真山仁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今作は今までの2作を回収する形で一旦収束させた神作。
アカマ自動車の買収劇の中で、アランの死の真相、鷲津によるビッグディールの演出、全てが回収される。
シリーズもので読めば読むほど面白い作品は本当に珍しい。素晴らしいと思う。
芝野さんは引き続き大活躍。こんな人はなかなかいないが、アカマ自動車側の面々も濃い。大内さんも好み。
ルールの中で戦う日本人と、ルールを作る、変えにいく外資の構図を綺麗に書いていた。鷲津はいわゆるルールを作る側、日本にガバナンスをもたらす革命児としての期待が常にある。ここから得られる学びは大きい。ビジネス書としてもかなり優秀。 -
Posted by ブクログ
上巻に続いてFSCを巡る情勢が目まぐるしく動いて飽きさせなかった。
ハゲタカシリーズなので最後は鷲津政彦とサムライファンドか米中を出し抜いて、日本政府や韓国政府も手玉にとってうまくやるわけだが、上下巻を通じた筆者のメッセージとしては、半導体が台湾の至宝であり、台湾にそれが存在することか米中の間での抑止にもなるが、逆に台湾にあることで米中紛争の火種にもなるということ。したがって、第三国たる日本に持って来て米中に供給すれば紛争の種にならないという発想(元国連職員の相模にその発想を鷲津に伝えさせている)も面白い。
筆者はクリス・ミラーの半導体戦争を参考文献の一つとして挙げているが、経済安保が重視されている今、半導体が国際政治に与える影響を注視していく必要があると感じた。
-
Posted by ブクログ
ハゲタカシリーズも、もうそろそろ終わりか。そんな寂しさも垣間見せる下巻。いよいよ買収劇は、日本の半導体企業、日の丸を背負うフェニックス、そして韓国の企業が潰れかけているなか、両社を手中に収めるサムライ・キャピタル。その最後のピースはやはり台湾の半導体企業の米中地政学リスクを回避する最後の一手だった。
前島、アンソニー、リンなどお馴染みのメンバーが揃う。ウォールームの様子など、だんだんただのファンドレベルじゃなくてっているけれど、鷲津が還暦というところも明かしつつ、引退をほのめかしながらもまだまだやっていくという意思を表している。最後は、キャピタル。このエクイティキャピタルにこだわった真山仁さんは、黒木亮さんのデッドキャピタル、ともにドラマがある。
最後、全てのピースが整い、伏線が一つに集約されていく。サムライキャピタルの狙い、鷲津の狙いは米中摩擦の中でも、しっかり存在感を出せる場所。
やっぱり面白いし、年をとっていく鷲津と一緒に歴史を歩いたような感じがして嬉しくなる。仕事の興奮、ビジネスの面白さ、それらをプロットそれぞれに際立たせていくので、もう最後は現実的かとか、そういう話じゃなくなっていく。思わず応援している自分がいて、若い頃にハゲタカとやりとりしていた頃を思い出す。これはいつも、ハゲタカを読んでの体験で、オランダヒルズからの街並み、何もわからず突っ込んで行った自分、そういう体験が切り開いた未来、海外。ありがとうハゲタカシリーズ。そんな気持ちで本を閉じた。
-
Posted by ブクログ
ハゲタカシリーズの6作品目。サムライファンド鷲津の復活。これを心待ちにしていた読者もきっとたくさんいるだろう。この業界に身をおいていれば、危機発生時、そして金融に何が起こるのか、想像しながら読んでいることだろう。日中、米中、台湾有事、この3局のテーマこそが、不均衡を踏むトリガーだから。
一方で、イラン米国戦争が勃発し、海峡閉鎖によるオイル危機が発生している状況下。何が起きても不思議ではないと思わせてくれる。台湾で起きた大地震、そして世界最大規模の半導体ファウンドリーFSC社の創業者の死去、鷲津に託されたFSC社の救済の謎、米国の思惑、CICはじめとする中国の動き。そして買収劇の裏側でサムライファンドのウォールーム。何度このシリーズを読んでも、若い頃のモデルとなったファンドのオフィスからの東京の眺めが忘れられない。
歳をとってベテランの域に入っている鷲津、パートナーのリンのやり取りもまた渋みを増している。情熱と推進力、判断力、ビジネスにおける大事な要素と、懐かしい北村記者などの登場で、過去の作品のファンサービスもしっかり。上巻ですでに満足しつつ、これを読み終えることのなんとも言えない寂しさを感じるほど、良い作品だと思う。
一つ前に読んだ世界の終わりとハードボイルドワンダーランドでは、カサブランカ風に、お酒を出してみたらどうかな、というくだりがあったが、本作でもカサブランカの曲を、鷲津がピアノで弾くシーンが出てくる。落ち着いて、静かに、寂しげに響くピアノ過去、ピアニストを目指したが、投資家に転じ、ビジネスに身をおいたけれど、このアーティストになりたいという願望は、人は死ぬことを意識して行動を変えるという本作のテーマでもある。自分自身がカネに身を投じた後悔があるのか、人生で満ち足りていないのは、なぜか。
創業者の株を教育基金に譲渡するという遺言が、果たしてバトルの行方をどう左右していくのか。後半戦を楽しみに。 -
Posted by ブクログ
最先端半導体を製造する台湾のFSCは、米中に対する台湾の安全保障の意味合いを持っていた。
そんな状況のなかで台湾に地震が発生し、FSCの創業者が亡くなってしまった為に、米中を巻き込むFSCの争奪戦が始まった。
実際の半導体をめぐるアメリカ、中国、台湾、韓国、日本の関係を、事実と想像とを織り混ぜているので物語の進め方に説得力がある。
特に凋落する日本半導体産業に対する評価は辛辣で的を射ているように思える。
