あらすじ
研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けるのは、人間という生き物が作り出した〈地獄〉だった--。現代エンタテインメント小説の最高峰。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アメリカ政府・日本の大学院生・コンゴで任務を遂行する傭兵達という3つの視点で進む一見バラバラなプロットが驚くほど緻密に絡み合いながら伏線を回収していく中盤以降の面白さが圧巻だった。
Posted by ブクログ
今年こそは読もうと決めていた作品。
昨年「13階段」を読んでから、ずっと読みたいと思っていて、ようやく手に取った。
創薬学科を専攻する大学院生。
難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、民間の軍事会社で働く傭兵。
二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。
上巻の前半は難しい描写もあり、あまり入り込めなかったけれど、上巻の後半辺りから面白さが加速して、下巻はページを捲る手が止まらなかった。
別々の場所で起こっている出来事に徐々に見えてくる繋がり、次々に明かされる真相に大興奮!
場面の切り替えが多々あり、一つの物事を多角的に見れるのも面白かった。
本書に出てくるレポート、病、創薬手順などが全部フィクションだということに驚愕した。
リアルすぎて、実際にあるんだと思ってた…!
その一方で、人類の大量殺戮(ジェノサイド)は、実際に繰り返されている事実。
時折、目を背けたくなるような残虐な描写があって、読み進めるのが辛かった。
世界のどこかでは、こういうことが日常的に起こっているのかもしれないと思うと、胸が張り裂けそうだったし
「人間なんかに生まれなければよかった。
鳥や獣に生まれて、お父さんやお母さんや兄妹たちと寄り添い合って、いつまでも仲良く暮らしていたかった。(p.220)」
という思いをしている子どもたちがいるのかもしれないと思うと…( т т )
複合的要素で人間の残虐さがリアルに描かれていたことも印象的だった。
もし本書のようなことが現実に起こったら、どうなるんだろう???
うまく共存していけたらいいのに、と思うけれど、綺麗事なんでしょうかね…。
✎︎____________
この世であっても、人間は地獄なら作り出せる。天国ではなく。(p.50)
無理だ、とは言わない人たちが、科学の歴史を作ってきたんだよ(p.74)
恐ろしいのは知力ではなく、ましてや武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人格なんです(p.94)
世界各国に、戦争によって利潤を貪る企業が存在している限り、この世から戦争がなくなることはないのだろう。(p.149)
いいかね、戦争というのは形を変えた共食いなんだ。そして人間は、知性を用いて共食いの本能を隠蔽しようとする。政治、宗教、イデオロギー、愛国心といった屁理屈をこねまわしてな。しかし根底にあるのは獣と同じ欲求だ。領土をめぐって人間が殺し合うのと、縄張りを侵されたチンパンジーが怒り狂って暴力を振るうのと、どこが違うのかね?(pp.163~164)
どうして我々は、人間同士の殺し合いに怯えながら生きていかなくてはならないのか。この不安は、人類の誕生から現在に至るまで、二十万年もの永きに亘って受け継がれてきたものだ。人間にとっての唯一の敵は、同種の生物であるはずの人間なのだ。(p.166)
現在、地球上に生きている六十五億の人間は、およそ百年後には全員が死に絶える。なのに、なぜ今、殺し合わなければならないんだろうな?(p.171)
過去二十万年間に亘って殺し合いを繰り返してきた人類は、常に他集団からの侵略に怯え、疑心暗鬼が被害妄想寸前の状態で維持され、国家なる防衛体制を作り上げて現在に至っている。この異常な心理状態は、人類全体が遍く共有しているために異常ではなく正常と見做される。これが〝人間という状態〟だ。そして、完全なる平和が達成されないのは、他者が危険であるという確固たる証拠を、互いが己の内面に見ているからだ。人は皆、他者を傷つけてでも食料や資源や領土を奪い取りたいのだ。その本性を敵に投影して恐怖し、攻撃しようとしているのだ。そして、死をもたらす暴力の行使には、国家や宗教という後ろ盾が免罪符となる。その枠外にいるのは異人、即ち敵だからだ。
