高野和明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今年こそは読もうと決めていた作品。
昨年「13階段」を読んでから、ずっと読みたいと思っていて、ようやく手に取った。
創薬学科を専攻する大学院生。
難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、民間の軍事会社で働く傭兵。
二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。
上巻の前半は難しい描写もあり、あまり入り込めなかったけれど、上巻の後半辺りから面白さが加速して、下巻はページを捲る手が止まらなかった。
別々の場所で起こっている出来事に徐々に見えてくる繋がり、次々に明かされる真相に大興奮!
場面の切り替えが多々あり、一つの物事を多角的に見れるのも面白かった。
本書に出てくるレポート、 -
Posted by ブクログ
高野和明『踏切の幽霊』文春文庫。
『ジェノサイド』以来の久し振りの高野和明。単行本の刊行時から気になっていた作品である。
何とも切なく遣る瀬ない結末のホラー・ミステリー小説であった。
単なる幽霊譚ではなく、大都会の中で、過去の傷を引き摺りながら独り生き続けることの苦しさが見事なまでに表現されている。
下北沢の三号踏切で繰り返し起きる怪異。
最愛の妻を失い、絶望の淵に立った元新聞記者で現在はフリーランスの雑誌記者を務める松田法夫はデスクから心霊ネタの取材を任される。松田が取材を進めると下北沢の三号踏切で撮影されたという髪の長い細身の若い女性の霊の写真に行き当たる。
松田がその女性に -
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ネタバレ相当な力作であり、上質なエンターテインメントだと感じた。特に上巻が素晴らしい。映画になってもおかしくないレベル。
人類滅亡の危機につながりかねない新種の生物がアフリカで発見されたという報告に、冒頭から強く惹きつけられる。
ホワイトハウス主導の作戦のもと、傭兵部隊がアフリカへ派遣されるが、その任務はウイルスに感染したピグミーの抹殺であり、新種の生物との関係は当初は見えない。一方、日本では父を亡くした大学院生が、謎に包まれた父の研究を引き継ぐことになるが、こちらも新種の生物とのつながりは不明のまま進んでいく。
上巻ではやがて新種の生物の正体や謎は次第に明らかにされていくが、その過程に圧倒的なリアリ -
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ネタバレこれは本当にすごい本だった
上下巻に分かれてて結構な長編だったがそれを感じさせない怒涛の展開で読むのを止められなかった
医学的な専門用語がたくさん出てきて、遺伝子がどうだとか新薬の生成過程とかはあまりわからなかったが、そんなのはわからなくても登場人物たちの緊迫感や熱い気持ちなんかはヒシヒシと伝わってきてすごく引き込まれた
心情とか情景の描写も、リアルタイムで作戦が進んでる様子も、すごくリアルに書かれてて没入してしまった
アキリとエマの、人類を超越した頭脳から繰り出される人類への対抗策が明かされるたびに「すげぇ…」って感嘆の声が漏れた
それぞれの立場で全員が全員、自分の信念を持って行動してて -
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私の好きな要素が有り余るほど詰め込まれていて、震えるくらい面白かった。日本の薬学院生、アメリカの研究者と大統領、アフリカの軍人と原住民の視点の切り替えによって徐々に全貌が明かされていく構成力の高さに夢中になった。加えて、創薬や人類学、進化論、歴史、社会構造と倫理など学問的要素によって、情報社会や核兵器と戦争など私たちがいきる社会の本質に迫る部分に引き込まれた。特に人類学のパートは、私が今まで抱いてきた、人間がなぜこんなにも高い知力を有したのかや、それに伴う支配への罪悪感に言及されて、噛み締めるように読んだ。
上下巻どこをとっても至高で、綿密な下調べと構成力で満足感が凄まじく、数日余韻に浸ってい -
Posted by ブクログ
ネタバレそれ以上でもそれ以下でもなく、とにかく面白かった。人類滅亡の危機を背景に、科学、政治、倫理、愛といった要素が複雑に絡み合いながら物語が進んでいく展開には、圧倒されるような快感がある。
研人やイエーガー一行も、結果的には新人類の手のひらで踊らされていたのかもしれない。
だが、それでも彼らの行動の原動となっていたのは、家族を思う気持ちや、他者のために尽くそうとする意志であろう。
たとえ人間が、「ジェノサイド」のように自ら種の繁栄を脅かす行為をする存在であったとしても、ここまで発展してきた背景には、こうした人間の感情があるからなんだろうと思わされる作品だった。
また、ここから先がどうなるか本当に気に