする。
8.簿記は必ずやっておくべき。現場で使える経営分析の能力は、しっかりした簿記の土台の上に築かれる。
9.世の中は教科書通りには運ばない。本当の観察力、想像力は経験を積むことでしか培われない。そして、その学習スピードは、数字と人間の両方に対する「好奇心」次第。
10.戦争に勝つのはより多くの情報を持っている者。経営改革という戦争の勝者になりたかったら、経営分析力を磨け。
11.当事者意識を持たずにいくら決算書を眺めても、付け焼き刃の知識しか身につかない。経営の修羅場、ガチンコ勝負に飛び込め。
12.たかが会計、されど会計。せっかくの人類空前の発明品は都合よく使いこなすべし。
13.経営分析の目的は、まずは勝つためのルール(儲けの仕組み)を理解すること。経済原則、特にコストを支配する法則が何かは必ず押さえるべし。
14.事業の経済メカニズムについて、世の中は誤解だらけ。安易に「規模が効く」と思い込むな。まずはありのまま現実を凝視し本質を洞察せよ。
15.単純に規模を拡大しても、その効果が得られる業種は、実は驚くほど少ない。共有コストが薄い場合、むしろ規模の不経済が働き、勝敗を決めるポイントは拡散する。
16.優勝劣敗の構図が本当に変わるのは、経済構造が変わったとき。そこで当該事業が消えゆく運命なのかを見定めるのも、経営分析の大事な仕事である。
17.経済の本質のひとつは、人間心理である。人間音痴では、正しい経営分析はできない。
18.世の中の多くのビジネスを支配しているのは、実は「密度の経済性」。単純な「規模」だけでなく、「密度」の持つ意味にも着目せよ。
19.同じ事業のように見えても、購買行動、立地、業態などによって経済構造は異なり、重要な経済指標も違ってくる。「違いのわかる」分析者になれ。
20.普及するほど利用価値が高まるネットワーク型の商品・サービスの場合、リスクをとって全速力でシェアを取りに行くことが正しい行動となる。先手必勝!
21.イノベーションなどによって、市場の創造〜成長〜成熟は繰り返される。分岐点における競争ポジションによって個別企業のとるべき戦略も変わる。経営分析でもそのダイナミズムを見極めないとならない。
22.顧客が他社製品に乗り換えるスイッチングコストを高めることは、提供「価値」を「適正価格」として実現する基本中の基本戦略。顧客サイドの経済性を分析せよ。
23.見た目は同じ工場でも、系列取引の割合を見極めないと、経営の実態に近づくことはできない。B to Bビジネスでは、このような産業構造的な視点からの経営分析を忘れるな。
24.インダストリー・バリューチェーン全体の成熟度合いとイノベーション、その中での位置付け(より多くの価値配分を勝ち取れるポジションにいるか)の両方に目を配らないと、企業の将来の競争優位性は掴めない
25.大競争時代の勝ち抜きの決定版は、スモール・バット・グローバルナンバーワン・モデルで、価値(価格実現力)とコスト(規模の経済)の両取りを狙うこと。スモールセグメントでのシェアとコスト、そしてスイッチングコストに着目せよ。
26.儲かっているビジネスこそ要注意。運と実力を冷徹に見極めよ。
27.経済メカニズムの視点を各種分析枠組み(3C分析や5Forces分析)にしっかりと入れることで、個別企業のあるべき姿と、その裏返すでその企業が直面する問題点や課題がよりクリアに見えて来る。事業経済性で本質に迫れ。
28.単価と数量を掛け合わせれば売り上げがわかる。売り上げを1日、1店舗、一人あたりに細分化すれば具体的な姿が見えて来る。
29.PL全体でのストーリーをつかみ、BSでそれを確認する。どんなヒト、モノ、カネ、業務プロセスが絡んでいるかを、PLとBSからイメージ化できると「勘」が働き出す。
30.ある数字を見て異常に気づくためには、相場観が欠かせない。特に値段のリアル感に敏感になることは、あらゆるビジネスの基本である。あなたは今日のトマトの値段を知っているか?
