【感想・ネタバレ】踏切の幽霊のレビュー

あらすじ

いつまでも深く胸に残る哀切な幽霊譚

その踏切で撮られた写真には、写るはずのない人影が記録されていた。
大都市の片隅で起こった怪異。
最愛の妻を亡くし、絶望の淵にいる記者が突き止めた真実とは?

哀しみ、怒り、恐怖――読む者の心に様々な感情を喚起する、ホラーを超えた新たな幽霊小説の誕生。
迫真の筆致で描かれた、生と死についての物語。

第169回直木賞候補作

解説・朝宮運河

単行本 2022年10月 文藝春秋刊
文庫版 2025年11月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

雑誌記者の松田は、幽霊特集を組むのでその取材を命じられる。いくつかの読者からの怪談はたわいもないものばかりだったが、下北沢の3号踏切の心霊写真だけは本物のように感じられた。踏切なので、飛び込み自殺も多いだろうと考えていたが、そこは驚いたことに殺人事件現場だった。しかも心霊写真は被害女性と同じ顔をしているのだ。
松田は殺人事件の背景について調べ始めた。

静謐な物語ですごく良かったです。今のところこの12月では2番目かな。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

まず文章が美しい。そして社会派とも、ホラーとも、ドラマともいえるこのストーリー。ラスト100ページはゆっくりとだが、目が離せなかった。
悲しいストーリーではあるんだが、この物語を最後まで見届けたくなる。ジェノサイド以来の長編だったみたいなのでジェノサイドも読もうと思います。

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2025年12月16日

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 大都会の片隅で起きる「踏切に度々現れる奇妙な人影」の怪異と妻を亡くし絶望の淵にいる記者が交錯するホラー×社会派ミステリーで、怪談話と社会問題という一見合わないであろう二つの要素の鮮やかな融合とエンタメの枠を越えた生と死の物語の側面が胸が締め付けられるも読む側を引き付けて止まない作品に仕上がっていた

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

高野和明『踏切の幽霊』文春文庫。

『ジェノサイド』以来の久し振りの高野和明。単行本の刊行時から気になっていた作品である。

何とも切なく遣る瀬ない結末のホラー・ミステリー小説であった。

単なる幽霊譚ではなく、大都会の中で、過去の傷を引き摺りながら独り生き続けることの苦しさが見事なまでに表現されている。


下北沢の三号踏切で繰り返し起きる怪異。

最愛の妻を失い、絶望の淵に立った元新聞記者で現在はフリーランスの雑誌記者を務める松田法夫はデスクから心霊ネタの取材を任される。松田が取材を進めると下北沢の三号踏切で撮影されたという髪の長い細身の若い女性の霊の写真に行き当たる。

松田がその女性について調べると、2年前に下北沢の三号踏切で他殺体となって発見されていたことが判明する。しかし、女性は身元不明のままで、殺害した犯人が逮捕されていた。

松田はさらに被害者の女性の身元を調べるとキャバクラで働いていたことが判り、当時の同僚や同居者をあたるが、誰も名前を聞いておらず、兎に角暗く、作り笑いの目立つ女性だったという証言しか得られなかった。さらに彼女はキャバクラを辞めて、会員制の銀座のクラブで働いていたという証言を得る。

少しずつ明らかになる女性の過去と恐るべき事件の全容……


読み始めてから読み終わるまでに足掛け3日を要したのだが、うち2日間は訳あって、片道350キロの距離を車で移動するなどあって、殆ど読むことが出来なかった。ストーリーの面白さとリーダビリティの高さからすれば、1日で読めただろう。

本体価格750円
★★★★★

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2025年11月10日

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ホラーより社会派ミステリー的な感じでそこまで怖くはなかった。踏切に出る幽霊を追っていく内に謎が解明した時は切なくなった。

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2025年12月16日

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ネタバレ

踏切に現れた女の幽霊。それは一年前にそこで殺された女性だと判明するも、名前すらわからない。雑誌記者の松田は怪現象に見舞われながらも真相を追い求める。細い糸を少しずつ辿っていく感じがたまらない、重厚なミステリー。

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2025年12月14日

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心霊現象の描写が多かったけど、不思議と全く怖いとは思いませんでした。
ただただ、悲しい物語だった。

ずっと踏切に留まっていた彼女は、最後は安らかに逝くことができたんだろうか…

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

下北沢にある踏切には女の幽霊が現れる。
そんな嘘か誠かわからない話を雑誌のネタとして追うことになったのは元新聞記者の男。
 
その男は妻との死別を機に生きる気力をなくしてしまっており、新聞社を辞めた後に拾ってもらった女性雑誌でも熱が入らず、この取材で熱意が戻らねば辞めてもらうと暗に仄めかされていた。
 
