あらすじ
私たちに欠けているのは、受験などで必要とされた細かな「歴史知識」ではなく、それを活かす「技法」だ。歴史用語の扱い方から歴史学の変遷まで、「歴史的思考力」を磨きあげるための一冊。そもそも「幕府」とは何か? 「天皇」の力の源泉とは? 歴史小説と歴史学との違いとは? 第一線の歴史研究者が、歴史をつかむための入口を最新の研究成果を踏まえて説く。高校生から社会人まで、教養を求めるすべての人へ。
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先だって読んだ出口版世界史本が面白かったから、じゃあ日本史についての本新書を、ってことで着手。新聞で池上彰が本書をお勧めしていて、そこで読みたくなり手元に置いてあったもの。うん、これも良い。このくらいの概観を、まずは一通り押さえた上で、詳細に関する学校の勉強を進めていった方が、確実に身につくし、また興味深くも思える気がする。逆に、詳細についてのイメージをそこそこ持っているからこそ、本書くらいのざっくり感でも理解できる、ってのはあるかもしらんけど。どんな分野でもそうだけど、どうすれば学びやすいか、その正解はないし、難しいところですね。
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日本史を概略で説明している。ただ、それだけではなく、歴史のひかりの当て方を書いている。歴史を学ぶことによって「歴史的思考力」を身につけることができる。歴史を学び、視野が飛躍的に広がる。ものの見方が豊かになる。これは意識的にやる必要がある。もっと歴史を学びたいと思う。
Posted by ブクログ
日経新聞の紹介記事を読み、タイトルに惹かれて購入しました。
技法というとノウハウが思い浮かびますが、その様な内容ではなく、世にある史観・考え方の紹介から始まり、文部科学省の歴史に対する学習指導要領と学校でのアプローチ、歴史学者と歴史小説家の違いなど、歴史を学ぶための構えについて、歴史学者の視点で解説しています。
いま読んだからかもしれませんが、中高生の現役時代にこの様な知識を得た上で学んでいればと、悔やまれてなりません。
いわゆる知識偏重な学習ではなく、思考訓練により深い洞察力を得られたかもしれません。
但し著者も主張されていますが、歴史研究にifが厳禁である様に、ある程度の基礎知識がないと理解が進まない以上、致し方ない面もあるでしょうね。少ない知識で、本書の様な学ぶ心構えを解説されても、馬の耳に念仏でしょうしね。要はバランスなのでしょう。現場を預かる教師の方々も大変ですね。
ただ本書からは、かなりのインパクトを貰いました。
その一つは、人類は進歩してきたのか 単に歩んできたのかという論です。マルクス主義史観の様な、歴史に法則性が存在するのか。またはブラウン運動の様に、その時の様々な偶然が重なり、今に至っているのか。著者は、その時代背景や価値観を照らした上で、因果関係を読み解くというその時間軸での分析の重要性を主張されています。
もう一つは、歴史を一連の時代を通貫した通史や、世界史からみた日本史の関係性の様なマクロ的な視点、政治史だけでなく社会史や、気候など自然史などを重層的で多様な視点で俯瞰してみることの重要性も指摘しております。
まさに"なるほど"でした。
そう考えると、どの様な学問も、アプローチは公約数かなとも感じます。
ミクロからマクロ、要素から全体システム。まさに、様々な視点・視野・視座から、深く洞察して最適解を追い求める。
学びの奥深さを再認識しました。
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日本の歴史をまとめた好著だが、随所に最新の研究成果を織り込んだり、的確なツッコミがあって楽しめた.特に、歴史小説との関連を考察しているp56からの記述が良い.幅広い研究成果を簡単に述べているが、非常に精力的な活動の成果だと推察する.この位の密度で大まかな知識を確認しておくことが、歴史を把握するのに重要だと感じた.
