【感想・ネタバレ】なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略のレビュー

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★2つの世界の切り分けに納得★目にする地方経済の現状と、国やメディアが騒ぎ立てる経済のグローバル化といった話の距離にずっと違和感を覚えていた。世界の距離が近づき日本の生産年齢人口が減っていけばこれまでと同じ処方箋では対処できない。世界を2つに分けて考えるべきだという指摘はすごく腑に落ちた。

「モノ」を中心に立地を問わず世界の(ニッチな分野でも)チャンピオンにならなければ生き残れないGの世界と、その場でしか成り立たたず人手のかかる「コト」のLの世界。かつての日本を支えていた加工組立の中小企業は、世界との距離が近づく中でGの世界でしか生き残れない。Lの世界は地方だけでなく流通・サービスにも当てはまり、いい意味でそこに地方のヤンキーが生き延びる余地もある。どちらがよいではなく、異なる世界が併存する。

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2020年01月15日

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GとLという経済の分け方は非常にしっくりときたし、これまでごちゃごちゃにして考えてきたが故に整理できなかったことが整理できるなと思った。また、世界の流れとしてはGのイメージが強いが、Lの経済における問題の大きさに気づかされる。

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2019年04月14日

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日本の経済力という面を考えるとき、グローバルな企業の競争力ばかりに目が行くが、実際にGDPと雇用の多くを占めるのは、地域に根差したローカルな企業である。グローバル経済とローカル経済とではそこに働く力学が大きく異なるため、それぞれについて正しい見方をする必要がある、というのが本書の骨子だ。二つの経済の大きな違いは、「規模の経済性」が効くグローバルと「密度の経済性」が大きな意味を持つローカル、ということができる。

グローバルで競争する企業は、グローバルで「規模の経済性」を得るため激しいシェア争いを勝ち抜くことが必要であり、そのために経営者は正しく経営資源を競争優位性を持つ事業に集中させることが必要となる。電機メーカーをはじめとする日本企業はこの選択と集中ができずに不採算事業とともに沈んでいった企業が多かったと指摘する。日本政府のこのフィールドでの役割は、そういったグローバル企業が競争しやすくするための規制緩和を徹底的に行うことである。

課題となるのは優秀な人材の育成や誘致である。著者は、グローバル企業が活動する理想の場としてシリコンバレーを念頭においている。グローバルな競争においても起業が重要で、その数を増やすために、優秀で高い意欲を持つ人にとって起業することが有利となるような社会になるべきだと考えている。著者はよい傾向にはなっているとして、「東大を出て日本の安泰な企業に行きたがるのは、東大の中では二線級の人たちだと言われるようになった」という。こういった人材がいったん外資系コンサルファームに行き、その後若いうちに起業するものも多くなっているという。著者は自らの成功体験を背景にした高いエリート意識を隠さないが、優秀なトップクラスの人間はグローバルで勝負をするべき、という発想がある。

一方で、これからの日本はローカルをどのようにしていくのかが国家としてはもっとも重要な事項となる。これをグローバル企業の競争モデルと混同してはいけない、というのがこの本が他の類書とは異なる主張をしているポイントだろう。ローカルにおいては集約化と穏やかな退出を可能にするための規制作りが重要事項となる。グローバル企業の最重要KPIは資本効率性で、ローカル企業の最重要KPIは労働生産性であるという指摘がそのことをよく表している。

バス運航事業などのローカルの事業体では、競争事業者は実質上存在しない。グローバルな事業とは異なり、営業地域が異なるバス会社同士は、同じ事業を行うにも関わらず、互いに競争関係にはない。そういったローカル企業の例としては、他にいくつも挙げることができる。例えば、地方のケーブルテレビも同様である。そのようなローカル企業の場合、経営の良し悪しはオペレーションの効率性に依存する。しかし、ローカルにおいては競争がないから効率性が悪い企業もブラック企業として生き残れてしまう。それは国家にとっても地域社会にとってもよくないことである。この解決策として、サービス業の最低賃金を上げることで、効率性の悪い企業が音を上げて効率性のよい企業や経営者に任せるところまでいかせるべきだという。同時にそのときは、ソフトランディングが可能なような規制を整えることが必要であるという。地域交通機関、医療介護、保育といった公共サービスにこそこの考えが当てはまる。補足として、信用保証制度による過大な債務規模が、これまで一生懸命に中小企業をつぶすまいとしてきた結果であり、つぶれるべき企業が生き残っている状況が作り出されている証拠でもある。

