あらすじ
いつまでも深く胸に残る哀切な幽霊譚
その踏切で撮られた写真には、写るはずのない人影が記録されていた。
大都市の片隅で起こった怪異。
最愛の妻を亡くし、絶望の淵にいる記者が突き止めた真実とは?
哀しみ、怒り、恐怖――読む者の心に様々な感情を喚起する、ホラーを超えた新たな幽霊小説の誕生。
迫真の筆致で描かれた、生と死についての物語。
第169回直木賞候補作
解説・朝宮運河
単行本 2022年10月 文藝春秋刊
文庫版 2025年11月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読み応えのある作品。
幽霊や怪奇現象が多発するホラー小説だが、いわゆるホラー小説とは一線を画す内容だった。
「事実は小説より奇なり」というが、その奇跡めいた事実を小説に落とし込んだような作品。
こんなホラー小説なら、たくさんの人が楽しめると思う。
Posted by ブクログ
モキュメンタリーホラーとも言えるし、不思議な社会はミステリーとも言える。
巻末の解説にもあったけど、宮部みゆきの火車を彷彿とさせた。大変に文章が巧く、またドキドキさせられる展開で一気読みできた。
この本の直前に読んだスティーヴン・キングのチャーリーの数奇な人生と類似するところもある。
個人的には「死」というもの対する恐怖は絶大である。自らの意識がなくなるということはどういうことなのか想像がつかない。
死に対する恐怖への特効薬となるわけではないが、チャーリーの数奇な人生の「人々にはそれぞれ頭の中に壮大な世界があり、そこにこれまで関係した人たちが存在し、生活している」という世界観はある種救いとなり得ると思う。
本作の主人公も死が無であることを恐れている。これは自分の生きた痕跡を誰も覚えていないということも指しているだろう。だからこそ主人公は妻(や彼女)が生きた痕跡を残す為、死ぬという選択をしなかった。主人公が彼女(幽霊)を理解し、救ったこと。その事が主人公が奥さんの死と向き合えるきっかけとなった事が非常に感動的。
ところでこれは「踏切の幽霊」という明らかなホラー小説の感想のはずだ。だってタイトルに幽霊って書いてあるのだもの!怖いに決まってる!何故ここが怖かった等の恐怖ポイントを書かないのか!
確かにホラー的演出は数多くあったものの、この本の本質はホラーでない。あくまで死生観を描いた小説かと思うので、是非ホラーが苦手な人も読んで欲しい!
敵意がこちらに向いていない霊が相手だとなんとまあ気楽なことか!彼女の霊が出てきても「やっぱりこの場面居ますよね!流石です。分かってるね!」って感じ。
Posted by ブクログ
なに…この小説!?
ものすごく名作に出会ってしまった。
ホラー要素が強いミステリー小説な感じでした。一冊の中にめちゃくちゃ色んな要素が詰め込まれて、勿体無いくらい…‼︎かと言って、読みにくくなく、物語の流れも分かりやすい。
自分の中では、忘れることのできない作品でした。
Posted by ブクログ
踏切に現れるという“幽霊”の噂を追う中で、過去の出来事と人間関係が複雑に絡み合っていく。やがてその背後にある、思いもよらない真実が明らかになっていく。
ひとりの幽霊の想いを紐解いていくミステリーでありながら、描かれているのは「記憶」と「喪失」とどう向き合うかという物語でもある。丁寧な心理描写と地道な取材によって、断片だった事実が少しずつ繋がっていく過程に強く引き込まれる。
事故や報道によって形づくられる“事実”と、当事者の内面にある“真実”のズレが印象的で、何が本当に残され、何が忘れ去られていくのかを考えさせられる。幽霊という存在を感情ではなく“事実”として追っていく構造が、この作品に独特のリアリティと緊張感を与えている。真実を明らかにしていく展開には、警察小説にも通じる面白さがあった。
松田の視点を通して描かれるのは、失ったものをただ受け入れるのではなく、「意味を見出そうとする営み」だったように感じた。失われたものと向き合うことの重さと、その意味を静かに問いかけてくる一冊だった。
Posted by ブクログ
面白かった〜〜!
