高殿円のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレオリンピックに沸くロンドンが舞台の男女逆転シャーロック・ホームズ。シャーリーとジョーの初対面が聖バーソロミュー病院地下の死体安置所だったり、かなりぶっ飛んでいるものの、2012年のロンドン、という現実の舞台からそこまで乖離している感じはしませんでした。
黒髪で白雪姫のような美貌、人工心臓、パラリンピックの代表選手にえらばれるほどの馬術の腕前、姉から大量に送られてくる高価なハイブランドの服を無頓着に着ている、などなど主人公のシャーリーをはじめ過剰なほど設定が盛られているんですが、そこが逆に面白かった。シャーリーの人工心臓っていう設定が、毎日薬を大量に服用しなければいけないということで原典の「薬漬け」という設定をクリアしていたり、医師であるジョーとフラットシェアをする動機を補強していたり、と「飾り」になってしまわずうまく機能していてすごいなと思いました。
シャーリーの「僕には心がない」という台詞も、英語のHeartは「心」でも「心臓」でもあるので、本人は淡々と「心臓がない」という事実を述べているだけ、というふうに読めるところがうまい。
ただ、乗馬に関してはちょっとやりすぎ感もおぼえた……人工心臓という肉体的に大きなハンディがあるので、立ち回りの場面なんかではトップ・アスリートという設定があったほうが説得力が増すと思うんですが、だがしかしオリンピックに補欠出場して金メダルとるレベルなら日常的に乗ってないとダメだろ……! とどうしても思ってしまった。
でもたぶん、万能すぎる電脳家政婦のミセス・ハドソンのほうがツッコミどころは山のようにあるんだろうな……どうやってるのかシステムがまったく謎なままシャーリーの思考と同期している……
シャーリーは「シャーリー・アンドロイド」と呼ばれたり、無機的な印象で描かれているのですが、瞳の色が「ネオンブルー」「スターウォーズのライトセーバーの色」というのが面白い。
あとジョーがジュード・ロウを好きっていうのがかわいい。
「タンポンを使う人間ってバージンじゃない」かどうかはともかく、「彼女はなんの躊躇いも恥ずかし気もなくタンポンを使用できる女性達を蔑視してたんじゃないかなあ。ほんのちょっとの妬みもあったかも」「あの歳までバージンだともう一生男性とそういうことにはならないかもしれないって自分自身に嫌気がさすのもわかるんだよね……すごく」というジョーの推理はグッときました。
今までは「存在しない」と抹殺されてきたそういう女性の孤独感を描いてくれてありがとう、というか。
何はともあれ、電脳家政婦のミセス・ハドソンが毎朝起こしてくれて、221Bの階下のカフェ『赤毛組合』のマスターでもあるミスター・ハドソンがおいしそうなパンケーキとコーヒーを届けてくれる生活は相当羨ましく、読んでいるだけで楽しいです。やはり家事や育児など、社会が女ばかりに押しつけてくる仕事から解放されれば、女の子ふたりでもこんなにのびのび冒険できるんだ、とあらためて思いました。 -
Posted by ブクログ
シリーズ第二弾。
第二次世界大戦の開幕までを描いた一冊。
英国統治下のインド。名目上はイギリスから独立権を得ている藩王国パンダリーコットの中にある小さなイギリス人社会。イギリス役人の子女をいっぱしのレディに教育することを目的とした寄宿制の女子校が舞台。
ヴィクトリア朝のしきたりを重んじる淑女たちが集う寄宿舎で、悲喜交交。
王女という立場に生まれながら、一介の新聞記者に恋をする。あまりにかけ離れた身分に、惹かれながらも...
下手をするとB級ラノベになりそうな題材だが、そこはさすがの高殿氏。
歴史に翻弄され、宗教と政治の道具にされながら自由を一時は求めるが...
ここ最近の、イギリスのチャールズさんもこんな感じだったのかねー。
うっかり、目頭熱くさせられました。 -
Posted by ブクログ
百貨店。デパート。
それだけでも夢のような、そして庶民には敷居の高いイメージがついて回る。
今では量販店も入っているし、決して毛皮のコートや指輪ばかりを扱っているわけではないのに。
それでもやはりブランド力はそれなりにある。
けれども本書はそんな、親しみやすい世界の話ではない。
外商、つまり、金持ち専用のスタッフだ。
50万100万の購入なんてもんじゃない。
あまりに世界がかけ離れていて、想像するのが楽しい。
主人公の鮫島静緒は、中途採用の高卒(製菓専門卒)、バツイチアラフォーの外商員。
異端者だけに影で色々言われもするし、悩みもする。
決してやり手のバリキャリではない。
だから親しみが持てるのかもしれない。
不器用で、葉鳥という外商の神様を、父とも思い人とも慕う。
「お客様から教わりなさい」という言葉を胸に奮闘する。
面白いのは新規顧客の美谷。
彼女は何か訳ありなようだが、どこまで外商員が顧客のプライベートに立ち入るか、そのさじ加減が難しい。
もしかしたら昔の屋上遊園地のような、そんなありえない夢を描いているかもしれない。
だが、だからこそ、本書はたのしい。
続編もあるので、そこではこの人間模様がどうなるのかも楽しみだ。