あらすじ
町方の評判もよく、経験も実績もあった「鬼平」こと長谷川平蔵が、町奉行になれなかった理由は何だったのか。当時の隠密情報をあつめた史料をもとに、出世を願う旗本たちの本音と建て前を赤裸々に解き明かす。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
週刊誌連載なのでコラム的、そして連載を1回しか読まないことも想定されており、各章で内容がまとまっていてとても読みやすい。取り上げているのは鬼平や田沼意次、松平定信の居た時代の江戸の武家たちの昇進競争について。ネタ元は松平定信が集めさせた「よしの冊子」が主。
「鬼平」長谷川平蔵のことはテレビ時代劇「鬼平犯科帳」をやっていたことぐらいしか知らず、池波正太郎原作も未読。しかしテレビの刷り込みとは恐ろしいもので、水戸黄門、銭形平次、暴れん坊将軍などのように「良い人」と思い込んでいた。確かにやり手だし江戸の町衆からは慕われていたのだけど、やり方はどうかと思われるところも多い。というか著者の視点がわりと厳しい。
今年2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」にて鬼平が初回から出ているのだが、テレビ時代劇での印象と全く異なる変なヤツなので、実際の鬼平がどうなのかと思いこの本を読んだ。鬼平に関しては冷静(というか冷ややか)に見ることができた。ただし20年以上前の本だからか、田沼意次や賄賂政治に関してはかなり厳しい。というか同時代に生きてたら、昇進ごとにカネを包まなきゃイカン時代は(経済的に好況を生んだのだろうが)やはりアカンと感じた。
書誌情報:週刊現代連載後に講談社現代新書「鬼平と出世 旗本たちの昇進競争」として2002年5月刊行、角川ソフィア文庫としてはタイトルとサブタイトルが入れ替えられ「シリーズ江戸学」の一冊として2007年5月刊行。
Posted by ブクログ
庶民に愛された長谷川平蔵がなぜ町奉行になれなかったのか?松平定信の真意、ライバルたちの暗闘を寛政期の史料から読み解く。(2002年刊、2007年文庫化)
・プロローグ 「よしの冊子」が明かす寛政期の旗本たち
・第一部 「鬼平」長谷川平蔵と好敵手たち
・中休み 「好色将軍」家斉と乳母問題
・第二部 森山孝盛と武士の出世
・エピローグ 平蔵とその好敵手たちの「その後」
・あとがき
2015年新書版を再読。(目次を見ると、一部分修正されているようである。挿絵も削られている。)
本書は週刊現代の連載をまとめたものであり、大変、読みやすい内容となっている。文庫化にあわせてタイトルが修正され、名は体を表すものとなっている。
副題は「鬼平と出世」。全体の構成をみると、鬼平はページの半分位であり、残りの大半は同時代の旗本森山孝盛を扱っている。森山の記録により、立身出世のための猟官活動の実態を知ることが出来るのが面白い。
初鹿野河内守、松平左金吾、池田筑後守など、歴史に埋もれた名奉行(等)達の業績を知ることが出来る。
雑誌連載という性質上、参考文献の記載が無いのが残念。