小野不由美のレビュー一覧
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ネタバレ風の万里 黎明の空は、読み終えた瞬間に「ここまで読んできて本当に良かった」と思える作品だった。上巻では鈴や祥瓊の被害者意識の強さに何度も苛立たされたし、あまりにも視野が狭く、自分の不幸ばかりを見ている姿に苦しくなる場面も多かった。しかし、その未熟さから逃げずに描いたからこそ、下巻で彼女たちが少しずつ変わっていく姿が胸に刺さる。
誰かのせいにしていた少女たちが、自分の足で立とうとする。その成長がとにかく熱い。特に、痛みや失敗を経てようやく他人を思いやれるようになっていく過程は、人間臭くてとても良かった。
そして何より陽子の存在感が素晴らしい。『月の影 影の海』で追い詰められていた彼女が、今作では迷いながらも他人を導く側になっていて、“王としての成長”がしっかり感じられる。完璧ではないからこそ、その言葉や行動に重みがあった。
終盤の展開はカタルシスが凄まじく、重苦しかった物語が一気に希望へ変わっていく感覚がたまらない。苦しさも含めて、登場人物たちの成長をここまで丁寧に描き切った作品だからこそ、多くの読者に愛されている理由がよく分かる一冊だった。 -
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ネタバレ鈴と祥瓊の被害者意識の強さには正直かなり辟易した。
「自分ばかり不幸だ」と思い込み、周囲の痛みを見ようとしない姿には、読んでいて何度も苛立たされる。それでも、この物語が凄いのは、そんな未熟さから決して逃げないところだと思う。
特に印象的だったのは、彼女たちが“世界の広さ”を知っていく過程。自分の境遇だけを見ていた少女たちが、他人の苦しみや現実に触れながら少しずつ変わっていく姿には、不思議と目が離せなかった。だからこそ、序盤の鬱屈した感情が後半に効いてくる。
そして陽子。王になれば終わりではなく、むしろそこからが本当の苦悩の始まりだという展開が重厚で面白い。理想だけでは国は救えないという現実と向き合いながら、それでも前へ進もうとする姿に強く惹かれた。
読んでいてしんどい場面も多いのに、気づけば夢中になっている。人の未熟さを真正面から描きながら、その先にある成長まで描き切る、十二国記らしい力強さを感じる一冊だった。 -
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ネタバレ転勤族の父は母が死んだあとすぐ近所の女性と再婚。浩志は父と義母と一緒に住みたくなく、昔少し住んでいた街でグリーンホームというアパートに住む。グリーンホームでは浩志と同年代らしき謎の男・和泉など変な居住者ばかりなので居心地が良くない。突然階段に死体をチョークで描く謎の少年が現れて、その絵の通りに女性が死ぬ。あと5日だと電話が掛かってきたり、謎の手紙が投函されたりと浩志に呪いが⁈過去の記憶が蘇ってくると、前にこの街にいた時オサルといういじめられっ子を虐めており、神社に置いてきぼりにしたところ、オサルは夜誘拐犯に殺されてしまった。絵を描いて呪い殺す少年はオサルなのか…
我が家を求める浩志の気持ち、虐待されていたオサルは我が家で殺されていた。我が家に求める物もそれぞれで怖さもあり。
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家の障りを聞きつけて、営繕かるかやがゆく。「奥庭より」「屋根裏に」「雨の鈴」「異形のひと」「潮満ちの井戸」「檻の外」6作収録の短編集。
雰囲気でいうとあれに近い。
夏目友人帳や蟲師。妖じみた家の障りを祓うのではなく、いなす。障りの正体を掘り下げることもしない。あくまで現象として扱い、それを躱すことで、家主の困りごとや不安の方を祓う。それ故に、かるかや・尾端が出てくると、物語はさっくりと終わる。一つ一つ味わい深い話ではあるが、明確な型がある。
風景が良かった。
「雨の鈴」の雨の町家も良かったし、「潮満ちの井戸」の寂とした裏庭も良かった。日差しはまろやかなのに、とってつけた洋風の花壇やパーゴラが屋敷全体には馴染まない。描写はないが、素人が敷いた煉瓦道も、所々浮きがありそうだ。ちぐはぐな座りの悪さが上手に描かれていた。どの短編も、すぐに舞台にダイブできた。
恐怖は良質。
「異形のひと」がシンプルに怖い。自分にしか見えていない孤独感も嫌だし、家中がびっくり箱みたいで落ち着かない。夜中に冷蔵庫を開けたらお爺さんが入ってたのなんて本当にぞっとした。子供の頃から、夕方一人で家にいるのが怖かった。見えていない範囲があまりにも広すぎて、見えていない所には、何か怖いものが蠢いているのかもしれない。それを否定できない。だから、家の中に家族が散らばっているほど安心だった。夕飯に呼ばれるまでの短い時間、異音を聞き逃すまいと耳をそばだてていたのを思い出した。 -
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ネタバレ人間の醜い部分を書くのが上手すぎる。
人は簡単には生活水準を落とせない。自分のあたりまえがすべてで、そうでないものは受け入れ難い。自分が一番可愛いから、良いことは我が物顔だし悪いことが起きれば悲劇のヒロインになる。
正直鈴のことも祥瓊のことも好きになれないが、それはきっと自分のなかにあるこういった醜い部分を突きつけられているからだろう。
だから、黄姑と楽俊の言葉をわすれないようにしたい。
【黄姑】
「生きるということは、嬉しいこと半分、辛いこと半分のものなのですよ」
「人が幸せであるのは、その人が恵まれているからではなく、ただその人の心のありようが幸せだからなのです」
「苦痛を忘れる努力、幸せになろうとする努力、それだけが真に人を幸せにするのですよ」
【楽俊】
「責任を果たさずに手に入るものなんか、ねえんだよ。あったとしたら、それは何か間違ってる。間違ったことを盾に取っても、誰も認めちゃくれねえんだ」