挫けたまま立ち上がれないでいる震災後の日本で、巧みな弁舌を駆使し国民の心を捉え、総理に登り詰めた登り詰めた宮藤隼人。
彼の政治信条に共感し、側近として支える白石望。
白石と同期で、政治の闇を追いかける新聞記者の神林裕太。
この3人を中心に、内閣官房長官、総理主席秘書官、事務秘書官、さらに敏腕記者等に
...続きを読むより、それぞれの思惑を秘めた虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。
題名の「コラプティオ」とは、どういう意味か不明のまま読み続けたが、ラテン語で「汚職・腐敗」を意味すると巻末で明かされる。
原発産業による日本復興という大事業を計画する宮藤総理。日本フェニックス計画と銘打った政策は、震災で落ち込んだ日本人に希望を持たせる。
しかし、ウラン鉱脈が見つかった国の軍事クーデターへの関与が疑われたあたりから、カリスマ総理の暴走が始まる。独裁者として変容していく総理の暴走を、誰が止めることが出来るのか。
権謀術数が渦巻く政治の世界を、スリリングに描き出した政治小説エンターテイメントの手に汗握る展開は、頁を繰るのももどかしく、読みふけるばかり。
「多くの場合、権力を行使する者は、その目的が正しいと思い込んでいる。さらに、正しい目的のためなら、多少プロセスに問題があっても許されると考えてしまう。しかし世界の歴史を振り返ると明らかなように、ほとんどの不幸は、それが正しいと思い込んだ人びとによって引き起こされている。権力者が権力を行使する快感に溺れ、正しいことを行っているという満足感に溺れ、人びとは不幸に巻き込まれていく」
著者が綴るこの言葉は、現在のロシアによるウクライナ侵略に、見事当てはまるではないか。