とりあえず飯は食わねばなるまいと、しぶしぶホラーのための取材を始めるが、彼の身には不可解な現象が起き始める。
 
と、いうように始まり方は王道のホラーのようであるが、その後の展開は驚嘆するほど。

安直なホラーで終わってしまうかと思いきや、彼の人格と彼が求める人生への問いが幽霊は誰で、何があったのかを明らかにしようとする記者の情熱を呼び覚ます。
 
話の展開はとても面白い。
欲望渦巻く下衆な夜の世界を舞台にしながら、胸焼けしないのは作品を通底して悲しみが覆っているからだと思う。

☆5つでもいい作品だが、あまりにも人生の悲哀を感じさせる作品であったため、容易に人にオススメできないため☆4つとした。

本作品の構想は著者が高校生の時に出来ていたというから天才というのは恐ろしい。

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2025年11月29日

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踏切に現れだした幽霊の身元を探っていくうちに様々な真実が明らかになっていき、幽霊の存在がゾッとする怖さと哀しみから一人の壮絶な人生を感じた。

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2025年11月28日

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この小説において大きな嘘は「幽霊がいる」という一点のみであり、その周囲を徹底的に現実の社会描写で埋め尽くすことで、幽霊小説でありながらリアリティレベルの高い作品になっている。全体的に物哀しい孤独感にあふれた作品だが、「踏切の幽霊」という文字通り雲を掴むような話から、地道な取材を通してやがて巨大な疑惑にたどり着くという、ホラーと社会派ミステリーの読み味の融合した傑作と思う。解説でも触れられていたが、読んでいるときに想起したのは宮部みゆき「火車」。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ホラーではありながらも現実味があり、一人の記者と、一人の女性の人生が詰まっていた。
面白く扱われるような心霊ネタから始まったものが、失望の中にいた記者の心を動かし、人生をかけて一人の人間と向き合う仕事をして、誇りを持って仕事を終える。その中で、胸が苦しくなる場面は数え切れないほどあった。笑い方を知らない女の子、という言葉が、とてつもなく哀しいもので、深く心に突き刺さった。
どのように物語が締め括られるのかと読み進めていたが、唯一明らかにされた、彼女が踏切に向かった理由を知ることができて、哀しくも、やるせなさも感じた。

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2025年11月11日

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相次ぐ列車の非常停止と、線路上に浮かぶ人影。東京・下北沢で報告された心霊現象に、一人の雑誌記者が挑む。いつまでも深く胸に残る哀切なゴーストストーリー。
無念を残してこの世での人生を終えざるえなかった人間の思い。成仏できなかった魂の行先が彷徨ってしまうのは当然だと思う。作品のメッセージは伝わるが、亡くなった女性の情念の描き方が物足りない。

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2025年12月17日

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読んでいるうちに、単行本のときにも購入して読んだことがあったのを思い出した。
またやってしまった。
舞台は1994年。妻を亡くし、その悲しみから未だ立ち直れないでいる元新聞記者が、下北沢3号踏切での心霊現象をネタに記事を書くため取材を始める。最初はやる気のない主人公だが、夜中に鳴る電話、踏切での怪現象、幽霊の正体を追ううちに次第に真相に迫っていく、というお話。
情景がよく目に浮かぶ描写で、94年は確かにこんな感じの時代だったなと懐かしく、面白い。
別著の『13階段』で好きになった作家さんだが、今回はその時ほどは引き込まれなかったので☆3つ。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

期待して読んだ。個人的な感情で、涙が出そうなシーンがあった。だから買ったのだと思う。その描写が読みたくて。本筋とは関係のないその描写を読みたかった。ただ、安心したくて、共感したくて。

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2025年12月08日

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◼️高野和明「踏切の幽霊」

次はどうなる?という畳み掛けはさすが。評判の良い幽霊事件ストーリー。

高野和明といえば佳作「13階段」、本屋大賞2位「ジェノサイド」がすぐ思い浮かぶ。今作は「ジェノサイド」以来の長編だそうだ。SNSの本好きさんの動きを見ていると好評ということが窺えた。

大手新聞の元敏腕記者だった松田。妻の病死が原因で会社を辞め、いまは売れ行きの悪い雑誌「女性の友」の契約記者をしており、評価が良いとは言えない。いまの職を斡旋してくれた井沢編集長からは、次の仕事として心霊特集の取材を命じられる。投稿ネタから拾った下北沢三号踏切の心霊映像や写真を調べるうち、近くで起きた殺人事件に突き当たる。被害者はキャバクラのキャストの女性だった。