著者は、地方ではコンパクトシティ化を進めることを説くが、これは集約化であるとともに限界集落からの退出をどうやって穏やかに進めるのかという話である。鉄道の駅と主要バスターミナルの駅に駅前商店街を復活させることで、モビリティの問題なども解消する(バス会社も効率的になる)。冨山氏は、みちのりホールディングスという東北・北関東地方を中心としたバス運営会社の経営者でもある。地方では雇用はなくなっていくのではというイメージがあるが、実際には地方から先に人材不足が始まっているという。実際に、みちのりホールディングでも常にバス運転士の不足に泣かされているという。その上で、人手不足対策を「労働生産性の向上」「女性と高齢者の活用」「外国人の雇用」の順番で考えることが重要であると指摘する。日本社会のシステムは移民に対しては脆弱であるため、むやみに外国人の受け入れを進めるべきではないのだという。


著者は多くの企業再生に携わったが、旅館街の再生の話など印象深いものがいくつもある。カネボウやJALのリストラでは、人員整理に手を付けることに対して躊躇はなく、実際に多くの社員が再就職できたという(実際にリストラに会った人はこれを読んでどう思うかというのは気になるが)。一方、ローカル企業においては、地域に根ざすその人の人生が破綻しないようにものすごく気を遣うことになったという(この時点ではまだ地方でも人余りの問題があった)。また、日本の大企業の企業再生に関わった著者の指摘する日本企業の問題点としてダイバーシティの欠如を挙げていることが印象的である。「地頭が良い、地頭が悪い、知識がある、知識がないということで、意思決定を間違える企業はほとんどない。ガバナンス上の大きな過誤は、ほとんどが人間の性から生まれている」というのは、グループシンクや過度の忖度などが大企業の中で生じがちなことから示唆的である。

この本を読んで気が付いたことのひとつは、通信事業者というのが極めてローカルの世界のビジネスであるということだ。技術がグローバルになり、端末も世界で売られているものと同じものとなり、インターネットというグローバルな世界との接続を担うことからグローバルの世界のビジネスをしているのかと無意識には思っていた。しかし、競争環境という点を見ても、Verizonやチャイナテレコムと直接競争するわけではないということからもわかる。そうやって見ると、違ったふうに見えることもあるかもしれない。その意味でも役に立ちそうな本である。

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2018年10月28日

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経済政策を考える上で、過去にとらわれて実態に合っていないという指摘を読み、個人的には非常にすっきりした思いです。
マスコミで流れる企業のイメージはあまりに画一化しすぎていて、どうも実態と合っていないのでは、というのは何となく思っていましたが、理論的にとても整理されていました。

経済の考え方として、グローバルとローカルを分けて考える必要があります。

・Gの世界:製造業やIT産業が中心になる世界
 基本的に「モノ」(製造業なら車などの有形物、ITんら情報などの無形物)を扱い、規模の経済性が効く、資本の集約性

・Lの世界:非製造業が中心、本質的に「コト」の価値(観るコト、運ぶコトなど)を顧客に提供、分散的な経済構造、対面サービス、同時性・同場性のある経済圏、密度の経済性、不完全な競争、労働集約性

これまでの加工貿易立国時代から時代が移り、両者の経済的な関連性は良くも悪くも薄くなってきているため、両者の考え方、政策も分けて考える必要があります。
一方のみを意識した政策を行っても、関連性がないためトリクルダウンも起きない。
だからこそ、政策を分けて考える必要があります。

「GかLか」の二者択一ではなく、両者は良くも悪くもあまり連関していないので、GはGとして、LはLとして、それぞれに最適な政策を選択・遂行しても、あまり矛盾は起きないのではないか

という指摘を踏まえ、今後の政策の推移を見守っていきたいと思っています。


<この本で得られた気づきとアクション>
・ローカル経済でできる方向性が見えた。それにふさわしい支援はできているか
・製造業の中でもグローバルを目指すものとそうでないものの区別はできるか、どの段階でどのような支援をできるのか。

<目次>
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
第3章 ローカル経済圏のリアル
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する