31.単品管理を徹底すれば、どんぶり勘定の余地がなくなる。大抵の問題はそれで解決できるはず。
32.お約束通りにやる財務会計は出発点。分析者の経営センス、オリジナリティーが問われる管理会計こそがゴール。
33.売り上げを増やすのに、どのようなコストがかかっていくのか、どのような売り上げの伸ばし方が、コスト効率が高いのか、という「コストドライバー」の視点で勝ちパターンを見極めていくことが重要。
34.数字の分析を徹底的に突き詰め、壁にぶち当たり、悩み、苦しむことで、その会社の組織サイド、人間サイドの本質的な問題も浮かび上がってくる。
35.月次、四半期、年度決算がその事業のサイクルと一致しているとは限らない。当てる定規の長さによって、業績の評価や予測は大きく変わることは少なくない。
36.取引先や競合他社を見るときも、財務データ、経営データを分析することで、従来とは違った見方を手に入れることができる。プロが本気で分析するのは、その会社と事業の経済性(儲けを決めるメカニズムとその堅固性)と、財務の健全性(いざというときの生存能力)。この2点について、数字と業務実態がコインの表裏のように整合的に納得できるまで、徹底的に分析せよ! -
Posted by ブクログ
・性悪説でも性善説でもなく性弱説で見ると見えてくる
・相互安全保障を目的とした会議や根回しの業務量は人と人の組み合わせの数に応じて増えていく
・組織のハコをいじっても、成果主義を導入しても、それらが現実に仕事をする人間の根源的な動機付けに響き、シンクロしていないならば絶対に機能しない。
・戦略が仮説にすぎないことを本質的に理解し、やってみて、検証することに精力を注いでいる会社こそ、経営戦略が実践されていると言える。
・79 四つたして4で割る
・管理職の地位で付加価値を生むには相当の能力が必要
・ストレス社会というが硫黄島決戦に投入された兵隊たちを超えるストレスが現代に存在するだろうか。
・クビになることを厭わないような人間を育てる。周りに上司が誰もおらず、自分が決めなければいけない状況に追い込む。
・人間のインセンティブの中には非経済的なものがたくさんある。過去からの思いやメンツ、自分の得意なことをしたい、新しいことはやりたくない、といった気持ちが次々に折り重なって人は仕事に向かう
・観の目つよく、見の目よわく 宮本武蔵 -
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【ノート】
・著者の一人である増田氏による前著「地方消滅」が総論的なものであったのに対して、本書はかなり具体的に踏み込んだものになっている。
・本書は知事経験者である増田氏と、東北で経営者として活躍している(らしい)冨山氏との対談形式になっている。このためか、地方自治における実例や弊害についての言及が具体的で分かりやすい。例えば「必要なのは共働きで500万稼げる仕事(冨山 P37)」や、「首長が変わると議会がガラリと変わる(増田 P89)」などという発言はかなり具体的。また、悪しき平等主義のため、余裕があると「選択と集中」を実行することができない、というのもリアルなご意見。「北海道の農業は(略)可能性が開けている(増田 P49)」というのは道民としては嬉しい発言だが、あくまでも「可能性」だからね。
・中でも、例えばコンパクトシティという考え方について、日本では移住を強制できるわけではないとし、そのような強制移住ではなく、高度経済成長時代に拡散し過ぎた人口分布を適正値に戻すことによって、人口減少を前提として組み込んだ自治体の在り方を住民と共に作り上げていくというのは大事な提言であり、今後の日本の行く末をわがこととして考える時に、かなりの説得力を持つと感じた。ちなみに、コンパクトシティ政策が進んだ場合、近年顕在化している野生動物の侵食は拡大すると考えるべきだろう。
・自分にとって最も印象深かったのは増田氏の次の発言。「地方創生の戦略を考える上で、私が一番増やしたいと思っているのは、地域の大学が核になって、地域が本当に求めているニーズを汲み取り、解決する仕組みをつくることですね。(P156)」ただ、これを可能にしようと思ったら今の文科省の制御は変えていかないと実現は困難。