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最近、鎌倉幕府成立の年号は「イイクニ(1192)作ろう」より「イイハコ(1185)作ろう」で覚えるらしい。また、聖徳太子はただのボンクラ御曹司だったらしい。
学生時代の日本史授業で習ってきた常識が否定されることがよくある。それは新しい史実が発見されたのではなく、歴史の考え方が変わったからだ。つまり、「歴史学」が発展したから。
では、「歴史学」とは何か。今そこにある史実をコツコツと分析、研究することで、新たな歴史の見方を発見することだ。世紀の大発見によって新たな歴史を掘り出すというドラマチックさはない。
しかし、「イイクニ」を「イイハコ」に変えたことは、かなりのインパクトだ。改めて、歴史のおもしろさに注目が集まっているこのご時世、「歴史」ではなく、「歴史学」にスポットを当てた歴史学入門書。
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歴史をつかむ技法そのものは、史料の価値を見極め、現代の価値観によらず当時の事情に照らして虚心坦懐に読み込むこと。とすると、歴史研究家ではない自分のような対象には余り関係がないことと感じられた。
一方で、日本史の単なる年号や事件の知識の向こうにある因果の流れや時代背景が概観できたほか、歴史小説の位置づけや歴史観についても学ぶところが多かった。
4-10
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歴史的思考力とは歴史的文脈を踏まえて現代の事象に対して洞察を得るための力。
学校では習った覚えのない歴史の見方。
歴史用語は便宜的なもの、この概念は実はこういう意味だ等のtips的な話も知らなかったのでありがたい。
天皇号は後世のもの。
成立年代は解釈によるもの。
実は摂関政治、院政は皇統存続のために都合がよかった。
その時代の考え方や価値観があることをありきで、現代の見方でミスジャッジをしてはならない。
等。
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歴史ファンの端くれという自負はあるが、中国史なら「項羽と劉邦」「三国志」、日本史なら戦国時代と幕末だけ詳しいのは如何ともしがたい。
本書は教科書日本史のよい復習になった。
皇位継承権をめぐる政争の辺り、読んでいて混乱した。マルクス史観が幅を利かせていた頃、正当な主張も「皇国史観」だと決めつけられ、歴史研究は停滞したことだろう。ああ、人文科学の落とし穴。
NHK「タイムスクープハンター」は著者が監修していたのか。時代考証のレベルが違うのも道理だ。そんじょそこらの時代劇だと、髷がモヒカンと変わりない。
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日本史に関する教科書を始めとする資料をどう受け止めるべきか、ということに加え、120ページ程でヤマト朝廷から日露戦争まで、著者の視点での日本史の流れが書かれていた。
新書120ページ程度の分量で日本史の流れが書かれたものを読んだのは初めてで、その全体を一度に読み切ることももちろん初めてで、初めて日本史の全体像が実感を持って頭の中に入ってきた気がする。
著者の記載に当たっての姿勢も、どっちつかずだと言う人もいるかもしれないけれど、自分にとっては好ましい。
ページの制限や狙いにもよるのだろうけれど、もう少し解像度高く説明されていれば、と物足りなく思うところがいくつもあった。
200803
Posted by ブクログ
歴史用語がなぜ分かりづらいのかが分かった。皇統の考え方、血筋がいかに重要視されたかなどの解説もあり勉強になることが沢山。また、歴史研究は細かい証拠を積み上げて検証される地味~~~なものであるということもよく分かった。一方歴史小説というものは歴史研究や歴史的発見に基づいて想像力を膨らませ描かれるので面白い。歴史を楽しむためには歴史小説がとっても大切なんだと再認識。
Posted by ブクログ