ありえない心霊映像、大物悪徳政治家、派手で色気と嘘のあるキャバクラの世界、ヤクザ、と日本映画がよく使う演出のようだ。著者はもともと映画監督を志しており、この作品も、そもそも映画のストーリーとして書いたものだそうで、設定は1994年となっている。

人気のない窪地の廃屋で起きた凄惨な殺人。致命傷を負いながら三号踏切まで歩いた被害者の身元、生い立ちは謎に包まれている。

少しずつ解き明かされていく過程では次は次はと読み込んでしまう。分からない、分からないという感覚が強いからブレイクスルーまで引っ張られる。確かに面白かった。

まあその、明らかになった時、私的には物語の流れを含めて既視感があったかな、という感触だ。意外性がなく、すこうしだけ、物足りない。

ミステリの類には入るだろうけども全てが物理的法則で説明されるわけではない。ファンタジックな要素もある。その扱いはちょい人間味が仄見えつつ、クールである意味残酷。全体に時代感があると言えるだろう。

一気読み、熱中する作品であることは間違い無いです。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

主人公の記者である松田が心霊ネタの取材をする中で、下北沢3号踏切の怪異とそこで起こった殺人事件について調べるお話。

殺人事件の被害者の身元を調べる展開は社会派ミステリーのようで夢中になって読んでしまいました!
そこに怪異が織り交ぜられており、2つを融合させるなんてすごい…!

ホラーとは少し違い、ただ怖いのではなく死後の世界について考えたり、温かみも感じるストーリーになっていたので、帯にある幽霊譚という表現がピッタリな作品と感じました

個人的には、殺人事件について追いかけている時がすごく重厚な物語に感じていたので、ラストが「もう終わり?」と少し物足りなさを感じました。
あと、プロローグが少し読みにくくて話に入り込むのに時間がかかったのと、プロローグで出てきた人もつながったら面白いのになと思ってしまいました

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2025年12月01日

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大きな事件に巻き込まれて死んでしまった女性の身元を追いかける記者の話だった。
悲しい物語だったが、人が亡くなるということをあらためて自分の中で見つめ直す事が出来る作品。
誰か1人でも自分の死を悼んでくれるのであれば救われる。そうであってほしいと願います。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すっごい久しぶりの高野和明さんの作品で楽しみでした。ジェノサイド以来かな。
まず、感想として作品の舞台がそうだからなんだけど、めちゃくちゃ昭和の小説を読んでる気分にもなりました。時代背景という部分だけでなく、なんか当時に書いた感溢れてました。解説読んで少し納得かな。

作品のジャンルとしては、何だろう。やはり幽霊小説なのかな。写真や電話やラップ音、降霊など、あらゆる超常現象にも特にカラクリがあるわけでもなく、そのまま不思議なまま。
ふだんミステリばかり読んでるから、そういう観点では少し拍子抜け感ありますが、それなければ話としては好きなタイプ。

なかなか、報われない人が沢山いる話だったけど、事件解決の糸口になった、霊能力者が結局本物だったと言う事だけど、それはつまり、亡くなった松田の奥さんのくだりも、正しかったって事だよね。
それには、松田も読者も救われた気持ちになりますね。

久しぶりの高野さんの作品、満足でした。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

幽霊譚にして骨太な社会派ミステリ。踏切に現れる髪の長い痩せた幽霊は、惨殺された身元不明の女性なのか。記者の取材により徐々に明らかになっていくのは、社会によって「幽霊」とされた一人の女性の人生。物語は至極シンプルで、諸々少し物足りない感はあるが、それが逆にリアリティを生む。午前1時3分… 線路の向こうに馳せた彼女の想いが悲しい余韻を残す。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

【2025年136冊目】
病気で妻を亡くした松田は事件記者から、婦人向け雑誌の担当になり、うだつのあがらない日々を過ごしていた。契約終了まで残り2ヶ月になり、心霊特集を担当することになった松田が出会ったのが踏切での事故だった。いつしか亡くなった女の正体を追いかけるようになったが――。

作家さん買いです。ホラーとミステリーとファンタジーをかけ合わせたようなお話でした。話の方向性や真実がどこに帰着するんだろうなと思いながら読み進めてましたが、もう少し妻要素を絡めて欲しかったな〜と思ったり。どんでん返しというか、大きな驚きもなかったので、結構凪!って感じのお話でした。文体も、ちょっと変わった気がします、気のせいかもですが。

それはそうと、因果応報、悪いやつには罰があたって当然ですと言いたくなる展開は良きでした。

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2025年11月10日

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