13階段から引き続き、高野和明の直木賞候補作にもなったこちら。
ホラーかあ、と思いながら読み出したけど、ホラーだけどホラーじゃない。泥臭く聞き込みから幽霊の正体に迫っていく社会派ミステリーでした。何言ってるかわからんと思うけど。ホラーミステリーとも違うんだよな…
謎解きの積み重ねには説得力があるし、怪異は怪異として本当に怖い。読みながら驚きの連続で、最高に満足の読書体験でした。何回驚かされたことか。
あの女の名前が最後まで明かされなかったことは、きっとそういうことなんだろう。悲しい。
彼女が踏切にいる理由、ぜひ読み届けてほしい。
あまりに悲しい。
Posted by ブクログ
心霊現象が話の中核にあるのに、物語の進行は地道な取材の積み重ねという、オカルトとリアルがせめぎ合うような内容。まだ昭和の名残がある平成初期が舞台なところがまた、郷愁を誘う。
語りすぎない簡潔な文章でありながら、真相に近づく道程にはこまめに盛り上がる展開があり、読者を惹きつけて離さない匠の技を見た。
幽霊の描写にぞっとする場面はあったが、松田と同様に、恐怖を上回るやるせなさな痛ましさを「彼女」に感じた。最後まで彼女の名が明かされなかったことに気付き、嘆息するまでがワンセットの、深い余韻が残る結末だった。
Posted by ブクログ
高野和明さんのファンだからというのもあるけど今回の作品も素晴らしかった。ホラーは苦手だからめちゃめちゃビビって読んだけど、初めてホラー作品でホラーの先に哀しみを感じることができた作品でした。おもしろかったです、
Posted by ブクログ
起承転結がしっかりしており、物語の構成がよかった。ただのホラー小説かと思えば違くて、良い意味で裏切られた。髪の長い女の人生が壮絶なもので、感情移入してしまった
Posted by ブクログ
雑誌記者の松田は、幽霊特集を組むのでその取材を命じられる。いくつかの読者からの怪談はたわいもないものばかりだったが、下北沢の3号踏切の心霊写真だけは本物のように感じられた。踏切なので、飛び込み自殺も多いだろうと考えていたが、そこは驚いたことに殺人事件現場だった。しかも心霊写真は被害女性と同じ顔をしているのだ。
松田は殺人事件の背景について調べ始めた。
静謐な物語ですごく良かったです。今のところこの12月では2番目かな。
Posted by ブクログ
ひさしぶりの高野和明。
『踏切の幽霊』。
宮部みゆき『小暮写眞館』から続く心霊写真が主題。
狙ったわけではなく、気付けば、なぜか同じ心霊写真だったと。
下北沢3号踏切。写るはずのない女性のが写った写真が。心霊写真か…
『月刊女性の友』記者・松田は、これらの心霊写真の記事を書くことに。
最愛の妻を亡くし、絶望の淵にいる松田が突き止めた真実は…
本当にそこで殺害された女性が。
ただ身元不明の女性。どこの誰なのか…
女性の身元を探し始める松田。
幽霊は実在した…
『私を故郷に帰して欲しい』というように…
本当に不幸な女性だった。
何のために生まれてきたのか…
彼女が帰りたかった場所は、子どものころ、一時でも幸せに感じたところだったんだろう。
そこにつながる、下北沢3号踏切。
彼女の死に関わったものたちはみんないなくなることに。彼女自らが制裁を加えたということか…
結局、最後まで彼女の名前は明かされなかった、わかっているはずなのに。
松田の妻もだね。
松田は、亡くなった妻ともう一度話ができたのだろうか…
たぶんできただろうな、彼女が引き合わせてくれたような気がする。
Posted by ブクログ
積読チャンネルを見て。雑誌記者も彼女を知る人たちもとてもよかった。裏表紙にホラーを超えた幽霊小説とあるがまさにその通り。幽霊とか怖い話は苦手な方にも勧めたい。
Posted by ブクログ
ホラーなのだけどホラーにはおさまりきらないストーリー。展開が気になるので後ろ髪を引かれながら本を閉じる。『幽霊人命救助隊』も面白かったけど、そちらとは色が違う幽霊話。
Posted by ブクログ
幽霊が主題で、関係者が呪いと思われる死に方をしていくのだが、ホラーであることに重きを置かない。彼女が誰かを探っていく雑誌記者松田が、亡くした妻のことを想いながら、真相を追い求める社会派ミステリーだった。哀しい結末だった。松田が各関係者のところに赴くことで、彼女がついていって思いを果たすことができた、ということだったのだろう。
Posted by ブクログ
静かな雰囲気の中に、怒りや悲しみや苦しみを感じた。
幽霊からも記者からも。
途中、幽霊の生い立ちに涙が止まらなかった。最後まで彷徨う幽霊は、もう幸せになれないのだろうか。
ホラーではないのだが、所々鳥肌が立った。
Posted by ブクログ
ホラー要素もあるが、ミステリー感が強い。
ただのホラーかと思いきや社会派。
94年という時代。
踏切、写真の心霊現象、女性誌の廃刊の危機。
松田の元ブンヤさんならではの熱い感じ。
昭和の男!