こうした悪徳に目をつぶってこられたのは、同種間の殺戮を非難する知性がヒト以外に存在しなかったからである。神すらも異教徒の殺害を奨励しているのだ。(pp.203~204)
人間なんかに生まれなければよかった。
鳥や獣に生まれて、お父さんやお母さんや兄妹たちと寄り添い合って、いつまでも仲良く暮らしていたかった。(p.220)
未知への挑戦がもたらす陶酔感は、人類社会にとって諸刃の剣だ。(p.334)
政治的指導者に宿る、ほんの一瞬の狂気が、数億人の生命を危機に陥れてしまう。未来に起こり得る核戦争も、たった一人の狂った権力者によって決断され、実行されるのだろう。(p.361)
失敗のない人生などあり得ないし、その失敗を生かすも殺すも自分次第だということだ。人間は失敗するだけ強くなれる。それだけは覚えておきなさい。(p.382)
母親の愛情こそが、すべての平和の礎だよ(p.391)
Posted by ブクログ
傑作の一言に尽きる。
最後まで失速のすることなく、駆け抜けてくれた。登場人物各人にも落とし所があり、ひとつも無駄がない終幕だった。
蛇足だが、留学生の親友が、初対面の頃から自分の身に降りかかるであろう危険を省みず献身的に協力してくれたところは、あまりにも善人すぎる気もしたが、キャラクターを自然に好きにもなれたのでよかった。
Posted by ブクログ
これは本当にすごい本だった
上下巻に分かれてて結構な長編だったがそれを感じさせない怒涛の展開で読むのを止められなかった
医学的な専門用語がたくさん出てきて、遺伝子がどうだとか新薬の生成過程とかはあまりわからなかったが、そんなのはわからなくても登場人物たちの緊迫感や熱い気持ちなんかはヒシヒシと伝わってきてすごく引き込まれた
心情とか情景の描写も、リアルタイムで作戦が進んでる様子も、すごくリアルに書かれてて没入してしまった
アキリとエマの、人類を超越した頭脳から繰り出される人類への対抗策が明かされるたびに「すげぇ…」って感嘆の声が漏れた
それぞれの立場で全員が全員、自分の信念を持って行動してて最高だった
膨大な量の取材と調査に裏付けられた説得力のある文章で、最初から最後まで楽しく読むことができた
あとこの本の好きなところはエピローグがちゃんとあったところ
イエーガーたちと研人たちが合流するところまで書いてくれてるのが嬉しかった
その辺を書かないで、読者の想像に委ねるパターンの話も沢山ある中で、そこまでしっかり書いてくれてるのが好きだった
Posted by ブクログ
私の好きな要素が有り余るほど詰め込まれていて、震えるくらい面白かった。日本の薬学院生、アメリカの研究者と大統領、アフリカの軍人と原住民の視点の切り替えによって徐々に全貌が明かされていく構成力の高さに夢中になった。加えて、創薬や人類学、進化論、歴史、社会構造と倫理など学問的要素によって、情報社会や核兵器と戦争など私たちがいきる社会の本質に迫る部分に引き込まれた。特に人類学のパートは、私が今まで抱いてきた、人間がなぜこんなにも高い知力を有したのかや、それに伴う支配への罪悪感に言及されて、噛み締めるように読んだ。
上下巻どこをとっても至高で、綿密な下調べと構成力で満足感が凄まじく、数日余韻に浸っていた。
この本を読んで、私の好きな小説の傾向がよくわかり、似たようなジャンルの作品を好んで読んでいる。
Posted by ブクログ
それ以上でもそれ以下でもなく、とにかく面白かった。人類滅亡の危機を背景に、科学、政治、倫理、愛といった要素が複雑に絡み合いながら物語が進んでいく展開には、圧倒されるような快感がある。
研人やイエーガー一行も、結果的には新人類の手のひらで踊らされていたのかもしれない。
だが、それでも彼らの行動の原動となっていたのは、家族を思う気持ちや、他者のために尽くそうとする意志であろう。
たとえ人間が、「ジェノサイド」のように自ら種の繁栄を脅かす行為をする存在であったとしても、ここまで発展してきた背景には、こうした人間の感情があるからなんだろうと思わされる作品だった。
また、ここから先がどうなるか本当に気になる作品でもある。新人類がここからどのように成長し、現人類にアプローチをしていくのか、この妄想だけで一升瓶を開けれる自信がある。
