山本博文のレビュー一覧
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歴史学の視点から史実と様々な説について、きちんと整理しているのはありがたい。古代から中世、中世から近世の転換期について丁寧に説明しているのも、歴史の流れをつかむのに役立った。
さきたま古墳群から出土した鉄剣に書かれた「ワカタケル大王」は、熊本県の江田船山古墳から出土した鉄剣に書かれた名前も同じと考えられており、五世紀に九州から関東に及ぶ政権があったことが判明している。宋書の倭人伝に書かれている「倭の五王」の武が、日本書紀に大泊瀬幼武(ワカタケル大王)と書かれた雄略大王とされている。
かつての1万円冊に使われた聖徳太子の肖像が持っている笏は、奈良時代の遣唐使によってもたらされたもので、聖徳太子の功績が高く評価されていた奈良時代に作成されたと推測できる。ただし、聖徳太子が架空の人物とする説に対しては批判も多く、日本書紀の記述には一定の史実が含まれているという見方が有力。
日本書紀に始まる6つの正史が、9世紀の「日本三代実録」で終わっていることは、律令国家が転換したことを示していると考えられる。平安時代中期の摂関政治までは古代に分類するのが一般的。「詳細日本史B」では、院政期からを中世としているが、鎌倉時代からとしている教科書もある。頼朝が義経の探索を理由に、全国の守護・地頭の任命権などを朝廷に認めさせた1185年を鎌倉幕府の成立とするのが、研究者の間では最も有力。
近世の始まりは織豊期からとするのが一般的。筆者は、秀吉の太閤検地や刀狩りによる兵農分離が近世社会の本質と考える。室町幕府以前、領地は個々の武士の家の独自財産だったが、江戸幕府では上から給付されるものへと大きく変化した。
「幕府」という言葉が使われるようになったのは、江戸末期になってから。頼朝の政権は「鎌倉殿」、室町幕府の将軍邸は「室町殿」、将軍は「公方」と呼ばれた。「藩」が使われたのは明治になってからで、各大名の統治機構は「家中」と呼ばれていた。
時代小説はフィクションを主体としており、歴史小説はほぼ史実に即したストーリーを描く。「坂の上の雲」は、歴史小説というより研究者が行う歴史叙述にきわめて近い。 -
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タイトルと内容はちょっとずれてますね。
山川の教科書を大人向けに書き直した(と言いつつ、ほぼそのまま)の例のシリーズが売れていることに焦りを感じて、変な汗をかいてしまってる。
内容としては、歴史研究を仕事としている人たちは、どうやって歴史を紐解いているのか。教科書に淡々と書かれた史実は、何を起源にどうやって事実と認められてきたのか、という歴史研究の裏舞台を語ることが本編。
その題材として、魏志倭人伝を拠り所にした古代、正史を持つ平安時代、私的な記録も多い戦国時代などを扱っている感じ。
一応、歴の流れというか、普遍的な何かを知りたい、という(山川本を意識した想定上の)読者の問には答えようとはしているんだけど、オマケっぽさはある。
歴史そのものではなく、歴史研究について知るにはとても良い本だと思いました。年寄り向けじゃななくて、未来の学者に向けて書いた本として、魅力的なタイトルつけて売れないかなぁ……。 -
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歴史学が科学であることを丁寧に示している。
分かっているけれども、過去の歴史を舞台にしたフィクションを私たちは本当だと思ってしまいがちだ。SFは想像力の産物だと分かっているのに、歴史物になるとそこが変わってくるから摩訶不思議な生き物だ、人間は。
また、私は中高時代、歴史が嫌いだった。著者が言うように年号と事実の無味乾燥な暗記科目の思えたからだ。しかし、科学であると気づいた日から腑に落ちるものがあった。そのことが本書の肝だろう。
・古来のものと思われている神道も鎌倉時代に形成された
・近世以前、政治と文化は密接だった
・歴史的思考力とは、現代を見るときに歴史的な視野で考えられること -
Posted by ブクログ
おすすめ度:80点
あらめて自分は日本人であることを自覚する。
「武士道」は「日本人の魂」という副題が示すとおり、日本人の拠って立つ道徳意識や思考方法というものを、つまりは日本の文化というものを、さまざまな事例をあげながら明らかにした本である。
元国連事務次長明石康氏は、カンボジアで亡くなった中田さんのご両親が示した態度、東日本大震災での被害にあわれた方々の行動が、「静かなる威厳」であると海外からも評価されている点は、武士道の克己が今もっても日本人に脈々と受け継がれていると指摘している。
「武士道は日本の標章である桜の花にまさるとも劣らない、わが国土に根ざした花である。」(「武士道」より) -
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「歴史学」のおもしろさを感じるのに素晴らしい一冊。大学・大学院で学んだ日本史学を思い出し、あらためて歴史学の魅力を再確認できる。もう一度歴史研究したくなる。単に知識を身に付けるだけの歴史ではない、歴史的思考力を鍛え上げるための思考法がわかりやすく記されている。
前半は歴史学の方法や考え方を、後半は日本通史の中で「歴史のつかみ方」を解説しており、どちらも興味深い。歴史に対するある程度の知識は必要ではあるが、歴史という学問の入門・概説書としておすすめ。
・過去の歴史的時代には「時代の観念」がある。(P52)
・歴史研究で決定的に重要なのは史料批判(P71)
・歴史を知ることは、安易に法則性を見出そうとすることでも、すべてを単なる偶然と考えることでもない(P86)
・現代的視点で過去を断罪するのではなく、当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとする姿勢(P203)
