山本博文のレビュー一覧

  • 歴史をつかむ技法

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    日本史を一望できる入門書。これまでの歴史教科書は細部にこだわるあまり歴史を俯瞰する視点を見失っていたのではないかという反省から、本書では信頼できる日本史の鳥瞰図を提供してくれる。世界システム論やアナール学派についての簡潔な説明もありがたい。ただ、良書ではあるものの、やや中途半端な印象も。

    というのも、本書は、史学概論的な前半部(序章〜第2章)と、日本通史を概略した後半部(第3章〜第4章)とに大別できるが、新書版で両方をやろうとするのはやはり無理があるように思える。史学概論に的を絞った好著、小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)と比較すると、なんだかもったいないなぁという感じは否めない

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    2014年01月01日
  • 殉教~日本人は何を信仰したか~

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    キリシタンの見方が変わった。
    今までは悲劇の人たちという印象だったが、そうではなかったのかもしれないということだ。
    彼らにとって弾圧され拷問され、そして殉教することは悲劇ではなく喜びであった。
    すべての殉教がそうであったとは思わないが、少なくとも私が思っているよりはそうであったのだろう。

    信仰とは素晴らしいものである反面恐ろしいものだと思った。
    生きるため、またそれを支えるために信仰はあるのだと思っていた。
    だから、死ぬという行為に過剰な希望を与え、死を喜んで受け入れる人たちを生みだしたこの信仰に、私はとても違和感を覚えた。

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    2013年08月27日
  • 日本史の一級史料

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    古本で購入。
    東京大学史料編纂所教授による日本史入門書。

    史料を巡るあれこれを述べていくわけではあるけど、テーマになっているのは「如何に歴史に親しみ、自分なりの歴史を見る眼を持つか」。

    教科書の丸暗記的知識ではなく、歴史の中で生きてきた人々のことを考えるのは楽しいよ、ということを著者は言う。
    そのための格好の素材が「古文書」であると。

    そうは言っても古文書を読んで理解するにはそれなりの知識が要るわけで。
    だから本書は「日本史を勉強して知識を得たけどそれで満足している人」向けと言っていいと思う。
    少しでも日本史に興味のある高校生あたりに読んでもらいたいね。

    内容については、

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    2013年07月18日
  • 「忠臣蔵」の決算書

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    改易後討ち入りまでに大石内蔵助が公用で使った700両は、瑤泉院から借りた「化粧代」。その用途が記載され、討ち入り後瑤泉院に報告された史料「預置候金銀請払帳」を紐解き、討ち入り「プロジェクト」を説明。丁寧に記述されているし、興味深い内容。

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    2013年06月11日
  • 「忠臣蔵」の決算書

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     以前、エコノミストの伊藤洋一氏がpodcastで紹介されていたので手に取ってみた本です。
     材料となった史料は、大石内蔵助が浅野内匠頭の正室瑤泉院に向けて残した「預置候金銀請払帳」、現在は箱根神社に所蔵されています。
     その討入プロジェクトの決算書とも言うべき「預置候金銀請払帳」に記された支出項目は113項目、亡き主君に対する仏事費から御家再興工作費、旅費・江戸逗留費・潜伏中の住居費・飲食費そして討ち入りのための武器購入費等々、その使途は様々、その記述は詳細にわたります。
     忠臣蔵関係の研究はそれこそ山のようにあるのでしょうが、討入りの生々しい実態を「金銭面」から明らかにするというアプローチ

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    2013年03月21日
  • 男の嫉妬 ――武士道の論理と心理

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    嫉妬の視点から武士の世界を見たものだったが、馴染なく無理な感も否めない。特に武士の嫉妬を取り上げる必要があったのか疑問。

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    2013年03月20日
  • 信長の血統

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    女性優位のスポーツ界において、私が知る限りで男性も活躍したスポーツの1つにフィギィアスケートがありますが、数年前に織田家の血を引くと言われる織田信成氏がいることを知りました。「信」という諱に興味が引かれて、お顔を拝見したら信長の面影が残っていたので驚いたことを覚えています。

    その後に、次男信雄の子孫から大名が江戸末期まで続いていることを知り、織田信長亡き後の織田氏について興味を覚えました。この本によれば、滅ばされた豊臣家とは異なり、江戸時代に織田家は、大名4家・旗本10家が存在していたようです。

    信長については多くの本を読んできたつもりですが、主に「織田信長」個人の活躍について述べたもので

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    2013年01月06日
  • 切腹~日本人の責任の取り方~

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    切腹の概念の時代変遷とか、興味深い切腹のエピソードとか。
    どれもあまり「痛い」と感じる記述ではなく、痛いのが嫌いな僕にはぴったりの本だった。
    痛いのが嫌いなのにこんな本を手に取るなよ、と突っ込みを入れたそこのあなた!あなたは正しい。