Posted by ブクログ
人類絶滅の危機が描かれたお話
以下、公式のあらすじ
----------------------
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
----------------------
アフリカで誕生した新種の生物
アメリカはその存在を許容できず、排除しようとするが、果たしてそれは最適な選択なのか……
主に三つの視点が入れ替わりながら描かれる
暗殺チームを派遣したアメリカの首脳陣
派遣された暗殺チーム
治療薬を開発する事になった日本の大学院生
ものすごい小説を読んだというのが率直な感想
様々な分野に渡る情報量と、ストーリーの緻密な構造、そして圧倒的なスケールで展開されるスリリングな進行
可能性に、ある程度のリアリティがある
生態学を学んだ身として、進化的な話に関しては納得感
新たな種が誕生したとして、生態的地位が重なっている既存の優占種とどんな関係になるのか?
しかもそれが、極めて高度な知能を持っていたとしたら……
まぁ、その新種の生物が生まれる前提がそもそも疑わしいところではあるけど
まったく可能性がないわけではないからなぁ
タイトルのジェノサイドも色々なジェノサイドを示している
ホモ・サピエンスから他種へのジェノサイド
人類の歴史の中でのジェノサイド
そして、作中で新種の生物へのジェノサイド
または、新種の生物から人類へのジェノサイドの可能性
ただ、その歴史の例として南京事件を挙げるのはどうなんだろ?
現在のところ、あくまで推測でしかないよね?
関東大震災の朝鮮人虐殺に関しては史料はあるものの、規模についてはやはり推測になる
生態学的なもの以外にも、分子生物学、薬学、医学、戦史、軍事、政治、情報と、専門知識のオンパレード
自分がちょっとはかじった分野ならまだしも、これだけ網羅された隅々まで説得力を持たせた文章を書けるのがすごい
新種の生物の危険性
現在広く利用されているRSA暗号が容易に解かれるとどうなるか?という直近の問題から
人類の行く末まで
アメリカ勢はその辺のリスクをどこまで正確に見積もれていたのだろうか?
だからこその暗殺作戦なのだろうけど、相手の実力を見誤ってたね
「ネメシス」の作戦に選ばれた軍事経験のある4人
「未知のウイルス」の除去と「見たこともない生き物」の殺害
しかし、現地で見た光景は……
それぞれに選ばれた理由はあるようだけど、日本人は日本語がわかるというアドバンテージ以外に他にも理由があったのだろうか?
もしかして、途中にどんな行動を取るかも予測されてたりして?
新薬を作る為の人選と作戦を選択した理由
誰に何を考えさせるか、何のために薬を開発するかが複数の意味を持っている
新薬開発に込められた3つの意味
買収、道義的な正義、自らのため……
他の行動にしても、何か他の意図もあったのでは?と感じさせる強さがある
作中で描かれているのは、視点人物の予想なので、人類にも想像できる範囲の理由しか書かれていない
相手にどう伝えるか、気づいてもらうかというラインが、当事者を想定した投げかけになっっていて
高度な知能を持った存在にしては、読者視点でもわかりやすかったりする
それも当たり前の話で、実験対象に理解できなければ意味はない行動になってしまうので、我々が答えにたどり着ける問題を出しているにすぎない
多分、作中で描かれないような、もっと高度な予測や作戦が裏で動いてたのだろうなぁ
作中で人類の滅亡予測がされているハイズマン・レポート
学者・ハイズマンがかつてアメリカ政府に提案した、人類滅亡の要因と対策に関する報告書
・宇宙規模の災害
・地球規模の環境変動
・核戦争
・疫病:ウイルスの脅威及び生物兵器
・人類の進化
10年以上前に書かれた小説なのに、現代ではそのリスクが非現実的なものには思えないようなものになっている
温暖化を含めた地球の環境変化や核戦争は昔から警鐘を鳴らされていたけど
太陽の異常や隕石の衝突の確率はちょいちょい話題になるし、新型コロナもあったし、核戦争にしても最近のロシアや北朝鮮の動向は危機感をさらに感じさせる
となると、人類の進化による旧人類の淘汰も決して荒唐無稽なものではないんだよなぁ
新人類は人なのか?神なのか?
