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吉良邸討ち入りに費やされた軍資金は「約七百両」──武器購入費から潜伏中の会議費、住居費、飲食費に至るまで、大石内蔵助は、その使途の詳細を記した会計帳簿を遺していた。上野介の首を狙う赤穂浪士の行動を金銭面から裏付ける稀有な記録。それは、浪士たちの揺れる心の動きまでをも、数字によって雄弁に物語っていた。歴史的大事件の深層を一級史料から読み解く。「決算書」=史料『預置候金銀請払帳』を全文載録。
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Posted by ブクログ
史料『金銀請払帳』に記された予算支出額と使途内容から、赤穂浪士の動きを分析した一冊。現代人の価値観では武士の倫理観は難解。討ち入りを美談と言われても腑に落ちませんが、浅野家全体に対する元家老・大石内蔵助の忠誠心から辿り着いた結末としては納得できます。美学だけで予算管理はできません。周りから色々言われ...続きを読むても、内蔵助に標準以上の統率力と管理能力が備わっていたから成功したのだと思いました。
実に面白い
従来の支店でなく、経理面から、捉えてあり、実に面白い。
昨年末にちょっと話題になってた本。赤穂藩の取り潰しから討ち入りまで、忠臣蔵に関しておは費用明細が記録された史料が存在する。歴史の解説本は数多くあれど、会計的な観点で歴史を捉え直してみるという異色の1冊であり、評判どおり面白い1冊である。いろいろな価値基準で歴史を見つめてみることで、新たな発見が得られ...続きを読むることを再認識できた。
127両 (18.4%) 仏事費 65両 ( 9.4%) 御家再興工作費 70両 (10/1%) 江戸屋敷購入費 248両 (35.6%) 旅費・江戸逗留費 11両 ( 1.6%) 通信・会議費 132両 (19.0%) 生活補助費 12両 ( 1.7%) 装備費 30両 ( 4.2%) ...続きを読むその他 695両 (100%) 総額 さて上記の金額、約700百両(現在の金に換算して約83百万円)を使った一大プロジェクトとは何であろうか?そう、あの有名な吉良邸討入に掛った費用の総額と内訳なのである。松の廊下の刃傷沙汰が元禄14年(1701年)3月14日で、赤穂城の引渡が4月中旬。ここから浪人生活、雌伏生活が始まり討入を行ったのが翌元禄15年12月14日であるから城引渡から約一年半強の日数を要しており、その間に掛った費用の総額が700両余。討入に最終的に参加したのは四十七士だから一人当たりにすれば僅かに176万円だ。そして700両の出所であるが、これは赤穂城の引渡のときの余剰金が約400両そして亡君浅野内匠頭の正室の運用金から預かった300両である 赤穂浪士と言えば年末の風物詩。そして演劇を始めとして沢山の関連書物も出ており今更の感もないのだが、その背景には主君の仇打ちという当時の武士の義侠心を刺激する内容もさることながら意外や豊富な関係資料が存在することから元禄の時代の研究対象としても貴重な出来事だとも言われているが、関連書類の中でも実は討入に臨むに当り掛った費用の決算書が存在しているというのだからこれはまた驚きだ。しかもあの大石内蔵助が自ら作成していたというのだから全くもってビックリだ。 そもそも何故にして大石内蔵助はこうした決算書を作成していたのであろうか?赤穂藩の筆頭家老である大石内蔵助は藩の財産は浅野内匠頭のお金と認識していたようであり、その藩財産の処分から生じた残余金であろうと、御家再興の為に使って良いという話があったのかもしれない正室の運用金の一部もまた浅野家の金と認識していたようだ。それゆえに、それらの金を仇打ちに使うに際しても私的に流用しては居ないということを証明するべく使途目録を作成し正室に報告していたようだ。 良く、大石が京都潜伏中に先斗町で遊蕩に耽っていたとの話もあるし、事実あちこちにそうし行動を非難する文書いもあるようだが、実はそうした事実はあったにせよこの決算書にはそうした支出は記載されてはいない。同時に京都から江戸までの旅費も大石の分は記載されていないところから、これらは私的懐から出した、即ち自腹であったようだ。また討入が最終的に12月14日とすることを決めた後に、四十七士が其々に住んでいた長屋の店賃も踏み倒すことなく事前に全て清算させているのだから律儀としか言いようが無い。また討入の為の刀や槍の購入費用も余りにも少なく、これも大石の私的費用だったのかもしれない。 こうした決算書を眺めていると大石内蔵助の亡君に対するあくまでも忠義を尽くし、尚且つ仇打ちに際して後を濁さないように全てを綺麗に処理していくという倫理観の強さが表れていると言える。なんか赤穂浪士の話も、そして大石内蔵助にますます惹かれてくる思いだ。