サムライキャピタル鷲津の深謀遠慮の冷徹な買収行動が通常であるのに対し、本作の鷲津の行動が台湾に対するホワイトナイト的働きとなり好ましく読めた。
現在の時事ネタも盛り込まれ、今読むべき小説だと思う。 -
Posted by ブクログ
やっぱりハゲタカシリーズは面白い。一気読みしてしまった。鷲津だけじゃなく、成長した前島やアントニーの活躍もエモい。
鷲津は慈善事業はしないと言うが、なんだかんだで社会にとって最善のおさまりになる。社会正義だ社会貢献だと耳障りの良いことを云々かんぬん言っている裏には見栄や承認欲求があっていろいろこじれて争いになっていく。結局のところシンプルな鷲津のような考えが社会をよくするのではないかと思う。小説だから誇張もあるだろうけど、事実は小説より希なりという。米中の覇権争いや国際情勢がこじれないことを祈りたい。
カリスマのあとは必ず翳りが出るとか部下に考えることを求め気づくまでアドバイスしないとかビジネス書より含蓄のある点もおすすめ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレお久しぶりのハゲタカ続編。第6弾。
あの空気感をたっぷり堪能。
鷲津さん、ちょっと年をとって落ち着いてきました。
それもまたよし。
今回は、、、
台湾の世界一の半導体企業FSCを巡って、中国、アメリカ、の攻防戦に巻き込まれ?っていうか、恩人に頼まれてそのFSCを守ろうとする鷲津さん、のお話。
台湾有事とか、半導体とか、なんとなくは知ってたけども、よくわからなかった。
これはあくまで小説なので、全てを鵜呑みにしてはダメだけど、あぁなるほど、こういう事か、という。
わかりやすい。有難い。
武力行使してくるという発想が、なかなかに怖くて。
そりゃあみんな警戒するよねーというか。
そういう国だという認識のもと、政治家さんやら世界は動いてるのかーと。
難しいことはわからんけど。
FSCをアメリカに奪取されるくらいなら爆撃してしまおうって、いつの時代のはなし?!って感じなんだが。
リアルの世界でもそう危機感を持って、動いてるのかーと思うと、、、非常に暗い気持ちになったよ。
ところで。
芝野さんはもう出てこないのかな?(´・ω・`) -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白くてあっという間に読み終わった。
司法書士としては登記周りが気になってしょうがない。
貴子名義にするには貴子の住民票が必要だがどうしたのか?とか。(あれだけ容易に偽造パスポートが用意されるのだから偽造に決まっているが。お抱えの中国系司法書士が多分いるんだろうなぁ。それにしても本人に無断で登記までやる必要ないと思うんだが…)
登記原因なに?税金周りは大丈夫なのか?貴子の個人名義にしない方が良かったんじゃないのか。
謄本を受け取る、受け取らないは関係ないのよ。もう登記入っちゃってるんだから。
いつかどこかで登記周りを深く考察してみたいなぁ。
最後は貴子が成長して自らの実力でホテルを取り戻すんだとばかり思っていたけれど結局棚ぼた的に取り戻せたのだった。
鷲津さんの話から貴子をきれいに取り除くために必要なお話という印象。
それにしては面白すぎるんだけど。
-
Posted by ブクログ
リアル本にて。
コーチャンフォー若葉台店にて見かけ、今の情報が氾濫している世の中で子供たちが生き抜いていくために何か伝えてあげられることがないかと思い、購入。
著者の真山仁さんは、小説家で「ハゲタカ」が有名だが、まだ読んだことはなかった。
ただ今回、この新書で、「小説を通じて社会を良い方に変えたい」と書かれているのを見て、俄然読んでみたくなった。
日本においては「正しく」あることで安心を得ようとする人が多い。しかしその「正しさ」は、「世間の多くの人と同じ考え方をしている」という意味である。むしろ物怖じせずに「わからないから教えて」と言う姿勢の方が、新しい環境にも馴染みやすく、不安も解消されるのに。おそらくみんな頭ではわかっているけど、恥ずかしくてそれができない。SNSの緩い繋がりのような易きに流れてしまう。
私の尊敬する技術者の言葉に、「迷ったら難しい方を選べ」という教えがある。体現できているとはとても言えない。ただ、人間関係でもソフト開発でも、簡単に手に入るものは簡単に失う。
楽しようとせず、時間をかけちゃんと話を聞き、違和感を放置せず話し合い、自分のことも伝えて、違いを受け止める。子供たちに偉そうにこれを言える状態に、今の自分はいない。まずは子供たちとのコミュニケーションで、本書のような姿勢を取っていきたい。
また本書では「知見なき意見は無責任」という言葉が紹介されている。これは、意見を述べる際、脊髄反射で意見するのではなく、まずしっかりと調べるべきである、ということ。調べるハードルがどんどん下がるなか、むしろ意外と調べないままになっている気がする。おそらくいつでも調べられるという甘えがあるんだろう。
そして本書では、小説家らしく、正しさを疑うために小説を読むことを推奨している。これは私もずっと思っていたことなので、全面的に賛成。一方で、真山仁さんはさらに一歩進んで、
・アガサ・クリスティーの
・ミステリーを
・二回読む
ことを勧めている。
それぞれちゃんと理由があって、妥当なものに思えたので、まずは「そして誰もいなくなった」でも読んでみよう。(ハゲタカと悩む)
最後に、後書きに痺れる言葉があったので、こちらも引用しておきたい。
「私にできることはあなたにもできる。私のノウハウを授けたんだから、あなたのほうがずっと有利だ」
いつか子供たちにも言いたい。