人にとって福音なのか、滅亡をもたらす悪魔なのか?
もし作中と同じように行動な知能を持った新生物が生まれたとして
やはり、人類に地球環境の舵取りを任せるわけにはいかないので、いずれ作中のように武装解除と裏から操る仕組みになりそう
新人類が増えるまでは現人類の労働的資産価値があるので、自分が生きている間くらいはまだましな気もするが
それにしても、世界史の教科書なんかを読めばわかるように、人類は昔から同種で戦争ばかりしている
あと、アフリカの戦争が舞台になっていて
「ルワンダ中央銀行総裁日記」の新装版の追記部分を思い出した
何故戦争が起きたのかというあたりの事情が多少は理解できた
やはり、人類の歴史は愚かだよなぁ
Posted by ブクログ
これは何年か後に読み返す。
そのぐらい面白かった。
ただ、少年兵のくだりは痛い。
映画の中で胸糞悪いトップに入るチリの映画、インフェルノを思い出したから。
少年兵達から抜け出した後にイエーガー達が泣いていたが、本当にわたしも涙が出そうになった。いい物語でした。
Posted by ブクログ
軍人と化学専攻の大学院生という全く繋がりのないように感じる2人が、新しい人類種の誕生によって、大きな陰謀に巻き込まれていく話。フィクションではあるが、リアリティのある細部の描写と、現実に起こっていることを交えて話が進んでいくことで、近い将来本当にこういうことが起きるのではないかと思いながら読んでいた。
恐ろしいのは知力ではなく、ましてや武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人格なんです。
とても印象に残ったフレーズで、この物語に限らず何事でも言えることではないかと。
Posted by ブクログ
2013年(発出2011年) 432ページ
作品全体の感想です。
おもしろかった‼︎ スケールの大きいSFアクションストーリーでした。
アフリカと日本を舞台に、視点が交互に入れ替わりながら進むストーリーは、海外小説のような感じで、飽きさせない、違和感もさほど感じさせない。上下巻というボリュームですが、あっという間にに読み終わること間違いなし。
そして、ジェノサイドというタイトルが示すとおり、読者は人類の虐殺の歴史について考えざるを得なくなるでしょう。
イェーガーたちがコンゴから脱出するシーンのなかでは、残虐でグロいシーン、子どもたちが戦争のために利用され犠牲になるシーンもあり、心情的に辛いシーンがあり要注意です。しかし、現実世界で実際に行われているかもしれないと思うと、目を逸らしてはいけないと思いました。
個人的に、すごい、と思ったのが『ハイズマン・レポート』について。これは、完全に作者の創作物なのですが、実在するんじゃないかと思わせるしろもの。ハイズマンとルーベンスのやりとりもいいですね。
おすすめ小説の1つにあげられる作品でした。
Posted by ブクログ
長い冒険を終えたような感覚です。
一見なんの繋がりも無い場面で繰り広げられる物語の点と点が繋がっていく様子にあっという間にのめり込んでしまいました。
私利私欲に支配される世の中で、ただ救いたい守りたいと行動する登場人物たちがとても輝く素晴らしい作品でした。
しばらく余韻が抜けなさそうです。読めてよかった
Posted by ブクログ
様々なストーリーが交錯しながら繋がっていき、後半にかけてのストーリーの展開は寝る間も惜しいくらいに惹きつけられます。パソコンの計算能力の目覚ましい向上は薬の開発や気象予報など様々なメリットを人類にもたらす反面、そのゲームチェンジが前触れなく突如として発生したらそれは軍事的な意味でも私たちの生活においても世界最大の脅威になりうるという点を認識しました。その点、昨今のAI開発競争にも類似するメッセージ性があり、あながちただの物語として片付けられないものかもしれない、と感じました。
Posted by ブクログ
上下巻でだいぶ長かったが、ほぼ満点に近いぐらい面白かった!!途中、薄々感じてはいたが、新人類は、まさかこんな切り札があったとは!!