著者の山本博文氏は、日本近世史を専門とする歴史学者。1992年に「江戸お留守居役の日記」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞し、その後も江戸時代の大名や武士を取り上げた作品を多数発表している。
本書は、「歴史学」と「日本通史」という大きなテーマ二つを取り上げている。
前段では、歴史学は何を目指しているのか、歴史学とはどういう学問なのかに加えて、歴史学にはどのような技法があるのか、即ち、歴史を学ぶ上で必要な「考え方」や「見方」が紹介されている。
そして後段では、前段の「歴史学とは何か」を踏まえて、幕末までの日本の通史を、“著者の解釈”に基づいて展開している。それは、日本の幕末までの歴史を、鎌倉幕府の成立を境に「古代」と「中世・近世」に分けた上で、「古代」については、天皇の血筋がいかに継続したのかという視点、「中世・近世」については、鎌倉・室町・江戸という三つの武家政権がいかに移行したのかという視点から見たものである。
また、「聖徳太子はなぜ天皇になれなかったのか?」、「鎌倉時代に幕府はなかったのはないか?」、「江戸時代には藩も鎖国もなかったのではないか?」など、著者の独自の視点からの、興味ある分析も提示されている。
歴史学と、その一つの例としての日本通史がまとめられた一冊。
(2014年4月了)
Posted by ブクログ
歴史学の視点から史実と様々な説について、きちんと整理しているのはありがたい。古代から中世、中世から近世の転換期について丁寧に説明しているのも、歴史の流れをつかむのに役立った。
さきたま古墳群から出土した鉄剣に書かれた「ワカタケル大王」は、熊本県の江田船山古墳から出土した鉄剣に書かれた名前も同じと考えられており、五世紀に九州から関東に及ぶ政権があったことが判明している。宋書の倭人伝に書かれている「倭の五王」の武が、日本書紀に大泊瀬幼武(ワカタケル大王)と書かれた雄略大王とされている。
かつての1万円冊に使われた聖徳太子の肖像が持っている笏は、奈良時代の遣唐使によってもたらされたもので、聖徳太子の功績が高く評価されていた奈良時代に作成されたと推測できる。ただし、聖徳太子が架空の人物とする説に対しては批判も多く、日本書紀の記述には一定の史実が含まれているという見方が有力。
日本書紀に始まる6つの正史が、9世紀の「日本三代実録」で終わっていることは、律令国家が転換したことを示していると考えられる。平安時代中期の摂関政治までは古代に分類するのが一般的。「詳細日本史B」では、院政期からを中世としているが、鎌倉時代からとしている教科書もある。頼朝が義経の探索を理由に、全国の守護・地頭の任命権などを朝廷に認めさせた1185年を鎌倉幕府の成立とするのが、研究者の間では最も有力。
近世の始まりは織豊期からとするのが一般的。筆者は、秀吉の太閤検地や刀狩りによる兵農分離が近世社会の本質と考える。室町幕府以前、領地は個々の武士の家の独自財産だったが、江戸幕府では上から給付されるものへと大きく変化した。
「幕府」という言葉が使われるようになったのは、江戸末期になってから。頼朝の政権は「鎌倉殿」、室町幕府の将軍邸は「室町殿」、将軍は「公方」と呼ばれた。「藩」が使われたのは明治になってからで、各大名の統治機構は「家中」と呼ばれていた。
時代小説はフィクションを主体としており、歴史小説はほぼ史実に即したストーリーを描く。「坂の上の雲」は、歴史小説というより研究者が行う歴史叙述にきわめて近い。
Posted by ブクログ
タイトルと内容はちょっとずれてますね。
山川の教科書を大人向けに書き直した(と言いつつ、ほぼそのまま)の例のシリーズが売れていることに焦りを感じて、変な汗をかいてしまってる。
内容としては、歴史研究を仕事としている人たちは、どうやって歴史を紐解いているのか。教科書に淡々と書かれた史実は、何を起源にどうやって事実と認められてきたのか、という歴史研究の裏舞台を語ることが本編。
その題材として、魏志倭人伝を拠り所にした古代、正史を持つ平安時代、私的な記録も多い戦国時代などを扱っている感じ。
一応、歴の流れというか、普遍的な何かを知りたい、という(山川本を意識した想定上の)読者の問には答えようとはしているんだけど、オマケっぽさはある。