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2017年01月29日

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グローバル経済に注目しがちだが、実際はグローバル企業は例外的で、分散型のローカル企業が多く占める。
グローバル経済への対抗としては、里山資本主義は面白いがそのような条件がそろう事例は限定的だ。
ローカル企業が地域に還元することでローカル経済は循環する。
少子高齢化が進むなか、ローカル経済は人手不足状態だ。ローカル企業の労働生産性を向上させる。
ローカル企業を選別し、みこみのない企業には退出してもらう。
ローカル企業が効率化、集中することでローカル経済は活性化するとしている。
退出のめやすのひとつとして担保中心の融資から、銀行員の目利きに基づく融資に戻すという提案には非常に納得できた。

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2017年01月03日

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トランプ大統領就任含めて、色々最近と起こっていることが点でばらばらにあったが、線で繋がったような印象を受けた。近いうちに再読したい。

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2016年11月25日

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とても難しい本だった。
専門用語が、頻繁に出てくる。

GもLも両方頑張るという話であり、特にLは労働生産性を上げることが大切であるとといた本である。

そのためには、賃金を上げ、女性や高齢者の参画を上げることが大切である。

そして、難しい政策ではあるが、緩やかな退出が必要である。

労働生産性までは理解できたが、緩やかな退出を促すことで地方が輝けるかが腹落ちしなかった。
示唆深い本であると感じた。

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2015年11月29日

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世界経済は、G(グローバル)とL(ローカル)とで出来ている。一見、何の目新しさもなさそうな主張だが、その一見は大間違い。
無意識にごちゃ混ぜにしてしまっている様々な事象を、明快に分類し、解いていく鮮やかさは圧巻。
冨山さんお得意の、規模の経済・密度の経済といった話も、G/L視点で、しっかり描かれている。

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2015年10月25日

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セントラル(グローバル)とローカルの切り口で、整理して成長戦略を二つに分けて立てると上手くいくのではという主張の本。ローカル経済の方は、先進国、発展途上国関係なく地域に根ざした経済があって、その経済に向けた政治や企業活動をすべきというのは、非常に説得力がある。マスコミ含め、ついつい眼が行きがちなグローバルの視点ばかりで成長戦略や企業経営を何でもかんでも当てはめめてしまうとおかしくなるとうのはまさにその通り。著者は実際に双方を経営支援している中で生まれてきた発想である点、現実に根ざした内容になっており、なるほどそういうことか?と思える内容も多い。一読すべき本です。

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2015年07月15日

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プロローグを読んだときは、「??」と思うところが所々にあったが、具体的な処方箋に入ると、非常に説得力があり、かつ実践的。
Lの世界では緩やかな退出を促す政策、事業をたたむときに個人の人生が壊滅的な状態にならないような政策が必要。
大企業・中小企業、上場一部、二部ではなくGとLで区分する(求められる情報開示やCGが異なる)。
大部分では、スティーブジョブスが必要なのではなく、県大会で勝負できる起業家が必要

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2015年06月09日

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ネタバレ

なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 (PHP新書)2014/6/13


G経済圏とL経済圏それぞれで別の戦力を用意せよ
2015年4月15日記述

産業再生機構元トップの冨山和彦氏の著作。

本書では企業、産業がかつてに比べG(グローバル型)、L(ローカル型)とはっきりと分かれていてそれぞれに効果のある対策は異なるということを示している。
これまでも感覚的に思っていたことではあるけど、国際競争に耐えずさらされているメーカーとJR、バス会社などを同列に扱うことにそもそも無理があるのだ。
(国の産業政策だけではなく個人にとっても同様。MBAを取得や高レベルの英語力が日本人全員に必要かどうか等・・・)
G型企業のこれから、ガバナンスがどうあるべきかは本書に加えてビックチャンスという著作に冨山氏がまとめているので参考にされたい。
L型については本書がよくまとまっている。
雇用にしてもGDPにしてもおよそ7割をしめているというのは意外だった。
L型では密度の経済性が効く。
L型経済圏に対して単純な規制緩和ではかえってブラック企業などが増えてしまう。
スマートレギュレーション(賢い規制)が必要である。
サービス業などは国境を越えることは出来ない。(バス、鉄道、観光・・)
サービス業の最低賃金を上げ生産性の低い会社の退出を促す。
地域金融機関、保証協会のあり方の見直し。
特に信用保証協会からの代位弁済が毎年一兆円を超えている。
これを見直し生産性の低い企業へ緩やかな退出を促す。
個人保証でも贅沢品を除いた財産は取り上げず路用に迷わないように変える。
税制や補助金も生産性の高い会社に傾斜的に配分するべき。
失業対策も対企業ではなく直接個人に対して。
人手不足対策を真剣に行う(放置すれば人がいなくて過労死する場合も・・)
非高度人材の外国人を移民としていきなり受け入れると
劇的なショック反応が起こる可能性がある。
日本国内で少子化対策、生産性向上、女性と高齢者の更なる活用を徹底的に行う。
いきなり外国人労働者を入れることは最低賃金の引き下げとほぼ同じ効果を持つ。