途中のコンゴの戦闘のくだりは生々しく、特に少年兵の話は鬼畜の所業としか思えない内容だったが、これが現実で行われている事かと想像すると吐き気した。
そして、日本パート。こちらはまさに手に汗握る逃亡劇。色々な作品で公安警察の恐ろしさにより、緊迫感は増し増しの内容だった。
個人的にミックの件だけがモヤモヤしてしまっていたが、最後まで中弛みする事なく、一気通貫で楽しませてくれた。これは映画化されてたら是非、見てみたい!!
Posted by ブクログ
すごく面白かった!びっくりする程面白かった!
この物語は、アメリカ政治や人類文明への批判的な内容を含むが、純粋にエンタメとして楽しめる至高の作品だと思った。
アメリカと日本とコンゴで物語の舞台が細かく入れ替わり、それぞれ最初は全く違うように見える物語がどんどん加速し、相互に関係性を帯びていき、最後に繋がる。
ドキドキハラハラと、ページを捲る手が止まらない。
コンゴでの戦争の場面は本当に悲惨で残酷で、人間なんかに生まれなければ良かったと絶望する子ども兵のシーンは、本当に読んでいて辛かった。
ただ、終始リズミカルで、展開が早く、驚きとワクワクを与えてくれるこの作品はとても読みやすく、上下巻を一瞬で読み終えた。長編なのに中弛みもなく、構成含め本当によく出来ていると思った。
最近本を読んでいると、人類の文明は本当に救いようがないところまで来てしまっていて、何度反省しても戦争と殺戮を繰り返す私たち人類は滅びるべき、と考えている頭のいい人が多いのだろうか、と思う。
ただ高野さんの本作品は、この救いようがない人類の一面を描きながらも、親子の間の無償の愛や、自身の危険を顧みずに病気の子供を助けようとする若者などの、人間の愛すべき一面を同時に描いているのが印象的だった。
Posted by ブクログ
スケールが大きくて、まるでハリウッド映画みたい!
でも、映像化はできないだろうな……子ども兵の話とか、集落での虐殺のシーンがあまりにも酷すぎる。
息子のために戦うイェーガーのストーリーが一番好きだった。
アキリと出会い、ともに行動をしていくうちにアキリと息子を重ねて複雑な思いを抱いたりする姿が良くて、うおおイェーガー!死なないで!無事に家族の元へ帰って!!と応援せざるを得なかった。生き残ってくれて良かった〜。
今の人類に絶望するシーンも多いですが、だからこそこの物語では、自分以外の誰かや何かのために危険を冒してもがく人たちの姿が輝いて見えました。
終わり方はちょっと物足りなかったかも。
Posted by ブクログ
薬学や軍事に関する専門用語が頻繁に出てくるが、その辺りを完全に理解出来なくとも読み進めることができた。一通り専門用語で説明したのち、読者にとって分かりやすい表現で言い換えてくれるような部分も多かったため、読み手に対する筆者の配慮を感じた。
私自身、ミステリー小説をあまり読んで来なかったのもあり、序盤の登場人物や世界観を述べるような展開は、少し冗長に感じてあまり面白さを感じれなかった。
しかし、上巻の中盤以降から物語が本格的に動き始め、そこからは怒涛の展開の連続で本当に読む手が止まらなかった。
敵味方問わず、進化した人類の知能に人間が翻弄され続けていたため、なんだか痛快な気持ちにもなった。