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    2012年11月25日
  • 信長の血統

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    タイトルから想像する信長の子孫とか一族とかの話はあまり本題ではないようです。帯には「その血を握る者のみが支配者であった」とあるし、いわゆる織田政権継承の正統性がどのように意識されていたのか、が本題でしょう。なるほど、と思う部分も多々ありますが、いかんせん秀吉の事績が幅をとっています。「江戸時代の織田家」が2ページちょっとです。

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    2014年11月24日
  • 信長の血統

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    戦国動乱の世、その「血」を握る者のみが支配者であった。
    本能寺の変で斃れた信長、あとを襲った秀吉、家康。
    全国統一の支配権力は、こうして生まれた。
    時代を超えた「革命児」の意志と、末裔たちの盛衰を描く。
    天正十年六月二日、織田信長は本能寺の変で斃れ、49年の
    生涯を閉じた。見果てぬ夢となった天下統一、この「織田体制」
    とは何だったのか?織豊政権の権力構造を解き明かしつつ、信長
    一族や末裔が辿った運命を克明に検証する。

    さくさく読めてしまいました。山本氏の著書だけあってそつがあり
    ませんが、私にとっての山本氏は近世史家(豊臣〜徳川)のイメー
    ジが強いので、中世(織田)は違和感がありますが、織田

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    2012年10月19日
  • 信長の血統

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    秋になるとむしょうに読みたくなる歴史もの。




    しかもピンポイントなものがいいですね。




    今回の新書も信長の子どもや孫に焦点をあてた本です。




    信長在命時、そして信長の死後豊臣政権下及び江戸時代に入ってから




    信長の血縁者たちがどのような運命をたどったかが




    すっごく詳しく書かれていて、戦国好きにはたまらない1冊です。




    秀吉は意外に信長のこどもたちを立てていたこと




    逆に家康はちょっと冷たかったこと




    意外な真実はこの本には記されています。




    戦国好きにはオススメの一冊で、一気に読めてしまいます。

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    2012年10月05日
  • 日本人の心 武士道 入門

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    武士とは何か。どのような成り立ちをし、どのような組織を組み、どのような意識下で、どのような暮らしだったのか。を非常にライトに、重点を絞ってしっかりまとめられている。
    手引書として安心の一冊。

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    2012年05月13日
  • 武士の評判記 『よしの冊子』にみる江戸役人の通信簿

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    『よしの冊子』にみる江戸役人の通信簿~田沼時代を経て押収白河藩主・松平定信が老中首座となった。綱紀粛正を目指し,直属の部下を各所に配置し,役人の評判を報告させた。老中-賄賂で老中になった阿部正倫・温厚で何の害もない松平康福・心得違いを反省した水野忠友・真っ先に登用された若手の俊才松平明・側用人から老中格へ上がった本多忠壽:若年寄-時代を狙う堀田正敦・刀を忘れて自ら謹慎した京極高久・将来を嘱望された寺社奉行脇坂安薫・苦労を厭う坊ちゃん育ちの井上政国:町奉行-失言で左遷曲淵景漸・町方から馬鹿にされた柳生久通・天国から地獄へ初鹿野信興・萎縮した金太郎侍池田長恵:勘定奉行-御三卿清水家を改革柘植正是・

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    2012年01月29日
  • 400年の時の旅江戸東京博物館(小学館文庫)

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     江戸博の常設展の解説書です。若干古い本なので、今の常設展は展示構成が変わってしまっていますが、これを読んでから行けば、展示の内容がよく理解できると思います。江戸博に着いてからキャプションの解説を全部読んでいると相当時間がかかりますので、行くまでの電車の中である程度この本を読んでおくのがオススメです。

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    2017年08月15日
  • 武士と世間 なぜ死に急ぐのか

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    こういう問題について議論するのは難しい。
    資料の読み込みとか、どうしても推論の域を出ない部分がある。
    (別に作者が悪いのではないのだけど)

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    2009年10月04日
  • 日本史の一級史料

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    著者には品位がある。想像の翼を広げず大風呂敷を抑制する。、そこに文献史料学者としての矜恃がある。取り上げている史料は片々たる物であり、大きな史実が発掘される訳でもない。だが、何気ない1次史料からどのようにして一つの史実が引き出されるかが解説され、十分に面白い。著者自身の研究の過程を基にして近世文献史料学の現場と問題意識がよくレポートされ、この学問の楽しさが十分に味わえる。

    星について

    史料学の楽しさが良く活写された好著である。であるが、入門書のために、新しい知見があるわけでなく、深く考えさせられる内容でもない。よって星3個。

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    2009年10月04日