・実はこの本については、最近、大変お活躍(誤植じゃないよ)の増田氏が、対談形式という執筆の労を取らなくてよい形式で好きなことを放談してるんだろうということで軽視してたのだけど、対談ゆえに読みやすく、それでいて随所に二人の知見がキラリと輝いているといった印象で、自分としては読む甲斐のあった本でした。 -
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産業再生機構でCOOを務めた冨山和彦氏が日本企業の競争力低下の原因となる構造的問題を語っている。書中何度も引用される、ゲマインシャフト=共同対社会、ゲゼルシャフト=利益追求社会というくくりは正直わかりにくい。当然、前者が日本、後者が欧米ということであるが、ドイツ語で聞き慣れない概念なので、簡単なことがむしろわかりにくくなっている嫌いがある。説明がわかりやすいだけに勿体ない。
本書では、日本のこれまでの競争力の厳選は、経営トップやそれを構成する一部の高学歴エリートではなく、現場の人たちの底力にあるとしている。カネボウやダイエーなどの再生の実例を通じて、日本の不振企業の問題の本質をえぐり出しているのは面白い。冨山氏が就任した時点での年齢は44際だったという。そして、カネボウで社長として抜擢した当時課長クラスの知識賢司氏は41歳であった。冨山氏は、もし将来リーダーを目指すのであればその準備をしておくべきだと述べている。人事は、関係者に対する経営戦略の最大のメッセージであるというが、当時のカネボウの関係者たちは驚いただろう。しかし、冨山氏は知識氏にはすでにその重責を担うだけの準備ができていたのがすぐに分かったという。 -
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「地方消滅」の増田寛也氏。
富田和彦氏については、よく知らない。
その二人の対談集。
面白かったのは、京丹後市が2015年3月に全国第一号で策定した「地方版人口ビジョン」についての話。
(p12 第1章 消滅危機の実態とチャンス)
2060年には、現在の人口5万8千人が約3割増えて、7万5千人に増えると書いてあるそうだ。
増田氏の地方創生会議の試算では、41%減の3万5千人としているにもかかわらずである。
地方創生会議による将来推計と、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計の違いは社会的移動の取り扱いだけなので、社人研予測でも、10年程度遅れて創生会議予測とおなじ結果が現れると、社人研の方が書いているの読んだことがある。
にもかかわらず、京丹後市では、創生会議や社人研の錚々たる人口問題の専門家に逆らって、あえてあのようなビジョンを全国に先駆けて出したわけだから、よっぽど自信があったのだろう。
それほど自信あるなら、京丹後市の方々にはぜひ国のトップに座っていただいて、国全体の人口減少問題の解決に指揮をふるってもらいたいところだ。
などと皮肉を言ってもしょうがない。
こういうビジョンを出しておきさえすれば、国から交付金だか補助金がもらえるからやっているだけなので、誰も人口減少や長期的な回復策について真面目に考えてるはずはない。
京丹後市だけではなく、それがほとんどの地方自治体の現状だろう。
(京丹後市のビジョンは各方面からの注目を浴びたようで、長文の反論をHPに掲げているだけまだ真面目である)。
国の方でも、全国の自治体から出された地方版人口ビジョンを集計してみるとよいと思う。
合計した2060年の総人口は、減少どころではなく、2億か3億人になっているのではないか。
めでたしめでたしである。
あと面白かったのが、「G型大学」と「L型大学」の話。
(p64 第2章 L型大学から地方政治まで)
そりゃあ文系の教授連中は怒るだろうなあ、という内容。
面と向かって、「役立たず!」「ゴミ!」と罵っているようなもの。
大学論の成否はひとまずおくとして、本書における富田氏の大半の意見はまっとうに思えるので、別の本も読んでみることにした。 -