もしこの現実世界で新人類が誕生したなら、果たして人類は淘汰されずに存続できるのだろうか。
私たち人間は受容できない存在を排し、そのような集団を虐殺し同種間で殺し合いまでする愚かな生物だ。しかし、それでも善行を行う人間も存在する。善悪の間で揺れ動くのが、人間らしさの一つなのだろう。当たり前のことだが、この小説を読んで改めてそう感じた。
Posted by ブクログ
むかーし、当時評判になっていた13階段を読んで面白いと思った記憶、くらいしか今では有りませんでした。久しぶりに高野和明の小説を読みましたが、素晴らしかったです。小説のスコープが日本を超えて世界の動向に向けられ、ある病気の描写も詳細で、素晴らしいと思いましたが、解説を読んで、その病気が実は架空のものだと知って更にびっくり。作家は嘘が上手いと言いますが、素晴らしい嘘でした。
Posted by ブクログ
人よりも進化した知能を持つ生物が現れたとしたら、人間の絶滅を危惧して、早いうちから排除しようとするんだろうなと、種の存続を第一優先に考えるのは、他の動物と変わらないなと、人の弱さをスリリングな冒険と共に学べました。
肌の色や、生まれた土地が違うだけで争いが起こってしまうのだから、進化した生物なんてもってのほかでしょうね。
Posted by ブクログ
グレゴリー・S・バーンズ
合衆国大統領。
サミュエル・ギブソン
海軍中佐。
メルヴィン・ガードナー
初老の白人男性。科学技術担当大統領補佐官。博士。
チャールズ・ワトキンス
国家情報長官。
ロバート・ホランド
CIA長官。
ジョナサン・“ホーク”・イエーガー
ウエスタン・シールド社から要人警護の任務を割り振られた。“グリーンベレー”出身。
マクファーソン
護衛隊リーダー。
リディア・イエーガー
イエーガーの妻。リスボンで入院中の息子に付き添っている。
ジャスティン・イエーガー
イエーガーの息子。肺胞上皮細胞硬化症という難病を患う。余命一ヶ月。
アル・ステファノ
宿舎の管理責任者。
ウイリアム・ライベン
ウエスタン・シールド者の取締役。
アントニオ・ガラード
肺胞上皮細胞硬化症の世界的権威。ジャスティンの主治医。
古賀研人
大学院生で創薬化学で有機合成の研究をしている。亡き父が残したメッセージに従いGPCRの作動薬創薬に取り組む。
古賀誠治
研人の父親。三鷹駅で胸部動脈瘤破裂により死亡。ウィルス学の大学教授。一人息子にやりかけの仕事を託す。
菅井
古賀誠治の友人。大手新聞社の科学部記者。生前の誠治から『ハイズマン・レポート』について尋ねられ、調べるように頼まれていた。
園田
研人の担当教授。五十代後半。
西岡
研人の指導係。博士課程二年。
マイク・シングルトン
作戦部長。
スコット・“ブランケット”・マイヤーズ
イエーガーの部下。衛生兵担当。元合衆国空軍のパラレスキュー所属。
ウォーレン・ギャレット
イエーガーの部下。通信担当。元合衆国海兵隊の武装偵察部隊所属。実は現役の“ブルー・バッジャー”。CIA局員。
ミキヒコ・カシワバラ
イエーガーの部下。通称『ミック』。破壊工作担当。元自衛官でフランス外人部隊に所属していた。
香織
研人の母。
チェンバレン
副大統領。
ラティマー
国防長官。
エイカーズ
大統領主席補佐官。
ウォレス