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2022年09月04日

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ネタバレ

これからの日本のいく末可能性について考えるべく読書。gとlの社会は構造が違うという話。改めて興味深い

メモ
・製造業、it業はグローバルの経済特性。規模の経済・ネットワークの経済性が効きやすく、国際競争に巻き込まれやすい。
・ローカル経済圏はコトの価値。分散的な経済構造、密度の経済が働くことが多い
・新陳代謝の不足
・グローバル優良企業はトリプルテン(利益率・ROE・成長率)
・Gの世界の戦略 高株価・新陳代謝・成長産業・労働市場
・銀行も通信もローカル産業。グローバルかどうかをみるには寡占度合い。
 トップ10位でほとんどをしめていたらグローバルの産業
・再生における問題の本質はBSでなくPL
・ローカル経済は緩やかな退出と寡占化を
・ローカルの場合、ベストプラクティスアプローチが有効。同一地域でなければ、競合とならない
・緩やかな退出を促進するためには資本市場や製品市場でなく、労働市場から。最低賃金をあげる。

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2021年09月11日

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2020.03.21 予め、グローバルでオリンピックチャンピオンを目指す企業(Gの経済)とローカルでの勝利を目指すサービス業を中心にした企業(Lの経済)を分けて考えるという切り口はとてもおもしろく、同意すると同時に感心した。Lの経済における生産性の向上という考え方はとてもよく理解できる。どう進めるかを考えないと。

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2020年03月21日

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ローカルビジネスに興味があるのであれば、こういう本をちゃんと読まなきゃいけなかったよなと後悔。ただ、過去を悔やんでもしょうがないので、これからちゃんと勉強しよう。
日本全体が人口減少している中で、これまでと同様に地方の産業政策が「工業団地造成&企業誘致」では立ち行かなくなるだろうというか、すでに立ち行かなくなっていると実感しており、じゃあどうするかというと「質の高い産業だ」とロボット産業などの誘致になっているのだが、果たしてそれでいいのだろうかと思っていた。そういう意味では、この本で語られている、ローカルビジネスは密度の経済性が働いており、グローバルトップを目指す必要はなく、生産性の向上を図るための企業集約を図るべし、というのは腑に落ちた。ただ、それを行政政策に結び付けるのはなかなか難しい。転廃業の促進はできるかもしれないが、金融機関のデッドガバンス強化や、再編促進型の倒産法の導入といった解決策は、国や民間と協力しながらでなければ進められない。が、そういう視点を持つことが重要なんだろう。

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2019年12月27日

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「地方消滅」のおさらい的に。人材と同様、グローバルの標準的なルール(オリンピック)で戦う会社と、ローカル経済で戦う会社のルールはおのずと異なるので、きちんと峻別して運用しましょう、という本。納得です。

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2019年07月28日

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ネタバレ

経済学的には、好景気だから人手不足、不景気だから人余り、なのに景気停滞の今人手不足…

少子高齢化時代の今、従来と異なる経済環境を経験している。団塊の世代の大量退職から、あと20年間は続くであろう極端な少子高齢化とこの人手不足の問題にどう対処するか?まもなく日本と同じ少子高齢化問題を迎える他国のお手本となる対処法を構築できるか?日本の腕が試される。対処法の糸口として、大企業と中小企業ではなく、グローバル企業とローカル企業に分けて考えることを推奨した本。モノを生産するグローバル企業に見られるのは資本集約型であり、サービスを提供するローカル企業に見られるのは労働集約型であることを考えると、国の支援の仕方は後者を軸にしたほうが効果的だと思われる。国を支える労働力をサポートするには、ローカル企業が健全に経営できる環境を整えることが大切だと改めて思う。

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2019年01月02日

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ローカル(L)の世界とグローバル(G)の世界に分けて政策提言.グローバルとローカルは格差ではなく選択の問題,そこに序列はないという考え方には納得.ただ両方を見て選択できる人は限りがあるのではとも感じた.里山資本主義と合わせて読むと理解が進む.