歴史そのものではなく、歴史研究について知るにはとても良い本だと思いました。年寄り向けじゃななくて、未来の学者に向けて書いた本として、魅力的なタイトルつけて売れないかなぁ……。
Posted by ブクログ
歴史学が科学であることを丁寧に示している。
分かっているけれども、過去の歴史を舞台にしたフィクションを私たちは本当だと思ってしまいがちだ。SFは想像力の産物だと分かっているのに、歴史物になるとそこが変わってくるから摩訶不思議な生き物だ、人間は。
また、私は中高時代、歴史が嫌いだった。著者が言うように年号と事実の無味乾燥な暗記科目の思えたからだ。しかし、科学であると気づいた日から腑に落ちるものがあった。そのことが本書の肝だろう。
・古来のものと思われている神道も鎌倉時代に形成された
・近世以前、政治と文化は密接だった
・歴史的思考力とは、現代を見るときに歴史的な視野で考えられること
Posted by ブクログ
おすすめの一冊です!最近、歴史の教科書で鎌倉幕府の成立の年が変わった…という話題がマスコミで取り上げられることがあるが、それがどういうことのか理解できるようになります。
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歴史をどう捉え、とう考えるのか大まかに把握するには参考になった。また、歴史という学問の現状、研究についても触れることができ、そんな世界を知らない自分にとって新鮮だった。
一番、参考になったのは、歴史的思考力というもの。
これは、現代に起こる事象を孤立したものではなく、「歴史的な視野の中で育てていく」ということ。
物事を複眼的に見れるように、人生を豊かにする共用となるように、もっともっと歴史というものに触れていきたいと思うようになった。
Posted by ブクログ
歴史を学ぶとはどういうことか述べた本。
歴史小説と歴史学の違いや史観などを簡潔にとりあげてわかりやすく説明されている。
知識を増やすということに異論は全くないが、「歴史すなわち暗記科目」という認識を変えたいと常々思っている身としてはこういう本に凄く共感する。
知識をもとにした考える歴史の授業目指して日々精進したいと思う。
Posted by ブクログ
「歴史学」のおもしろさを感じるのに素晴らしい一冊。大学・大学院で学んだ日本史学を思い出し、あらためて歴史学の魅力を再確認できる。もう一度歴史研究したくなる。単に知識を身に付けるだけの歴史ではない、歴史的思考力を鍛え上げるための思考法がわかりやすく記されている。
前半は歴史学の方法や考え方を、後半は日本通史の中で「歴史のつかみ方」を解説しており、どちらも興味深い。歴史に対するある程度の知識は必要ではあるが、歴史という学問の入門・概説書としておすすめ。
・過去の歴史的時代には「時代の観念」がある。(P52)
・歴史研究で決定的に重要なのは史料批判(P71)
・歴史を知ることは、安易に法則性を見出そうとすることでも、すべてを単なる偶然と考えることでもない(P86)
・現代的視点で過去を断罪するのではなく、当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとする姿勢(P203)
・世の中で起こっていることは、事象そのものは偶然に起こったものかもしれないが、そのすべてには歴史的な背景がある。このことに留意できる歴史的な知識とそれを参照して考えられる思考力、つまり知性が必要。そしてまた、そもそも私たちの考え方自体も、歴史的に形成されてきた所産だということに留意することが必要。そういうことを自覚することが、「歴史的思考力」。(P251)
・歴史的思考力=人生を豊かにする教養(P252)
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TVでベストセラーだとか紹介されていたのでちょっと読んでみたら意外と良著だった。
本作で描かれているのは、歴史の概要というよりは、タイトルの通り「歴史(学)」の捉え方について。歴史の研究とはどのように進められているか、または教科書で学ぶ歴史の立ち位置(一文一文注意して作られていることが判る!)に、フィクションとしての歴史(司馬史観など)についても触れ、あとはそれを捉えるための基礎知識として「☓☓時代」とかいうカテゴライズは一体どういうものなのか?については実際の日本史を追いながら書かれています。逆に言えば、それをさっと説明するだけでページは尽きてしまうわけですw
