真山仁のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本を閉じた時に胸に生じた熱い気持ちをどうしたらよいのだろうか。
これは大人のファンタジーだと思う。感動も当然したがそれ以上に高揚感のある作品だった。読み終わった今余韻が残っていてそのまま次の読書にシフト出来ない。
所謂ハゲタカと呼ばれる外資系のファンドに勤務する野上妙子は、地熱発電の会社を買収再生する任務に当たる。採算ベースに乗せ、会社を売却し利益を得る。リストラをし会社を立て直そうとする妙子と、地熱発電への熱い想いを持つ研究者と衝突する。
研究者と衝突しレクチャーを受ける度に深まる疑問。事故のリスクを伴う原子力発電と比して、地熱発電は夢のエネルギーとも言える。何故エネルギーの選択肢として狭間へ追いやられているのか。
研究者達と解りあうごとに深まっていく地熱発電への希望。妙子は次第に彼らに惹かれていく。
しかし彼らの純粋な志は、否応無しに憎悪渦巻くパワーゲームに巻き込まれ翻弄されていく。果たして地熱発電はこの国に根付くのか。鬼子として葬り去られるのか。
経済小説は旬の物であり、時間が経つと陳腐化し過去の遺物として忘れ去られていく。この作品も現実に追い越され、夢物語の残滓のように感じられてしまうかもしれない。しかし、これは世の中の理想の形を追い求める小説という形態の中では傑出した作品だと思う。
何よりもこれだけの情報量をまとめて一つの物語を作り上げ、その中にこれだけの人数の登場人物を登場させながら薄っぺらにしない、一本筋の通った作品に仕上げる。これは中々出来る事ではないと思う。 -
Posted by ブクログ
短編集である。6編と1編。
その時々の話題を 作品に仕上げている。
さすが、小説家 である。
その物語づくりの巧みさに 感心をする。
農と食にかかわる問題も 瞬間凍結して
物語として 提出する。
一俵の重み
仕分け をすることに対して 米野の巧みな戦い。
必殺仕分け人 早乙女の ムダの判断。
米野は パフォーマンスをして
人材を育てる。
官僚とは どうあるべきなのか?
少なくとも、民主党の政権でのなかでの 官僚とは。
コメを輸出する。というテーマは 夢のような 現実的な話。
それが 政府がかかわることは、意味があるのだろうか。
医は
医術とは どう活かされるのか。
論文を書かない限り、偉くなれない。
しかし、人を救うには 手術を積み重ねないと行けない。
そのジレンマの中で 友人の裏切りを知る。
絹の道
小手川の生き方が 清々しいかもしれない。
遺伝子組み換えで できたカイコは、
ニンゲンにとって、効率的であるが。
原種の持つ なにかが失われる。
プライド
消費期限と賞味期限。
職人の持つプライドとは。
暴言大臣
団塊の世代が 亡国の徒である。
と暴言を吐いて、厚生労働大臣として
守った矜持とはなんだったのか。
うまいトリックが あったんですね。
ほんのわずかの時間稼ぎとは。
日本と中国の関係が良くなることで 喜ぶものは。
蜜蜂が消えた夏
紛争地をめぐるカメラマンが
向かったのは 蜜蜂を育てることだった。
歴史的瞬間
北朝鮮が ミサイルを日本にむけてきた。
それを迎えた 総理は。
『日本人の誇り』とは、なんであるか。
プライドを持つべきだと 真山仁は言う。 -
Posted by ブクログ
大作。そして傑作。
上巻は読み進めることがつらくなるくらい苦しい。
理解できない文化の違い、と一言で表していいのか躊躇うほど、
中国という国へ対しての不信感、嫌悪感が掻き立てられていく。
ほとんどの登場人物を嫌いになるのではないかと思うほど。
それがだんだんと、
すでに出来ている文化の在り方や、そこで育まれた人々の性質を
自分の価値観に照らし合わせてただ厭わしく思うということは、
知らないものをただ闇雲に恐れているということなのかもしれない、
という感覚にも似たあいまいな考えが、自然と自分の意識に染み込んでいった。
この国についてもっと知りたい、好きになりたいとも思った。
なだれこむようなラスト。
この先にあったのは、絶望なのか希望なのか。
できれば後者であって欲しいとひたすら願う力を与えてくれる作品。
読み終えたあとの興奮は、今までの作品では出会わなかったもの。
誰かに薦めたくなる作品。 -
Posted by ブクログ
北京五輪開催式と同時に稼働させる予定だった世界最大の原発。
中国の闇と現実を描き、その中で「希望」を見いだし生きていこうと突き進む人たち。
全く違う場所で、違う環境で、違う目標に向かって生きていた3人の人たちが、交わり、共に突き進んでいく姿がとても自然に、上手に描かれていた。
やっぱり真山仁はすごい。
ベント、蒸気爆発など、福島第一原発を予言しているようなこの内容にも本当に驚きます。
真山さんは、二酸化炭素削減のために全世界が「原発推進」の姿勢を取り、原発建設ラッシュになっていることに不安を抱き、本作を作ったそう。
その不安が、悲しいことに的中してしまった。
真山さんは今、一体何を考えているんだろう。
「原発は、我々に素晴らしい恩恵を与えてくれる。だが、人間の心に隙が生まれた瞬間、神の火は、劫火に変わる。」 -
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まるで、福島第一原発事故を予測していたかのような内容。
真山さんの社会問題を取り上げて読者に突き付ける書き口は、やっぱり見事だしすごい。
いろんなことを思うけど、確かなのは、原発の問題はものすごい政治的で、簡単に決められるものではないということ。
原発大国フランスでも、日本でも、中国でも、同様なのだと思う。
原発って一国だけの問題じゃないってことを、多くの人が見落としてる。
途上国はエネルギー不足で原発を建設したい。でも技術がない。そうなれば、原発大国のフランスや日本、そしてアメリカなんかの力を借りることになる。
原発は巨大な利権施設でもあるわけだから、技術を持ってる国は原発建設したい国と契約を結びたいわけで。
そこから巨大な利益が生まれるし、国家同士の結びつきになるから、どうしても政治的な話になってくる。
石油同様、国際的な関係が絡む複雑で繊細な問題だと、個人的には思ってる。
慎重に議論をして、迅速に決定を下していかなければならないと感じます。 -
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テーマが 『愛国心』となっているところに、
ポイントがあるのかな。
企業や金融が グローバル化した現代で、
自分の原点がどこにあるのか ということをあらためて考える。
引退したアルが アメリカを守るために立ち上がる というのが、
最後の場面での重要な展開となっている。
中国の問題は アメリカがかかわらない限り 展開しないのだね。
中国のありあまった資金をどうつかうのか?
