今年こそは読もうと決めていた作品。
昨年「13階段」を読んでから、ずっと読みたいと思っていて、ようやく手に取った。
創薬学科を専攻する大学院生。
難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、民間の軍事会社で働く傭兵。
二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。
上巻の前半は難しい描写もあり、あまり入り込めなかったけれど、上巻の後半辺りから面白さが加速して、下巻はページを捲る手が止まらなかった。
別々の場所で起こっている出来事に徐々に見えてくる繋がり、次々に明かされる真相に大興奮!
場面の切り替えが多々あり、一つの物事を多角的に見れるのも面白かった。
本書に出てくるレポート、...続きを読む 病、創薬手順などが全部フィクションだということに驚愕した。
リアルすぎて、実際にあるんだと思ってた…!
その一方で、人類の大量殺戮(ジェノサイド)は、実際に繰り返されている事実。
時折、目を背けたくなるような残虐な描写があって、読み進めるのが辛かった。
世界のどこかでは、こういうことが日常的に起こっているのかもしれないと思うと、胸が張り裂けそうだったし
「人間なんかに生まれなければよかった。
鳥や獣に生まれて、お父さんやお母さんや兄妹たちと寄り添い合って、いつまでも仲良く暮らしていたかった。(p.220)」
という思いをしている子どもたちがいるのかもしれないと思うと…( т т )
複合的要素で人間の残虐さがリアルに描かれていたことも印象的だった。
もし本書のようなことが現実に起こったら、どうなるんだろう???
うまく共存していけたらいいのに、と思うけれど、綺麗事なんでしょうかね…。
✎︎____________
この世であっても、人間は地獄なら作り出せる。天国ではなく。(p.50)
無理だ、とは言わない人たちが、科学の歴史を作ってきたんだよ(p.74)
恐ろしいのは知力ではなく、ましてや武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人格なんです(p.94)
世界各国に、戦争によって利潤を貪る企業が存在している限り、この世から戦争がなくなることはないのだろう。(p.149)
いいかね、戦争というのは形を変えた共食いなんだ。そして人間は、知性を用いて共食いの本能を隠蔽しようとする。政治、宗教、イデオロギー、愛国心といった屁理屈をこねまわしてな。しかし根底にあるのは獣と同じ欲求だ。領土をめぐって人間が殺し合うのと、縄張りを侵されたチンパンジーが怒り狂って暴力を振るうのと、どこが違うのかね?(pp.163~164)
どうして我々は、人間同士の殺し合いに怯えながら生きていかなくてはならないのか。この不安は、人類の誕生から現在に至るまで、二十万年もの永きに亘って受け継がれてきたものだ。人間にとっての唯一の敵は、同種の生物であるはずの人間なのだ。(p.166)
現在、地球上に生きている六十五億の人間は、およそ百年後には全員が死に絶える。なのに、なぜ今、殺し合わなければならないんだろうな?(p.171)
過去二十万年間に亘って殺し合いを繰り返してきた人類は、常に他集団からの侵略に怯え、疑心暗鬼が被害妄想寸前の状態で維持され、国家なる防衛体制を作り上げて現在に至っている。この異常な心理状態は、人類全体が遍く共有しているために異常ではなく正常と見做される。これが〝人間という状態〟だ。そして、完全なる平和が達成されないのは、他者が危険であるという確固たる証拠を、互いが己の内面に見ているからだ。人は皆、他者を傷つけてでも食料や資源や領土を奪い取りたいのだ。その本性を敵に投影して恐怖し、攻撃しようとしているのだ。そして、死をもたらす暴力の行使には、国家や宗教という後ろ盾が免罪符となる。その枠外にいるのは異人、即ち敵だからだ。
こうした悪徳に目をつぶってこられたのは、同種間の殺戮を非難する知性がヒト以外に存在しなかったからである。神すらも異教徒の殺害を奨励しているのだ。(pp.203~204)
人間なんかに生まれなければよかった。
鳥や獣に生まれて、お父さんやお母さんや兄妹たちと寄り添い合って、いつまでも仲良く暮らしていたかった。(p.220)
未知への挑戦がもたらす陶酔感は、人類社会にとって諸刃の剣だ。(p.334)
政治的指導者に宿る、ほんの一瞬の狂気が、数億人の生命を危機に陥れてしまう。未来に起こり得る核戦争も、たった一人の狂った権力者によって決断され、実行されるのだろう。(p.361)
失敗のない人生などあり得ないし、その失敗を生かすも殺すも自分次第だということだ。人間は失敗するだけ強くなれる。それだけは覚えておきなさい。(p.382)
母親の愛情こそが、すべての平和の礎だよ(p.391)