スポット的にしか覚えていない日本史でしたが、本作を読むことで全体の「流れ」のようなものは掴めたかと思います。ちょっと歴史というものについて混乱してきた時に、手軽に読んだりするといいかもしれません。
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歴史というと高校時代に日本史を選択し,受験勉強としての暗記が主体で,体系的にとか流れを掴もうとすることは全くありませんでした。
一方で,ちゃんと歴史を勉強してみたいという欲求はありました。
そんなとき,帯の「この一冊で日本史の流れをわしづかみ!」に魅かれ購入。
対象は,高校生から社会人までで,歴史の学び方,歴史学とは?といったことを読みやすい文調で教えてくれます。
「イイクニつくろう鎌倉幕府」で覚えていた鎌倉幕府の成立年も今は「イイハコ(1185)」になったというニュースがありましたが,これは新たに事実が発見されたわけではなく,数十年も前から学者の間では,幕府の成立時をめぐって6つもの説が存在してたらしいのです。征夷大将軍に任命された1192年を成立時とするか,全国の守護・地頭の任命権等を朝廷に認めさせた1185年をそれとするかで解釈がわかれていて,近年は1185年説が有力になってきただけのことみたいです。
また,歴史を見る上で重要なことは,現代的視点で過去を断罪するのではなく,当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとすることであると作者は言います。
過去の判断を後でとやかく責めても何の進歩もありません。なぜそういう判断に至ったのかを冷静な視点で観察し,その中で次につなげていくということが大事ですね。
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文字通り、日本史をつかむ技法を解説した一冊。
日本史の解釈のついての話がメインで、具体的な学説を述べているわけではないので、期待したものとは違った。
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後半の、日本史を大局的に要約した部分は、まとまり過ぎで面白みがなかった。これではただのダイジェスト。
歴史の見方を論じた前半は面白かったが、全体的に少し浅い気がする
やはり通史として日本史をまとめるのはこの規模の本では無理があるかな。
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歴史を学ぶ上での注意点、心構えみたいなものを学べました。作者がどのような立場で視点で歴史を述べているのか、元にした史料はそもそも正しいのか、そういった視点を持つことが大事だということが印象に残っています。今後、日本史の本を読むのにあたり、そういう視点をもって読まなくてはと思えました。
また、歴史を学ぶ意義として、現代に起こる事象を孤立したものとしてではなく、「歴史的な視野の中で考えていく」ということという作者の意見に共感しました。
自分の歴史知識が少なく、本書を理解しきれていない箇所もあるので、また勉強したうえで読み直したいです。
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わりとまっとうなことが、まとまって書かれているなあという本。淳仁天皇のだいに淡海三船がかんふうしごうをつけたという話、恵美押勝政権であっのでさもあらんと思うが、その淳仁が長いこと淡路廃帝であったのは不憫だ。専門の近世意外は基本的にフーンってかんじだが、最後に多くの人が避けてとおっている歴史的思考力の定義を「現代に起こる諸事を歴史的な視野の中で考えていく」こととシンプルに書いてくれていることは、心強い。
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歴史的思考力
歴史的思考力とは、現代に起こる事象を孤立したものとしてではなく、「歴史的な視野の中でかんがえていく」ということだと考えています。