ということだが、中国は もっとやるべきことがあるだろう。
空気汚染や環境汚染、貧富の格差是正など、
有効な使い道はいくらでもあるはずだが
アメリカの金融手法の土俵に乗って、富を得る
ということ自体が 腐っているのかもしれない。
アカマ自動車に対する 評価がとても高すぎる
ような気もした。
企業のシステム,開発力、企業の総合力など。
企業防衛に右往左往する。保阪が クールでスマート。
古屋の剛毅さ。大内の原則をはっきりし、ぶれない。優れている。
防衛産業への認定をしてもらおうとするのは,悪あがきだね。
その道は やはり自滅の道のような気がする。
あいかわらず 鷲津のディールの手腕は、人脈も豊富であるが
どう切り抜けるかと言う 発想を創造するだけでも、すごいね。
サムのサポートは 調査能力だけでなく 次を読む力がある。
ホワイトナイトになってからの 活躍ぶりは、目を見張る。
しかし,あまりそれが 上等の手段であるのかよくわからない。
企業の買収という仕事は 覚悟が できていないと
勝ち負けではなく 生きるか死ぬかという選択であることは確かだ。 -
Posted by ブクログ
鄧学耕が 朱克明のもとに 組み込まれていく。
政治的な力学が つねに左右する。
中立や無関係は存在しない。
無口で余分なことを言わない鄧学耕。
『希望とは 自分たちが努力して 奪い取るものだ』
と 鄧学耕はいう。
希望とは 世界で最大級の紅陽原子力発電所を
稼働させることであるが、
ラジオが 発電所内に持ち込まれて、それが問題を起こす。
そのラジオは 大連市長が経営している会社のもので、
原子力発電所のスタッフにプレゼントされたものだった。
オリンピックの開会式に 発電を間に合わせることに
成功するが、そのあと ブラックアウトとなる。
一方で 大連市の市長をターゲットにして 中紀委が拘束しようとするが
中紀委の書記の寝返りで果たせなかった。
つぎつぎに 発電所内で 火災が発生し 爆発をおこす。
鄧学耕と 田嶋はこの危機を どうのりきるのか。
中国という国を 中紀委 という視点を入れて
眺めたことが この作品の特徴であり、優れたところである。
田嶋と言う 優れた日本人が 描かれているが
鄧学耕は スーパーエリートであるが,柔軟性もあり,
このような中国人が本当にいるのか と疑わざるをえない。
あまりにも,日本人的な思考力である。
それでも,いい作品であることは確かだ。 -
Posted by ブクログ
中国の実像をとらえるには むつかしいとおもう。
二人の主人公 日本人の技術顧問としての田嶋。
特命副書記 鄧学耕。
『切れすぎる刃物は、切れない刃物より使いにくい。』
というが、二人は 切れすぎながら 切れないような見事なキャラクター。
田嶋は 先頭に立って 行動する現場主義者。
中国人と融合して,中国人の面子も守りながら,根回しする。
鄧学耕は 情報収集能力があり、分析力や局面判断が巧みだ。
そして,クールでもある。規律もしっかり守る。
このような 中国人がいること自体が おそれおおい。
2008年に オリンピックがあり、
それに会わせて,世界最大級の原子力発電所をつくると言う。
ズサンで,手抜き工事が多く,品質を問題としない
同時に 安全という概念がない中国での日本の技術者の悪戦苦闘。
上から目線や中国人への蔑視がある日本人は,叩きのめされる。
それを 『希望』 という言葉で,深く結びつこうとする 鄧学耕。
遼寧省の書記 朱克明 は 李克強。共青団
大連市市長 趙凱陽 は 薄煕来。解放軍に力があるオトコ。
がモデルになっているのかな。
李寧寧という 紅陽市の女帝が どんな風になるのか?
それにしても 鄧学耕は、信念のオトコであり,
妻に罵倒されようと ただひたすらガマンする。
中国人的ではないような気もするが。
物語の幅を ひろげている。