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2018年10月09日

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ゾンビ企業は延命するよりも市場から退場させたほうが地方の労働生産性はあがる。基本的にこの意見に賛成です。市場に企業が数多く存在すれば新陳代謝がすすむかもしれないけど、絶対数が少ない地方ではゾンビ企業が退場したらそれっきりということにはならないのかしらん。

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2016年05月01日

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ともすれば、すべての企業がグローバル経済で生き残るため、そして成功するための経営が求められているように感じられるものです。本書では、グローバル経済圏とローカル経済圏を、それぞれGのものとLのものとして区別し、GとLは連関の薄いものだという前提で論を進めていきます。つまり、どれだけグローバル企業ががんばって儲けても、いわゆるトリクルダウンと呼ばれる、グローバル企業からほかのサービス業の人びと、もっと言えば、格差の下のところにいる人々への潤いはほとんどもたらされないものだという見抜きがあるんです。よって、グローバル企業はグローバル企業で、ローカル企業はローカル企業で、というフィールドと性格の違いをしっかり考えていくのがこの本のねらいです。

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2016年04月15日

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会社を大企業、中小企業ではなく、戦う市場の違いとして、グローバル(G)とローカル(L)で分け、それぞれが全く違った特性で、それぞれから日本は復活していくという内容。
製造業の大企業を中心としたGの話は、よく聞くが、実は、労働人口の65%が非製造業の中小企業であること、近年起きているサービス業での人手不足から、Lの重要性と可能性を語っている。

L領域での経営の戦略としては、地域との密着度・占領率と、生産性の向上だという。アメリカに比べて製造業は生産性が120%だが、非勢製造業は50%とかなりの改善の余地があるという話は初めて知った。生産性については、地域が分かれれば競合にならないため、地域横断での企業グループの場合、ナレッジの共有がもっと効くというのもうなづける。

Lの市場で、需要も低下するが、それよりも供給がさらに低下するため、ビジネスとしてのニーズは高まるという話だが、生産性を上げて、低下した需要でもコンパクトに収益を上げられるようになるかどうかがポイントと感じた。
今まで、地域でのローカル事業ということを考えたことがなかったので、非常に発見が多い1冊でした。

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2015年12月29日

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内容について、100%の理解はおそらく出来ていないと思うが
新しい気づきや発見がいくつか得られたという意味で
少なくとも読んで損はしない本だった。

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2015年12月02日

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GとLで何かと話題の冨山氏の新書。
なるほど、世界の現状と今後とるべき経済成長戦略がGとLとで明確になった。
読む前は、GかLかの二者択一論かと思っていたが、「GとLをそれぞれに使いこなし、選択していけばいい(p265)」とのこと。
それならば、国立大学も個別大学でGかLかでなく学生が選択できる方が良い。それが大学らしいし、地域のダイバーシティを考えた上でも望ましい。

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2015年07月04日

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経営の専門家として多方面に渡って現在も活躍中の冨山和彦が、日本経済を立て直すにあたり、グローバル経済とローカル経済に分けて考えないと、国の政策から何まで見誤りますよいう警告を2014年の時点で発した本。

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2024年04月16日

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ローカルとグローバルの話が中心。労働生産人口、少子化、雇用問題、移民政策、サービス業の人出不足等、範囲が広くなってしまう内容。

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2019年07月08日

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ネタバレ

こういう方向には進んできてない。言ってることはすごく私の実感にあう。でも。たぶんこうはなかなかいかない。なんだろう。

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2019年02月11日

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「GとLの経済成長戦略」というサブタイトルを持つ本書では、二つの経済はそもそも別のものであるとした上で、それぞれに応じた具体的な成長戦略を説く。