赤穂事件は同時代の人々にとってもセンセーショナルな事件だったため一次資料も多く存在し、モノガタリ化され続けたために普通なら散逸する様な資料も現在まで残っていることにまず瞠目。原型が多少歪められたとしても、出来事がモノガタリ化されポピュラーになる事には大きな意義がある。 散逸せずに残った資料に、赤穂藩...続きを読む改易から討ち入りまでの精密な出納帳が残っており、本書はそれに基づいて書かれた、討ち入りまでの金の流れと、赤穂藩士の生活の様子と、心の動きを描かれた一級の読み物である。 討ち入りまでのモチベーションの根本には「武士である」という倫理的な要素は強いが、武士として忠義を尽くす相手が立場によって「藩」「浅野家」であったり、「内匠頭長矩」であったり別れているのが面白い(中には大石内蔵助に惹かれて、という人もいた様だが)。結果として前者は浅野家再興運動にまず走り、後者は討ち入り強硬派となった。最初から一枚岩ではなかったチームをまとめ上げるためには優れたリーダーと「先立つもの」が必要だ。特に討ち入り強硬派は江戸詰の人間が多かったため、意思確認やコントロールの為に都度都度江戸に使者を派遣する必要があり、実は残った「決算書」を見るとこの交通費が占める割合が非常に大きかった事実も面白い。 そして、おそらく討ち入り決行に至ったのは、決算書を見る限り残金に余裕がなくなって決行に至らざるを得なかったという面も否定できない。微禄だった者は討ち入り前にはまさしく「食い詰め浪人」になっており、ことを起こすには後がなかった事も読み取れる。一番最後の出納は、高禄だった大石内蔵助自身のポケットマネーによって賄われていた(つまり、改易から藩務整理ののち残った金を綺麗に使い切って討ち入りに向かった訳だ)。 欲を言えば、大石内蔵助自身の「決算書」も見たかった。様々な用途で消えていった赤穂藩の残金だが、微禄だった者への生活援助に充当されてはいたが大石個人は受け取っていない。妻子を離別後遊蕩に走った時の金も、全て個人の金で賄われている。千五百石という高禄を食んでいた大石内蔵助の貯蓄はいかほどだったのか。 藩の残金の出納帳を最後には幕府に提出することによって、改易から討ち入りに至るまでの行動に一片の私心のない事、公の金を公の行為のために使用した事が分かり、それによって討ち入りの「正しさ」はより凄みを増すことになる。赤穂事件が「忠臣蔵」となって人口に膾炙した理由の一つにはこういう部分があったことは否定できまい。
討ち入り費用総額「700両」 一級史料で読み解く、歴史的大事件の深層 経済的側面から見た討ち入り計画の実像 大石内蔵助は軍資金をいかに使ったか またまた忠臣蔵かと思わないでもなかったですが購入。 あとがきを読むと本書のエッセンスは2008年から 温めていたそうです。 「預置候金銀請払...続きを読む帳」は以前から知られていた史料だ そうですがまだまだ研究の余地があるそうです。 まず、藩の取り潰しの過程が経済的側面からわかった のが面白かったです。 藩札をどの様に精算するのか。 藩の財産処分はどうするのか。 よくドラマでは、城付きの武具を引き渡すシーンが 出てくるが、城付きの武具の数はさほど多くは無く、 藩所有の武具は売り払われ処分されたことがわかる。 藩所有の船も売り払われる。作事方の材木や納戸、 台所道具なども売れ払われる。 家中の藩士たちも武具や馬具、馬などを売り払う。 また、城付きの兵糧米は、城受取りを担当した大名に 手当として支給されることが慣例であったようだ。 新しい領主が決まれば、幕府の蔵から改めて城付きの 米が支給されることになるという。 赤穂浪士が吉良邸に討ち入りし本懐を遂げるまでが 経済的側面から描かれるがわかりやすく面白い。 大石のスタンスとしては藩の再興のみならず、吉良 側の処罰を求めていたという。反対に、堀部安兵衛 などの下級武士は、主家のためと言うよりは自分の 武士の一分が立たないという立場であり、上士と下 士の意識の違いがわかり面白い。 討ち入りにより、四十七士は称賛される。 事件発生から討ち入りまで足掛け2年の間には脱落 者が続出するが、討ち入り成功後の逃亡者達の末路 を考えるとなんとも苦いものが心に残る感じがした。 これが本当の「忠臣蔵」 (小学館101新書―江戸検新 書)と併せて読むのがおススメである。 なお、山本先生、来春刊行される「敗者の日本史」 でも忠臣蔵を取り上げるようですが内容に差別化でき るのか気になるところである。
映画「決算!忠臣蔵」を先日見たので、読んでみる。小説でないので、原作とは云い難いが、なかなか興味深い内容だった。こういう記録を付けていることがまず凄い。で、確かにお金がないとどうにもならんと納得・・・
映画「決算!忠臣蔵」はまだ観てないけど、 その原作としての本書を読んでみた。 小説のような面白味はなかったけど、 細かな資料が現存していることに驚いた。 討ち入り直前には、お金がなくなっていたこと。 赤穂浪士の切腹の意味。 吉良上野介をなぜ卑怯者とするかなどがよくわかった。 また、討ち入り浪士の子孫...続きを読むたちが、 それぞれに取り立てられていることも興味深かった。
幕藩体制下の藩政や武士階級の階層別身分制度、流通貨幣の現在相場換算などが分かりやすかった。 史料に基づいた研究書となれば、専門用語が多くて苦慮するが噛み砕いた内容解説と金銀請払帳の史料批判が大変面白かった。
改易後討ち入りまでに大石内蔵助が公用で使った700両は、瑤泉院から借りた「化粧代」。その用途が記載され、討ち入り後瑤泉院に報告された史料「預置候金銀請払帳」を紐解き、討ち入り「プロジェクト」を説明。丁寧に記述されているし、興味深い内容。
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