・世の中で起こっていることは、事象そのものは偶然に起こったものかもしれないが、そのすべてには歴史的な背景がある。このことに留意できる歴史的な知識とそれを参照して考えられる思考力、つまり知性が必要。そしてまた、そもそも私たちの考え方自体も、歴史的に形成されてきた所産だということに留意することが必要。そういうことを自覚することが、「歴史的思考力」。(P251)
・歴史的思考力=人生を豊かにする教養(P252) -
Posted by ブクログ
TVでベストセラーだとか紹介されていたのでちょっと読んでみたら意外と良著だった。
本作で描かれているのは、歴史の概要というよりは、タイトルの通り「歴史(学)」の捉え方について。歴史の研究とはどのように進められているか、または教科書で学ぶ歴史の立ち位置(一文一文注意して作られていることが判る!)に、フィクションとしての歴史(司馬史観など)についても触れ、あとはそれを捉えるための基礎知識として「☓☓時代」とかいうカテゴライズは一体どういうものなのか?については実際の日本史を追いながら書かれています。逆に言えば、それをさっと説明するだけでページは尽きてしまうわけですw
スポット的にしか覚えていない日本史でしたが、本作を読むことで全体の「流れ」のようなものは掴めたかと思います。ちょっと歴史というものについて混乱してきた時に、手軽に読んだりするといいかもしれません。 -
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フォトリーディング。著者はノンクリ。なかなか良さそうな本。
高速リーディング後、高速を交えて熟読。
著者はカトリックの信仰とプロテスタントの信仰が違う事を全く述べていなかったので、ひょっとしたらクリスチャンをカトリックの色眼鏡で見ているのかもしれない。その意味で、江戸初期の殉教者たちの死骸を聖なるものとして取り合う切支丹を「信仰者としては当たり前かもしれないが、それ以外の日本人には奇異にみえた」というような事を述べている。プロテスタントの私としてはちょっと著者の記述に教義への不理解が見えた。
しかしながらそのようなことが為政者にとってキリスト教を邪教と思わせる要因となったことは大いに納得できた。
また殉教しようとする切支丹を沿道から崇拝したり、着物に触れようとしたりした時代から20年ほどで、同じような場面で連れて行かれる切支丹を沿道の人々が罵倒するようになったことは、日本人の変わり身の早さを思わせられた。時代が変わると言う事は霊的(聖書的)な表現をすれば、日本の宣教の扉が一時開けられ、すぐに閉じられたと判断できる。これは逆に言えばまた開かれた時にも人々はガラッと変わるのではないかという、リバイバルへの期待へとつながる。
迫害が家康の死後から苛烈になったことは、歴史的に見て興味を持った。
星四つ。 -
Posted by ブクログ
討ち入り費用総額「700両」
一級史料で読み解く、歴史的大事件の深層
経済的側面から見た討ち入り計画の実像
大石内蔵助は軍資金をいかに使ったか
またまた忠臣蔵かと思わないでもなかったですが購入。
あとがきを読むと本書のエッセンスは2008年から
温めていたそうです。
「預置候金銀請払帳」は以前から知られていた史料だ
そうですがまだまだ研究の余地があるそうです。
まず、藩の取り潰しの過程が経済的側面からわかった
のが面白かったです。
藩札をどの様に精算するのか。
藩の財産処分はどうするのか。
よくドラマでは、城付きの武具を引き渡すシーンが
出てくるが、城付きの武具の数はさほど多くは無く、
藩所有の武具は売り払われ処分されたことがわかる。
藩所有の船も売り払われる。作事方の材木や納戸、
台所道具なども売れ払われる。
家中の藩士たちも武具や馬具、馬などを売り払う。
また、城付きの兵糧米は、城受取りを担当した大名に
手当として支給されることが慣例であったようだ。
新しい領主が決まれば、幕府の蔵から改めて城付きの
米が支給されることになるという。
赤穂浪士が吉良邸に討ち入りし本懐を遂げるまでが
経済的側面から描かれるがわかりやすく面白い。
大石のスタンスとしては藩の再興のみならず、吉良
側の処罰を求めていたという。反対に、堀部安兵衛
などの下級武士は、主家のためと言うよりは自分の
武士の一分が立たないという立場であり、上士と下
士の意識の違いがわかり面白い。
討ち入りにより、四十七士は称賛される。
事件発生から討ち入りまで足掛け2年の間には脱落
者が続出するが、討ち入り成功後の逃亡者達の末路
を考えるとなんとも苦いものが心に残る感じがした。
これが本当の「忠臣蔵」 (小学館101新書―江戸検新
書)と併せて読むのがおススメである。
なお、山本先生、来春刊行される「敗者の日本史」
でも忠臣蔵を取り上げるようですが内容に差別化でき
るのか気になるところである。 -
Posted by ブクログ
副題は、赤穂浪士討ち入り事件の真相。
新史料発見。刃傷事件が忠臣蔵になるまで。もっとも「正確」な赤穂事件。
歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」により、日本人の心性に深く根を下ろす赤穂浪士討ち入り事件。しかし、物語ではない、史実としての詳細は、意外に知られていない。新発見史料「茅野和助遺書」をはじめ、残された調書や手紙・日記などを徹底的につきあわせていくことで浮かび上がる、事件の真相。わかりやすく、正確に解き明かす。
山本氏の著作は、わかりやすく面白い。本書でも、松の廊下から討ち入り、切腹まで、時系列を追って解説している。浪士たちの一枚岩というわけではなかった。吉良を討つという手段は同じでも、武士の一分を守るためか、主君の仇を討つためか、家の名誉を守るためか。身分によって、価値観が大いに異なることがわかって面白い。
忠臣蔵の理解を深めるためにお勧めの本である。