グローバル経済と地方の経済は分けて考えた方がいいというのは、そのとおりだろうし、個々の成長戦略の説明も説得力があるように思える。

ただ、ふたつの経済の関係性が、まったくないというのは、本当にそうなんだろうか。
そこのところが最後まで釈然としなかった。

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2017年09月23日

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グローバルシティとローカルタウンは、異なる原理で動いている別々のシステムだ。良くも悪くもリンクしていない。大富豪が増えてもトリクルダウンは起きない。金持ちを貧乏にしても、貧乏人は金持ちにならない。都会でエグゼクティブウーマンが増えても、99%の女性の働きやすさは向上しない。

「Gの世界」と「Lの世界」は交わらないパラレルワールドだ。Brexitやトランプ現象を経たいまだからこそ、改めて注目されるべき本。GとLの両極化は世界的現象なのだから。

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2016年12月23日

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全体的には、地域経済活性化、地方創生を考える上で、新しい視点を提供しており、書籍的価値は大きいと思いました。特に、市場をG(Global)の経済圏とL(Local)の経済圏に分け、やるべきことは違う点を指摘しているところは秀逸だと思いました。

タイトルは、「なぜローカル経済から日本は甦るのか」となっており、主題はローカル経済についてであったが、氏の述べる部分に少し賛同できないところもある。それは、企業の集約化による寡占的独占を目指す部分である。

氏の主張の基本的な部分は、企業の「集約化」にある。なぜかというと、日本は人口減少局面に位置しており、需要が減るとともに生産年齢人口は減っていくことによる労働力不足を解消しなければならないからである。しかし、現在のローカル経済圏では第3次産業のサービス業が大部分を占めているが、労働生産性がとても低いため、労働力不足を解決するために、労働生産性を上げるべきだと述べている。そのためにも、企業の穏やかな退出をはかり、企業の集約化を進めていくことで、全体的な労働生産性を上げていくことがポイントであると述べている。

これは一面的な発想ではないだろうか。たしかに、「地域経済」を数字のみで見ていけばそのような発想になるだろうが、大事なのは「実生活も含めた経済のあり方」だと考える。なので、逆に自営業をどれだけ増やせるかどうかがポイントだと考えている。働くこと=従業員というのは、都市部で働くことと何ら変わらない。地方の戦いは、氏の言うように、「県大会上位を目指す」ことであり、グローバルで戦うことは「オリンピッックチャンピオンを目指す」となると、どうしてもビジネスマンには都市部に行ってしまう。これから地方が魅力的な場所になりえるには、生活も豊かにその地域で価値をだせるひとを呼び込めるかどうかにかかっていると思うのである。

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2016年08月14日

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グローバルとローカルそれぞれに最適な戦略がある。一部のグローバルエリートを除き、ローカルに身をおく人が多数を占める中で、ローカル経済のこれからの処方箋を提案している。キーとなるのは、集約と労働生産性向上。この先地方へ戻る私は、地方の将来について漠然とした不安を抱え続けているが、地方のこれからについてひとつの方向性を示してくれている。
 これから供給不足が常態となるであろう日本は、リスクをとってチャレンジするには良い環境になるかもしれない。

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2016年07月17日

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GとLの異なる実情を分けて検討することの有用性。
GとLの分断は実情としてそのとおりであるが、それを促進させることに未来があるか。

G
・規制緩和、ガバナンス強化とセットで法人税引き下げ
・現場力を活かす本社力の強化
→思い切り手を抜くところ 例 本社システムの作り込み
→意思決定の多様化(内部人材と外部人材の得手不得手)
・グローバルルールの適用
☆ 率先か後追いか
・公的けんきゅうきかん、大学の役割の増大
・国内産業への波及を考えた国際化 例 和食普及と日本食材、酒類の輸出の連関

L
・雇用の実態を正確に把握する
→経済センサス活動調査
非製造業割合 企業数88.9%、従業員数80.6%
社会福祉サービス(医療、介護、保育)、教育、公共交通
・地方の労働力不足
☆エビデンス?
・規制緩和ではなくスマートレギュレーション
例 主体規制からこういし規制
・デッドガバナンスの変更
・限界集落はいつ頃できたか?

・集約後?
→ライブ・エンターテインメント
→インバウンド

グローバルからローカルに移行すべきと主張しているように記載されている藻谷氏著書に対する分析は、ローカル経済をグローバル経済のサブシステムとして提案していることを無視している。

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2015年08月15日

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