大統領主席法律顧問。
サニュ
ウガンダ人の青年。ロジャーと名乗る人物から、コンゴに車と食料を運ぶ仕事の依頼を受ける。
ロジャー
イギリス人。
河合麻里奈
研人が学部生時代、英語サークルで一緒だった。研人が好意を持つ相手。
土井明弘
研人が学部生の頃の友人。今は臨床系の部屋にいる。研人と正勲を引き合わせる。
ジョゼフ・R・ハイズマン
『ハイズマン・レポート』の作成者。現在は隠棲中。
ジャック・ライリー
ベトナム帰還兵。
ナイジェル・ピアース
アメリカ東部の大学で、人類学の教授をしている。ピグミー族と共に暮らし、生態を研究している。
吉原
研人が学生時代のコンパで何度か顔を合わせたことがある先輩。
小林舞花
六歳。肺胞上皮細胞硬化症の末期。
坂井友理
研人の前に現れた謎の女性。誠治の知人だというが、誠治の同僚たちはその存在を知らない。
浜崎
誠治の知人。多摩理科大学の助教授。
トーマス
運転手。
李正勲
韓国人留学生。日本語が堪能で創薬化学とコンピューターに通じる。
アーサー・ルーベンス
『ネメシス作戦』担当の若き政務官。
エルドリッジ
監督官。
アキリ
ピグミー族の少年。通称『ヌース』。
ストークス
軍事顧問の大佐。
フランク・ヒューイット
画像解析担当。
エシモ
ピグミー族。アキリの父親。
エレン
メルヴィン・ガードナーの妻。
モレル
FBI特別捜査官。
ローガン
NSA作戦本部の職員。Wグループ『地球規模問題・兵器システム局」所属。
ジャーゲンス
フィッシャー
デュラン
エイヴリー
国防情報局員。
アンディ・ロックウェル
メイスン
下院院内総務。
オネカ
オブヤ
オネカの兄。
アティエノ
オネカの妹。
ブラッディ・ジェネラル
オネカを拉致した悪魔。
安藤
世界救命医師団の事務局長。
アンジャーナ
内戦状態のザイールから日本へ移送された妊婦。
ケネス・ダンフォード
博士。言語学の専門家。
タック・イシダ
日本語及び日本語問題を専門としている。
エマ・サカイ
グライムス
大尉。F22の編隊長。
マードック
中尉。スクランブル編隊の二番機。
ラモント
科学技術担当大統領補佐官。
Posted by ブクログ
重厚な物語に引き込まれて一気読み。残酷描写が多いうえ必要以上にリアル。精神的に元気なときに読むのがおすすめ。私はインフルエンザで寝込んでいるときに暇つぶしに読んだので気分が悪くなりました‥。
壮大なスケール。エンターテイメント。文句なしに面白いが、凄惨な描写が恐ろしくて、再読はできないと思う。
ページをめくる手が止まらないのに、先が怖い。こんな本ははじめて。
同作者の13階段も、事件の描写が細かくて怖かった。どうして作者は想像でこんなに現実味のあるシーンを書けるんだろう。
世界の闇。一瞬で狙い撃ちしてくる爆撃機、拷問国、新人類‥。どこからフィクションでどこまで現実なのか境界線がわからなかった。
一度読んだら忘れられない超ド級のインパクト。映画を観ているかのように頭の中に映像が浮かんだ。
Posted by ブクログ
面白くてグイグイ読み進められる本!
知性が極端に発達してるが、言葉を話すのが遅くてそのうえに頭が異様に大きくて目がデカい子供が産まれたらどうする? 障害児としこの世界に適応できないのにて育てる?障害児として間引く?