最後の真実に涙、、まではいかないが
彼女の人生に少しでも寄り添う松田に好感しかない。
Posted by ブクログ
むかーし、著者のジェノサイドという作品を読んで惚れまして、ひっさしぶりにお名前を見かけたので手に取りました。
ジェノサイドとは全く違う感じでしたが、感情移入できてよい作品でした。
高校生でコレ書けるの凄い。
Posted by ブクログ
プロローグとエピローグに挟まれて
松田の想い(これはどこのだれなんだ)に押されたように幽霊のいろいろがわかってくる。
なぜこの踏切によく現れるのか
調べきれないもどかしさに気持ちが沈む
ホラーの括りに入るのだろうけど
怖さの余白に、哀しみとシンとした気持ちが残る
Posted by ブクログ
著者の作品はどれを読んでも面白く、ファンではあるものの寡作でもあり(何でも11年ぶりの新作とか…!)、ノーマークだったため、本屋さんで見つけ嬉しい驚き。面白さはやはりお墨付き。若干ご都合主義的な部分はあるものの、解決への糸口が無くなりそうで無くならない、グイグイ引き込まれていくストーリーテリングはさすが。ホラーというよりはミステリー的な作品と感じた。主人公の、水商売の女性への見方は偏見のようにも感じ、少し白けてしまった面もあるものの、それも時代を反映したものか。
自分の中では、前作「ジェノサイド」があまりにも傑作で、それは超えられなかったか。
Posted by ブクログ
ジェノサイド以来、ずっと高野和明さんの作品のファンです。
しかし、あまり作品を出してくれない!
自分の過去のレビューを見みると高野和明作品を読むのは8年ぶり!!!
欲を言えば一年に一冊は出して欲しい・・・
踏切に出てくる幽霊
しかし、過去にその踏切で事故があった訳ではない・・・
じゃあ、その正体は!?
時代は90年代のオカルトブーム真っ只中!!
雑誌編集者は妻を亡くし失意の中で仕事への情熱が消えかかっていた。
そんな中、編集長からオカルト記事の取材を振られる!
読者から送られてくる心霊ネタはどれも眉唾物であったが、一つだけ気になる写真があった・・・
人身事故が起きていない踏切の幽霊の正体は!!!
表紙が不気味です!
Posted by ブクログ
妻が死んだことで厭世的になっている雑誌記者が、婦人誌に異動、1枚の心霊写真から殺人被害者のある女性の来歴を調べていく。幽霊設定ーを受けいれば、ストーリー的には、名前を知られない犠牲者で終わりそうになっていた殺人の被害者に、この世で存在していたという証拠を調べ上げることであの世への手向けとする物語と読めた。小説としては舞台が1994年、自分が大学入学の時期なので、当時を懐かしみつつ読めたし、無名の人に名前と人格を与えていく過程が良かった。事故など起きると何人死亡などという数でしか人を認識しないことも多いし、また本作のようにほとんど誰にも生きていた証を残さずに亡くなっていく人も現実に沢山いるはず。誰しもに人格と人生があるということを思い返させるなあとしみじみ。ところで、この「名のない人」が一人の執念によって、少しずつどんな人間であったのかがわかっていく構成、どこかで読んだなと思って思い出したのは宮部みゆきの「火車」でした。
Posted by ブクログ
3.8点
ホラーかと思って読んだら、中身は上質なミステリーでした。
幽霊の生前の感情は、本人目線のものはなく、推測するしかないが、それを考えると胸が締め付けられる思いでした。
線路まで歩いた理由。それを知った時、さらに私の感情はぎゅうっっっとなりました!
Posted by ブクログ
ただのホラーだと思って手に取ったが
ホラーでもあり、社会派ミステリーでもある。
けど人間ドラマでもある。
後半は次の展開をドキドキしながら読み進めれた
Posted by ブクログ
書店の新刊コーナーで並んでいるのを見つけて迷うことなく手に取って購入を決めた。事前情報があったわけでも、作者を知っていたわけでもない。怪異の物語が好きなことも手に取る理由の一つではある。そして僕が怪異を求める理由の一端をこの物語は描いてくれるのではという期待があったことが一番大きな理由である。それは人は死んだらどうなるのか。そして巷で言われる幽霊譚と死者とはどんなつながりがあるのか。そして数少ないけれども、僕自身も体験した怪異の現実的な位置づけができるのではないか。そういう期待が数ある積読になっている本を押しやって読んでみたいと思わせる作品だったのだ。
結果的に僕の期待の全てを満足させるものではなかったけれど、主人公松田にシンクロする部分はあって、いくつかの場面で心を一つにしたと思えた。
解説者がこの作品をホラー小説と位置づけるような文言があったけれど、作者自身が語るように、この作品はホラー小説ではなく幽霊小説なのだと思う。そうして描かれていると感じたからこそ大きな期待があったとも言える。もちろん決して失望したわけではないことは申し添えておきます。
Posted by ブクログ
最初ホラー小説かと思ったが、そうではなかった。これは読者の胸を打つ、切ないヒューマンドラマであり社会派ミステリーだった。宮部みゆきの「火車」を彷彿とさせる。
Posted by ブクログ
謎が巧みに配置されていて、先の展開が気になって仕方がない作品でした。
モデルになった踏切は、今は無いということで、残念です。著者さんはここで、人影のようなものが写った写真を撮ったということ、、ゾッとします。
Posted by ブクログ
スリリングさはなく静かに話が進む印象だった。
愛妻の死により悲しみに打ちひしがれていた、主人公の松田法夫が、雑誌の記者として殺人事件の被害者に向き合うはなし。
哀しいストーリーではあるけれど、主人公の優しさに心救われる気がした。