現在、世の中で起こっていることは、事象そのものは偶然に起こったものかもしれませんが、そのすべてに歴史的な背景があります。このことに留意できる歴史的な知識とそれを参照して考えられる思考力、つまり知性が必要です。そしてまた、そもそも私たちの考え方自体も、歴史的に形成されてきた所産だということに留意することが必要です。
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曖昧なまま覚えて、歴史を勉強しようとすると定義がよく分からなくて困惑する時代区分の解説、歴史小説と時代小説、歴史学の違い等、歴史を学習する上で躓きやすい部分が、学者らしい真摯な文で書かれています。
「現代の感覚で歴史を見ない」ことを心掛けていたつもりですが、この本を読んでまだまだ現代視点が抜けていないのが自覚できました。私もまだまだ。
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日本の通史を説明しながら、用語の意味や各時代の重要な要素を説明。歴史学的な入門書としては解りやすい。個人的には技法=思考法と勘違いしていたので、ちょっと期待はずれ的に読んだ。
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高校・大学と卒業して社会人になって辛いことや悩みは多くありますが、その反面とても楽しくなったのが歴史に関する本を読むことです。
学生時代は、私にとって歴史というのは、漠然と面白さを感じつつも年号や人名を間違いなく覚えなければ点数が取れないというプレッシャーからか、歴史を楽しむということはできませんでした。
歴史小説も良いですが、歴史を通年で解説されている本も増えてきました。それらの本を読んで悟ることは、歴史は一つの流れで動いているということです。私たちは有名な事件・戦いを学ぶことがメインですが、そこに至るまでの経緯にその時代の当事者の苦悩を感じます。
そんな私にとって、この本の帯にある「日本史の流れを、わしづかみ!」というコピーは私の目を釘付けにしてくれました。この本の著者である山本氏は、独自の視点から多くの本をすでに出されているようですね。
私にとっては記念すべき一冊目ですが、これから彼の本を多く読んで、単なる知識を超えた「歴史的思考力」を鍛えて、更に歴史や歴史小説を読んで、自分の人生にも活かしていきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・ものごとを理解するためには、車の両輪のように「知識」とその知識を行かすための「思考方法」の二つがそろう事が大事、歴史を学ぶ上で必要な「考え方」「見方」を紹介していきたい(p5)
・「乱」は軍事蜂起を伴う国家(天皇)への反抗であるのに対して、「変」はときの政権の転覆工作である(p22)
・鎌倉幕府に相当する武士の政権のことを、朝廷では「関東」とか「武家」と呼んでいた。幕府側の武士たちも「幕府」とは言わず、「鎌倉殿」と称している(p30)
・藩という言葉が頻繁に使われるのは、幕府がなくなった明治初年から4年の廃藩置県までのわずかの間。この時には、藩主の居所である城・陣屋の所在地を藩名とすることになったので、薩摩藩の正式名称は鹿児島藩(p31)
・天武天皇の孫の文武天皇の時代、701年の遣唐使がはじめて対外的に「日本」をなのるが、その勢力範囲は、まだ東北中部以北、南九州は入っていない(p35)
・桶狭間の戦いにおいて、「信長公記」に奇襲攻撃のことは全く書かれていていないので、奇襲説に疑問を呈した・正面攻撃をし、押された今川軍の前軍が後方に逃走したため、義元の本陣までが混乱した(p50)
・忠臣蔵の時代背景において、喧嘩両成敗が武士時代の常識となっていたことを知らないと事件そのものを理解できない(p52)
・足利尊氏は後醍醐にかえて光明天皇(北朝)をたてて1338年には征夷大将軍に任じられて京都で政治を行う。後醍醐天皇は奈良の吉野山にのがれた、現代の天皇家は北朝系統だが、「大日本史」においては南朝を正式な王朝としている(p105)
・桃山は、秀吉が関白を辞めた後に、伏見に築いた城のあった地の呼称である、伏見城の跡地に桃が植えられて「桃山」と呼ばれた(p107)