父と子の絆とともに軍事、創薬、政治、権力といった視点でスピーディーに詳細に描く。素晴らしい!SFなんだろけどあり得そうな話。
子供の人格形成は知識教育とは別の問題だよね。物語の中心の超知性生物と同じ3歳児を育てる父としても面白く読めました。
Posted by ブクログ
ジェノサイド下巻。ヌースと呼ばれる現生人類を超えた超人類の存在に対する興味と恐ろしさを感じました。ヌースは人間の上位に位置する存在として描かれており、本書の中では、人間が反抗しなければ何もしないと想定されていたが、現実でもAIの発展という事象に関連しているように思いました。ヌースはまだ共生の余地がありそうだが、AIの台頭でターミネーターのような世界を想像すると恐ろしくも感じます。
Posted by ブクログ
上巻で主要な謎は解き明かされ、下巻では物語をどのように結末へと収束させるかが焦点となる。そのため、物語全体の推進力はやや落ち、上巻ほどの勢いは感じられなかった。
イェーガーたちのアフリカ脱出は成功の見通しがほとんど立たない状況で進むため、それなりに緊張感を持って読み進められた。ただし、メタンハイドレートによって航空機やミサイルが次々に炎上する場面については、演出としては迫力がある一方で、現実的には少し大げさに感じられた。
一方、研人の創薬パートは一本道で淡々と進み、結末も読めているため、ちょっと退屈だったかな。
Posted by ブクログ
日本、アフリカ、アメリカを渡る壮大なスケールの物語。こんな物語を創作できる作者は本当にすごいと脱帽です。
・アフリカ少年兵の件はエグい。しかし、現実的にあるとしたら看過できない。平和な日本では想像すらできない世界だった。
・ハイズマンの言葉が印象的
→「すべての生物種の中で、人間だけが同種間の大量虐殺(ジェノサイド)を行なう唯一の動物だ。それがヒトという生き物の定義だよ。人間性とは残虐性なのさ。かつて地球上にいた別種の人類、原人やネアンデルタール人も、現生人類によって滅ぼされたと私は見ている。(ジョゼフ・ハイズマン)」
・すごく説得力のある見解だった。こうやって人類はヌースやエマのような新人類に淘汰されていくのだろうか。
・人類絶滅の原因として自然破壊や核戦争など言われているが、新人類による淘汰という新たな視点を得た。そして、それは歴史を見ると否定できない重要な要素だと思った。
Posted by ブクログ
上巻に引き続き下巻もテンポよくストーリーが進んで、次はどんな展開が待ち受けているんだろう…?と、時間も忘れてページをめくる手が止まらなかった。
こんなに高揚した気分で読書をするのは物凄く久しぶりな気がする。
なんだこの緻密に作り上げられたストーリーは。この物語を作り上げるために、どれだけの労力を費やしたんだろう。
人間は残酷で、作中では目を背けたくなるような出来事が容赦無く描写されているけれど、これは他人事なんかじゃなくて、自分を含めた全ての人間にかかわることが描かれていると感じる瞬間が何度かあって、だから余計にこの本に夢中になったのかも。(夢に見るくらいに)
面白かったという枠を超えた、ものすごい体験をしてしまったような、心地よい読後感に浸りながら気持ちに任せてぺぺーっと書いたので感情が爆発しています。
Posted by ブクログ
13階段は既に読んでいましたが、
また違った方向性の作品で驚いたと共に、
それにも関わらず
スリリングに展開していく冒険劇に引き込まれ
スピードを落とさず読み切ることができました。
最近SF要素のある話を引き当てる機会が増えました。自分からはなかなか手を出せないSFですが、こういう形で触れられて、読書の幅がちょっと広がったかも。
以下は印象に残ったシーンについてや考えたこと。
オネカをはじめとした現地村人虐殺のシーンは残虐でトラウマになりそう。
子どもにあんなことさせたり、
◯した人の身体の一部をペンダントにしたり…
でも、これはフィクションとも言い切れないと思うと、すごく心が締め付けられる。
戦争を取り扱った小説を読むたび、
普段はあまり感じないけど
幸せな時代に生まれたんだなと思う。
ケントの新薬制作のシーン。短期間でややこしい調合をしなければいけない難題に立ち向かう姿に背中を押された。
GIFTの長い待ち時間中に、焦らず冷静に勉強して本番にパフォーマンスを発揮できるようにしっかり準備しているところなど、すごく見習いたい。
中盤までは、
もしこのまま新人類が繁栄していったら、
私たち原生人類はただの駒のように扱われて、
生きる(考える)楽しさが分からなくなるんじゃないかと思った。
現にイエーガー達もアキリやエマの考えた作戦を忠実に実行するオペレーターのようになっていたし。
でも、エマ達はケントらに働く場を与えたりして共存を前向きに考えてくれていた。
私たち原生人類にも生きがいを感じられるように寄り添ってくれそうで安心した。