Posted by ブクログ
タイトルの内容は割と終盤にちょい役で登場してくる。本旨は、主に課長クラスのミドルマネジメント層が奮起しないと日本もお前らもやばいせよ!という叱咤激励をひたすら頂ける一冊。日本3.0(佐々木さん著)とセットで読むと30代はいてもたってもいられなくなるのではないか笑
歴史的に見ても、偉業を成す時の起点は当時の課長級の活躍によるものが多い。明治維新しかり、日本をつくった12人にある関ヶ原合戦プロデューサーの石田三成しかり。(後者は私の個人的後付け)
現場がわかって経営などトップからの情報にも触れる機会の多い課長級こそが最も機動力高く意志を持って行動を起こしやすい立場にいるのに、日本にはそういう気概を持ったいわば管理職でなく経営職、ミドルマネジメントでなくミドルリーダーシップが枯渇していると。
この本並びに冨山さんの話をもっと沢山のマネージャーが聞いて知るだけでも結構エンジンかかるミドルは多いのではと思う。
個人的にはコラムにあった分析思考のフレームワークが参考になった。ニュース記事などを読んで考えを深める際にぜひ実践してみたい。NPなどはその実践の場としてはちょうど良いかも。 -
Posted by ブクログ
ミクロではなくマクロとしての創生戦略の議論
「地方消滅」(2014年)で新書大賞を受賞した増田寛也氏と、「なぜローカル経済から日本は蘇るのか-GとLの経済成長戦略」(2014)の著者冨山和彦氏の対談が新書形式でまとめられたもの。
第一章では、地方消滅(人口減少)という不都合な真実を、行政はじめ受け入れることが容易ではないことが議論されている。特に、夫婦共働きで500万円を稼げる「質の高い」仕事を増やすことが大事という議論には納得できる。工業団地を整備して工場を誘致して一定の転出抑制効果はあっても、いわゆる頭のよい学生の流出は避けられない。また、冨山氏は、「あえて里山を選ぶ若者も一部いるとは思いますけれど、主流になるような数ではない。美しい里山のなかで循環して経済が回っていくという話は、日本の地方全体の話としては無理」と言い切っており、「田園回帰」の動きを理由に地方消滅を否定する人たちに、暗に反論をしている。
第二章では、特に地方創生のための大学の役割が議論されている。大学進学率が飛躍的に向上した以上、アカデミックな研究を行う大学ばかりではなく、職業人として役に立つ人材を育成する大学も必要ではないかという主張は、当然のものだろう。ただし、例示されている簿記会計や宅建などで地域経済がうまくいくのかは疑問(ただ、第三章で冨山氏が強く主張する生産性の向上のためには、質の高い労働力が不可欠であり、「学問」よりかは役に立つのだろう)。
また、同章で、政治人材の不足が指摘されているが、基礎自治体が機能するためにも首長の役割は非常に重要。私が住む地域の議会は傍聴に行っても眠っている議員もいれば、質問の質の低く、全く機能していない。今後このような地域が増えてくるのだろう。
第三章では、地方でこそイノベーションが起こる理由が議論されている。また、地方創生のためには、生産性の向上による賃金上昇が、東京への人口流出を減らし、若年層の出生率が向上し、人口減少の流れが止まると冨山氏が主張し、それに増田氏も同調している。生産性の向上は確かに必要なことだが、指定都市、中核市など一定程度の人口の集積がある地域は別として、地方一般には難しい話。また、生産性の向上や賃金の上昇だけでは、東京圏の集積・憧れを超えることはできず、東京への人口流出は止められないのではないかと思う。
増田氏がまえがきで言うように、農山村地帯での田園回帰の動きを過大評価することは問題を隠すことであり、すべての市町村でできるものではない。
実際には、これまでの都市化を目指すなかで、その「まち」らしらが失われた地域が多いのではないだろうか。そのような地域の助けとなる書が書かれることを期待したい。
増田氏の経歴から言っても、都道府県や市町村が地方創生のために果たす役割について議論があればよかったがマクロの話に終始していた点、具体的な生産性向上の話に対する踏込不足感があった点を考慮して、☆3つとさせていただいた。