・直系とは、父子で皇統を継承していくことで、天皇と皇女との間に生まれた子供こそが「直系」として皇統を続ける資格のある天皇ということ(p125)
・摂関制度は長く続き、藤原道長の子孫である5摂家(近衛、鷹司、九条、二条、一条)から出た。廃止されるのは王政復古の大号令が出たとき(p152)
・鎌倉幕府は地方に守護と地頭をおいた、それまで地方は「荘園公領制」であり、国家の機関である「国衙」と、その支配を受けない「荘園」で構成されていた。守護は東国の国衙の支配権をひきつぎ、荘園の管理を行う下司には地頭が任命されることが多かった。ただし、西国では国衙・荘園が残っていた(p166)
・惣領制とは、それぞれの武士団の宗家を首長とし、分割相続によって成立した分家も宗家を中心に結束する体制、所領を細分化させないために嫡子単独相続が行われる(p177)
・室町幕府には鎌倉府(鎌倉公方)があり、東の幕府といってよいほど独立性の高いものであった。室町幕府は、将軍・有力守護連合の政権である(p182)
・室町幕府が弱体化するのは、1467-1477年にかけての応仁・文明の乱、管領畠山家の内紛が契機となり将軍家の家督争いがからみ、有力守護の細川氏と山名氏が介入して、各地の守護が細川(東)と山名(西)に分かれて戦った(p183)
・太閤検地によpり、耕作から離れた兵と武器を使うことを否定された農が分離される体制を、近世社会の本質と考えられる(p196)
・1575年11月に朝廷は信長に、従三位・権田大納言、そして「右近衛大将」に任じた、これは室町将軍に匹敵する官位、朝廷が信長を室町幕府の後継者として認めたことを意味する、秀吉にも同様に与えた(p197,199)
・秀吉の場合は、摂関家同士の内紛に介入して関白の地位を受け継ぐことを表明、ついに従一位・関白となった(p199)
・1603年に家康は、秀吉の直轄地は武家政権の財産だということで江戸幕府に接収、このため秀頼は、65万石の一大名になった(p206)
2014年5月5日作成
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日本史入門書。
日本史という分野は、ある意味、不思議な分野なのです。結構おもしろくて刺激的なのですが、研究者と一般の人との扱う対象が違うのです。大学で教えていた時、そのギャップを感じました。何故、こんなおもしろいことを研究者は取り上げないのか、そういう疑問・質問はよくありました。私は歴史学プロパーではないのですが、そういう疑問をバカにしてはいけない、それを系統立てて説明すべきと思いました。
山川の教科書、司馬遼太郎、網野善彦をだいたい、7・2・1くらいの比重で説明し、歴史家のものの見方との違いを説明しています。網野さんについてもっと詳しい説明が欲しいけど、網野さんも歴史学者だから、個別に説明するには紙数が必要でしょう。
以前日記にも書いたけど、山川の教科書は買う気がおきませんが、ちょっと見直しました。
Posted by ブクログ
日本史を一望できる入門書。これまでの歴史教科書は細部にこだわるあまり歴史を俯瞰する視点を見失っていたのではないかという反省から、本書では信頼できる日本史の鳥瞰図を提供してくれる。世界システム論やアナール学派についての簡潔な説明もありがたい。ただ、良書ではあるものの、やや中途半端な印象も。
というのも、本書は、史学概論的な前半部(序章〜第2章)と、日本通史を概略した後半部(第3章〜第4章)とに大別できるが、新書版で両方をやろうとするのはやはり無理があるように思える。史学概論に的を絞った好著、小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)と比較すると、なんだかもったいないなぁという感じは否めない。
個人的には、日本史を学ぼうとしたときに、「一冊で分かる〜」的なお手軽な本や全何十巻もの重厚な講座本はあっても、その中間的な(例えばマクニール『世界史』やH・G・ウェルズ『世界史概観』のような)適度なボリュームの教養書がないことが不満なので、そういう本があればいいなぁと思う。ちゃんとした歴史家の書いた適度な分量の日本通史の本が『詳説日本史研究』(受験参考書)だけというのはあまりにも寂しすぎるぜ。